ACE WITCHES:INFINITY   作:フェネック

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#6 つかの間のひと時-Reunion-

私たち「リッジバックス」隊は隊長である「スラッシュ」を先頭に空域からの離脱を目指し飛行していた。

 

頭上ではレールガンによる砲撃が継続しており、迂闊に高度を上げられない状況だ。敵弾が炸裂する度に巨大な火球が出現し、衝撃波が容赦なく襲ってくる。

 

峡谷の上空で逃げ遅れた航空機が数機いたが、レールガンの砲弾通過時に於ける衝撃波で掻き消えるか、砲弾炸裂時の爆炎と衝撃波のサンドイッチに押しつぶされるかの2択しかない。

航空機だった物が無惨な姿に変わり“消し炭”が、頭上から降り注いでいた。“搭乗者だった者”も同じように......。

 

更に飛来した砲弾が峡谷の上を掠め、私たちより後方で炸裂した際だ。無線が入った。

 

 

《ボーンアロー4、被弾! リーパー!無事か!?》

 

《リーパー!応答しろッ!!!》

 

あの空賊の部隊の4番機......おそらくあのフロッグフットに乗っていた者が不運なことに砲弾の衝撃波により被弾したのだろう。部隊の仲間が必死に呼び掛けているが、一切の応答が無い。死んでしまったのだろうか。

 

私は顔も名前も知らない空賊の隊員に静かに冥福を祈ろうとした瞬間だった。

 

 

 

 

 

《ベイルアウトしろリーパー!────久幸ッ!!!》

 

 

 

 

 

久幸、と。

 

確かにその名前が聞こえた。

 

脳裏に浮かんだのは301飛行隊時代の記憶。

 

まさか......彼が、新城 二尉が空賊の4番機...?

 

 

そう結果に出た私の行動は早かった。

急旋回を行い編隊から離れる私を隊長や他の隊員たちが制止させようと呼び掛けていたが、私は止まらない。例えレールガンの砲撃が続いていようが、関係ない。

 

震電Ⅱの速度を上げる。

すると、視界に空賊部隊のウィッチ3人を見つけた。どうやら彼を助けに行こうとしている1人のウィッチを押さえながら説得しているようだ。彼女たちに構わず、横を通り過ぎる。

 

 

 

「.........見えた!」

 

 

機体全体が被弾しているフロッグフットが目に入る。

ふらふらと飛行しているそれはあと1分もしない内に川へと墜落するのは目に見えている。私は叫んだ。

 

 

 

 

 

 

「新城 二尉!───────久幸ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年.6月3日.1700hrs

オラーシャ連邦.ウラジミロフカ基地

 

 

 

 

 

「...うっ......?」

 

 

目が覚めると白い天井が目に映る。

 

白いシーツのベッドで自分が仰向けになり、寝ていたことを確認する。

顔を右に向けると病室窓から外の景色というより、既に夕刻なのか、黄昏色の空が広がっているのが見える。薄いカーテンがそよ風に吹かれひらひらと靡き、肌に風を感じる。

 

どうやら助かったようだ。

 

ゆっくりと上半身を起こすと左の小さい机の上に皮が剥かれ一口サイズに切られたリンゴが皿に盛られていた。1つ掴み口の中に放り込む。シャリシャリと音を立てるリンゴのほどよい酸味が口の中に広がる。

 

2つ目のリンゴに手を伸ばした時、ノックの後にドアが開く。

国連軍が支給している水色のベレー帽と扶桑国防空軍所属を表すデジタル迷彩パターンの扶桑ウィッチの作業着を着た少女が入室した。

 

俺が呟く。

 

 

「久しぶりだな......永瀬」

 

 

永瀬(ながせ)(けい)

国防空軍時代に第5航空団第301飛行隊にいた時、第19飛行隊との協同試験飛行にて出会ったウィッチ。

配属当初からその飛行センス、空戦技能が部隊内で浮いていたが、ついこの間まで、まさか国連軍の特殊飛行隊「リッジバックス」に所属しているとは思わなかった。

 

永瀬が部屋に入るとベッドの隣にある椅子に座る。

 

 

「お久しぶりです。 新城 二尉」

 

「堅苦しいのは無しにしようぜ永瀬。それに俺と同階級なんだ」

 

「わかり...わかったわ、久幸」

 

 

互いに笑みを浮かべる2人。

それから、色々な事を永瀬から聞いた。昨日の救出作戦後に起きたレールガンによる砲撃、その後のことを。

 

俺たちが救出作戦に行くのを囮に使った「サンズ・オブ・トロイア」の連中はオストマンにあるレールガン施設「ストーンヘンジ Type-3」を奪取、攻撃兵器として稼働させた。

 

だが、

 

それから1日経った現在、状況が変わった。

 

 

 

「ストーンヘンジ」をネウロイが奪取したのだ。

 

 

 

元々、ストーンヘンジの護衛部隊は黒海側から施設に時折来るネウロイの掃除部隊としての役割を持っていたが、トロイアに部隊を壊滅された為、その日の波状攻撃を凌げるはずがなかったのだ。

 

ストーンヘンジを取り込んだネウロイは電子戦型ネウロイによる照準用衛星を使ったサポートの下、地対空砲撃を開始。唯一の幸運だった事は使用される砲弾が“極近距離用”のSS弾のみ、ということだろうか。

 

天文学的数値の“極近距離”とは言ったものの、半径1200kmの範囲を射程に持つレールガンだ。せめて、照準用衛星「メンヒル3」さえ破壊出来ればある程度は脅威も低くなるが、包括的宇宙戦争禁止条約に触る為、攻撃は出来ないとのことだ。

 

 

「......で、俺たち国連独立コマンドや国連軍に『ストーンヘンジ』空爆を行え、か。ストーンヘンジ・ネウロイと言うべきか」

 

 

やれやれと肩をすくめる俺に永瀬が話を続ける。

 

 

「既に空母『ジョン・C・ステニス』を旗艦とするリベリオン第3空母打撃群(3rd CSG)を中心とした国連艦隊が地中海を目指しているわ。私たちオストマンの黒海側にある最寄りの基地に移動することになったわ」

 

「作戦開始日はいつなんだ?」

 

「1ヶ月後の7月には始めるみたい」

 

「機体と部隊は陸路で行くのかよ......しかも一月もストーンヘンジ・ネウロイの攻撃を許すのかよ」

 

「オストマン軍がその間、攻撃を仕掛けるつもりらしいけど、相手がストーンヘンジを取り込んだネウロイである以上、簡単ではないと思う」

 

 

すると、部屋の外からしだいに近づいてくる聞き慣れた声がしてきた。永瀬が椅子から立ち上がる。

 

 

「どうやら貴方の同僚みたいね、久幸」

 

「そうらしいな。少しは任務外でも静かにしてもらいたいよ」

 

「ふふっ。そうね」

 

 

永瀬がドアに向かい手前で止まるとこちらに振り返る。

 

 

「軍に戻るつもりは無いの?」

 

 

その問いに久幸は溜め息混じりに答える。

 

 

「今の方が充実してるからな。戻るつもりは無いよ永瀬」

 

 

その返答を聞いた永瀬は静かに部屋を出て行った。

 

部屋に1人残された久幸は昔を思い返しながら、この部屋に来るであろう彼女たち(ボーンアローズ)の到着を待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『機体の方は?』

 

『既に改良したUAVと共に調整済みです。が......』

 

『彼女の身体面等を考えても、やはり5分弱しか接続時間を確保出来ません』

 

『今はそれで我慢しよう。それに、彼女に何かがあっては遅いからな』

 

『主任...いえ、リーダー。準備が整いました』

 

『わかった』




ミニランキング疲れたぁ......。

どうも皆さん、フェネックです。
今回は短めでしたが、これで許してください。
次はいよいよ厄災の記念碑の出番です。
では、次をお待ちください。
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