悪魔城ドラキュラ -幻夜の追想曲-   作:大根のチョコラテ煮

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2章:祖先の血に抗いたい魔女② - 魔女の目覚め~awake~ -

 

- side 三人称 -

 

 

 『シモン・ベルモンド』――――たった1人で魔王討伐を成し得た英雄の男が居た。

 

 婚姻の契りを交わそうとしていた『セレナ』という女性を救うべく、一族に伝わる聖なる鞭を携えドラキュラ伯爵を滅した彼は7年後の1698年に再び旅に赴く事となる。

嘗て死闘の最中に魔王から受けた背中の傷が日毎に蝕み英雄の魂を冥府へ誘おうとしていた、死期を感じたある日…彼は天使の丘と呼ばれる自身の一族が埋葬された墓所に立っていた。それは神の啓示だったのか死を間際にした己の幻覚だったのか…美しい天使が告げたのだ。

 

 

 「魔王の肉体が滅ぼされ7年目の今日、再び地上に復活すべく魔王の遺骸が姿を見せます。」

 

 

 天使は告げる、英雄の背から広がる痛みは伯爵の呪いによるもので彼の命の灯は15日だと…。死告天使は絶望を伝え、同時に一筋の光も彼に与えた。

ドラキュラの遺骸を揃えて焼き払うことで死の宿命から逃れられると。

 

 

 二度目の旅路を終えた偉丈夫は愛する妻と共に村に落ち着き、子にも恵まれて穏やかな余生を過ごしたと文献には記されている。

 

 

 

 さて、ドラキュラの遺骸を集めた英雄の冒険譚から50年の月日が経った頃、…再び魔王の遺骸は現世に出現したのであった。白と黒、二人の青年による互いに友を想う心、絆…羨望と嫉視。

 

 複雑な感情と相互の人間関係が絡み合った…そう、まるで協奏曲(コンチェルト)のような物語を書いた本があったという。

 

 

 この文献の様に世界各地には当時の詩人や作家が遺した悪魔城絡みの文献や民謡、御伽話が残っている。世界各地を巡りこれらの記述を集めて調べ上げ、歴史を管理する【エルゴス】と呼ばれる組織も存在する…然しながらこの組織の総力を以てしてもこの遺骸を巡る冒険に関する情報は殆ど入手できていないらしい。

 

 というのも1748年の悪魔城冒険譚―――便宜上、"白夜物語"と呼ばせてもらう―――こちらは情報が錯綜しすぎていてどれが真の歴史なのか未だ裏取りが取れていないというのが現状なのだ。

一冊の書物によればシモンの孫にあたる『ジュスト・ベルモンド』が親友の剣士と好意を抱いていた女性を失い、失意と後悔を抱きながら宛ての無い旅をするという物語だし、それとは別に当時の作家が書いた話では悍ましき悪を討たんとする鬼神の如き英雄が偉大なる神の力で城を瞬きにも等しい時間で破壊したとかいう明らかに盛られた書籍が残されているのだ。

 

 

 歴史家や教会の神官達が読めば鼻で笑う様な内容だが、真面目に歴史の裏取りをするのが仕事のエルゴス職員からすれば頭を抱えたくなる話である。喩えばこの盛られた方の話は一見すればふざけた物語に思えるが作中の『マクシーム・キシン』とかいう登場人物の性格や親友に対する感情や遺骸を集めるまでに至った経緯と欧州各地を巡った軌跡が割としっかり描写されていたり

 他にもジュストとの間に『リディー・エルランジェ』という幼馴染の女性が居た等と他の詩や伝記には登場しない、あるいは多くは語られない人物について書かれていたりするので侮れない。

 

 

 大衆向けの嘘や誇張表現が多い創作物が多かったが故にこの時代の悪魔城に関する情報は2059年現在でも調査が難航しているらしい。

 

 

 

 …そう、未だその時代に登場した【ドラキュラの遺骸】という存在に関しては謎が多すぎるのだ。調査をしようにも当時の人々が残した話は与太話混じり、以降の歴史では【エクレシア】と名乗る組織の手に渡っていて『グリフ』という術式変換の秘術を編み出す上で当時出現したと思われる遺骸を用いて【ドミナス】と呼ばれる物を産み出した。

 

 

 だが、あろうことか組織の長【バーロウ】はコレを使って封印の器を破壊してドラキュラ復活を目論んだのであった!!

 

 

 エクレシアはその時代に生きていた権力者達の財による投資や権限で作られた組織だ…「そんな組織が人類の天敵を復活させる技術を開発していました。」とあってはスポンサーを務めた権力者達も自身の立場が危うくなると考えて組織の存在と研究結果、資料、ありとあらゆる痕跡を隠蔽してしまったのだ…。

 

 それによって当然エクレシア時代に管理されていたドラキュラの遺骸に関する記述も闇の中に葬り去られた。こういった背景が積み重なって遺骸に関して知られている情報量は他と比べて殆ど無いに等しい。

 

 

 

 

 

―――

――

 

 

- side フランチェスカ -

 

 

 

「…じゃあ今説明してくれた昔の英雄が集めたって言う"遺骸"がこのお城にあるってこと?」

 

「ええ、教団の狙いはそれを集めて自身に取り込み新たなる魔王として君臨することです。」

 

 

 遺骸に関しての説明を一通り聞いた白馬さん達に私はそう告げた。"適正"が少なからずあるのであれば体内にかの混沌の産物を取り込む事は可能な筈、そうでなくとも純粋に魔導器として強い力を秘めた物を彼らの手に渡す訳にはいきませんからね。

 問題は遺骸が"幾つあるのか"…ドラキュラの遺骸に関する資料が殆ど現存していないから正確な数を計りかねるというのがまた何とも…。シモン・ベルモンドの時代、白夜物語……最近の調査だとベルモンドの者が魔に魅入られたという1797年の悪魔城にもそれらしき物が城内にあったと報告されている…のだけれども…。

 

 

 …"数"がどの時代も合わない。

 

 

 英雄シモンが集めたとされる遺骸は全部で5つ、1797年の城に出現したソレも5つで五大魔導器と称されている…かと思えば白夜物語では何故か6つで、エクレシア時代の遺骸に至っては……歴史の裏取りが出来ておらず又断言もできませんがグリフになっているからなのか5つすら存在していないとか何とか…。

 

 

「さっきも言ったが出現したら世界中に散らばるのが普通なんだ、今回の遺骸は何でか知らねーが城ン中にある、教団のクソったれ共より先に1つでも多く回収して集められねぇ様にしちまおうって寸法だ!」

 

 

 

「…その遺骸とやらの数は全部でいくつあるのか知っているのか?」

 

 

 ここに来て情緒不安定な面を見せていたイェーガー・マーシュマンが重々しい声で尋ねる。

私見ではありますが見た感じ彼は…23年前の出来事やドラキュラ関連の話題になると取り乱したり気分を悪くするきらいがあるように窺える…悪人ではないのでしょうけど警戒するに越した事は無いわね。

 

 

「教会の調査によって判明してる分だけでも6つは確定です。」

 

 

 目玉、心臓、あばら骨、爪、牙、そして指輪…神官達が受けた神託とウィズ・ライト教団への諜報活動で得た情報でそれは確定―――ではある筈、これで7つ目とかが出て来たら流石にお手上げですが。

 

 

「6つ…6つ、そうか6つか。」

 

「何か?」

 

 

「……いや、なんでもないんだ。」

 

 

 それっきり俯いて黙り込み何かを考えこむ様な素振りを見せた彼に言及はしません。気になる言い方ではありましたが…今はただ時間が惜しい。

少し前に個人的に訊きたい事もあるからお互いに色々と情報交換をしましょうという約束も取り付けてありますからその時に聞けるならば聞いてみましょうか。

 

 

「説明も終えましたし、そろそろ物資調達の為に礼拝堂を目指しましょう!カイ、道中で使えそうな調度品があれば頼みますよ。」

 

「応!任せてくれよな!」

 

 

 軽くなった鞄を背負い直して私は"自身の武器"を確認する、使う機会が無くまだ手元に残っているサブウェポンの"懐中時計"が1つ、そして私の"水晶玉"と落とさなかった"カード"が数枚…。大丈夫きっとなんとかなる筈だわ…。胸に手を当てて深呼吸を一つ、きっと何とかなる、自分にそう言い聞かせて私達は拠点の戸を押し開き廊下へと踏み出す。

 浄化された拠点部屋から瘴気漂う廊下へ…冷暖房の利いた快適な空間から一気に咽返る様な匂いに加えじめりとした空気が纏わりついてくる嫌な不快感に似た物を感じる。…城そのものに意思があり私達を喰らわんとするのであればきっと悪魔の口内、いえ舌の上にでも立っていると言うのが正しいのでしょうか?

 少々の息苦しさと魔物の気配が混ざり合う張り詰めた空気の中…私達は礼拝堂へと行軍を開始しました…。

 

 

 

―――

――

 

「うけきゃきゃ…ッ!」

「ガァガァ…ッ!」

 

 

「そらそらそらァ!鳥公共は俺がやる!そっちの処理は任せた!」

 

「ああ!」

 

 

 礼拝堂を目指す最中で蒼い翼をはためかせて死体喰いの鴉――【ブルークロウ】が血濡れの赤眼に私達の姿を捉えながら急接近してきました。前衛は残りの弾数を気にせず攻めれるイェーガー、銃弾も底が見え始めてきたカイが務めて、私は手元に武器も無い白馬さんを護る様に後衛に立つ。拠点に辿り着く前とほぼ変わらない陣形になりますね。

 違いがあるとすれば防衛戦に徹した方円の陣形とは打って変わって鶴翼の陣に近い形を取っている事ですわね。

 

 陣の両翼に前衛が2人並んで左右からの奇襲と前方の敵を掃討して手早く礼拝堂までの道を切り開き、中央には私が構え討ち漏らした敵や両翼を掻い潜って来た相手を仕留める役割を担う…。

とは言え、前衛二人の働きぶりがあまりにも目覚しいものですので…最早私の主な仕事はぴったりと私の背に追従してもらっている白馬さんを狙う不届きな輩が背後から来るかどうかという部分に視点を置かせて貰っていますが…。

 

 元来の鶴翼の陣と違ってV字ではなくYの字になるような配置、そして可能な限り早いペースで前へ前へと突き出て行く行軍速度。武器が手元に無く自衛手段が無い白馬さんが一番後ろなのは当然で、又…背後から大勢の敵に詰められると一気に窮地に立たされるという弱点があるからこそ裏を取られない様に…追い付かれまいと目的地まで一気に進むという選択に至った次第です。

 安牌を取って多少速度が落ちても護りながら行くのも手としては良かったのですが…先述の通り、カイの銃弾も底が見え始めました、この行軍は元より心許なくなった物資を確保する為…!

ジリ貧になって完全に物資が尽きたらいよいよ以て無尽蔵に湧いて来る数の暴力相手に立ち行かなくなってはその時点でチェックメイトになってしまうのですから…。

 

 

 だからこそ迅速で無くてはならない、砂漠の真ん中でゆったりと慎重に歩くよりも夜が明けて陽が昇る前に…!残り僅かな水筒の水が切れる前に…!オアシスまで突き進む旅人の様に…っ!

 

 

     ―――――パァン!!

 

 

「グケ"ぇェぇ…ッ!」

 

 

 銃声が一発鳴り響く度に蒼い羽が宙を舞い、鴉は地に墜つ…。死者のみならず生者さえ啄もうとした青い鳥は一羽たりとて幸福になれない御様子ですわね…あらまあ残念。

偶に2枚抜きで撃ち落とされる【ブルークロウ】達とは別で撃ち落とされる物もあった。ケタケタと楽しそうに笑う骨の射手が放ってくる矢の存在。

 

 【スカルアーチャー】が飛ばしてくる骨を粗く削って造った骨矢がイェーガーの【ネビュラ】に阻まれ、または彼が放つ火炎弾によって焼かれて灰となるか。

…戦力としては申し分ないのですがね…、彼。

 

 

 

 ……そして。

 

 

 

 

 

 

ゴッッッッ!!

 

 

「げびゃ――」

 

 

「きゃっ!?な、なに…?ナイフを持った小人が空から降って来た!?」

 

「……私は既に一度失態を犯した身です。二度目などありえませんよ。」

 

 

 今、私達の真上には何処かしらに繋がる悪魔城の連絡路がありました。そこの屋根の上でずっと待機でもしていたのか短刀を握りしめて降下してきた【のみ男】の顔を手に持った水晶玉で思いっきり叩きつける。突き出た出っ歯が折れて血が飛び、そのまま悶絶する【のみ男】にトドメを刺そうと私は両手を大きく振り被って水晶玉を相手の脳天に目掛けて振り下ろす。

 

 

 

ゴッッッッ!!

 

 

 

―――

――

 

 

- side 三人称 -

 

 

 鈍い音が鳴る。小玉西瓜くらいの大きさはあろう翠の水晶玉を頭部に落とされた【のみ男】はその瞬間一際大きく痙攣したかと思えばピクリとも動かなくってしまった。

 

 

 白馬理奈はその様子に時が停止したかの如く動きを止めた。彼女等の膝の高さに届くか届かないかくらいの小柄な醜男が目の前で絶命したこともそうだが、それ以上に目の前にいるエキゾチックな占い師風のお姉さんが水晶玉を割とフィジカル溢れるワイルドな使い方した事に驚いた。…えっ、その水晶玉そう使うの?マジで?なんか想像してたのと全然ちげぇ…。

 撲殺というある意味で最も残酷な殺し方をしたフランチェスカはハンカチを取り出して血痕の付着した水晶玉を綺麗に磨き、理奈の方に向き変える。

 

 

「ふう…、白馬さんお怪我はありませんか?」

 

「えっ、あ、ハイ大丈夫です、はい。」

 

 

 それは良かった、と小さく笑う魔女は控えめに言って美しかった。同性の理奈から見ても綺麗だと赤らめたくなる笑みだが筋力に物を言わせて【のみ男】を撲殺するシーンが脳内でリピート再生されて困る。その華奢な腕の何処にゴリラも恐れる力が…?

 

 

「…ごめんなさいね。」

 

「え?」

 

 

「あんなにも近くに居たのに、みすみす貴女を【ネクロマンサー】に攫わせてしまった…護らなければならない立場だったのに、怖い思いをさせてしまったわ…。それだけじゃない…。」

 

 

 敵を排しながら道を切り拓く前衛組の背を追いかけながら後衛の二人は言葉を交わしていた。

魔女は下唇を噛みながら拳を固く握っていた、退魔士として人を護る立場にある筈なのに護れなかった。煉獄闘技場で精神が不安定になっていた理奈に声を掛けた時だってそうだ。緊急時だったとは言えどももっと良い言葉を選べたのではないか?次々と出てきた言葉は…出会ってからここまでずっと冷静で芯がありそうだと思っていた人の弱い部分だった。

 

 

「こんな時に…こんなタイミングで?って思うかもしれないけれど…中々言い出せなくて…ごめんなさい。」

 

(…フランチェスカさん…。)

 

 

 初めて出会った時、冷静で何でも出来そうな人だな、とは思った…だけど実際はそうじゃない。理奈は思った「そっか、この人…イェーガーさんとは別のベクトルで不器用な人なんだなぁ…。」と、責任感が人一倍強くて、その癖自分の中に不安や感情を溜め込んでしまうタイプの人なのだろうな。

 

 

「…ううん!気にしてませんよっ!それよりもあそこで激励をしてくれたおかげで今こうして生きてるんです!感謝こそすれど悪く思う事なんてありませんよ。」

 

「白馬さん、…そう言ってもらえると助かるわ。」

 

 

 

 

 

「ぐおぁっ!?…くっ、姉上ッ!!すまねぇそっちに車輪野郎が行っちまったァッ!!!」

 

 

 

「ハッ!?」

「な、なにあれ!?」

 

 

―――

――

 

 

- side 理奈 -

 

 

 ゴオオオオオオオォォォォォォォォ…!!!

 

 

 

「あれは…"ライオン"!?ライオンの顔が付いた輪っかが燃えながらこっちに転がって来てる…っ!」

 

 

 巨大な"車輪"が私達の方に向かって転がって来るのが見える、轟音と共に燃え盛る炎が段々と迫って来る…っ!カイさんは銃を仕舞って蹴り技で遠目に二桁は居そうな燃える車輪と悪戦苦闘を繰り広げていて、イェーガーさんも同じくらいの数と戦っているのが視界に入った。

 

 

「なっ、【ブエル】があんなにもっ…!!どういうこと…?」

 

 

 

 【ブエル】…そう呼ばれた魔物が一度に8匹、私達を取り囲む様にぐるぐると周りを円を描く様に走り続けていました。両翼を任された二人の所には二桁は居る数が居る所からそれを考えたらこちらに来たのは少数なのかもしれないけれど…これじゃあ…!!

 

 

―――

――

 

 

「ちっくしょうぉぉぉ!!ここに来て弾切れかよォ!!もう礼拝堂の入り口は目と鼻の先だってのにぃッ!!」

 

 

 ゴオオオオオオオォォォォォォォォ…!!!

 

 

「ちょこまか動き回りやがってッ!!」

 

 

 

―――ヒュバッ!!

 

 

「後ろだカイ!」

 

「イェーガー!?すまねぇ危うく背中が焼けちまうトコだったぜ!」

 

 

「理奈が危ない!悪いが一時退かせてもらう!」

 

 

「…いや、待ちな、俺達で後詰めが行かねぇ様に此処で蓋をしとくんだ。」

 

「ッ!もう数匹は後衛に向かっているんだぞ!!」

 

「ハッ!心配しなさんなって!向こうは問題ない、何のために"最高戦力を嬢ちゃんの護衛に回した"と思ってるんだ。」

 

「なに?」

 

 

 

 

 

 

「姉上は強ぇのよ…魔法が使えねぇ俺なんかよりも圧倒的にな。」

 

 

―――

――

 

 

 

 燃え盛る車輪…まるで絵巻物に出てくる妖怪の輪入道を彷彿とさせるソレの内、1体が私達目掛けて転がってきました…!!

そして、私はこの時初めて見た…。

 

 

「…。」

 

 

 ずっと気になっていたフランチェスカさんの腰に付いてたカードケース、その中に入っていたタロットカードの様なソレ、ただ…私が知ってるタロットのそれとは全然絵柄が違っていて。

彼女が取り出した2枚の札には…―――――

 

 

 

VENUS(ヴィーナス)】  【SALAMANDER(サラマンダー)

 

 

 

「金星の女神よ、火の精霊の力を借りて加護を!」

 

 

 

 

―――――ゴッッッッ!!!!!

 

 

 

 …風が吹いた、鈍い音がした。

 

 

 

「…。えっ」

 

 

 一瞬何があったのか分からなかった。気づけば私達に迫っていた【ブエル】は…横倒しになっていた、倒れた車輪の中央にあった獅子の顔は綺麗さっぱり無くなって風穴があいていて…。

次にフランチェスカさんの方を見ると、丁度、例の翠色の水晶玉が遠心力を伴いながら降って来た…彼女の立てた人差し指の先に。

 まるでバスケットボールのプロ選手がよくやってる人差し指の上でぐるぐる~ってボールを回す奴みたいに降って来た水晶玉が回ってたんだ…。

 

…風が吹いた瞬間、フランチェスカさんの姿勢は砲丸投げのオリンピック選手みたいなフォームをしていた気がする、ついでに言えば鈍い音がした瞬間【ブエル】に翠色の物体が剛速球で当たった様な気も…。

 

 

 ゴオオオオオオオォォォォォォォォ…!!!

 ゴオオオオオオオォォォォォォォォ…!!!

 ゴオオオオオオオォォォォォォォォ…!!!

 

 

 

 …カチッ!

 

 

 

――――ズバァァァッ!!

 

 

「!?…周りの奴らが一斉に襲ってきたと思ったら、全員真っ二つに斬れてる!?ど、どうなってるのぉ!?」

 

 

「さて…これで正真正銘最後のサブウェポンもコレで使い切ったわね…。あの感じだとカイの弾薬も尽きてて、私の手元には"主力以外のカード"と水晶玉のみ…それでも、アレら相手にはコレで十分…。」

 

 

 そう告げた彼女の手には先程とはまた違う2枚のカードと凍気を纏う…"氷で出来た剣"が握られていた。

 

 

「"DSS"の威力…とくとご覧あれ。」

 

 




解説:DSS

DSS(デュアルセットアップシステム)に関してこの作品内での扱いを。


まず、大前提としましてDSSが存在する『悪魔城ドラキュラ Circle of the moon』ですがコレは本来は、正史に組まれない並行世界の話というのが本来です。

この作品世界線に関して言えばベルモンド家は存在してません。


当然ながらDSSも別な世界線の技術、なのですが…。





この当作品内に置いてはDSSは正史世界に存在はしていたけど表舞台に出なかったという事にしてあります。

具体的に言うと、刻印時代。

サークルオブザムーン自体が1830年のオーストリアで起きた物語とOPで語られています。
その時代とするのならば月下の夜想曲とギャラリーオブラビリンスの中間…つまり

年代的に奪われた刻印時代が一番近いことになる。

そして刻印はOP冒頭で語られますがベルモンド一族が居なくなったことで様々な組織が対ドラキュラ用として誕生した訳ですね…
 シャノアが所属する【エクレシア】もその一つ、グリフという技術を編み出した組織なワケです。


この時代、ドラキュラ討伐を掲げたあらゆる技術開発や組織が生まれたのならば…

ヴァンパイアハンター・モーリス氏がDSSという画期的な技術を開発したのだけれどコンペ合戦で負けてエクレシアが権力者達に莫大な資金援助等をしてもらい、研究費用と維持費が払えなくなったモーリス氏が無くなく弟子と共にDSS開発を凍結、または技術を何処ぞかに売り払った…なんてのもありかなーっと思いました。
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