2019年.9月28日.1219hrs
扶桑.種子島南東沖上空.side/アンタレス1
「こちらアンタレス1。遅くなったわね」
急降下しつつ、狙撃手を狙っていたF-35Bを撃墜する。空中に散った仲間の機体に、混乱する敵編隊。
《───なッ!? 上から......ッ!?》
私に気づいたらしい敵パイロットの驚愕、と言った感じの声の無線を傍受するが、気付くのが遅い。
そのままの降下姿勢で射撃を行う。
数発に1発の割合で装填されている曳光弾と一緒に放たれた通常弾が私の狙った位置、コックピットの眼前にある主計器盤を粉砕。衝撃で破片が飛散し、パイロットを襲う。
《グッ!?》
思わず両手で顔を覆う動作をする敵パイロット。
その隙を私は見逃さない。
操縦系から両手を離した隙に固有魔法を発動。M468の銃口の先にシールドを展開。形状を細く、且つ長くした、鋭利なブレードのような形に形成した。
「ハアァァァァッッ!!」
まるで
銃のストックとハンドガード部分を掴み、ブレード化したシールドに魔力を注ぎ込んで強化。敵機へと肉薄すると、右主翼目掛けて、一気にその刃を振り下ろした。
「────ハッ!!」
勢いよく振り下ろされたブレードは、敵機の主翼をまるで、ナイフでバターをスライスするように簡単に切り裂き、両断した。
右主翼の2/3程を切り裂かれた敵機は錐揉み降下を始めた。
やがて、機体の立て直しを諦め、青い空にベイルアウトしたパイロットの白いパラシュートが開傘した。
これが私の固有魔法、
防御手段であるシールドを様々な形状に変化する事が出来る能力で、私はこれを武器として扱う。
最初は、片方で1つにまとめていた長い黒髪の毛先にシールドを張って近接戦に使用していた事が始まり。
未だ紛争が後を絶たなかった数年前、私がこの魔法を実戦で使っている所を見た兵士が口にした言葉、「まるで蠍の尻尾にある毒針みたいだ」が発端で、何時しか私の固有魔法の名前になっていた。
「久しぶりに使ってみたけど、痛いわね......コレ」
水平飛行に移った私は、ハンドガード部を掴んでいた右手を襲うジンジンとした痛みに苦笑して、ぶらぶらと振る。
この技の欠点は近距離戦用である事、ブレードの長時間形成が出来ない等が挙げられるけど、私が一番嫌なのは、この対象物を斬った後の痛み。
(これが無ければ良かったんだけど......っ!)
直感で何かを感じ、咄嗟に身を翻す。
すると、私が滞空していた空間を機関砲弾の束が引き裂く。背後を一瞥し私を狙っているF-35Cを視認した。
高速で私の横を追い抜く敵機。
左腕にバンドで固定しているタブレット端末の画面を素早く指でタッチして、使用兵装をサイドワインダーに選択。HUDの表示がガンモードから切り替わる。
HUDの兵装切り替えに反応したF-22ユニットは、側面部の兵器倉を開いた。サイドワインダーが姿を現す。
「ターゲット、ロックオン!!」
イヤフォンに響く電子音。
緑色の四角い箱、所謂“ターゲットボックス”で囲われた敵機を、サイドワインダーの画像赤外線シーカーが狙いをつけた事を知らせる。
「アンタレス1、FOX2!!」
私が発射符丁をコール。
直後、後部ロケットモーターに点火したサイドワインダーが、兵器倉からバシュッと、音を立て飛び出した。
白い噴煙を噴きながら追尾するサイドワインダーに対し、敵機は熱源を放つ欺瞞弾、フレアを散布する。
だが、サイドワインダーはフレアの熱に惑わされず正確に目標を捉えた。近接信管が作動し、弾頭内部に充填されていた炸薬が起爆する。
大量の鋼鉄製の弾片が機体表面に食い込み、機体全体にダメージを受けた敵機は、操縦不能に陥り落下してゆく。
「敵機撃墜、っと?」
《貴女、誰っ!?》
敵編隊の残存機が慌てた様子で距離をとり始めた時。
右翼後方へと近づいてきた、片方損傷状態のタイフーン・ユニットを履いたウィッチ、HUD表示コールサイン、ボーンアロー2が訊ねてきた。
彼女の突然の大きな声に、思わずイヤフォンを押さえた。無線の音量を落として返答する。
「私はマーティネズ・セキュリティー社、M42飛行中隊第1飛行隊所属、アンタレス1よ」
「今は国連のTF118所属扱いになっているわ」
《マーティネズ社のアンタレス......、貴女は......》
レールシステムを施したAKライフルを持つ、銀髪のウィッチが眉間にしわを寄せて言う。
「えぇ。今まで退役の身だったけど、会社の友人に“無理やり”連れて来られたのよ」
《そいつは酷くないか、アンタレス?》
「事実でしょうが」
「無理やり」をわざと強調して言えば反応する人物が一約名いた。M42飛行中隊のトップ、バーフォードだ。
AWACSから指揮を執る私の上司は返す言葉も無いようで、私を含めた他の味方に新たな情報を送ってきた。
咳払いをしたバーフォードが話始める。
《こほん......私はフレデリカ・バーフォード大佐。マーティネズ社M42飛行中隊の隊長を務めている。現在、AWACSカノープスに同乗し、アンタレス隊の管制および情報収集に当たっている》
《いい知らせがある。護衛対象である輸送船団は無事に安全圏へ離脱した。君たちのおかげだ、感謝する》
ほっと一息吐く私。彼女たちもバーフォードからの連絡を聞いて表情を明るくした。
データリンクで回されたレーダー情報には、輸送船団が危険域から離脱する様子と、アンタレス隊に属する残りの3機が船団から離れ、私たちのいる空域へと向かっているのが分かった。
そのウィンドウを閉じると今度は空域に残っている敵機に関するデータをスクロールした。
ボーンアロー1と扶桑軍機から離れた編隊が、先ほどまで私たちと戦っていた編隊へと合流しようとしていた。
「バーフォード?」
《あぁ、分かってる。カノープスよりボーンアローへ》
《残存する敵機は我々が対応する。君たちは北へ離脱中の輸送船団に合流し、そのまま護衛を頼む》
《《え?》》 《でもっ......》
《其方は1名被弾しており、これ以上の継戦は危険だ。此処は我々に任せて離脱してくれ》
バーフォードが言った事に私へと振り向く彼女たち。私たちに任せて離脱してもいいのか?って顔をしている。
そんな彼女たちに私は笑顔を浮かべた。
「バーフォードの言うとおりよ、お願い」
「安心しなさい。私を誰だと思っているの? すぐに片づけて貴女たちと合流する、約束するわ」
そこまで言うと彼女たちは安心したように表情を変えた。
銀髪のウィッチがボーンアロー2に肩を貸し支えると、私に向かって敬礼をしてきた。
《では、後をお願いします》
「うん、基地で会いましょう」
《了解》
三人で敬礼を揃えた後、速度を上げて離脱を始めた。
彼女たちの背姿を見送ると、後ろを振り返る。
M468の数発残っているマガジンを新しいのと取り換えていると、イヤフォンにザザッとノイズが走った。
《さっさと終わらせて、基地で一眠りしよう? 眠い》
《貴女は相変わらずね......ハァ》
《隊長、お待たせしました。ご命令を》
イヤフォンに聞こえる隊に属する個性的な同僚たちの声。数年前と変わらぬアンタレス隊メンバーだ。
私がブームマイクを掴み指示を伝える。
「味方部隊は離脱中、敵機にとっては恰好の的よ」
「追撃態勢に移る前に仕掛けるわ。各機、手を抜かないで攻めていきなさい。分かった?」
《《《了解!!》》》
「各機、散開」
敵編隊との戦闘をボーンアロー隊から交代したアンタレス隊は、残存する敵機と交戦。
数で勝る敵に対し、彼女たちは鍛えられた技量を駆使した動きで敵部隊を圧倒。僅か10分足らずで敵残存9機を全機撃墜した。
此方の被害はゼロだった。
その後、彼女たちアンタレス隊は燃料補給の為、一時新田原基地へと着陸。アンタレス隊や他の飛行隊メンバーから戦線復帰を祝われた後、本来の目的地である琉球王国、嘉手納基地へと飛んだ。
旗艦「オルカ」率いるシエラ補給船団は無事に呉海軍基地へと到着し、動けずじまいだった国連軍太平洋艦隊へ補強物資を届けた。
国連艦隊は今まで活躍出来なかった分を取り戻そうと意気込み、扶桑艦隊、リベリオン艦隊、華夏・高麗艦隊への対抗心を燃やし始め、次の作戦に備えた。
一方で、今回輸送船団を襲撃した敵戦闘機の出撃ポイントは特定されず、不明なままとなっていた。
司令部は敵がステルス機であった事を理由に“高麗半島から飛び立った敵機がレーダーサイトを掻い潜り、船団を攻撃した”と判断した。調査会議は航続距離、発進基地不明の問題が残ったまま終わってしまう。
会議は美麗島の対ネウロイ作戦を中心とした話し合いになり、誰も謎を追求する事は無かった。
この時この謎を解き明かせておけば、
後に降りかかる災厄を阻止出来たかもしれない、と
その時になって気付く......。
どうも皆さん、フェネックです。
第20話、アンタレスどうでしたか?
ちょっと短くて、あんまし絡みが少ない、駄文だと思い始めたんですが、どうです?ちょっと心配になってきました。
アンタレス隊のメンバーの氏名や容姿などの詳細は、実はあんまし考えていないのが現状です、すいません(汗
ただ、アンタレス隊のメンバーのユニット構成は「エースコンバットX2 ジョイント・アサルト」パッケージイラスト通りにします。
F-22
Su-37
ラファールM
F-14D、です。
何か意見、アドバイス等をいただければ有り難いです。
今後の展開についてですが、一部の方々は薄々感づいているのではないでしょうか。そこをインフィニティ流にした展開にしていきます。
感想、批評、質問、お待ちしています!