悪魔城ドラキュラ -幻夜の追想曲-   作:大根のチョコラテ煮

5 / 21
章の終わりなのでちょっと長いです。


1章:存在意義を探す狩人② -乾坤の一擲-

- side 三人称 -

 

 

 

 

「つまりイェーガーさんは昔の事は殆ど思い出せないってコト?」

 

「とどのつまりはそうなる。」

 

 

 

 仮面の狩人は話途中だった事の経緯を語った。理由は分からないが記憶が一部抜け落ちてしまっているという事実、明確に思い出す事はできないが自分にはこの城で何やら果たさねばならないことがあったという話を。

 

 エントランスでの出来事の後、狩人は少女と共に荒城の回廊を警戒しながら歩いていた。あの場所に留まっていても何の意味も無かったからだ、未だに不調が残り続けている狩人は記憶を取り戻しこの城ですべきを思い出したかった、いつまでも歩みを止めてなどいられない、かと言ってだ…護身術の稽古や普段から体力的にも鍛えられる様な生活を送っているとはいえ一般人の女子を普通に魔物が飛来してくるエントランスに置き去りにしていい道理があっていい筈が無い。

 

 生憎と彼には城の入り口にこれ以上魔物が入ってこれない様にする結界を張るなんて芸当はできない、少なくとも今の彼にそんな余力は無い。イェーガーが理奈を護る為に悪魔城入口に留まり続けたとしても根本的な解決にはならない。

 

 城門の分厚い鉄扉を見れば分かるがドラキュラ城というのは一度入ったら最後、城の怪異達が侵入者を貪り喰わんとするまで逃がさない様に"城そのものが"入ってきた者を閉じ込めるのだ。例外的に同じ魔の力を持つ者が門を開けたり、城の魔力に風穴を開けられる位には強力な聖の力で強引に抉じ開けられる者、あるいは城の支配者を討滅することで悪魔城から逃げ果せる事は可能ではあるが、その条件を満たせる人物がこの場に居なかった。

 

 

 何が言いたいかというと、"外"からの救助含めて理奈を城の外に逃がすのは不可能だと。

 

 

 城の"外"から都合良く教会関係者かヴァンパイアハンターなどの退魔士が城門を開けて救援に来てくれるという根拠はない。それこそ希望的観測にしがみ付いて天にでもお祈りしてろって話である。しかも何時来るかも知れぬ救助の人間を待ち続けて門の所でお姫様を護る騎士様ごっこでもやれと申すか?まだ【ウイングスケルトン】程度だったからどうにか対処はできたが、碌な武器も無く【ポーション】を始めとした医療品の類も枯渇、…物資が絶望的に足りてない状況で更に城の奥地から倒した骨共と比較にならん強さの魔物、あるいは4匹なんて目じゃない数の大軍勢が押し寄せて来たらどう対処しろというのだ…。ジリ貧も良い所だろうに。

 

 であれば城の何処か比較的に安全そうな小部屋か何かを見つけて魔物が居るなら殲滅なりした後で内側から扉を閉鎖するなり隠れてもらうのが良いのでは?悪魔城に安全な所などありはしないがエントランスに居ても居なくても結局は生命の危機に晒される、なら1%でも良いから生存率の高そうな方に賭けるのが妥当だろう。イェーガーも記憶の為に城を探索したいし記憶のキーパーソンと思われる理奈を護りたい、理奈も身内の事など気になる事は山積みだが何をするにしても一先ずは身の安全を確保しなくてはならないという方針に定まった、お互い利害が一致した男女は荒れ果てた城の回廊を慎重に歩くのであった。

 

 

「しかしお前が目覚めた時から気にはなっていたがその鏡…。」

 

「うん、気を失う前まで持っていたわ、さっき話したダリオって泥棒から護ろうとしてて。」

 

「……。ふむ、ダリオ…ダリオ・ボッシ、か………聞き覚えがあるような名前だが、やはり思い出せんな。」

 

 

 理奈が意識を回復させた後もしっかりと握りしめていて、大翼の骨が襲来してきた時も肌身離さず持っていた鏡をイェーガーはまじまじと見つめる…。老人からの暴行が原因で途中意識を手放した為なんで悪魔城に来たのか詳細が分からない神社の娘に仮面の貴公子は憶測だがと前置きをした上で自分の見解を語った。白馬神社は1999年に悪魔城を封印した祈祷の一族だ。日本の天照大神に関する伝承から考えて鏡というのは神器として強い力を持つ、八咫鏡なんかが良い例だ。

 

 確証は無いが彼女の持つ鏡が悪魔城の封印と何かしらの関係があり、ダリオと名乗った人物は鏡を奪う事で悪魔城の封印を解き城に侵入する計画だった、理奈は偶々近くに居たから巻き込まれて気付けばエントランスに居たのではないかという考えなのだが…しかし。

 

「何の変哲もない鏡、にしか見えんな…これと言った力も感じないが?」

 

 仮面の男は掌に収まるサイズの鏡を凝視しては唸る、それほどの物なら彼が何も感じ取れない筈が無いのだが…「力を読み取れぬ程に俺は衰えてしまったのか。」と険しい顔で目元を覆う。

 

 

 

 

 道中襲いくる骸骨や吸血蝙蝠、気持ちの悪い空飛ぶ一つ目の魔物達を一体何処から取り出したのか"斧"による投擲と先程の純銀の十字架で蹴散らしながら前へと進んでいく。狩人は護身用として彼女に出会う前の道中で拾った【コンバットナイフ】と幾つかの【魔導器】を渡しておいた。色彩豊かな石のネックレスに見える【飛翔石】や小洒落たブレスレットに見える【ヘビーリング】を。

 後は…ボロボロの【ふだんぎ】をなんとかしてやりたい所だが、何処か適当な部屋で彼女に合う【ぬののふく】でも見繕った方がいいか。

 

 

 大理石の廊下を走りながら時折、彼は後ろをついてくる少女を見やる――――息は全く乱れていない。

 

(なるほど、普段から鍛えているとは言っていたが。そんな単純な話ではないな。)

 

 

 悪魔城には"瘴気"が漂っている。闇に耐性を持たぬ者が瘴気の渦中にいれば衰弱してやがては命を落とす。―――――2035年の日食で白馬弥那が城に巻き込まれた時、彼女は瘴気にあてられて体調不良を訴えていたことがあった。

 

 

 その時は『有角幻也(ありかどげんや)』の張ってくれた結界の中に居たというのにも関わらずである。頭痛や呼吸困難、気怠さ…普通の人間ならそうなっても可笑しくないというのにエントランスから此処までで白馬理奈は全くそういう症状が出ていない…。古来より瘴気に耐性のある人間というのは一定数生まれてはいた。大抵その人間は"退魔士"になれる天賦の才がある、かの有名な『ベルモンド』の一族も『ヴェルナンデス家』だってそうだし『ワラキア随一の軽業師』と文献に名を残した男性も特別な家系でもなんでもないのに当然の様に瘴気をものともしなかったのだから。

 

 

―――

――

 

- side イェーガー -

 

 

「…杞憂だったのかもしれんな。」

 

「えっ、突然何のことですか?」

 

「いやなに、お前の事を最初の印象で決めつけ過ぎていたなと思っただけさ。想像していた以上に目先の困難に挫けず進んでいく娘だと思ってな。」

 

 

 城門で出会った時は酷く狼狽えていて、不安げな顔を覗かせていたが今はそんな陰りは見えない。気づいたら見知らぬ場所に居てそれが自分の常識が当て嵌まらぬ所だと明かされたからだったからかもしれんがな。話を聞く分に実家を炎上させた人物から暴力を振るわれ死を覚悟してでも鏡を最期まで奪われない様にしようとする辺り元から性根が据わってる娘だったんだろう。

 

 俺が思い出せる限りでは確か今のドラキュラ城には"城主たる存在"は居なかったはずだ。支配者を倒せば城は消滅して迷い込んだ人間も無事に"外"へと脱出できる…だが、肝心の魔王が居ない場合は城主の間に赴き其処で力を示した者が城の魔力を操ればあるいは…。何れにしてもこんな子供を連れまわして悪魔城最上階には行けん。それまでの間ずっと独りで隠れてもらうというのは不安だったがこれならば多少は心配せずとも良さそうだな。

 更に言えば"瘴気"に耐性もある、有事の際は不調に陥ることなく全力疾走で逃げ切れるだろう。

 

「お前は知らないだろうがこの城には瘴気という物があってな、常人なら普通は居るだけで衰弱していくんだ。だがお前はそうじゃない。」

 

 もしかしたら退魔士の才があるかもしれないな、そう告げてやると彼女は心底困った顔をして「えぇ…素直に喜べませんよ、それ」なんて低いトーンで言いながら首を振る。まぁ気持ちはわからんでもない。

 

「なんでそんな…ハッ!?まさかウチが神社だから、とか…?」

「どうだろうな、生まれが神社はあまり関係ないと思う、巫女でも倒れた者は過去に居たしな。」

 

「ふぅん、そうなんですか。……んっ?イェーガーさん何でそんな事わかるんです?それも薄っすらと思い出せることなんですか?」

 

 

 ……。言われて初めて気が付いた。無意識で口走ったが何故俺は過去に倒れた巫女が居る前例が判った?…その巫女は一体どんな女だったのだ?考えてもやはり顔や名前が浮かばない。

 

 

 

 ズシン…! ズシン…! ズシン…!

 

 

 そんな俺の思考を妨げる様に"奴"は現れた。荒城回廊の天井に擦れるのではないかと思える巨大な身体、所々塗装も何も施されていない剥き出しの鋼鉄部分が見えるが足先から胴を護る鎧、頭部のヘルム部分まで大半をメタリックブルーに染まった鋼の巨人が俺達の背後からやって来た。

 俺が思い出せないだけなのか、俺はコイツの姿を全く知らなかった―――初めて見る魔物は人間の指間接を模した金属の指を此方にへと向けていて、4本指の鋭利な先端が俺達を串刺しにしようとしているのは明らかだった。

 

「理奈!走れっ!」

 

 俺は叫びながら自分の背に引っ付く様に歩いていた彼女の肩を掴んで前に押し出す様に突き飛ばす。"コイツに生半可な攻撃は通用しない"脳の片隅で警鐘が鳴る…っ!

 

 

 

 

―――

――

 

 

 

- side 三人称 -

 

 

 鋼鉄の巨人―――【タロス】を見た時、狩人は"初めて見る存在"だと感じ取った。図体の大きさだけなら【ファイナルガード】にも匹敵するソイツは荒城回廊の天井を堅い頭部で削りながらひたすらに前進してくる。出来の悪い発条(ゼンマイ)仕掛けのブリキロボットじみた動きで、しかし大きな足取りで間違いなく少女と狩人を亡き者にせんと距離を縮めてくるのだ…!

 

 4本指の左腕で刺突を試みたり、ある時は指を引っ込めて手首の付け根から大剣の刃を出し切り払ったり、追われる身の二人は倒れた柱や階段の残骸と言った障害物に足を取られつつも逃げに徹する。狩人は逃げながらも斧や短剣、十字架を投げ付けるが金属音と共にそのどれもが弾き飛ばされるだけで決定打は与えられない。足止めにすらならないと察した彼は意を決し声を上げた。

 

 

「このままじゃ俺もお前も後ろから来てる奴に踏み潰されて終わる、俺が奴の前に出て時間を稼ぐ…!!その隙にお前はこの廊下を走り抜けて何処かの小部屋に逃げ込んで隠れてろ!」

 

「で、でもイェーガーさんは!?」

 

「気にするな、策ならある…とっておきの切り札だ、それを使えばどうとでもなるさ。」

 

 

 半分嘘だ。今の彼の力では本来の威力の半分だって出せやしない、魔力の消耗だって激しい筈だ。それでもやれるだけはやるしかなかった。踵を翻して【タロス】の方へと逆走していくイェーガーの姿を見た理奈は彼を呼び戻したかったが今からでは間に合わないと悟る。少女は意を決して前へと走り出した…狩人に言われた通り逃げる為ではなく―――――

 

 

ブォン!!

 

 

「遅い!燃え尽きろ!」

 

 

 振り下ろされる【タロス】の大剣の挙動を見定めて予測地点から飛び退き彼は【漆黒のマント】を翻す、手品の様に彼の前には燃え盛る火球が3つ現れ対面するブリキの巨人目掛けて放たれる。緩やかな放物線を描く様に下段と上段の火炎球が平行に飛ぶ中段の炎がそれぞれ前に突き出ていた鋼鉄の左足に直撃するが表面をドロリと熔かしただけに終わった、鋼の巨人は喉から金切り音を上げる、それは彼の放った魔術を受けた苦悶の呻きではなく彼のささやかな抵抗を嘲る声であった。

 今の自分ではやはり本来の威力を出し切れない、解っては居た事だが改めて実感して苦々しさを覚えた…。

 

 

 

―――

――

 

 

「はぁはぁ…っ!なんとかしなきゃ!イェーガーさんが死んじゃうっ!」

 

 

 一方、少女は大理石の廊下を走り抜けて目に付く限りの小部屋を漁っていた。「切り札があるからどうとでもなる」そう言って自分を逃がした男性の横顔を思い浮かべる、彼が来た道を戻って巨大な敵に向かって行った時に彼女は狩人を呼び戻そうとしていた。出会ってまだ僅かな時間で性格も掴み切れていないがアレは何となく虚勢に思えたからだ。

 

 とっておきの切り札があるから問題ない?じゃあ何でそれを最初から使わないんだ?巻き込む危険性があって理奈が居たら使えないとかだったならまだ辻褄が合うし単なる取り越し苦労で終わる、少女はそうは思っていない。嫌な胸騒ぎがするのだ。

 

 昔から勘の良さには自信があった。伯母や伯父が泣いていた時も"なんとなく"で場所を当てたり、思えば白馬神社が燃やされる直前に感じていた胸のざわつきもそうだったのかもしれない。そんな彼女の直感がこのままではマズいと叫んでいた。幾つかの部屋を回って吸血蝙蝠に噛みつかれそうになっては必死に【コンバットナイフ】を振り回して追い払いとある部屋へと入り込む。

 

 9畳一間ほどの空間で真ん中には石を切り出して作った祭壇があり、祀る様に長方形の箱が置かれていた。煌びやかな金箔と箱そのものが一種の芸術品に見えてくる意匠…そんな箱だった。

 

 祭壇周辺だけは小綺麗な物で周りは床石が罅割れていて土が露出しているだけでなく名前も解らない大きな雑草や芝が根付いているほどに荒れている。悪魔城について道中で齧り程度の知識をイェーガーから聞かされた彼女が真っ先に思い浮かべたのは"道具"の存在だ。

 現在彼女が身に着けている【魔導器】も生命の淵にあった自身の身を治癒した霊薬も全てはこの城で彼が拾った物だという。

 

 

 乾坤一投、運否天賦、一か八かの大博打だ…っ!

 

 

 手元に碌な武器が無いと嘆いていた狩人が窮地を脱せられる程の物があるかなんて判らない、しかし何もせずにはいられない…ッ!せめて城門で目覚めた時に彼が手にしてた薬瓶の一つや二つくらいは見つけなくてはと少女は意を決していた。

 

 

「祭壇…?こんな風に祀られてるってことは何か大事な物が保管されてるってことかしら。」

 

 

 一抹の期待を胸に彼女は祭壇上の箱へと近づいた。さて突然だがこの世にはブービートラップと呼ばれる罠がある、侵入してきた者が興味関心を抱くであろう物資を敢えて見える範囲に置いておきノコノコとそれに近づいた敵が仕掛けられた爆発物で木端微塵に吹き飛ぶという仕組みだ。ドラキュラ城はワラキアに存在していた大昔から畏れ知らずの盗人対策であちこちに鼠捕りが設置されていた、あからさまに人目を惹くような金装飾の箱というのもまたその内の1つと呼べた…。

 

 

 じゃりっ…!

 

 

 理奈は土を踏む、不気味なまでに無音の部屋に砂利を踏みしめた時特有の音が靴底から鳴っては空虚へと消えていく…。

 

 

 石床から砂利の真上を歩んだ脚は更にもう一歩先へ、何処から根付いたのか芝生の葉へと踏み出した。

 

 

 

 がさっ

 

 

 名前の解らない大きな雑草―――と思っていたソレを踏んだ。少女は確かに勇敢さは足りていた。しかしこの場に置いて必要なのは勇気ではなく知識だった。

 

 多肉植物のアロエを連想させる葉でありながら蒜の様に細長く伸びるソレ、何も知らない無知なる旅人や城の財に眼が眩んだ盗人を餌とする魔界の植物【ウネ】はそこに生えていた…っ!!

 

シュルルルルルルルッッッ!

 

 

「痛っ"―――きゃあああああぁぁぁっ!?」

 

 突如として脚に生じた痛みに声を上げた彼女は何が起きたのか首を足元に向けようとするも次から次へと予想だにしない出来事が発生した。理奈の瞳に映っていた視界が反転したのだッ!一瞬だけ重力から解放された浮遊感と一気に頭に血が上りそうな感触それに"床が天井で天井が床に見える"この状況…っっ!!

 

 所謂、逆さ吊り状態なのである、彼女は自分の片脚に恐るべき植物の葉が絡みついてる事を漸く悟る、人の生き血を啜りそれを糧に更なる進化を遂げようとする血食植物の細長い葉は棘を持つ茨の蔓の如くあるいは推理小説で御馴染みのピアノ線の様に皮膚に食い込んでいた、輪っか状に結んだ紐で引っ掛けられて宙ぶらりんの状態とも言える状況で重力と引力に従い締め付けは更にきつくなる。痛みがぎりぎりと増していき切れ目から滴る血が自分の爪先ではなく胴に向かって落ちていこうとする摩訶不思議な光景を視界に捉えていた。

 

 

「~~~っ!この…ぉ 離しなさいよねッ!」

 

 

 掴まれたのは片脚だけだ、友達の家に泊まりで行った土曜の洋画劇場でやってたワンシーンを思い出す、戦争映画で逆さ吊りになった兵隊が短剣で脚のロープを切ろうするシーンだった。見様見真似で【コンバットナイフ】を取り出して葉を切り裂いてやろうとするが思うようにはいかない。一方【ウネ】の方も思った以上に暴れる回る人間を厄介に思ったのか更に蔓の様に伸びる葉を伸ばし本格的に瘴気の中でも元気に抵抗する活きのいい食料をいい加減仕留めようと試み始めた。

 

 少女の両腕に伸びてきた植物は皮膚を裂きはしないものの身動きを封じ罷り間違っても自由を取り戻せない様にとする、精々が以て動かせるのはもう手首だけで足枷と化した最初の葉を切るには腕の位置的に不可能、次いで彼女の首にゆっくりと葉が伸びていく…!なぜ腕に纏わりついた物が肉を切らなかったのか理奈は察した。次で致命の一撃とするつもりなのだ、と…!!!

 

 緩やかに伸びてきた植物は輪を創り、憐れドナドナの子牛の首に掛けるが如く白馬理奈の首へと通していく…ッ!「冗談じゃない!」と首にギロチンの刃より悍ましい物を宛がわれた少女は戦慄した。

 

 うねうねと名を体で表した動きは植物がこれから喰える馳走に対する歓喜の小躍りのようであり、それを見せつけられる少女は小憎たらしい対象に向けて手首を動かす。

 

 

「こんな、こんな…雑草なんかに…殺されてたまるもんですかぁぁっ!」

 

 

 腕の自在に動かせない、然し手首は動かせるのだ。手首のスナップを利かせて【コンバットナイフ】を投擲する…!上下逆さまになった彼女から見て頭上より上方に【ウネ】は生えている、重力の向きも相手の方向にある。起死回生を狙った一本の刃は勝利を確信した血食植物の一部に突き刺さり、彼奴はその拍子で理奈を離した…っ!植物に痛覚なんてモノが存在するのか甚だ疑問だったが命拾いしたことに変わりない突き刺さった武器の所為で取り零した理奈の姿を探した魔界植物は彼女が既に石で出来た祭壇の上に登っているのを見つけた。

 

 

―――うじゅる、うじゅる…っ!!

 

 

 葉を激しくしならせ、怒りを表現する。「この餌風情が…ッッ!脆弱な生物が我らに喰われる名誉を振り払うというのかッッ」と聞こえもしない言葉でそう罵っている様に感じた。人間の小娘の生き血を啜り【アルラ・ウネ】への進化を遂げる一歩を妨げた軍人御用達のナイフを葉で掴み怒りに任せて真っ二つにへし折った。折れた【コンバットナイフ】を無造作に投げ捨て【ウネ】は再び理奈に向けて長い葉を伸ばし始めた…ッ!

 

 

「うっ!?も、もう武器が無いのに…っ!」

 

 

 後、手元にあるのは跳躍力と腕力を手助けする【魔導器】ぐらいのもので目先の魔物を斃せる武器ではない…、迫る魔手から後ずさる様に祭壇上を移動すると背に硬い物が当たった、部屋に入った当初開けようとしていた金色の箱だ。

今も巨大な鋼鉄を相手取っている彼を助けたいが為にここまで来たのだ…っ!こんな雑草なんぞに殺されかけている暇なんてないっ!!!彼女は黄金の宝箱の蓋を開けた。

 

 

――――――シュルルルルルルルルルルッ!!

 

 箱を開けるとほぼ同時に【ウネ】は葉を勢いをつけて理奈へと突き出す…っ!振り返ってそれを見てしまった彼女は悲鳴を上げながら咄嗟に"入っていた物"を掴み振り回してしまった。

 

 

「い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 思わず眼を瞑った、僅かな静寂の後に何時まで経っても自身を襲わない衝撃に瞼を開くとそこには――――…

 

 

「えぇっ!?」

 

 

 自分が"振るった物"の先端が【ウネ】を切り裂いている姿がそこに在った、握りしめた柄の部分から輝く美しい白銀の煌めき、それは夜空を見上げた際に脳裏に焼き付く星々の様な輝き…。

 

 

 理奈はこの瞬間、自身の脳裏に遠い宇宙の彼方で展開される神秘を―――星雲を…nebula(ネーベル)を垣間見た様な気がした。アレは一体何だったのか、恐怖のあまり見た錯覚だったのだろうか…。

そして自分の直感が告げている。今この手にある"鞭"は間違いなくあの人を…命の恩人であるイェーガーを間違いなく救えるという言葉で説明できない奇妙な確信があるのだッ…!

 

 理奈は神秘の鞭を手に、部屋を飛び出して狩人の元へと走り出した。

 

 

―――

――

 

 

- side イェーガー -

 

 

 

「ぐはぁッ!」

 

 

 …っ!左肩が完全にイカれたか…。

 

 相対する鉄巨人の動きは複雑な物ではない、腕の突き出し、振り下ろし、時には身を屈めてからの攻撃動作に足による踏みつけ…。単調で見切れはするというのに。

 

 

「彼奴は柱も階段もお構いなく破壊しながら前進してくるというのに…ええぃ!【ベヒモス】の代わりだとでもいうのか!」

 

 

 折れた柱の陰や倒れた彫像の裏に回り精神を研ぎ澄まし魔力の回復も図ったが殆ど雀の涙ほどでしかない、彼奴め息を潜めて回復を待てども遮蔽物諸共に破壊しようとしてくるのだ…!あの後も2度ほど火炎を同じ個所に被弾させたが若干仰け反らせた程度でダメージは無い。状況を好転させらないかと相手の貫手にタイミングを合わせて跳び、そのまま急降下蹴りで二の腕部分を足蹴に更に上昇して一か八か頭部を狙ってはみたものの…結果はこの有様だ。

 

 投擲に使っていた斧を両手持ちにして身体全身の重心を乗せた一撃を見舞ったが結果は著しくは無かった、元より俺が使ってるこの斧は投げの為だけに存在する投擲専用の斧だ、相手を切り裂く戦斧とは創りが違う…当然の様に刃毀れを通り越して罅割れ、痛くも痒くも無いと言わんばかりの相手からの一撃を受けて壁に叩きつけられた。

 

 

「…参ったな、これはどうしようもないかもしれん。」

 

 

 無事な方の腕で左肩を抑える、ぷらんぷらんと柱時計の振り子の様にだらしなく揺れる右手を見て俺は呟いた。打開方法が見当たらない。

 

 

 

 火炎弾を放つ俺の魔術…【ヘルファイア】は魔力の残量を考えればもう使えない。現状で俺が取れる物理的な攻撃手段は全て硬い装甲を貫けないと来たものだ。体格と質量を利用して狭い通路に誘き寄せて身動きを取れなくさせたり、這い上がれぬ様な穴でもあればそこに落としてやることも出来ただろうがこの長い回廊にそんな都合のいい場所は残念ながら存在しない。

 

 俺も何処かの小部屋に逃げ込みやり過ごすという考えもあったが、理奈を逃がす為に囮となりこれだけ距離を詰めたのだ今更逃げようとしても相手の歩幅を考えれば追い付かれる。首尾良く扉を潜り抜けてもおそらく長い腕を突っ込ませて逃げ込んだ部屋をズタズタにするまで引っ掻き回すか、さもなくば歴代の悪魔城の例に倣って【ベヒモス】の様に壁を破壊しながらも真っすぐ追いかけてくるかだ。

 

 

ゴシャアアアアアアアアァァァァ!!!!

 

 

「うぐっ!!…おのれ!床や崩壊した瓦礫を飛ばして来るとはな…!」

 

 

 大剣の腕による一薙ぎで城内に暴風が発生する、左手首から出した刃を横にして一閃するのではなく縦にしたまま平手打ちでもするように薙ぎ、刀身の平部分で床を削り、捲り上げた石床や瓦礫の波を浴びる。このままでは…!

 

 

 

 

 

 

 

「イェーガーさん!!!」

 

 

 

 

 

 

「!? お前は…!逃げろと言った筈だろうがこの馬鹿っ!何故戻って来たんだッ!」

 

 

 この場に聞こえる筈の無い声がした。振り返れば俺が命を賭してまで逃がそうとしたはずの娘がこっちに駆けてくるじゃないか…っ!何故人の言う事を素直に聞かないんだ!これでは二人とも無駄死にじゃないか!!戻って来た少女に嘆きとも怒りとも付かぬ感情が込み上げてきて俺はつい怒鳴りつけた。叱咤の声にびくりと肩を震わせて「う、ぁ、ご、ごめんなさい…でも」と何かを言いたそうに理奈は口籠った。

 

 

 …。

 

 …泣きそうな顔をするな、泣きたいのは俺の方だ…。自分の存在意義を見つけられぬまま、あまつさえ自身の生を疎かにしてまで逃がしてやった奴がこうして戻って来てしまったのだぞ…。何一つとて果たせなかったどころか俺は誰かに何かを遺してやる事もできずに落命するかもしれぬのだ、…この儘ならなさをどうすればいいというのだ。

 

 

 

 鉄巨人は獲物がもう一人戻って来た様子を見て愉快そうに両腕を交互に振り回し始めた。俺は彼女の手を引いて兎に角逃げようとした…。そこで初めて気が付いた彼女が手に持っている"それ"に…っ!!

 

 

「ッッ―――き、貴様!!その"鞭"は…!?」

 

「言いつけを破ってごめんなさい!!でも、でも!イェーガーさんが危ないって思ったからだから私っ、役に立ちそうな物を探して!あの、コレを!コレならきっと―――」

 

 

 

 無数に部屋があるこの悪魔城の中でこれだけをピンポイントにどうやって見つけてきたんだとか、何故"一見すればただの鞭"でしかないコレを状況打開ができる代物だと認識できたんだとか、よく見れば生傷だらけである事とか言いたいことは山の様にあった…だが、今は1秒でも時が惜しかった。続く言葉が見つからない彼女の手からそれを引っ手繰る様に奪い俺は迫り来る鋼の巨人へと向かった。

 

 

 星雲の名を冠する鞭…っ!

 

 かの一族が使うソレには遠く及ばずとも神の加護を受けし聖なる鞭…っ!!

 

 

 

 

 

 

「邪を滅せよ!!―――聖鞭【ネビュラ】!!」

 

 

 

 夜天光と見紛う輝きを帯びた鞭の軌道は自らの意志を持つかの様で、己の意思で邪を撃つ光筋は何処を射抜くべき…!最適解を導き出す。

 

 行き着く先は俺が【ヘルファイア】による計9発の火炎弾を被弾させた彼奴の左足ッッ!!

 

 

 

「――――――ッッッッッ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 初めてブリキの巨人は顔を歪ませた、左足の熔解させた表面、…決して無駄なんかじゃなかった。

 

 ほんの僅かに強固な装甲に築けた"脆さ"へと入り込む様に【ネビュラ】は突き刺さり、そのまま大蛇が傷口から巨人の体内に入り込んでは食い荒らす様に伸びていった…。声にならない金切り声を上げて名前も解らなかった巨大な魔物はその場に崩れ、物言わぬ鉄塊と化した。

 

 

 

 嗚呼、俺達は…生き延びたんだ…!

 

 

―――

――

 

- side 三人称 -

 

 

 

「…あ、あぅ…。」

 

 

「……。」

 

 

 

 悪戯が親にバレた子供と今から子供にお説教をしてやろうとする親の図、そんな光景が思い浮かぶ。無言のまま圧を掛けてくる狩人と目線を逸らす少女の姿がそこにあった。

 

 

 

 

「…はぁ。まず、色々と言いたいことはあるがお前、その傷はなんだ?」

 

 

 【タロス】との死闘を終えてお互いに心にゆとりが出来た所で、イェーガーは気付きはしたが状況的に尋ねる事が出来なかった事を訊いた。片脚からの出血と腿に掛けてまでの血の跡…。少し言い淀んだが理奈は植物の怪物に足首を切られ出血したこと、逆さ吊りから逃れた際に【コンバットナイフ】を失った事、…危うく首が撥ね飛ばされていた等々…。

 

 

「――だ、だからね?そんなに重症じゃないんだよ?ここまで走ってこれたし、ほらこの通り私は平気だもん!クルっと回ってステップだって――「馬鹿者がっ!!!」ひゃいっ!?」

 

 

 目元を覆う仮面の所為で相変わらず彼の眼差しは窺えない、口角が吊り上がっていないことだけは確実である。…いや、なんなら怒りでピクピク引き攣ってる。コツコツと靴音を鳴らしながら距離を詰めて理奈の目と鼻の先にまでやってきて…。

 

 

 コツンッ

 

 

「あでっ!?」

 

「貴様は…っ!どれだけ危険な行為をしたか解っているのか!?一歩間違えれば他ならぬお前自身が命を落としていたのだぞ!!」

 

 

 額に小さな衝撃、デコピンでも喰らった様なほんの僅かな衝撃。どうやらカンカンにお怒りの狩人に小突かれたようだ。

 

 

 

「~~~~~っっ! そこまで怒んなくてもいいじゃない!そりゃあ…!危険だったかもしれないけどさぁ!ああしなきゃイェーガーさんだって死んじゃってたのよ!?」

 

 

 

 

「……いいか良く聞け、百歩譲って俺はどうなっても構わん!だがお前は違うだろ?この城に『自らの意志で戦う為に乗り込んだ戦士』ではなく悪魔城に【巻き込まれてしまった一般人】なんだ。」

 

「お前にだって――その、――お前自身の身を案じてくれる学友や、世話になった人々が居るだろう、帰らぬ人になればそれだけで哀しむ者がいるのだぞ?」

 

 

 お前にだって家族が居るだろ、と言いかけて友人達の方を話の引き合いに出す。生きているのかどうか分からない彼女の御家族の事は話題にあげるべきでない…少女を心配してくれる人は少なからず居る筈だ。こんな所で死んでいい理由なんてない。その言葉に理奈は伯母や伯父の姿を思い起こす、亡くなってしまった人の事を想い続ける遺された人の姿を。

 

 

 "遺される側の人達"の姿は痛い程に知っている。だからこそソレを言われたら…理奈は何も言えなくなる。

 

 

 目に見えて意気消沈とする少女の姿をじっと見つめ、一呼吸置いて「それから…」とイェーガーは言葉を続ける。

 

 

「…ありがとうな。」

 

「…え?」

 

 

 

 少女は思わず顔を上げた。さっきまでの声色とは打って変わって穏やかな声で目の前の男はありがとう、と告げたのだから。

 

 

「お前の行動は…お前自身を危険に晒した行為で決して褒められた物ではなかったかもしれん、然し…お前の勇気は間違いなく俺達2人の命を救った。――お前は俺の命の恩人だ。ありがとう。」

 

 

 嘘偽りない感謝の意がそこには込められていた。怒鳴られもしたがそれだって彼なりに理奈を案じてくれているからこその叱咤だった。この人は…きっと不器用なんだろうな、異形としか形容できない怪物相手にも立ち向かっていける歴戦の印象を抱けるが、他人との付き合い方は多分、そこまで巧く無い、そんな気がした。

 少しだけ気恥ずかしくなった理奈を見てイェーガーは「んんっ!あぁ、とにかく…その、だな」と小さく咳払いをして、務めて厳しい表情を作りながら言った。

 

 

「今回は確かに助かったかもしれんが、だからといって無茶な真似は止せ。くどいようだがお前は巻き込まれただけなんだ。」

 

「私の方こそ本当にごめんなさい。…でも、約束はできないわ。」

 

 

 何故だ、イェーガーは問う。その疑問に理奈は自分の性分だから、自分の性格上こういうものは理屈とかそう言った物じゃなく気が付けばきっと前に出てしまうんだ、とそう答えた。実家の蔵でダリオが神社に火を点けたことを独白していたのを聞いた時だって考えるよりも先に前に飛び出していた。自覚はある…感情で動くタイプの人間だから、こういうのはどうにもできないのだと。

 

 

 

「…はぁ、わかったわかった。もういい…感情で動くヤツは総じてどうにもできぬモノだ。」

 

 

 

 仮面の奥で眉をハの字に曲げているであろうイェーガーは彼女の言い分を理解した。理知ではどう足掻いても抑え込めない物が世には存在する。人が人という生物である以上はその命題が必ずついて回るのだ…脳に記憶関連とは別でまた一つ頭痛の種が増えてしまったが、致し方あるまい、せめて自分が可能な限りこの子を護り通せる様に努めていきたいものだ…

 

 

 

 

(もう二度とあんな犠牲を出したくなどないからな…。)

 

 

 

 

 

 

 

 

(…。…? "あんな犠牲"……?)

 

 

 

 

(犠牲ってなんだ? 俺は誰かを過去に護り切れなかったのか? 誰だ…?)

 

 

 

 

 

 

 白馬理奈に対して過保護なまでの護り通したいという感情、責任感、使命感が彼の中に渦巻く。

 

 そして今また自分の虫食い穴だらけの記憶に全容が見えてこないエピソードが浮かんだ。

 

 

 

 何もかもが分からないけれど、それでも…無意識で"重ね合わせていた"。だから不安なのだ。

 

 

 

 

 【悪魔城】に偶然巻き込まれてしまった一般人の娘だなどと…これでは…!これでは…っ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――これでは…【23年前の忌まわしい事件(白馬弥那が死んだ日)】の再現ではないかッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っっ!!う、うぁ、うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!?!?!」

 

 

「イェーガーさん!?」

 

 

「問題ないッ!…いいんだ、気にするな、大丈夫だから、お前は、何も心配するな…。」

 

 

 

 男性は自分の事を心配そうに覗き込んでくる"白馬の娘"を見た…。「少し、ほんの少しだけ思い出せた事があるだけだ。」そう告げて、身に触れようとする彼女を手で制す。深呼吸、息の乱れを整えた所で彼は極めて冷静を装い、思い出せた記憶の一部を頭の片隅に一旦置いておき彼女に向き直る、そうだなこの状況下で大事なのは情報の分析だ、一歩一歩目先の事を整理していこう、まだ【ネビュラ】を一目見てその価値をどうやって理解したのかとか訊きたい事は山積みだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Hold your hands up!!(動くな手を上げろ!!) 特に仮面の怪しい男ッ!!」

 

 

 

「なにっ!?」「だ、誰!?」

 

 

 

 声のする方を向けば、一人の男が立っていた。金髪で顔立ちは日系人寄り。体格に恵まれていてガッシリとした身体つきで相当に鍛えられた人物だと一目見て分かる。無地の白シャツに時代掛ったアメリカ開拓時代風のベストを羽織り、ホルスター型のサスペンダーを取り付けていて彼は手にした銃を狩人に向けて言い放つ。

 

 

 

「テメェからは暗黒の力を感じるぜ…、見るからに怪しい仮面で顔も隠してるしよォ…さては人間に擬態して女の子襲おうって魂胆だな?頭の良い魔物じゃねぇか、えぇオイ?」

 

「!? ま、待て…俺はちがっ―――」

 

 

「や、やめてっ!!」

 

 

「理奈!?」

「うおぉっ!?お、おい嬢ちゃんバカ!あぶねぇって銃の前に立つんじゃねぇ!?」

 

 

 銃を向ける男の前に少女は立ち塞がり両腕を広げてイェーガーを護ろうとする。身を挺して大の字で自身を護ろうとする理奈の名を叫ぶ狩人、そしてそんな二人を見てどうすればいいのかと眼を白黒させる金髪の男。三者三葉の状況で理奈は必死に声を上げる。

 

 

「この人は何も悪くないの!私の事をずっと城の怪物達から護ってくれたのよっ!!撃たないでお願いっ!!」

 

 

「えっ、いや、あの…。」

 

 

「馬鹿者が…っ!確かに言ってはいたが感情で動き過ぎだろうがっ!!おい貴様!彼女を撃ってみろ俺がただでは済まさんぞ!!!」

 

 

「えっ、あの、だから…。」

 

 

 

 困惑。銃を構えた男はポリポリと頬を掻き「えぇ…これじゃ俺が悪者みたいじゃん…。」と声を漏らした…。そんな彼の背後にゆっくりと近寄る人物が居た。

 

 真っ青なローブに身を包み顔を隠す様に深々とフードを被った女性だ。僅かにフードの隙間から覗かせる豊かな髪は美しいブロンドヘアーで、女性は凛とした声で男性に向けて声を掛ける。

 

 

 

「どうやら貴方の早とちりの様ね…見なさい、その人が手に持っている鞭を。」

 

「姉上? こいつが手に持ってる鞭が一体……!?!?聖鞭【ネビュラ】だァ~!?」

 

 

 女性は深々と被っていたフードを脱ぎ、顔を晒した…、一言で美女、美しいブロンドの髪に白雪の様な肌、本物のアメジストと見間違えてしまいそうな宝石の瞳、全体的にエキゾチックな雰囲気を漂わせる彼女は頭をぺこりと下げて「申し訳ありません、弟が御無礼を…。」と謝罪してきた。

 

 

 

「…あぁ、…【ネビュラ】を使えるっつーことはアンタ、あれか?暗黒の力は使えっけど悪ぃヤツじゃねーんだな。」

 

 

「あ、あぁ…解って貰えたのなら幸いだ、理解してくれたのならすまないが銃を下してもらえないか?」

 

「ん?おおー!!わりぃわりぃ。」

 

 

 

「…えっとぉ…貴方達は一体?」

 

 

 

 なんだか調子の狂いそうな二人組が突然現れた、よくわからないが誤解が解けたと解釈した理奈は素性の解らない二人の事を尋ねてみることにした…。

 

 

 

「応!俺達はこの城、いや、厳密に言えば城に入り込んだ糞ッたれのくだらない野望を阻止しに来たのさ!」

 

「"教会"から派遣されたヴァンパイアハンター、つまりは退魔士です。見た所貴女は巻き込まれた民間人のようですね?民間人の保護、救助含めて私達は来たのです。」

 

 

 この城に派遣されてやって来たという姉弟は自分達の所属と目的を告げ、次いで銃を仕舞った弟は自分の名を名乗った…。

 

 

 

 

「俺の名前はカイ。 カイ・ヴェルナンデスだ、よろしくな。」

 

「姉のフランチェスカです、以後お見知りおきを…。」

 

 

 

 

 これが幻の様な一夜を共にする他の仲間であった。数奇な運命の元に集った4人の邂逅である。

 

 




第1章 完!


『暁月の円舞曲』が遊べるアドコレに一緒に入ってる『白夜の協奏曲』から【タロス】出演



>こんな雑草なんぞに殺されかけている暇なんてないっ!!!
>彼女は黄金の宝箱の蓋を開けた。



『金箱』

パカッ!


『金箱』<[ネビュラ]

チャッチャチャーラチャッチャチャーラ チャララチャラララ~♪

※注)金箱はHDに置いてボスからしかドロップできませんので道中存在しません
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。