ACE WITCHES:INFINITY   作:フェネック

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閑話的な話です


過去編
#01 301飛行隊のある日-the Days-


 

とうとう、此処まで来たか......。

 

視界一杯に広がるのは、群青ただ一色のみ。

狭いバスタブのような座席に座る俺はただ、ぼーっと、有機ガラスで出来たキャノピー越しに見上げていた。

 

操縦はどうしたって? んなもん、俺の前に座る相棒がしっかりやってるから安心しなって。

 

基地から離陸してかれこれ30分弱ぐらいか。

俺たちの乗る機体は、遥かな高みへと昇った。

下へと目を向ければ、やたら多い雲の隙間から時折地上がその姿を見せる。ひゃー高い高い。っと、一枚一枚...。

 

こっそりと持ち込んでいた一眼レフを構え、上空からの景色を撮影する。

眼下の景色だけではなく、右隣数十メートル先の僚機や機体後部、ちゃっかり自分自身も撮っておく。

 

すると、ヘッドセットに短くノイズが鳴る。

 

《おい“アイドラー”、なに盗撮してんだよ》

 

隣を飛ぶ僚機からの無線通信だ。

どうやら、レンズの反射で気づいたようだな。

 

《もうじき、AGRが来るぞ。 早めに片づけとけよ》

 

「UGV(無人陸上車両)が空を飛べるたー凄いな」

 

《あのFPSのロボット兵器じゃねぇよ阿呆》

 

《“キャッスル”も何か言ってやれよ、お前の相棒だろ》

 

俺のボケにのりの悪いツッコミを返した同僚が、前席にて機体を操縦する相棒に声を掛けた。

 

ちなみに「アイドラー」ってTACネームが俺の事だ。“怠け者”叉は“遊び人”って意味で、俺の性格上ぴったしなネームだ。

 

前席の相棒が口を開く。

 

《残念だが、俺は一度も相棒だと認めた覚えはねえな》

 

「ひでぇ(泣)」

 

《ふっ...冗談に決まってんだろうが“アイドラー”》

 

TACネーム「キャッスル」こと、新城 久幸。

俺が航空学生時代からの友人で、実戦部隊に着隊した今でも一緒の相棒だ。 実は同郷で同じ高校に通っていたらしいのだが、あんまり覚えてない。それは久幸も同じらしい。

 

俺たち2人だけが、基礎教育課程から実戦部隊着隊に至るまでずっと一緒だという、なんとも奇妙な運命の糸に繋がれてるのやら。赤い糸じゃねーから。

 

っで、まぁ。

今現在の状況を話せば、もうじき同僚の奴らが話していたAGRの略称で呼ばれている航空総隊直轄のエリート部隊、飛行教導隊直々の戦技指導ってやつが始まるのさ。

 

訓練時に対航空型ネウロイ戦でネウロイ役を務めるアグレッサー飛行隊で、扶桑国防空軍切っての選りすぐりを集めている。

 

「なんで、うちの基地司令は事前通達無しで今日言うのかね」

 

《それについては同感だな》

 

《あの女狐め》

 

「だろ、だろう?“ジンギス”“クーリ”」

 

同じ気持ちを抱く3人が顔を見合わせ、グッと親指を立てる。

「ジンギス」と「クーリ」は僚機の2人、楯山 准一(たてやま・じゅんいち)と栗山 恭二(くりやま・きょうじ)のネーム。

別名「ワンツーコンビ」と呼ばれており、TACネームの由来は楯山の好物がジンギスカン、栗山は普段冷静な姿から「クール」と「栗」を合わせた「クーリ」っと。そういう事だ。

 

3人で笑うなか、無線ノイズと共に通信に割り込む声が響いた。

 

 

《あら~なんだか楽しそうじゃない、3人とも♪》

 

 

無線越しに聞こえる女性の声。

笑っていた3人の表情が引き攣り、女性のわざとらしいほほほっと言う笑い声以外、その場に沈黙が訪れる。......うちのボスだ。

 

前席の久幸の小さな溜め息が耳に届く。やめろー! そんな残念な空気をこれ以上漂わすんじゃねえ!

 

女性の笑い声が止み、ドスの利いた声が耳元に伝わる。

 

《......あとで司令室に来なさい.....》

 

まさしくそれは死刑宣告だった。

俺は後から後からと、額から流れる汗が止まらない。

さっきの言葉というか命令が頭の中で木霊する度に頭痛が...。

あ、な涙が出そう。てか、泣いていいよね?(泣)

 

《ハァ......なぁ“アイドラー”》

 

「言うな! 分かってる、分かっているんだが......逃げたい」

 

《御愁傷様。 まぁ、骨は拾ってやるよ》

 

「お前なぁ、他人事みたいに言いやがって!?(泣)」

 

《実際他人事だろうに......っと、AGRが御来冠だ》

 

久幸がそう告げると、ネウロイ塗装を施したF-15DF(扶桑版D型)が2機、俺たちの左側を抜くように前へと飛んで行った。

 

機体全体を漆黒で塗装し、六角形の模様、赤色部分など。ネウロイ役に十分うってつけな姿だ。イーグルが可哀想だが。

 

《コバルト1、2へ。 お喋りは終わりだ》

 

《早く司令室に行くのを手伝ってやるよ》

 

「げっ! “ジャッカル”に“コヨーテ”かよ!?」

 

俺は思わず叫んでいた。

飛行教導隊の中でもお相手したくない部類のエリート2人だ。

特に“コヨーテ”はいつでも相手に撃墜判定を出せる優位な状況でも最後の最後まで相手を追い込み“焦らす”事で有名な嫌な性格の持ち主だ。

 

《こりゃあ、司令室に向かうには、時間が掛かりそうだ》

 

“ジンギス”が言う。

 

時間が掛かれば掛かるほど、司令の機嫌が悪化していくのは予想出来る。いや、確実にそうなる。

 

それだけは、何としても阻止せねばならない!

 

命に関わるからなッ!!!

 

「“アイドラー”よりコバルト2ー!!! さっさとあの2機を叩き落として、司令に土下座しに行くぞッ!!!」

 

《《ラジャー!!!》》

 

スライド式のスモークレンズ・バイザーを勢いよく下ろし、エリート2機への宣戦布告を行った。

 

「やってやろうぜ久幸!!!」

 

《ハァ......ったく》

 

前方を行く2機が散開するのを合図に、この戦いの火蓋が切って落とされたのだった──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果は、コバルトチームの惨敗。

“ジャッカル”と“コヨーテ”のタッグに為す術もなく、手玉に取られ、特に“コヨーテ”に弄ばれた挙げ句、1回の撃墜判定を喰らわせる事も出来ず、久幸機は12回、楯山機は13回も“撃墜”された。

キルレシオ(撃墜対被撃墜比率)が酷いことになった上に加えて、疲労困憊の3人をエプロンで直々に出迎えた基地司令が魔法力を発現させ、彼等をずるずると引きずって行った。

 

ご、御慈悲をーっ!!!とか、嫌だーっ!!!と叫び声を上げ引きずられていく彼等を見ていた久幸は、溜め息を吐き、搭乗員待機室へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

徒梨 航平はその後、やつれた顔で実家に赴き、親を心配させたらしい。




どうも、皆さん。
熊本の方は最近は雨続きでだいぶ涼しいです。
晴れれば地獄ですが......ね。
炎天下の仕事はキツイ、そう思いませんか?

今回は久幸と航平が301飛行隊に居た時の話で、短く仕上げてみました。どうでしたか?

今後も幾つか閑話を挟みながらストーリーを進めていきたいと思います。

それでは。ヽ(0w0)ノ 《オメガ11イジェクト
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