ACE WITCHES:INFINITY   作:フェネック

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案外早く仕上がったので投稿します。


#22 出撃命令-taken at the flood-

2019年.9月29日.1230hrs

扶桑.宮崎県.新田原基地.side/新城 久幸

 

 

 

 

シエラ補給船団護衛から1日が経った。

 

戦闘後、新田原(にゅうたばる)へと共に帰還したマーティネズ・セキュリティー社所属の航空部隊アンタレス隊は最低限の補給を済ませ、最前線である琉球(りゅうきゅう)へと飛び立った。

身動きがとれなかった国連艦隊も今頃は無事に(くれ)基地へと到着したシエラ補給船団から補給物資を受けているだろう。連中もこれでひと安心の筈だ。

 

俺たちボーンアローズも今は通常勤務に戻っていた。いつものように機体整備か書類整理、または、出撃要請に備えての待機状態と言った具合に過ごしていたのだが......、

 

基地内放送でTF118(アローブレイズ)各隊に召集が掛かったのは、昼食を終えた直ぐの事だった。

 

 

『通達する。タスクフォース118所属飛行隊の要員は直ちにブリーフィングルームに集合せよ。繰り返す......』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久方ぶりの召集だが、攻勢作戦でもやるのか?」

 

「どうだろうな。美麗(メイリー)島のネウロイの件かもしれないな」

 

航平と召集された理由を考えつつ、指定されたブリーフィングルームへと入室した俺たちはいつもと同じ最前列の席、中央から右寄りの位置に座った。

 

周りを見渡せば既に俺たち以外のTF118所属の各隊の面々が揃っており、それぞれにこやかに談笑していた。永瀬たち、リッジバックス隊隊員の姿もあった。

 

アリシア、キャス、オリガの三人も入室して俺たち二人の隣の空席へと各々座り、ボーンアロー隊の全員が揃う。アリシアが何故か涙目なのはオリガにトランプで12連敗中だとか。

さすが被弾姫(ベイルアウト・プリンセス)。運が無さすぎる。

ちなみに、アリシアのあだ名「女王(クイーン)」ではなく「(プリンセス)」なことがミソだとか。

 

「諸君、待たせたな。遅れてすまない。......これよりブリーフィングを始める」

 

足早に入室してきたグッドフェローが席に着くとラップトップを操作して、モニターのブリーフィングシステムを起動させた。同時に部屋の照明も消える。

 

「先ほど、扶桑国防軍より緊急連絡が入った。どうやら、呉海軍基地に敵の空襲があったようだ」

 

呉に空襲だと? 緊急発進(スクランブル)要請なんか聞いてないぞ?

それを聞いてざわつく室内。

隣のアリシア達も顔を見合わせていた。呉基地には、先日護衛したシエラ補給船団と国連軍の艦隊が停泊しているからだ。艦隊は無事なのか?

 

わざと咳払いをして室内に静寂を取り戻したグッドフェローが話を続ける。

 

「艦隊は奇襲を受けたが、飛来した敵機の数が少なかった事もあり被害は最小限に済んだ」

 

モニターに映し出される呉基地の3DCGマップ。

空襲時の呉の様子をシュミレーターが映し出す。

敵機を示す赤い輝点が編隊を組み内海に侵入、散開すると停泊中の艦隊に向け、対艦ミサイルを発射。

発射された複数基のミサイルが艦隊に所属する何隻かに命中する。だが、大多数のミサイルは呉港にて警戒中のミサイル駆逐艦に迎撃され無力化された。

 

「奇襲してきた敵機はF-35。こいつらは艦隊の空母艦載機により全機撃墜。......だが、この事態に対し国連軍上層部はもはや扶桑内海すら安全ではないと判断し、艦隊を早期に出撃させる事を決定した」

 

「予定が数日早まったが、その上層部から我々に与えられた命令は明日出航する艦隊の護衛任務(エスコート)だ」

 

3DCG映像が切り替わり、艦隊が呉基地から出航して豊予(ほうよ)海峡を抜け豊後(ぶんご)水道を南下、太平洋へと進むルートが出された。

 

「このルート通りに艦隊は進み太平洋に出る。敵も当然これをみすみす逃すような事はしないはずだ。恐らくは艦隊が太平洋側に出る前......動きが制限される内海を航行中に仕掛けてくるだろう」

 

敵の動向に関してはグッドフェローの意見に同感だ。

俺が敵指揮官の立場であるなら太平洋側に出る前に回避運動さえ難しい内海で仕留める作戦を立てる。

 

問題は敵の攻撃戦法だ。

射程の長い巡航ミサイルによる攻撃は、艦隊に随伴するイージス艦が対処する。残されたのは潜水艦による待ち伏せか、F-35によるステルスを活かした奇襲攻撃の可能性が高い。

潜水艦はSOSUS(ソーサス)と呼ばれる音響監視システムが捕捉出来る。

残るは、航空攻撃。

今回も敵機はF-35だった。敵機が何処から飛んできたのか判明したのだろうか?

それをグッドフェローに訊く。

 

「今回の敵機の発進基地は特定出来たのか?」

 

グッドフェローは(かぶり)を振った。

 

「......不明だ。司令部は高麗(コリョ)半島南部の金海(キメ)空港からだと判断し、高高度からUAVによる偵察を実施したんだが、結果はハズレだ」

 

そう言って彼が再度ラップトップを操作すると、UAVが撮影した偵察画像がスクロールされた。

 

空港に駐機されている機体はどれもスホフやミグと言った系列の機体であり、F-35の姿は皆無だ。

話を続けたグッドフェローによると、敵が接収して使用している高麗半島の各空軍基地にF-35のようなステルス機を保有している形跡がないということだ。

 

......と言うか以前、航平から聞いたんだが、高麗共和国が次期主力戦闘機としてリベリオンからF-35を購入する予定だったらしいが、共和国軍部内の一派により頓挫した。噂によれば、横槍を入れたのはオラーシャと華夏(フアシャー)連邦だとか。

両国とも自国の新鋭機を輸出したかったようだ。

オラーシャは戦術航空機先進航空複合体、略してPAK FA(パクファ)とも呼ばれるSu-50(フラットフィート)

華夏は殲撃20型(ファイアファング)、または殲撃(ジエンジー)31型の輸出仕様型FC-31。

だが結局、導入計画自体が白紙化した。

そのせいか、ステルス機を運用、整備出来る専用の設備が無いらしい。

 

「近海に敵空母の存在は?」

 

席から立ち上がった航平が問う。

 

「ユージアの極東艦隊は依然として戦力を保有はしているが、あちらも疲弊しきっているようだ。 今は華夏の山東(シャントン)半島にある青島(チンタオ)軍港に停泊している」

 

「じゃあ、こないだの戦闘と同じく不明なまま、か」

 

「歯痒いが、そのとおりだ」

 

グッドフェローの返事を聞いた航平がしゃあなし、と言った感じで席に座る。

 

「とにかく、明日の艦隊護衛に於いては襲撃が予想される。各自機体はどんな状況にも対応出来る兵装で準備を頼む。 では、解散」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日.1735hrs.

扶桑.広島県.呉海軍基地

 

 

 

 

国連第3艦隊に正式な出撃準備の命令が届いたのは、つい先ほどだ。

第3艦隊隷下、第10任務部隊の中核を担う航空母艦「ケストレル」の司令部艦橋(フラッグブリッジ)に集まっていた艦隊司令部の幕僚幹部達は、軍事参謀委員会から送られてきた出撃準備命令等が書かれた指令書の内容にひとまずは胸を撫で下ろした。

幹部達の心の内は、やっと外洋に出られる、身動き出来ぬまま沈むところだった、とかだろう。

だが、それに危惧を抱いている人物が一人いた。

 

彼の名前は、ニコラス・A・アンダーセン。

空母ケストレルの艦長であり、乗組員、航空団要員を含め約5000名以上の部下を持つ軍歴40年以上のベテランである。

 

(数時間前の空襲......あの敵航空部隊は少数だった。いくら停泊中とは言え、この第3艦隊全体を攻撃するには明らかに戦力不足だった)

 

司令部艦橋の一つ上の階に位置する航海艦橋(ナビゲーションブリッジ)にアンダーセンはいた。

今年で61となるアンダーセンだが、ベテラン軍人である彼の脳は冴えていた。

空襲のことなど既に気にならなくなっている幹部達をよそに、一連の敵の動きを冷静に分析していた。

 

(あの空襲は、我々を外洋へと引きずり出す為の陽動かもしれん。しかし......)

 

これは敵の罠だ。そう幕僚達に進言しても老いぼれの妄言として耳を貸さないだろう、と彼は考えていた。それはこの戦争が始まって以降、彼の意見を一度も考慮した事がない幕僚達の態度からきている。

 

各国の軍から派遣されている幕僚幹部とは違い、アンダーセンと「ケストレル」の乗組員達は全員、リベリオンのとある民間軍事企業(P M C)の所属だ。

新城達が所属するアローズが航空戦主体のPMCに対して、アンダーセン達が属するのは海上戦力主体の企業と言ってもいい。

リベリオン政府とも契約を結んでいるプライベーティアであり、それなりの規模を誇る戦力を持つことから、対ユージア戦に於ける中核戦力として彼等も例外なく国連軍所属となっている。

 

国連軍第3艦隊として編成されたはいいが、艦隊の頭脳とも言える幕僚幹部は皆、若手のエリートの集まりであり、彼らなりのプライドから「海賊」とも称される企業の所属、しかも、退役間近の老いぼれが俺たちに指図するなという考えを持ち、ベテランの意見を無視していた。

しかも本来、そういう類いのいざこざを無くし調整する艦隊司令官である人物は、これまた肝が座っていない男であり、実戦経験が皆無という。

そのせいか、司令官からは作戦については口出しすることも無く、幕僚達が提案した内容にただ頷くだけだ。これでは司令官の意味が無い、置物同然とも言える。

 

静かに溜め息を吐いたアンダーセン。その顔には苦労の二文字が見てとれる。

 

艦長(キャプテン)。艦載航空歩兵(ウィッチ)隊、発艦します」

 

「うむ。」

 

航海艦橋に勤務するクルーの報告に彼は頷くと、飛行甲板(フライトデッキ)が見渡せる窓際に寄る。

テニスコート70面分に匹敵する広大な飛行甲板上には多数の甲板作業員(デッキクルー)が各々の仕事を果たすべく、動き回っている。各クルーはそれぞれの役割が目で見て判別出来るように服とヘルメットの色が決まっており、故に「レインボーギャングス」とも呼ばれる。

 

第206航空歩兵隊(ヘイメイカーフライト)がタキシング中。第3第4カタパルトへ誘導急げ』

 

今、アンダーセンの視線の先には服装が黄色の航空機誘導員に従って着艦用飛行甲板(アングルドデッキ)側の航空歩兵用射出装置(カタパルト)へと移動してきた二人のウィッチがいた。

彼女たちはNo. 3、No. 4と描かれたカタパルトへそれぞれ向かう。

このウィッチ専用カタパルトは同じアングルドデッキ上にある通常航空機用の蒸気カタパルトの間に設けられており、通常機と同じタイミングでカタパルト位置に着いても問題ないように設計されている(ただし、その場合はウィッチを先に発艦させてスペースを確保する必要がある)。

 

発艦位置に到着した彼女たち。航空戦闘脚(ストライカーユニット)着陸脚(ランディングギア)を捉えたシャトルが自動的に展開されたランチバーとホールドバックバーを接続させる。今度はそれを緑服のカタパルト要員(シューター)がギアがしっかりと接続されているか、進路上に異常が無いことを確認するとICCS(複合カタパルト制御ステーション)、通称「バブル」と呼ばれる射出操作を行う場所にいる射出要員へ手信号(ハンドシグナル)で合図を伝える。

 

第3カタパルト(C A T 3)、ヘイメイカー1(ワン)、発艦準備よし』

第4カタパルト(C A T 4)、ヘイメイカー2(ツー)、同じく発艦準備よし!』

『こちら主航空管制室(プリフライ)グラニット。ヘイメイカー1、ヘイメイカー2、発艦を許可する(クリアード・フォー・ランチ)

 

艦橋(アイランド)最上階に位置する主航空管制室(プライマリー・フライト・コントロール)、通称「プリフライ」から指示が下る。

魔法力と共に圧縮されて吹き出すエーテルを上へと逃がすジェット・ブラスト・ディフレクターがせり上がると、再びクルーからのハンドシグナルが第3カタパルトのヘイメイカー1のコールサインを持つウィッチに送られる。魔導エンジンの出力を発艦レベルまで上げろ、と。

ウィッチがエンジンの出力を上げ、推力増強装置(オーグメンター)を点火。同時にウィッチの中心とカタパルトの進路上に魔法陣が展開される。この専用カタパルトは蒸気ではなくエーテルを使うものであり、これを制御担当する射出要員のウィッチがいる。

 

『ヘイメイカー1、発艦します(クリアード・フォー・ランチ)

 

カタパルト士官が甲板に膝をつき、手を艦首方向へ指し示す。ウィッチが発艦姿勢をとる。

 

『ヘイメイカー1、射出(ランチ)

 

ICCSの射出要員が告げた瞬後、カタパルトが作動。シャトルに接続されたウィッチは前進を始め、時速300km近くまで一気に加速する。

カタパルトの末端でシャトルからランチバーが外れ、砲弾のように飛ばされたウィッチは飛行甲板から離れ、空へと舞い上がる。

 

『ヘイメイカー1、発艦(エアボーン)

『ヘイメイカー2、発艦する(クリアード・フォー・ランチ)!』

『ヘイメイカー2、射出(ランチ)

 

時間を置かず、第4カタパルトで待機していたウィッチも射出の合図が出ると直ぐに加速を開始。数秒で飛び立つと先に上がったヘイメイカー1と合流するべく左へ旋回した。

 

『ヘイメイカー2、発艦(エアボーン)

『ヘイメイカー1、2の発艦を確認。続いて、ヘイメイカー3(スリー)4(フォー)が進入する。発艦準備急げ』

 

次の発艦作業に移行され、また慌ただしくなってきた飛行甲板。

アンダーセンは発艦し、空に軌跡を描いて飛ぶウィッチ達を少しの間、眺めていた。

 

「明日の出航......何事も無ければよいが...」

 

彼の祈るような呟きも再び航海艦橋内を包む喧騒の中へと飲み込まれていった。




«トリガー、エンゲージ»

どうも、フェネックです。
エースコンバット7のトレーラーのロングVerが発表されましたね。

やはり「彼」の耐Gスーツは特殊というか、人口筋肉で使用者を補助するマッスルスーツ的な物かもしれないですね。これ......エースコンバット3のENSI規格やエアロコフィンにつながりそう。

アーセナルバードが射出するUCAVはMQ-101って型式番号みたいです。

そしてサブタイトルが決まりましたね

「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン 」ですか。

未知の空って意味かな?


更なる続報が楽しみです。


ちなみにこの作品で出てきたPAK FAは既に試作機No. であるT-50からSu-50として実戦配備されてる、という事で。コードネームもカッコいいあだ名を付けたがらないNATOコードネームにならって「フラットフィート(扁平足の意味)」にしました。

感想等お待ちしています。ではでは
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