悪魔城ドラキュラ -幻夜の追想曲-   作:大根のチョコラテ煮

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幕開け
1章:夢見がちな少女① -静かなる前奏曲<プレリュード>-


 - side 夢見がちな少女 -

 

 

 私の心臓はきっと未だかつてない程に早鐘を打ち鳴らしているんだろうな。

 

 

 目の前のあり得ない現実から目を逸らしたいだけなのかもしれない、頭の中でどこか冷静な私自身がそんな言葉を浮かべていた、子供の頃に親戚の家で見た怪獣映画に出てくる怪獣のゴジラに似たソレが後ろから迫ってきている。

 二足歩行で歩いてきて獲物を大きな顎で噛み砕こうとする様はそれだけなら金曜日のロードショーで偶にやるジュラシックパークに登場するような肉食恐竜だけど決定的に違う点がある…それは

 

 

 「っ!全員伏せろ!!」

 

 

 この"城"で知り合った金髪の男性がそう叫んだ、それと同時にもう一人の男性と女性もゴジラ擬きの直線上から左右に飛び退く、もちろん私も

 

 

 

 

ジュゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ――ッ!!

 

 

 

 「ひっ」

 「大丈夫よ、安心して」

 

 

 同じ方向に飛び退いた私に金髪の女性が声を掛けてくれた、直線上に居たら今頃通り過ぎて行った熱と光の奔流に呑まれて灼かれていた…もしも逃げ遅れていたらと思うとゾッとしてしまう…

 振り返るとゴジラ擬きの顔の皮膚がべろりと捲れていてグロテスクな朱肉が見えてしまった、映画宛らに破壊光線を口から出すなんて、そこまで再現しなくてもいいじゃないの!

 

「チィ!…装備も整ってねぇのに【ゲーゴス】を相手にするのはキツイぜ!姉上、嬢ちゃんは無事か!?」

 

「ええ、問題ありません、それよりも現状をどうにかしませんと」

 

 私達を襲ってくる怪獣…お腹の辺りに大穴が開いていて剥き出しの骨や赤黒い生肉が見えてそこから血も滴っている気色の悪いゴジラ擬き、その名前がゲーゴス

 

「おい、手榴弾はいくつ残ってる!」

 

「あぁん?」

 

「手榴弾はいくつ残っていると訊いている!」

 

 

 

「…こんだけだ、何か状況を打開できる当てでもあるってーのかよ」

 

 

 ゲーゴスの光線を私達とは反対側に逃れた人が金髪の男性に向かって訪ねていて、その人に対して彼は5つだと日常ではそうそうお目に掛かる機会の無い手榴弾を見せる。

 

「それだけあれば十分だ、丁度奴がいる真下は脆くなっていてな、下の階に落とすぞ」

「オイオイ、なんで床が脆くなってるって解るんだよ?」

「説明してる暇はない、信じろ」

 

 その人はそれだけ言うと鞭を手に駆け出して叫んだ「俺が時間を稼ぐその間にやれ!」と

走り出した彼とは他の人同様に出会ってまだ僅かな間柄だけどこの城で一番最初に出会った人だった。

 

 だからかもしれない、気付いた時には私は思わず彼の名前を叫んでたんだ

 

 

   「J(イェーガー)さん!!!」

 

 

 彼が振るった鞭がまるで自らの意思を持ち、相手の身を裂いているのではと思える程に綺麗な一撃を見舞ったと同時に金髪の男性も走り出していく。

 そんな姿を見て私は顧みる…なんでこんな事態になってしまったんだろう、と…

 

 あれは今から遡ること…―――――

 

 

―――

――

 

 

 

 

 

 

 - side 三人称 -

 

 

 窓から吹く微風と教師が黒板に突き立てるチョークの音が良い具合に心地良い子守歌になる。

眠気と格闘しながら齢17歳の女子高生は必死にノートを取っていた。

 

 

 決して成績が悪い訳じゃなく、寧ろ自分はどちらかと言えば良い方だと自負する少女は今日一日の授業最後のチャイムを聞いて内心でガッツポーズをしてみせる「今日も眠気と戦った自分偉い!!」と

 放課後は仲の良い友人二人と一緒に遊んで帰って、そんないつも通りの平穏な日常を彼女は送っていた。

 

 

 

「ねぇ八重さん、次は何の曲を歌う?」

 

「うーん、私はちょっと休憩するわね」

 

「じゃあさマイク私に回してもらっていい?丁度歌いたい曲あったんだよねー」

 

「はいはい、ちゃんと渡してあげるから落ち着いて」

 

 

 

 友人の詩織からマイクを受け取り歌い出す。家の習い事や手伝いに追われる中でこうして気の置ける友達と遊べるのは年頃の少女にとって何よりも代え難い物で。

 一通り歌い終えた後は他愛のない世間話に花を咲かせた、次の中間テストはどうだとか、最近の流行りに関する話だったり、夢や恋愛事の話題…

 

 

 

「へぇ、じゃあ告白されるなら詩織は伝説の樹の下でって決めてるんだ」

 

「やっぱり変かな?」

 

「ううん、詩織ちゃんの話すごくロマンチックで素敵よ…あぁ、いつか私もそんな恋したいなぁ」

 

「でもそっかぁ、恋かぁ~…全然想像つかないなぁ、そもそも恋人なんてできるのかしら?」

 

「八重ちゃんも詩織ちゃんも成績優秀でスポーツ万能、その上で容姿端麗なんだからできない方がおかしいと思うけど」

 

「あら、ありがとう!でもそう言う理奈だってそうじゃないの」

 

 

 周囲の人から高スペックと評される友人二人と肩を並べられるのは彼女のちょっとした自慢だ、必死になって勉強して習い事の剣道や弓道に精を出して、ここまで頑張れたのも何だってできる親友に置いて行かれたくなかったが為というのもあった。

 

「二人に比べたらまだまだよ」

 

「またまた~」

「謙遜しすぎよ」

 

 緑髪と赤髪の友人二人が笑って否定するが、先祖が忍者か何かなんじゃないかと思える運動神経の持ち主と車に轢かれかけても宙返りで回避できる人である、しかも学業も普通に校内で1位2位争いをする二人なのである。

 そんな二人に「御冗談を」と言われても地味に返答に困る、悪気は無いのだろうが。半ば話題を逸らす為に理奈はもう何度語ったか分からない自分の夢を語り出す

 

「話を戻すけどさっき伝説の樹の下でって言ってたじゃない?私は…笑われるかもしれないけどいつか仮面をつけた王子様に出会いたいなぁって、子供の頃からの夢なのよね」

 

「あっ、理奈のいつもの奴が始まった」

「ええ、いつもの理奈ね」

 

「ちょ、ちょっとぉ…そりゃあ何回も聞かせて飽きてるかもしれないけどさぁ!」

 

「はいはい、わかってるわよ『私はロマンチックを求めたいのよ』でしょ」

 

「うぐっ、…小さい頃お母さんと見に行ったお芝居が凄く素敵で、憧れちゃったんだから仕方ないでしょ」

 

 現実じゃそんな事はまず起こらないだろう事ぐらいわかっている、このご時世で仮面をつけた王子様が現れて運命的な出会いをするなんてゲームや漫画の中だけの話だ。

 然し、世にはこんな名言がある、「言うだけならタダ」とな

現実的に有り得ないのは分かってるのだ、馬鹿馬鹿しくて結構…妄想の世界でも何でもいいから夢見るぐらいなら良いだろう別に、というのが17歳の夢見がちな少女こと理奈の言い分である

 

 

「あっ、もうこんな時間!?」

 

「八重さん今日も実家のお手伝いがあるの?」

 

「そうそう!お祭りに向けて花火玉を作る奴ね、今回は量が多くってさ…あーあ!また誰かさんがお手伝いに来てくれないかなぁ~」

 

「悪いけど今回は私も実家のお手伝いがあるのよ、お手伝いさんはまた今度ね」

 

「理奈の家も色々忙しいものね…ハァ、仕方ないかぁ」

 

 

 そんなこんなで友達との楽しい談笑も終わりの時が訪れて、理奈は友人達に「また明日」と手を振りながら帰路に着いた、陽は既に沈みだして逢魔時がやってきていた。

 昼と夜のどちらでもない時間、丁度狭間にあるこの時間は嫌いじゃなかった。幻想的で不意にワケもなく物悲しくなる時刻…足を止めて空を見上げてノスタルジックに浸りたくなる世界

 "実家"へと続く階段を理奈は昇っていく、子供の頃からずっと昇り降りしてきた長い石階段だ

体力に自信があるのは偏にこの階段で足腰が鍛えられていたのもあるかもしれない。

 ハイスペック友人達と肩を並べて歩ける要因なのだから一段一段感謝しながら昇ってあげたいところだなと心の中で苦笑しながら理奈は実家に着いた…

 

 

 

「今日は剣道や弓道のお稽古もお休みの日だしこのまま録画してたドラマでも―――…? 誰かいる?」

 

 

 

「――――ですので―――の封―――――く―恐れが―り」

「―――承――し――た―」

 

 

「―――…? !! では、私はこれで…」

 

 

 

 帰ってきた理奈は父親がスーツ姿の男性達を話をしているのを目にする、名前は知らないがよく自分の両親と仕事関係で話をしに来る人という認識している。

 

 

「ただいま、お父さん今の人はいつもの人達?」

 

「うん?あ、あぁ…そうだね、ちょっと大事なお話をしててね…」

 

 

 

 

「…。」

「…。」

 

 

「ねぇ、お父さん前から訊いてみたかったんだけどあの人達って誰なの?町内会の人って感じじゃないよね?」

 

 

 子供の頃から当たり前の様に来ていて幼少の頃は確かに気にも留めなかった、しかし成長した今なら流石に疑問は抱く…親の仕事都合で色んな人が訪ねに来るが彼らの事は父や母、それに伯父や伯母もどうやら理奈に職業がなんで何の目的で来ている方々なのか聞かせたくない様なのだ。

 よく分からない人達が自分の家に頻繁に出入りするという状況は流石に年頃の乙女として多少なりとも不安を覚える。

 

 

 

だから今日、思い切って訊いてみた。訊いてみてしまった。

 

 

 

「……。」

 

「お、お父さん?」

 

 

 

「…いいかい理奈?あまり大きな声では言えんがね、あの人達は"日本政府"の人達なんだよ」

 

「せ、政府の人!?」

 

 

「ああ。お前が大きくなったら色々と教えようとは思っていたんだ」

 

 

 父親は娘に向けて言葉を続ける、曰く自分の家には国が総力を挙げて護っている大事な物があって彼らはそれの様子を定期的に確認しに来ているとのことであった。

 

 

 

 

 

 

「国の人が見に来るなんて……ウチの神社ってそんなに凄い物があったんだ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 理奈は……白馬理奈(はくばりな)は自分の実家たる白馬神社にそんな国宝級の宝が奉納されていたのかと驚いていた。

 

 

 

 2059年、白馬町の神社に住む現在の神主の一人娘はその事実を知りただ目を丸くしていた。

 

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