悪魔城ドラキュラ -幻夜の追想曲-   作:大根のチョコラテ煮

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1章:夢見がちな少女③ -地図から消えた古城-

- side 理奈 -

 

 

 

 焦げ臭さと身体を蝕む嫌な熱に包まれた。息を吸うと喉や肺がそのまま燃えちゃうんじゃないかって思えて怖かった、そんな状況でも私は目の前の男を―――ダリオと名乗った老人をこのまま放っておくわけにいかなかった。人の命を奪って平然としているこの人を…!こんな奴をこのままにしてちゃダメなんだって!!

 

 

 

 …でも、どうすればいいの!?相手は手から炎を出す妖怪みたいな存在なのよ、認めたく無いけれどお腹に受けた痛みがコレは夢じゃなくて現実だって訴えかけてくる、こんな常識離れした相手どうしたら…

 

 

「はははっ!いいぞ燃えちまいなァ!」

 

 

 ダリオは私に見向きもしない、こんな竹刀一本持っただけの小娘なんか脅威でも何でもないって考えたのかもしれない。ただ燃やす事だけを、破壊をどこまでも純粋に楽しんでいる様に思えた…今だからこそ解る、政府の人達が発砲してた相手はこの人間離れした老人なんだって。銃を持った人間ですら勝てなかった相手に棒切れじゃ何もできないだろうって…

 

 

 

 

―――悔しいよ。

 

 

―――…悔しいよっ!!

 

 

 

 ただこのまま黙って見てるしかできないなんて、此処で何もできずに焼け死んで終わるなんてっ!!

 

 

 もしかしたらまだ火の手が上がってない家屋や道の方には身内が居るかもしれないのに!目と鼻の先に悪事を働く人間が居て唯一何かできるかもしれない場所に自分が居るのに!!此処で止める事さえできればまだ生きているかもしれない人の命を救えるかもしれないのに!!!

 

 

 なのに…食い止める方法が浮かばない…っ。

 

 

 

 

「はははっ、まだ生き残ってる奴が居たとしてもコレで直に焼け死ぬだろうよ!タイムリミットまで時間はある、燃やし尽くせ【アグニ】!破壊の力の頂点って奴を俺に見せてみろォ!!」

 

 

 ダリオが鏡に向かって愉しそうに叫んでた、ううん…きっと鏡に映っていた怪物に向かって語り掛けてるのよね…

 

 

 …鏡、かぁ。

 

 

 

 

 

 瞬間、私が思い浮かべた事はただ一つ、せめて…せめて、止める事ができないのなら…死ぬ前に、人殺しを心底愉しんでいる老人に嫌がらせの1つか2つくらいはしてやりたいと思った事だった。

 

 倒れ伏したままの姿勢で利き手に込められるだけありったけの力を込めて、私は狙いを定めた。

 

 

 

―――

――

 

- side 三人称 -

 

 

 ダリオ・ボッシは頗る機嫌の良さだった。

 

 かつてノストラダムスの大予言に記された1999年の日に生を受けた彼は不思議な力を持って生まれた。自分にとって気に入らない存在…自分より優れた兄弟、自分を叱りつける母親や父親、自分よりも裕福な同世代の子供、自分の蛮行を咎める教師、街中でぶつかって来た名前も顔も知らない赤の他人、兎に角もう存在が気に入らないと感じたその全て。

 己の感情の儘に彼は嫌いな相手にこの世で最も苦しい死に方で死ねばいいと怒鳴りつけた事があった。その翌日に彼が存在を否定した人物は不慮の事故で落命した。

 

 例を挙げるなら配管工事中に起きたミスが原因のガス爆発。気に入らなかった親兄弟はダリオが家を飛び出していた不在中に焼け死んだ。検死の結果は即死ではなくまだ息があった時に火に呑まれて苦痛を味わってからの死であったらしい。

 

 またあくる日は降水量の少ない年だった事と乾燥した気候だったがゆえに自然発火からの山火事でキャンプ中の教師が一家揃って焼死、また別の日には裕福な同世代の子供もその家庭を妬んだ浮浪者の放火で命を落としたとされている。

 

 

 昔からそうだった、ダリオの眼に止まった人間は謎の不審死を遂げると…。

 

 

 親兄弟が死んだ時も彼奴は悲しむ事など無かった、寧ろ清々したと言わんばかりの表情であり、彼とつるんでいた不良仲間も彼に隠れて他の男と逢っていた女も誰が死のうが哀しみという感情を抱いたことは無い。

 

 

 

 

 2036年にも…『とある少年』から「あんたは仲間の死をなんとも思わないのか?」という問いに対して何も感じない、それどころか普段から態度が気に入らなかったから自らの手で殺したかったと豪語していた男であった。

 

 

 

 

 

 さて、この事からも判断できる通りダリオ・ボッシという男は世間一般的な人間の価値観、倫理感からは対極の位置に居る男であり、仲間意識だとか他者への共感性という物がこれでもかと言わんばかりに欠けていて、その癖ダリオは破壊衝動や力に対する執着が強い人間でもあった。

 

 

 その異常性と彼の周りで起きる不審火の気配からいつしかダリオを知る者は陰で"悪魔の力が宿った男"と囁く様になっていた。

 

 

 "教会"の人間も大分初期の頃から彼奴を要注意人物として長年に渡り追い続け、2036年当時の事件に派遣された『ヴェルナンデス家の女性』も「原因不明の発火には殆ど彼が関わっている、世界中で指名手配の大悪党」だと証言した程だ。

 

 

 

 

 破壊こそが、全て。

 

 自分以外の生ある存在が燃えて灰になる瞬間にこそ、何よりも代え難い心地良さを感じる。

 

 

 

 まさしくダリオにとって今の時間は至福の時だった、機嫌も頗る良くなろうものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒュンッッッ!! バシィィィン!!!!!

 

 

 

「あがっ!?」

 

 

 至福の時、だった…。ゆえに彼は油断し切って投擲された【竹刀】への反応に遅れた。

 

 

 

 床に伏したままの理奈の渾身の投げ、手にしていた竹刀は弧を描きながらダリオの目元に音を立ててぶち当たるッッ!突然の痛みに老齢の男は思わず小鏡を手から落とし、痛む場所に手を当て抑える。怒りの形相で鼬の悪足掻きを繰り出した者を睨みつければどうだ?自分の手から零れ落ちた鏡を手にしてそのまま抱き抱える様に蹲り、ダリオを見上げるではないか…。

 

 

"ざまあみなさい!"

 

 

 言葉を発さずとも少女の眼が矍鑠とした老人に対してそう物語っている様に感じ取れた。

 

 

 

 

 

 

あんたの魂と融合した悪魔を倒した、力ごとな。

俺の、俺の力がぁ!

力があるからって言って振り翳していい訳じゃない。それを思い知るんだな。

ヒ、ヒィィィィーー

 

 

 

 

 

 「っっっっっッ!!!!この…ガキぃぃぃ!!!」

 

 

 齢60の男は激昂したッ!目の前にいる自分よりもちっぽけな17歳の少女の瞳が…っ!

 

 勝ち誇ったかの様な眼差しが23年前にダリオのプライドをズタズタに引き裂いた『とある少年』を連想させたのであるッッ!!

 強い正義感と自分が護るべき大切な人の為に単身で邪教の根城に乗り込み自身を打ち負かした相手に…っ!ダリオの人生の半分に満たない歳月だって生きちゃいないちっぽけな子供に憐みとも呆れとも受け取れる屈辱的な視線を向けられ諭された瞬間が脳裏にフラッシュバックしたのだッッ!

 

 

ドッッッッッ!!!

 

 

 老いた身とは到底思えない健脚が理奈の横腹を勢いよく蹴り上げる。

少女の身が蔵の焦げ付いた置物を倒しながら壁にぶつかる。

 

 

「がはっ」

 

 

ゴスッッッッッ!!!

 

 

 華奢な身体に更なる追撃が加えられる。

老人の胸の内にはドス黒い炎が揺らめいていた。

"人生で最も消し去りたい記憶"を思い出させた小娘への憎悪に駆られていた。

 

 

 

「あぐっ、ぁ」

 

 

 口の中に鉄の味が広がる、内蔵にダメージも入ったかもしれない。

ダリオの暴行は止まらなかった、殴る、蹴るを交互に続けて理奈が血反吐を吐くまで続けた。

 

 

 

「フゥーッ…!! フゥーッ…!! このクソガキがああああああああああああぁぁぁぁ!!死ね!!死ねェ!!死にさらせぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

  ドッ! ゴッッ! バキィッ!!

 

 

 

「――― ヒュー ヒュー 」

 

 

 蚊の無く声が、消え入りそうな呼吸だけが辛うじて聞こえる。

全身が痛々しい程の痣だらけになって、それでも…、それでも少女は小鏡を手離さなかった。

 

 

 このまま死んでしまうかもしれない、何もしなくてもきっとこの悪党に焼かれて殺される。

ならば、いっそのこと悪足掻きで最期までこの老人が盗んでいこうとした鏡を抱き続けてやろう、炎を操る物の怪の様な男の手を煩わせてやるんだ!!

 

 

 白馬理奈は…せめて、自身の命を使ってそうしてやろうと思った。

 

 

 

「この小娘…まだ死なねぇのかよ、早く鏡を寄越せってんだ!くそっ、しぶてぇなオイ!?」

 

 

 還暦の男の何処か焦りを感じる声が少女の耳に入って来る、だが…その声は徐々に小さく聞こえなくなっていく。目を開けたいけど瞼が開かない、半開きの唇は閉じなくて鉄の味ばかりする口内に蔵内の熱が入り込んでくる、手指も足のつま先も、身体の感覚が段々無くなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…あぁ、私…死んじゃうんだなぁ。)

(お母さん、お父さん、伯父さんも伯母さんも真司も無事に逃げられたのかな…?)

(死んじゃってたなら私も今、そっちに行くからね。)

 

 

(……子供の頃見たお芝居や少女漫画みたいに、仮面をつけた王子様に出逢いたかったなぁ…あはは)

 

 

 

 

 

……。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………――――――――――-- ‐ - ₋ .

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…くたばったのか?」

 

 

 炎そのものと呼べる粗暴さを体現した男は目の前の夢見がちな少女を一瞥した。

生命の鼓動は……感じる。まだ辛うじて生き永らえている様だがこの状態だ。今から炎上する神社から病院に緊急搬送できたとして現代の医療技術で救えるとは思えない。

 意識は完全に無い状態でそんな少女から目当ての品を取り上げるなど造作も無い事ことだろう。肩で切らしていた息を整えてからダリオは下卑た笑みを浮かべて、文字通り命を捨ててでも鏡を護ろうとした少女の身からソレを取り上げようと手を伸ばし始めた時、"それ"は起きた。

 

 

 

カッッ――――!!

 

 

 

 理奈が最期まで離そうとしなかった鏡が眩い光を放ち始めたのだ…っ!!

 

 

 

「っっ!?ちっきしょぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!あと一歩の所で"タイムリミット"かよぉぉぉ!!」

「ガキの所為で無駄に時間喰っちまったから神社も燃やせねぇし鏡も回収できなかったじゃねぇか…っ」

 

 

 鏡から溢れ出す光はどんどん強く、より強大になっていき理奈の身を飲み込む…彼女の身体が完全に光の中へと消えていって尚、止まる事を知らぬとばかりに光は膨張していく。

 

「…ちっ、まぁいいさ"城"に着いたら小娘の遺体を見つけてそっから鏡を取ってアイツに届けりゃ良いか。」

 

 不機嫌そうに鼻を鳴らしてダリオ・ボッシは目を閉じる…この短時間で多くの人間を焼き殺し、重傷患者を発生させた悪党もまた光の中に飲み込まれて姿を消した。

光はまだ増大していく、どこまでも溢れ、広がっていく…!蔵から溢れ、白馬神社の敷地内からも出ようとしていた…っ!!

 

 そして夜闇の中、白馬町の高台で燃え盛る炎の明かりとは別に立ち昇っていく輝きに向かって一機のヘリコプターが向かって行く。

 

―――

――

 

 

 

 

 

 

 

- side 名を背負う青年 -

 

 

Holy Shit(なんてこったい!)!もう始まってやがる…っ!」

 

 

 俺はヘリの中で思わず叫んじまった。こんなん叫びたくもならぁ!!糞ったれめ!長年ずっと"教会"(ウチ)が追い続けた元・魔王候補と【ウィズ ライト】の残党共が日本に密入国したって情報を掴んだのに出遅れちまった。

せめて後1時間、後1時間で良いから早く俺達が駆けつける事ができたなら…っ!そう思わずにいられねぇぜ。

 

 

「あの光…、間違いないわ【悪魔城】の封印が一時的に解けてしまったのね」

 

「こうなっちまう前に俺達がぶん殴ってとっ捕まえてやりたかったが仕方ねぇ、プランBに変更だ」

 

 

 俺の横で姉上が不安げな顔で"城"の封印が一時的に解けた事に関して呟く、連絡によると既に白馬神社でこの国の人間が銃撃戦までして応戦してくれたそうだが、この状況から察するに…恐らく生き残っているのは殆どいねぇ。

止むを得ない、直接俺達が【悪魔城】の中に乗り込んで任務を遂行するプランBで行くっきゃない。

 

 無線から聞こえてくる声だと既に神官達が地上からあの光を抑え込もうと結界を張る準備に動いてるみてーだ、必ず任務を果たさなくちゃならねぇ…そう考えると武者震いって奴がしてくるもんだ。気持ち切り替えていかねぇとな…!

 

 

―――

――

 

 

- side 三人称 -

 

 

 星明りが煌めいていてもおかしくない時刻、星光は下界から溢れる光によって塗りつぶされていた。延焼し続ける神社を照らす炎もそうだし立ち昇る謎の光もそうだ。近隣住民を落ち着かせ又避難させるために"やけに手際の良い動きで"警察や機動隊が動いていた。…"偉い人達"からの御命令ゆえである。

 

 神社から遠ざけられていく民衆は高台を昇っていく神官達の姿を目視することは叶わないだろう。もっと言えば夜空を突っ切る輸送ヘリの存在にも気が付かせない。気が付かないではなく付かせない。

 米軍基地から飛んできたそれは神社から昇る光の柱に近づきハッチを開ける。

 

 

 

「認識阻害は働いてるみたいだな」

 

 

 ヘリの中で叫んでいた金髪の男は目を凝らして地表の様子を伺った、住民は誰一人として此方に気付いていない。彼はそれを確認すると持っていたパラシュートを自分の姉に向かって投げ渡す。

 

 

「おい!今から俺と姉上は光に向かって降下するっ!アンタ等は輸送機に積んである補給物資を可及可能な限り光の中にぶん投げてくれ!!終わり次第速やかに退却だ!」

 

 

 

「「了解!」」

 

 

「いいか?あんまり無茶はすんじゃねぇぞ、光に近づき過ぎたらアンタ等だって飲み込まれて"城"にご招待されちまうからなっ!」

 

 

 金髪の青年はそう言って言葉を切ると眼界に広がる光の柱に眼を向ける、彼の隣には美しいブロンド髪の姉が並び立っていた、青年は自分の手がじっとりと汗ばんでいる事に気づいた。緊張しているのだな、と。

 

 

「「ご武運を!!」」

 

 

 輸送機の隊員達が"城"に挑む勇敢な教会所属の二人に対して敬礼のポーズを取った。

 

 

「応ともよ!ここまでありがとな!」

「感謝致します、あなた方もどうかご無事で。」

 

 

バッ!

バッ!

 

 

 最低限の荷物に自分達の武器を持った男女1組が輸送機から跳び立つ、四肢を広げて大の字になって降下していく目指すは光の中に見える魑魅魍魎が住まう混沌の産物――ッッ!

 

 

 

 風圧を全身に受けながらも青年は緊張を、あるいは不安や恐怖を吹き飛ばし自身と姉の心を奮い立たせるべく大声で哮った…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

it’s Show time(さぁ!幕開けだぜ!!!)!!!」

 

 

 

 

 

 

 認識阻害の魔術によって誰に聞こえるでもない青年の叫びは闇夜に、光柱に吸い込まれていく…!

 

 

―――

――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒュォォォォォオオオオオオォォォォォ……

 

 

 

 

 風が一陣吹いた。

 

 

 そこはとても静かな場所だった、いっそ不気味なくらいに静まり返っていて。

 

 

 

 

 

 

 

 そこは荘厳な古城だった、嘗ては磨き上げれられていたかもしれない石畳の床も伸びた蔦植物が所々絡まっている城壁の石煉瓦もボロボロで相当の年季が入ってるのが素人目でも解る。

 

 城門、エントランスにあたる場所だ…、城外へと繋がっているのであろう分厚い鉄扉は黒ずみの目立つ床や壁と違って新品の様に真新しくエントランスに居る者を帰す気は無いと言わんばかりに沈黙を守っている。無言を貫く扉から向って正面へ進むと緩やかな勾配になっていて階段状の水平な床が敷かれていた、昇り切れば来訪者を饗す気概の通路がそこには在る。

 城門内の先にある城内へと続く玄関口、二つの扉の丁度中央に位置する所には立派な石像が睨みを利かせる様に置いてあり、甲冑鎧を着こんで顔を隠した騎兵の像が槍を手に天へと掲げている。天を見上がれば吹き抜けの空で雲が流れているのが見て取れた…。

 

 

 月。

 

 

 月が何処で見るよりも近くに感じられる。

 

 

 城門内の吹き抜けから見上げる空から射す月の恩恵、それは夜中だというのにまるで真昼なのではないかと錯覚してしまう程に明るかった…。

 

 

 月下に照らされた古城、此処はその昔"確かに地球上に存在していた"。

 

 

 

 欧州の地に度々姿を現しては崩れ去りその都度、人ならざる者の力あるいはソレを崇拝する欲深な人間の手によって築き上げられてきた…ある時代ではワラキア、トランシルバニア…ルーマニアと地名を変え続けた大地に、時にはオーストリアの地にだって現れたという説もあり、諸説あるが先述の崇拝する者達の手によってイギリスにもプロセルピナ城という名で出現したという情報もあるのだ。

 

 

 とにかく、この"城"は突如として姿を現す、蜃気楼か何かの様に何の前触れもなく、欧州の何処かの大地に。

 言い知れぬ不気味さ、どこか歪で…しかし、人を惹き寄せてしまう妖異な美しささえ感じてしまう古城。その魔性の建築物はこの世ならざる者が犇めく混沌と呼べる物であった…っ!

 

 

 

 

 

 人は此処を【ドラキュラ城】…通称【"悪魔城"】と呼んでいた。

 

 

 

 ある日を境に、地球上の何処の地名にも現れなくなった城、世界地図の上に永劫に現れる事の無くなった城。

 

 

 

 

 

 そんな城の城門内、2対の石像の間に倒れ込む様に傷だらけの少女が倒れていた、まだ辛うじて息はある、このまま放置すればその年若い命が黄泉へと旅立ち―――いや、城の住人になるのも時間の問題であろう。

 

 

 

…一陣の風が吹いた、風は少女の前髪を少しだけ揺らす、…倒れたままの少女、白馬理奈の前にはいつの間にか男が立っていた。

 

 

 

 

 

 

「魔物が擬態している気配もない、人間の娘だと?…何故この城に居る、一体何者だ…。」

 

 

 

 仮面をつけた男は、驚愕の色を含んだ声で小さく呟いた。

 




ショーターイ! 選手入城です!!!(3話目にしてやっとだよ…
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