『今までやってきた単純な動作確認じゃない』
『これが終われば......私は追われる身となる』
『だが、これも我々が求める“明日”への為だ』
『君に、このような事を押しつけて────すまない』
2019年.5月1日.0830hrs
扶桑.神奈川県.厚木基地
明後日の国連軍太平洋艦隊護衛任務に備えてアローズ社から用意された機体F-4E ファントムⅡを整備班と共に最終調整を行っていたが、急遽、ブリーフィングルームへ集合のアナウンスが流れた。
厚木基地施設内のブリーフィングルームに集合したのはアローズ社の派遣傭兵部門の2部隊、1つは俺の所属する「ボーンアローズ」だ。
既に到着していた部隊メンバーの1人、TACネーム“オメガ”ことアリシア・アルダートン中尉がこちらに手を振る。
「おーい! 久幸、こっちこっち!」
「そんな大声で呼ばなくてもいい」
彼女の隣にいる隊の3番機で“ブロンコ”のTACネームを持つ寡黙な少女キャサリン・ブランドナー中尉が溜め息混じりに答え俺を一瞥すると、読みかけの本に集中する。
とりあえずブリーフィングルームにある最前列の椅子に座る。
左端の席にて欠伸をするアローズ社支給のウィッチ用フライトジャケットではなく、所々裂けてたり穴が開いている古びた革製ジャケットを羽織っているショートカットのブロンドヘアーの女性は、ボーンアローズの隊長でありアローズ社が誇る最高報酬取得者の航空魔女、ダリル・ヘイルウッド大尉。TACネームは“ヴァイパー”。
その右隣から順にブランドナー中尉、アルダートン中尉、そして俺の順に座っている。
俺達の後ろの列には第2航空隊のウィッチ4名が雑談している。
「......で、俺達なんで呼ばれたんだ? またアリシアがなんかやって、第2航空隊のメンバーに迷惑掛けたのか?」
「なんで私が何かしでかしたことになってんのさぁ!?」
「大丈夫よ久幸、まだ何も起こしてないから」
「“まだ”!? “まだ”って何よキャス!? 私がこのあと何か犯罪に手を染めるようなことをするって思って「うん」るのかい!!!親友だと思って損した......うわあぁぁぁ!!!」
目の前の机にドンっと額を打ちつけ子供のように大声を上げ泣き始めるアリシア。打ちつけた額が痛いのか、時折額をなでなでする様子は何とも笑える。既に俺以外に黒い笑みを浮かべ楽しんでいるのが彼女の隣にいるのだが......怖い。
ちなみにキャスとはブランドナー中尉のことだ。いちいちキャサリンと呼ばれるのが嫌いな彼女の為にアリシアが考えた呼び名らしいが。
キャスがアリシアの頭を撫でながら「よしよし」と宥めていると、ドアが開き部屋に入室する中年の男が1人。彼が入室すると同時に室内の照明が落とされ、正面の大型モニターに電源が入る。
「これよりブリーフィングを開始する。今日は新人もいるが、挨拶は手短に済ませる。私はアローズ社代表のグッドフェローだ」
グッドフェロー。
俺達の雇い主でありボスであり、同時に航空部隊の指揮を兼任する“司令官”だ。
元は戦闘機パイロットだったらしく、他の部門の男性パイロット達やウィッチからも信頼が厚い。
「我々の事を相変わらず『空賊』と呼ぶ連中もいるようだが、これでも国連安全保障理事会から雇われているんだ。せめて『プライべーティア』と呼んでほしいものだ」
やれやれと言った具合に両手でジェスチャーする。俺達を束ねる身だ。苦労が絶えないのだろう。
「先ほどその国連安保理の軍事参謀委員会からアローズに出動要請が来た。今回は東京湾に停泊中の国連軍太平洋艦隊の護衛任務だったが......状況が変わった」
モニターが作戦地域である東京湾を映し出し、護衛対象である国連艦隊の艦船の位置が表示される。
「複数の国籍不明UAV(無人航空機)がエリアJ4E......、扶桑の旧首都東京に向け飛行している。既に何機かは湾上空に到達しており、現在、百里基地の航空部隊が迎撃している。都市部に到達する前に全て撃墜しろ」
「そして、ルーキー。 TACネーム“リーパー”はこれが入社後、初出撃になる。サポートにはボーンアロー2のアルダートン中尉が付く。彼女に従って行動してくれ」
彼女に振り向くと(*0ω0)bっとまぁ、こんな感じで親指立ててテヘペロした笑顔を見せていた。
何か嫌な感じしかしないのだが……大丈夫か?整備班の方々から聞いたんだが彼女、ストライカーユニットをよく壊すので「被弾姫のオメガ」という不名誉な称号で呼ばれているらしい......。
「ヴァイパー、お前のユニットは整備中で今日は待機だ。ブロンコは第2航空隊と共に横須賀に停泊中のリベリオン第7艦隊の上空警護に向かってくれ」
「また休み時間かよ」
「了解しました」
頬杖ついて悪態を吐くダリルとは裏腹にしっかりと返事をするキャス。ダリルの様子を見たアリシアがニヤリと悪戯っ子のような笑みを浮かべ話す。
「ダリルがお休みで良かったな久幸。アイツが出てくると取り分を全部持っていく割には酒と借金返済に全て消えてしまうからねぇ~」
「おい“被弾姫”。そのぐらいにしとけよ」
「おー怖い怖い(笑)」
「この野郎......!」
うわぁ......青筋が出て口元がひくひくしてらっしゃる。
これは早くハンガーに行った方が良さそうだな。そう考えた俺はアリシアの首根っこを掴むと全力でその場を後にした。背後から「久幸も同罪だからなー」なんて聞こえたような......。
扶桑.旧首都東京.大田クレーター上空.0900hrs
《しっかしまぁ......今日も隕石の数が多いねぇ》
十数メートル隣を並進するアリシアの声が無線から聞こえる。
地表に背を向けるように飛行し空を眺めている彼女と同様に俺もその光景を見ていた。今日も軌道上から大気圏へ突入し燃え尽きていく小惑星ユリシーズだった「欠片」。
地球に迫った1万個にも及ぶ「欠片」を大気圏突入時に燃え尽きる大きさに砕く為に、巨体レールガン施設「ストーンヘンジ」による砲撃が実施されたが、それでも厄災以降、未だ多くの「欠片」が軌道上を周回している。大型の物以外なら燃え尽きるから心配ないのだが、な。
《厄災からもうすぐ20年かぁ。まだ空には「欠片」がたくさんあるって言うのに......》
アリシアの呟きに返事をしようとした矢先に無線通信が入る。
《こちら扶桑国防空軍第309飛行隊、貴機の所属確認を》
グッドフェローが言っていた中部航空方面隊第9航空団隷下の309飛行隊だろう。レーダーにはエレメント単位で飛ぶ機影を捉えている。
《こちら国連独立コマンド アローズ所属ボーンアロー隊、オメガ。作戦支援に来た》
《本隊から連絡は受けている。空賊部隊だな、よろしく頼む》
《こちらこそ》
309飛行隊らしき機体が2機、1時方向から迫り右側を通過していった。
ピッという短い電子音とともにレーダーに輝点が映った。
アローズ社が独自に改良したファントムIIはそれなりに近代化改修が施されており、グラスコックピット化された計器盤にはタッチ式の液晶ディスプレイが2基ある。
その一つにレーダー情報を表示させていた。
「リーパーよりオメガ。 お客さんを見つけた」
《グッドフェロー、こちらオメガ。12時方向に
《グッドフェローよりボーンアロー各機へ。交戦を許可する》
交戦許可が下りたことを確認するとマスターアームをONにする。
SAFEからARMに切り替わったことを再度確認した。
「マスターアームON。これよ《FOX3!!!》はやっ!?」
急いで顔を向けるとアリシアが装着するジェット・ストライカーユニット、EF-2000“タイフーン”の半埋め込み式ステーションに懸吊していた視程外射程空対空ミサイルのミーティアを2発発射していた。
ロケットモーターに点火し、マッハ4を超える速度でUAVへと突き進むミーティア。たかだか時速300km程のスピードで飛行するUAVにマッハ4のミサイルとはオーバーキルであろう。
標的間近に迫ったミーティアの近接信管が作動し、弾頭内の爆薬が起爆。飛び散った鉄球や鋼鉄片がUAVの機体を貫通または引き裂いた制御不能に陥ったUAVは錐揉みしながら海面へと墜落した。
《UAV2機撃墜! スプラッシュ2だ》
「お前なぁ......」
《こちらグッドフェロー、レーダーに新たな機影を探知した》
レーダー上に映る3つの機影。
内2機のレーダー反応が微弱だ────って、アレは!
「......“クオックス”じゃないか!」
国連艦隊に近づくUAVを視認した久幸が叫んだ。
その独特な機体形状から「コウモリ」と呼ばれる扶桑国防軍とリベリオン軍が共同開発した汎用無人機MQ-90“クオックス”
それが今、下部ウエポンベイを開き、空対地ミサイルを国連艦隊の所属艦船に向け発射した。
狙われたアーレイ・バーク級駆逐艦の後部甲板ヘリ発着スペースにミサイルが命中し、駐機してあったMH-60Rヘリを木っ端微塵に吹き飛ばした。
降下してきた1機のクオックスは無誘導航空爆弾を埠頭に着弾させると搭載してあるGAU-19機銃で湾外へ待避航行中のタイコンデロガ級巡洋艦の艦橋を銃撃。
襲い掛かる12.7mm徹甲弾の前に為す術も無く次々と凶弾に倒れる艦橋要員達。
そのまま頭上を越えようとするクオックスに対しタイコンデロガ級の中央部に設置されているMk15 CIWS(Closed In Weapon System)が火を吐き、秒間50発で放たれる20mm劣化ウラン弾芯の徹甲弾がクオックスを捉え撃墜する。
最優先目標をその巡洋艦に絞ったらしいクオックスが3機、低空から迫ろうとしていたが、
「ヤらせるかよッ!!!」
クオックス編隊の後方をぴったりと追尾していた久幸のファントムⅡ。クオックスの放つ熱源をロックした俺は「FOX2!」とミサイル発射の符丁をコールする。
パイロンに懸吊されていたAIM-9X サイドワインダー視程内射程空対空ミサイルを発射。
クオックスの排気口の熱を捉えたサイドワインダーが食らいつき、信管が作動。右翼直下で起爆した為衝撃で右翼が中央部から折れバランスを失った機体が海面に激突し水柱が立つ。
「あと2機、FOX2!!!」
再びサイドワインダーを発射すると信管が作動せずに誘導されたミサイルが標的を貫き、暫く経った瞬間ミサイルの弾頭が起爆し、クオックスは内部が破裂するように爆発した。
一旦高度をとり残存敵機を探そうとした久幸だったが、ふいに後方で爆発が起きた。振り返ると爆煙の中から飛び出しこちらに手を振るアリシアの姿が目に入る。通信が来た。
《後方の安全確認がなってないぞ久幸》
「悪い、助けられた。 ありがとう」
《いいってことよ。その分報酬が来るしな♪》
「まったくおま『ふふ♪』え...?」
無線に響いた声。
今確かに少女の笑い声のような......気のせいだろうか。
《どうしたリーパー?》
いつの間にか機首隣まで来ていたアリシアがキャノピー越しにこちらを不思議そうに見ていた。
「いや、何でもないよオメガ。帰投しよう」
《りょーかいっ♪》
『...フフ♪』
はい、皆さんどうもです!
とりあえず「迷い蝶」編を書いてみましたが、どうでしたか?
自分的に戦闘シーンや全体を上手くわかりやすくしたほうがよさそうですね......うーん。
とりあえず、登場した人物と機体をちょろっと載せます。
アリシア・アルダートン(Alicia Alderton)
所属:アローズ社派遣傭兵部門航空部第1航空隊
コールサイン:「ボーンアロー2」
TACネーム:「オメガ」
階級:中尉
身長:161cm
誕生日:9月15日
出身:ブリタニア イプスウィッチ
年齢:16歳
使用機材:EF-2000戦闘機脚“タイフーン”
使用武器:M16A4、BK27機関砲...他
使い魔:ハリオアマツバメ
固有魔法:全方向対応シールド構築・展開
固有魔法に関して何か意見があればアイデア下さい!
MQ-90“クオックス”
機種:汎用無人機・無人戦闘攻撃機(UCAV)
全長:6.92m
全幅:14.60m
全高:1.68m
固定武装:GAU-8/A 12.7mm3連装機関銃
扶桑国防軍とリベリオン軍が共同開発した汎用無人機。
機首中央にはショックコーンのある吸気口。
機首左に機銃(GAU-19)、右にAESAレーダー、EOTS(電子光学目標指示システム)を搭載。
機首下部に失速機動に対応する後ろ向きの吸気口がある。
コックピットが無い為、機体中央のほぼ全部がエンジン。
全体的な平面形のイメージは角張ったコウモリのように見える。
胴体と主翼の境界のない全翼機。
尾翼無し。
主翼は下半角を持つ前進翼で翼端には上半角・後退角のある動翼がある。
動翼を含めた主翼幅を大きくすることで長時間の飛行を可能としている。