悪魔城ドラキュラ -幻夜の追想曲-   作:大根のチョコラテ煮

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今回グレーゾーンな要素がありますがあとがきで言い訳させてください


2章:夢見がちな少女④ -煤黒の進攻-

- side 三人称 -

 

 

「魂と力が融合している。であれば鏡の力の器となったその身を滅すれば当然、吸収された物は解き放たれます。」

 

 

 襤褸布の悪霊は被り布越しの真っ赤な瞳を理奈に向けて言い放った。

 

 

「ハァ…私としては生まれ持っての才ある人材なので鏡の力を抱えさせたまま闇の眷属に変えるなりして手元に置きたいのですが。単純に戦力になり得るし悪魔城を封ずる厄介な鏡を元に戻したくない。」

 

 

 新たな魔王が誕生すれば日食の封印も長い年月は掛かるが内側から破れる目途も立つ、だが封印の鏡が健在であっては現在進行形で乗り込んできたヴェルナンデス姉弟の様に厄介なハンター共が地上から日食の中に攻め込んでくる恐れがあるのだ…!それこそ聖なる鞭を携えた『ベルモンドの血に連なる者』や人間に扮している"有角幻也"…いや『アルカード』の様な厄介者共が!!

 

 件の鏡は悪魔城と外界を繋ぐ鍵なのだ、1999年の封印より白馬神社に保管され続けたコレの所為で忌まわしき日食の中に城はある。ダリオは鏡の力を元に戻したがっているが本音を言うなら【ネクロマンサー】はそれに大反対。罷り間違って地上に戻ったダリオの手から鏡が人間共に奪還されたら先述の危害に加えて、また日食の晩や白馬家の人間による祈祷…あるいはソレに近い状況が揃った途端に再び封印される恐れがある…不穏因子は可能な限り摘み取ってしまいたい。

 

 

 

「闇の眷属に変えるだぁ?このガキを魔物にしちまおうってか?」

 

「っっ!!」

 

 

 

「理論上は可能ですからね。『グラント・ダナスティ』という大昔の人間が実際になりました。」

 

 

 

 自分は魔物にされてしまうのか!?一連の話を聞いて理奈は肩を震わせた。淡々と言葉を連ねる死霊使いの言葉は止まらない。

 

 

「瘴気に満ちた城内でこれだけ平然としていた辺り潜在能力は高い筈、闇に堕とせばさぞ優秀な手駒になりましょう。…尤も教団の貴方達は大事な取引相手、鏡に戻したいのなら…不本意ですが致し方ない。」

 

 

 くどいようだが城の住人である死霊使いは厄介な鏡を何の役にも立たない唯の鏡にしておきたい、そして将来的に白馬の血を引く何者かが似た手口を講じて来るなら目には目を…だ。

嘗て【暗黒神官シャフト】と呼ばれていた魔王に仕える者が取った手段と同じく、並みのハンターでは勝てない最強のハンターを手駒として置いておく策と変わらない。白馬家の祈祷師がまた封印に来ようものなら闇に堕とした理奈を――――堕ちた巫女を使って祈祷の力を妨害するというのも意趣返しとして面白いだろうに…。

 

 

 …だが。

 

 

 ダリオ達、ウィズ・ライト教団の残党は死霊使いにとって大事な取引相手だ。封印された城と外界のゲートを開き、更には魔王ドラキュラが居なくなり随分となるこの城に新たな城主を用意してくれるというこの上なく素晴らしい取引相手なのだ…Win-Winな関係の為にある程度の譲歩はしてやるつもりで居るのだ。―――"知己の(よしみ)"という点も加味した上で。

 

 鏡の使い道も人間が住む国家の首都等…人口比が多い場所で突発的なテロ同然にゲートを開き"外"に悪魔城の魔物をご招待してくれたり、数多の人間(エサ)を城に吸い込ませてくれるのだから…一応それはそれでメリットはある。先程述べたリスクもあるのだが。

 

 

 

「コイツを魔物にねぇ…。」

 

 

 

 じろり、ダリオは掴んだままの少女を睨みつける…。目の前の襤褸布は利害の一致からくる協力者だ。機嫌を損ねるのは好くないことだと解っているがダリオ自身、性格上その手の"接待"というのを嫌う。もっと言えば理奈の事を苦しめて殺してやりたい気の方が強かった。

 炎の様な粗暴さと破壊衝動を煮詰めた精神性は年老いても鳴りを潜めない、そんなダリオだからこそ"その思い付き"が浮かんだ時は妙案が浮かんだとばかりに笑みを浮かべた。

 

 

「なぁ、お前ギャンブルは嫌いか?」

「?」

 

 

「俺は好きだ、自分が勝つと睨んだ方にチップを賭けてそんで読みが当たれば儲けを総取りよ。最高にスカッとするぜ!」

 

「何が言いたいのですか?」

 

 

「ヘッ!ちょっとした賭けでもしねぇかって話だよ。」

「賭け?」

 

 

「応ともよ、丁度此処【煉獄闘技場】はそれにお誂え向きな場所だろう?」

 

 

 常に構造が変わる魔の城、そこには以前とは創りが異なるが確かに闘技場が存在していた。

 

 古代ローマの剣闘士奴隷が明日を生きる権利を得る為だけに戦ったコロセウムの様な闘技場が。そこかしこに爛々と燃える炎を灯した燭台が置かれており石灰と赤焼けの煉瓦で出来た壁や床を照らしていて不思議と熱を帯びていた、触れてみれば数刻前に直火で燻られてその余熱でも残って居るんじゃないかと思える程には熱が篭り続けていた。

 碌でもない興を思いついた老人が言葉にした施設名は2035年の折に出現した場所だが当時はもっと地の底に存在していた…少なくとも月明かりの侵入を許せるくらいに地上とは近くなかった。過去の事例から喩えるのなら今回の闘技場は『モリス家の青年』と『オーリン家の少女』が【ベヒモス】と対峙した時代の構造に似ている。

 

 

「…あぁ、なるほど貴方も中々に人が悪い事で。」

 

「なんとでもいいやがれってんだ。どっちが勝っても公平だろ?」

 

 

 皺が濃く刻まれた悪人面の男は更に口角を吊り上げてそう言い放つ。未だ掴まれたままの少女は二人の会話について行けずただ困惑としていたが、ただ…直感的に感じ取っていた、虫の報せ、第六感とでも言うべきか、これから自分にとって何か良くない事が起きようとしていると…!

 

 

―――

――

 

 

- side 理奈 -

 

 

「あぐっ!」

 

 

 もう何度目になるか分からない、乱雑に物の様に扱われて投げ飛ばされる。痛む頭を押さえながら私は辺りを見渡した…。布お化けとダリオが賭けがどうたらとか話していたかと思えば私を引き摺って長い廊下の間にある小さな部屋―――長机や木製のベンチ、古美術品と言われても違和感の無い立派な収納棚、なんだか運動部の部室とか選手控室みたいな感じの部屋―――その先を抜けた開けた空間に投げられた。

 口の中がジャリっとしてそれが砂を含んだからだって解った。さっきまでの奇妙な保温性があった石畳とは違う大地を握りしめる様に拳を作って立ち上がろうとする…。そして此処がどんな場所か悟ったわ。

 

 

(ここって…闘技場の中心…?)

 

 

 自分の置かれた状況は解っているつもりだった、イェーガーさん達とも離れ離れになって悪党達にこうして捕えられて、まな板の上の鯛も同然。彼らの胸先三寸でいつでも首を斬られかねない。

だっていうのに目の前に広がる景色に思わず圧倒されちゃって…。まるで映画のセット、ううん…そんな言葉じゃ表現しきれない。国外旅行とか行った事無いし本場のローマ闘技場なんて見た事も無いけどきっと本物はこれと同じくらい壮大なんだろうなって息を飲んだわ、今この瞬間だけ自分の立場さえも忘れて。

 

 

ヒュンッ!

          ドガッ!!

 

 

 

「い"っ!?」

 

「"死合"開始前に呆けるなんざ随分と余裕じゃねぇか。」

 

 

 壮観な景色の余韻から唐突に現実へと引き戻される。背中に何かを投げ付けられた痛みで…。恨めし気な顔で振り返ればやはりと言うべきかダリオ・ボッシが腕を組んで私を見下ろしていた。

次に自分の傍らに落ちていた物体に目を向ける、あの老人が私にぶつけた物だ。継ぎ接ぎだらけの帆布で出来たズタ袋で見た感じだと袋の膨らみから棒状の物と500mlのペットボトル程の何かが一つ入っているのが察せられる。

 …今時こんな時代錯誤な袋ファンタジー小説かゲームくらいでしか登場しないでしょうに。反射的に伸ばした手を袋に掛ける。

それを見た悪辣な老人は何が面白いのか「安っぽい鏡の駄賃だ、ありがたく受け取んな。」って楽し気にニタニタしながら私から奪い取った神社の鏡を見せびらかしながら言ってきたのよ…!あれだけ大事にしていた鏡を奪われてこんな風に見せびらかされて…悔しくて、情けなくて…っ!

 

 

「くっ!一体何をさせるつもり…!?」

 

 

 老人を睨みつけて目的を聞き出そうとする…。何気なくこの人が言った"シアイ"って言葉とこの場所に連れてこられた事から大方見当は付いちゃうけれどね…!!

キッと睨みつけていた私の顔を睨み返しながらダリオは言う「…チッ、どこまでも気に入らねぇ面構えだ、泣き叫びながら命乞いをするのが楽しみだクソが」なんて言い出したわ。そして次の言葉を続けた。

 

 

「フン!【ネクロマンサー】とちょっとした賭けをすんだよ、内容は至って簡単でアイツが選別した魔物一匹とテメェがやり合ってどっちが勝つかだ。」

 

「…最低ね。」

 

 

 

 予想は、付いてた…。うん、付いてたよ。

普通に殺すんじゃなくて見世物にして殺しましょうねってコトでしょ…悪趣味、極まりないね…。

 

 

 

「テメェの眼を見てると世界一ムカつく『気障ったらしい小僧』を思い出すんだよ…!!」

 

「だから神社でこの俺の顔に小汚ねぇ棒切れブン投げた借りも含めて苦しめて殺してやると決めてたのさ!…これから奴が飼ってるペットの魔物にお前はたっぷり可愛がって貰えるんだぜ?」

 

 

「散々嬲られて、苦しめられて…心を完全にへし折られて、泣き叫びながらこの世に生まれてきた事を後悔していくんだ、ハハッ!ざまぁねぇな!!」

 

 

「お前がポックリ逝っちまえば俺の勝ち、ペットが飼い主の為にと半殺しで生捕るか万が一にでもお前が退ければ【ネクロマンサー】の勝ちさ!魔物化なり人体改造なり好きにしなってハナシだ!」

 

 

 

 

 

 …一気に捲し立てる様にこの老齢の男は言葉を矢継ぎ早に発して行った。額に血管を浮かび上がらせ泡立った唾を飛ばしながら言葉を紡ぐ有り様は狂気に近い形相で…怖かった。

彼の発言内容も然ることながら皺だらけの男性が鬼気迫る表情で私にこれでもかと謂わんばかりに悪意をぶつけてくる事に何とも言い難い恐ろしさを感じた。

 

 

「っと…もう死合が始まっちまうな、精々観客席の俺達を楽しませな。」

 

 

 それだけ言うとダリオは選手控室の方へと歩いて行く、遅れてハッと我に返った私は直ぐに後を追おうとしたわ…。魔物と一騎打ちですって?冗談じゃないッ!無茶苦茶なショーに真面目に付き合う必要性なんて無い!!矍鑠な老人が競技場と控室を繋ぐ唯一の出入り口である路に一歩足を踏み入れた所で商店街のシャッターよろしく鉄格子がゆっくりと降り始めていくのが見える。

 このままじゃ中に取り残されちゃう…っ!走って中に駆け込もうとしてもダリオにきっと邪魔されるのは解っている、だからって何もせず此処で奥の門から死霊使いのペットが入場してくるのを呑気に待っている訳には行かないッ!

 

 

 

 ――――ズキッ!

 

 

 

 …遅れて我に返った私は、直ぐに後を追おうとしたわ…。

 

 でも無理だった。

 

 

(~~っ!!あ、脚が…ッ! 一体何時!?さっき投げ飛ばされた時に…!?それともその前の尋問の時!?)

 

 

 此処に投げ入れられた時だったのか、引き摺られる前まで居た部屋で鏡をすり替えられたと勘違いしたダリオから暴行を受けた時だったのか…。今となってはもう分からないわね。

脚を抑えて蹲った私の耳に飛び込んできたのは大歓声だった…。声に驚いた私が顔をあげても観客席には人っ子一人居なかった、道中何度も見てきた骸骨や鎧の怪物も【ミノタウロス】だって居なかった。

 

 でも不思議と席に"何か"が居ると感じられた。見えないけど"何か"がそこに居る。

 

 

 観客席で声を上げる存在達の声に続いてゴン!ドン!って奥の鉄格子の門に何かが激突しているのが音で解った。急速に全身から血の気が引いた気がしたわ…。それから直ぐの事、人間ってパニック状態だとか恐怖とかそういうのが一周回ると変に冷静になるんだなって実感した瞬間だった。私はズタ袋を開いていた中身を確認し始めた…。

 完全に鉄格子が降り切った出入口からの脱出はもう無理だと判断した以上、今自分にできる事のベストを尽くすしかない…脚さえもまともに動かせない今の状況はどう考えても不味い。何か状況を打開できる物は無いの…!?紐を解いてナップサックの口を広げる様に袋の中を覗き見てまず脚と痛めつけられた身体の節々の問題は解決できたと安堵した…。

 

 

 500mlのペットボトルの様な何かが入っているのは袋の膨らみから解っていた。プラスチック製の容器とは違う硝子に似た材質の瓶だ。あの距離から私の背中目掛けてダリオに投げつけられても砕けない頑丈さから強化硝子か何かだったのかな?中身が零れなくて良かったと思う。

 素手で回して取れるタイプのコルク栓が付いた透明な瓶の中には見知った青色の液体が入っていた――そう、【ポーション】だわ…。

 

 

 

 

 ……"私を苦しめて殺したい"、か。

 

 

 

 一思いに一気に、なんかじゃない。長くジワジワと嬲れる様に、と。その為に入れたのね。

 

 

 

 ガラガラと遠くで鉄格子の門がゆっくりと開門していくのが見える―――掌の上なんだろうね、きっと。コレを飲む事で怪我も痛みも治ってその分、"即死させずに長く傷つけられる"だろって。

 

 

 

 自殺願望がある訳じゃない。まだ生きたい、生きていたい…!こんなワケの分からない城から脱出してまた友達と会って話したいことだってある。やりたいことだって沢山ある。この城にお父さん達も迷い込んでるかもしれないって可能性もフランチェスカさんから聞いたんだ!!

 

 希望があるのなら縋りつく、それが人間だもん…。イイよ飲んであげるよ、相手の狙い通りだって解った上で飲むよ…っ!最後まで諦めたくなんてないから…!

 

 

 

「そうやって敵に塩を送ったのは失敗だったってわからせてあげるわ…!」

 

 

 

―――

――

 

- side 三人称 -

 

 

 

 

 泥水を啜ってでも生き延びてやる…!

 

 

 

 覚悟を決めた少女の眼にはそんな意志が宿っていた。まだ人生やりたいことは幾らだってある、学友と他愛の無い話で笑い合う時間をまた過ごしたい、神社は焼かれてしまったけれどまだ残ってる物だってあるかもしれない!家族が生きているのなら自分が弟や伯父伯母、両親を探して助けてあげなくちゃいけないんだ!彼女は自分にそう言い聞かせて鼓舞する。

 

 

 狩人曰く「想像していた以上に目先の困難に挫けず進んでいく娘」と評した通り。

 

 

 地球上の常識が通用しない空想上のバケモノと思われていた存在が犇めく城に迷い込み不安を抱いた時もあった。怪異と対等に渡り合える3人と比較して何もできない自分の無力さに歯痒さを覚えた事も有った事だろう。今だって本音を言えば怖い物は怖い。不安はあるし本職の退魔士達と比べて平和な世で生きてきた小娘が何処までやれるかなんて解ったモンじゃない。だけども…

 

 

 

(イェーガーさん…。)

 

 

 

もしかしたら退魔士の才があるかもしれないな

 

 

 

 仮面をつけた黒衣の男が荒城回廊で何気なく言った言葉をもう一度思い浮かべた…。あの時、理奈自身が「えぇ…素直に喜べませんよ、それ」と困惑の表情を浮かべた内容。何の確証も保証も無い不安に揺れるたった一言のメッセージ。それでも…!それでも今だけは…!!

 

 

 

 

 

   「……此処を生きて出る為に、今だけはその言葉を信じさせて…っ!」

 

 

 

 

 

 嘘か真か、自分にそんな才能があるのか…。判らない、だけど今の彼女…白馬理奈にとって狩人の言葉は縋りつきたい一本の藁にも等しい。

 

 座して死を待てる程、齢17歳の少女は達観しちゃいない…どんなに馬鹿げた話だとしても現実味の無い話だったとしても0%で無いのなら…っ!自分に秘めたる才が有るという嘘の様な奇跡を信じたい…!いや有ってもらわねば困る、その時点で彼女の死は確約された物となるのだから。

 

 

ギイイイイイイイィィィィィ………!!

 

 

 彼女が決意を胸に、ズタ袋から1本の得物の柄を握ると同時に"地獄"の門は開かれた…!沸き立つ見えざる者達の歓声、狭い路から飛び出す灰色の影ッ!

それは古代ローマの剣闘士達が幾度となく戦った百獣の王が如く飛び出していったッッ!

 

 

 

 

「グォオ オ オォ ォオオ オ オオオォーーーーッッ!!!」

 

 

 

 雄々しく咆えながら競技場(アリーナ)に着地した4つ足の獣はライオンとほぼ変わらぬ図体のデカさを誇る猟犬だった。ただし理奈が知る一般的な犬とはあまりにもかけ離れた姿の。

胴体から先に伸びる首は"三つ"…そうこの犬は三つ首なのだッ!!

 地獄の門番として語られる魔獣【ケルベロス】は今宵、番犬から猟犬として円形闘技場を鮮血で彩る役者として現れたのである…っ!

 

 

 

 

 

 

「ほー、アレがお前のペットか?やる気満々だなァ!」

 

「躾がなっていない困った狗ですよ、加減しろと言っても全く聞きませんからね。」

 

「はっはっは!よく言うぜ、そう言いつつもクソガキを半殺しにしてお前の下に連れてくるようにとか細かい芸を仕込んでんだろ?」

 

「ふふふっ、さて、どうでしょうね。」

 

 

「まぁ、良いだろう殺そうが生捕りだろうが、どっちが勝っても"公平な賭け"って事だわな。俺はお前の犬が加減をミスってぶっ殺す方に賭けてるがな!」

 

 

 

 

 本音を言えば自身の手で地獄の責め苦を味合わせた後に焼き殺したかったが、獣畜生に身も心もズタズタにされて失意の儘に落命していく様を眺めるのも一興だな!と理奈に対して憎悪の念を隠す気がまるで無い老人が笑いながら言葉を漏らす。彼の60年間の人生で最も消し去りたい記憶を思い出させた罪は重い。

 

 獲物を生捕りにしようと手加減すればするほど一撃の致命傷を避けようとする動きになるのは狩猟の基本だ。結果として見れば長い時間を掛けて鈍い痛みを延々と与え続ける…下手な拷問モドキなんぞよりも苛烈で生々しいやり方だ。ダリオの気も晴れるし死霊使いも駒を手に入れられる機会が十分ある両者に利がある見世物。

 

 

 

 特等席から観戦する二名の賭けは狗が少女を瀕死に追い込み生捕るか、加減に失敗してうっかりそのまま死なせるか、という部分に焦点を当てていた。最初から理奈が狗に勝つなどとは露程にも思っていないのである…理由は大きく言って二つ、一つは戦闘経験の無さ…教会の育成機関で育ったワケでもなければ本職の退魔士に弟子として鍛えられた訳でもない、そしてもう一つは―――

 

 

「首が三つもある犬!?【ケルベロス】が現実に居たらこんな感じになるのか…!」

 

 

 

 理奈は袋に入っていた武器を取り出した…紅い鞘に納められた長く重みのある日本刀と思わしき剣だった。白馬家の習い事として幼少よりずっと剣道はやってきた。全国大会でも堂々と勝ち上がり身体能力が常人離れした女子友達の八重や詩織らとも真剣勝負で一本取れる程に剣の心得はあったと自負していた。幸か不幸か袋の中に入っていた武器は彼女の得意とする得物ではあった。

 

 慣れ親しみ振り易い形状の武器が入っていた、それは間違いなく幸である。では何が不幸なのか?

 

 

 

 

 

 

 そう、コレこそが戦闘経験の無さとは別で勝てない理由のもう一方なのである。

 

 

 

 

「グルルルルルルル…!」

 

 

 威嚇するように唸る灰色の猟犬、三つ首それぞれが抜刀術の構えを取った理奈を睨みつける…。

摺足で位置を少しずつ変えながら理奈が、隙を伺う様に左右を行き来するように三つ首が互いを牽制して間合いを取り合う、緊張が走る最中、動き出したのは狗の方であった。

 

 脚をバネの様に伸ばし一気に距離を詰めてくる相手を前に理奈は落ち着き払う。人間の骨など容易く砕く顎、肉に深々と刺さる牙、皮膚を裂く爪、どれもコレも命を刈るに適した武器だ。

それが全力で迫ってきていても彼女は慌てない、大会で相手の剣先を読み、どう来るかを見切りそれに対して適切な行動を取る…!

 

 

 "朝廷の時代より続いてきた白馬家"に伝授され受け継いで来た古流剣術…!

 

 

 相手の動きを見定め一撃の太刀筋の下に斬り伏せる剣戟…!理奈が培ってきた(わざ)…っ!

 

 

 

 動き出した狗の姿を捉えた彼女は相手を視る、飛び出して来た狗の手足はどうだ?前足は深胸筋に働き掛けて後ろに伸ばした状態、着地時ならともかく宙を駆ける今、開いてから爪で裂かれる心配はない、飛翔から着地の瞬間に理奈の身を喰らわんと全首が牙の鋭さと咬合力による食い千切りを試みるかもしれない。だが獅子にも匹敵する巨体と此方の対格差を利用すればそれも回避はできる…!

 

 

 

 

―――――――"月にさえ風をよび、魔をうちはらうと伝えをのこせし古流剣術"

 

 

 

 

(……………此処っ!!)

 

 

 喩えば頭部への一撃を狙う相手の太刀筋を首をズラす事で、身体を相手との横軸から逸らす事で一撃を受ける事を避ける。

逆に空振らせた所で出来た後隙にカウンターで胴に一撃を叩き込む…ッ!当たり前の様にできていた事を彼女はやろうとした刹那…!

 

 

 

 

―――――ぐっっっ!!

 

 

「なッ!?さ、鞘から抜けないッッ!?」

 

 

 

 

 タイミングは間違いなく完璧だった。物の怪を前にして冷静さを保てたこと自体が普通の人間基準で考えるなら大した者だった。更にその上、"普通の刀"だったなら間違いなく一太刀入れらた事は間違いなかった…。鞘から引き抜き居合切りを放とうとした途端、抵抗感を感じた。台車の車輪にブレーキの摩擦が掛かっているというのに知らずに引いて動かそうとしている時の感覚…っ!長く放置された自転車に刺しっぱなしの鍵が錆び付いて引き抜けない時と同じようなソレ…!

 

 

 

 そう、コレが理奈に勝ち目のないもう一つの理由、この刀…【アカサビ】ているのだッ!!

 

 

 紅い鞘と同じく刀身そのものが赤錆だらけという、ナマクラ以下の粗悪品で鞘から引き抜くことさえ出来ないのである!!仮に抜くことができたとしても刃を潰した訓練用の剣よりも粗末な切れ味で【竹刀】の方がまだ武器として有効に活用できるまであるという…。

 

 鞘から抜けなければただの模造刀以下の棒切れ。初めから連中は理奈にまともな武器など与えるつもりは無かった…何の抵抗もできぬ儘、狗に喰われる様を愉しむ気でいた。

 

 

 

ドゴッッ!

 

 

「きゃああぁぁぁぁっ!?」

 

 

 

 

 【アカサビ】――便宜上、この赤錆びた無銘刀をそう呼ぶ――を鞘から引き抜けなかった理奈は当然相手から見れば格好の的だった。想定外の事態で本来避けれた筈の攻撃を避けれず隙を晒した少女に獣は飛びかかった。飼い主の命令は死なない程度に痛めつけて捕えろとの事だった、故に【ケルベロス】は噛み砕く事もしなければ引っ掻く事も無く体重を乗せた渾身のタックルをぶちかまして相手を競技場の中央に吹き飛ばした…。

 

 若い女子の身が空を舞う、それを嗤う姿の見えぬ観客共。高さ2mほど浮かび上がった彼女の身はどしゃりと地に落ち、呻き声をあげる。痛みはあるが身体は動く…!動きを止めてはいけない…ッ!

 

 

「うっ……!何この刀…全然抜けないッ!!」

 

 

 【アカサビ】を杖の様に扱い重く感じる自分の身を起き上がらせ、渡された武器に悪態を吐く…鞘から抜けなければただの棒切れではないかと!!

 

 

 

(どうする!?どうすれば…!!……落ち着くのよ、考えなさい、何か…何か打開できる方法を…。)

 

 

 理奈は辺りを見渡す、利用できる物はあるのかと―――広い競技場、周りは高い壁と鉄格子の門、遮蔽物になりそうな物も何も無く、地形に関しても階段や段差があるわけでもない砂と瓦礫が落ちてるだけの平坦な地面…折れた武器の一本二本落ちているなんてことも無い。

 

 そこまで考えていた所で少女を撥ね飛ばした魔獣の三つ首の内、中央の首が大きく息を吸いこんだ。何事かと彼奴の方に眼を向ければ…獣畜生はその場で高く跳び上り"火を吐き出した"のだ…!!

 

 

   ゴオオオオオオォォォォォォォ…!

 

 

「ハッ!?い、いけないっ!」

 

 

 それを見て彼女は直ぐにその場から移動を始める。地獄の番犬が吐き出した炎が空から地表に辿り着くと同時に波の様に広がっていく、大地に油でも撒かれていてそれに引火しているんじゃないかと思える程に、地走りの炎は瞬く間に先程まで理奈が居た場所を飲み込みそのまま闘技場の壁にぶつかり小爆発を起こす。

 

 

「バウッ! バウッ! バウッ!!」

 

 

 咳き込むような速度で魔犬は炎の吐息を何度も吐き出す、その度に少女は地を転げまわり避け続けるのだが…。

 

 

「うっ!?…この炎、全然消えない…ずっと残り続けてるっていうコト!?」

 

 

 初撃からここまで吐き出された獄炎のブレスは消えることなく燃え盛っている、地面に着弾した場所から地続きに壁に突き当たるまで線をを作って…。広い空間とはいえ、理奈の移動できる範囲は順調に狭まれていった。気が付けば周りは火の海、赤々と燃え盛る壁が彼女の背の倍以上の高さまで聳えている。

 

 

 

 

 

「これであのクソガキも終わりだな。」

「…。」

 

 ドカ!っと背凭れに身を預けながら火の海に囲まれた理奈と直線上に居る【ケルベロス】を観てダリオは呟いた。

 

 

「さっきから転げまわるだけしかしてなかったがあんだけ逃げ道を塞がれちゃあもうどこにも逃げようがねぇ、お前が言う様な才能なんてモンも無かったな。」

「…。」

 

 

「オイ、何とか言えよ賭けに負けたからってダンマリはねぇだろう?」

 

「……見誤りましたね。」

 

 

 

「ハン!見誤りまくりだ、あんなガキを魔物に変えたからってどうせ大した戦力にならねぇに決まってらぁ!死体から鏡の力を抜き出す準備を―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの狗では力不足でしたか、もっと強い者を差し向けるべきでした。」

 

「あぁん?」

 

 

 ダリオは一瞬【ネクロマンサー】の発言の意味を図りかねた。

 

 

―――

――

 

 

「ハァハァ…っ!」

 

 

 

 熱い、蔵の時程ではないが内側まで焼けそうな熱気が辺りを包んでいた…。狗が吐き出す獄炎の檻に囚われた彼女の目の前には相手が居る。今に至るまでに幾度となくブレスを避け続けた彼女は時には完全には避けきれず僅かに炙られる事もあった。衣服は随分と焼け焦げて肌にも火傷は出来ていた、火達磨になりかけても直ぐに地を転げながら揉み消して来たものだ。

 煤に塗れ随分と黒に染まった彼女は目前を見る、直線上の【ケルベロス】に加えて左右は既に燃え盛る煉獄の檻だ、前後しか彼女には足の踏み場が無かった。

引き抜くこともできない粗末なナマクラ刀一本を持った彼女は…此処に来て再び抜刀術の構えを取りだす。

 

 膝を折り曲げ、腰を落として左手は鞘を右手は柄を持ち、静かに深呼吸をし始める…焼けつく様なひり付いた空気が肺に浸透する…。

 

 

「………。」

 

 

 抜刀術は言うまでもないが相手から切り込まれた際に引き抜く動作で相手を切り付け、初撃の後に続く二閃目の太刀で致命の一撃とする待ちの一手。一か八かでしか抜けず更に刃も期待できない様な武器で行う技ではない。狗は考える…「逃げ場を失ったから一か八かの手段に出たのか」と獰猛な獣の顔つきにも見て取れる綻びが生まれる。

 もうこの女は何処にも逃げきれない、だから最期に斯様な手に出るしかなくなったのだと…!

窮鼠猫を噛むとは言うが、この鼠に噛まれた所で然して痛くあるまい、【アカサビ】という武器が如何に使えない塵であるかは獣畜生ですら理解している。

 

 三つ首の化け物は一度後ろに飛び、距離を取って助走を付けてから理奈へと迫り始めた!!!

 

 彼女を押し潰してそのまま身動きを取れ無くしてから三つ首で手足を噛み千切り、四肢を捥がれた小娘を飼い主たる死霊使いに献上しようと考えたのである。

 

 

 

  タッッ! タッッ! タッッ! タッッ! タッッ!!  タッッ!!!

 

 

 猟犬が地響きを鳴らしながら抜刀術を構えた少女へと駆け出す!

お互いの間にある空間は狭まりそしてあと40m、30m、20m…!10m―――

 

 

「――――!!!」

 

 

 "柄を握っていた理奈の右手が離れた"…ッ!!膝を曲げて腰を落としていた彼女が前のめりの姿勢に変わっていくのを狗は見た。柄を握っていた右手を前へ…右前脚の先へと運び"何かを掴む"!

掴んだ拳を前方に向かってアンダースローでも投げる様に動かしながら開き、理奈の右手からは『砂』がバサリと宙に舞うッッ!!

 

 

「!?!?!?!?!?―――キ"ャインッ!?」

 

 

 走り出した物は急には止まれない、慣性の法則だ。理奈の目つぶし砂掛けに真正面から突っ込んだ猟犬は案の定、目を6つとも潰されて小さな悲鳴をあげる。獣の本能らしく眼球への痛みから怯み意図せず制動を駆ける様に前足の爪を地に突き立て始めた。一瞬の隙、急制動を掛けた事でほんの僅かに落ちた速度と目をやられた事で理奈を視界に映せなくなった一瞬ッッ…!!

 

 一瞬だ、その一瞬があれば十分だった…!!

 

 

 

 

「うらああああああああぁぁぁぁぁぁ――――ッッ!!」

 

 

―――――――――――ガッッッッッ!

 

 

 

「ク"カ"ァ"ッ ウ"コォ"オオオオォォォォッ"ッッッッッ」

 

 

 闘技場に声にならない獣の声が響いたッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なにィ!?あ、あのガキぃ………【アカサビ】を鞘から抜かずにそのまんま"鞘ごと犬の口ん中に突っ込んで喉奥にぶっ刺しやがった"だとぉォォ!?」

 

「あの抜刀術の構えはフェイントという事ですね、最初からああして身を屈めていれば直ぐに砂を掴める姿勢で狗もそれが狙いだと気付かない。」

 

「け、けど口ん中に棒を突っ込まれた程度じゃ―――」

 

 

 

「いえ、勝敗は決しました。…吹き上げる炎の所為で見え辛さはあったでしょうがもっとよく観察すべきでしたね。」

 

 

 老人は死霊使いの視線の先を追う…!唯一の武器だった【アカサビ】を手放した彼女が持っている物を視認した。

 

 

 

―――

――

 

 

 

「―――!!――ッッ!」

 

 

 目を潰され小さな悲鳴をあげた三つ首の獣は視界を自身の瞼で闇に閉ざした刹那、中央の首の口に【アカサビ】を鞘ごと突っ込まれ声にならない叫びをあげた。怯んだと同時に理奈は立ち上がり両手で柄を握りしめ槍で突き刺す様に獣の喉奥へとそれを突き立てた…。斬れないのなら剣以外の使い方をすればいい。

 苦しむ【ケルベロス】の視力が漸く回復した頃、彼が目にしたのは…―――『ズタ袋』だった。

 

 

 そう、連続で吐き出されるあの炎のブレスを避ける最中、理奈はずっと転げ舞わりながら床に落ちていた『瓦礫』を拾っていた…ッ!

自らが吐き出した獄炎とそこから生まれた聳えたつ煉獄の壁を逆に利用してそれを悟らせない様に動いていたのだ、ダリオに投げつけられたズタ袋にある程度瓦礫を入れて十分な重さを確保した今、紐を掴んで勢いよく振り回す、イェーガーが振るう鞭とはまた違った振り回し方…。

 鉄球付きの鎖(モーニングスター)を扱う様なソレ、遠心力を使い勢いを乗せた瓦礫入りの帆布袋をそのまま【ケルベロス】目掛けて打ち付けるッ!

ただ一点…浅く打ち付けた釘に大金槌を振り下ろすが如く未だ喉奥に突き立つ例の【アカサビ】に…っっ!!

 

 

「でぇああああああああああぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 

         グシャッッッッ!

 

 

 

 

―――

――

 

 

「ッッッ!?!?……っっ!!」

 

「どうやら貴方は勝負師には向いていない御様子で。…確かどちらが勝っても公平、でしたよね?今更逆上して此処から彼女を焼き殺そうとはしないでしょう?アレは私が手駒にしますので。」

 

 

 言葉が、出てこない。なんなのだ…なんなのだこれは!?平和な世の中でぬくぬくと花よ花よと育てられた女子供がいきなり怪物と戦わせられてまさかの大逆転勝利を収めましただァ!?

子供向けのヒーロームービーショーか!?ふざけるな!!内心で沸々と激情が煮えくり返る老人は不機嫌さを隠さずに声を荒げて叫ぶ。

 

 

「 勝 手 に し や が れ !! 」

 

 

 席を立ち、両手をボロボロのジーンズのポケットに突っ込んで彼は【煉獄闘技場】を出るべく歩み始めた、【アカサビ】と回復薬それ等を入れた『ズタ袋』を与えたのは間違いなく彼だ。ゴミを渡された所で勝てる訳が無いと高を括っていた彼が渡した物が皮肉にも勝利を生む結果になった。

 あまりにも想定外な結果に終わった賭博は彼の怒りのボルテージを引き上げただけであった、何もかもが面白くなかった老人は気分を変えようとそのまま"宝探し"へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「…お、終わった…?」

 

 

 一方、競技場で炎に囲まれたまま、理奈は相手が動かないことを確認してその場で膝から崩れ落ちた。実感が沸かなかった。自分が生き延びた事。本当に怪物を斃せてしまったこと。

魔物とは言え初めて生き物を自身の手で殺した事。何かが一つズレたら自分は生きていなかった事。

 

 

 煤に塗れて黒く染まって。ただ生きたい、それだけでがむしゃらに攻め進んだ今だからこそ…この瞬間(生命)がある。敗者は死に、勝者には今を生きる権利を。

 

 

 

 

 

「…。」

 

 

 

 ぐしゃり、鈍くて嫌な感触だった…。

 イェーガーさんの言う通り私って本当にそんな才能があったんだ…。

 助かった、助かったよ…!!良かった。力があってよかった。

 気持ち悪い、こんな才能なくて良かったのに。

 今は切り抜けられた、でもこれからどうすれば…?

 怖い。

 とりあえず皆と合流しなくちゃ!

 生き物を殺しちゃった…?

 …家族の為だ、自分も生きる為だ、割り切らなくちゃいけない。さっきまでの覚悟はどうした。

 

 

 

 

 

 

 白馬理奈の頭の中に、無数の言葉が浮かんでは消えていった。

 

 

 自身の行いに肯定的な物も、…否定的な物も。清濁入り混じった思考が。

 

 矛盾を孕んだ感情がグルグルと頭の中を一気に駆け巡った…。

 

 

 

 命の奪い合いをしていた、その状況から解放されてプツリと緊張の糸が解けたと同時に足が震えた、手も指先なんかがブルブル震えてて…炎に囲まれてる筈なのに寒くて。

理奈はそこで動けなくなっていた。一度に多くの事を考えすぎて思考回路がショートしたと言ってもいい…。

 

 ふと気が付けば目の前にあった魔物の死骸は消えていた。退魔士達が倒した怪異達と同じだ一部の物は残骸や死体が残るが倒されて消える者は灰塵と化す…。さっきまでのは悪い夢か何かだったのではないかと少女は思いかけた。…そんな彼女の前に降り立ち手を叩く襤褸布のオバケは夢でも幻でもなんでもない。

 

 称賛の喝采を浴びせ彼奴は笑いながら言う。

 

 

 

「いやはや、流石は鏡巫女…!いえ、もはや関係ありませんね、貴女自身の才覚ですよ。"ご自身で考えてあのような悍ましい殺し方"を実践したのですからお見事です。」

 

「ッッ!!」

 

 

「素晴らしい手際でしたよ喉に突き立てた【アカサビ】に袋と落ちていた瓦礫を利用した一撃、駄犬の喉頸をそのまま突き破るなんて残酷な殺し方が思いつけるのです。さぞかし―――」

 

バッ!!

 

 

「…おや?耳など抑えて蹲って聞きたくありませんか?そうですか。」

 

 

 何の感情も籠っていない声色でそう言葉を口にした【ネクロマンサー】は蹲る理奈を値踏むように眺める。この娘を闇の眷属へと堕とせばどれだけ優秀な手駒になるだろうか…!

"あんな取るに足らない一匹の駄犬を殺した程度"で精神が酷く乱れているのだ、今ならつけ入る隙は大いにある。

 

 フードの奥でほくそ笑み邪なる者は白馬の娘に手を伸ばし声を掛けようとしたその時――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぶぅ~ん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムッ!?」

 

 

 一匹の羽蟲の羽音を死霊使いは耳にした。

 

 

 

 

 

 

 

バッッグォォォォン!!!

 

 

 

 闘技場の選手入場口の鉄格子が爆破され吹き飛ぶ。【ケルベロス】が消滅した事で勢いが衰え消えかけていた炎の壁もその爆風で掻き消え…。そこに現れた者は…。

 

 

「貴様……ッ!ようやく見つけたぞ!」

 

 

 

 

「…ぁ、イェーガー…さん…?」

 

 

 涙で視界がぼやける中、確かに聖鞭を持った黒衣の男の姿を認識した…そのすぐ後ろには手榴弾を投げ付けた青年とその姉も居る。

少女の姿と顔を見た狩人は沸き立つ怒りを込めて死霊使いに聖鞭を撃ち込んだッッ!!

 





>"月にさえ風をよび、魔をうちはらうと伝えをのこせし古流剣術"

はい、解ってます。

この古流剣術は悪魔城じゃなくて別作品だろォ!?!?…と


ですがクロスオーバーではありません、これはグレーゾーン、ぎりぎりセーフとします

何故なら公式で悪魔城に出てきてる要素だからです



"悪魔城HD"にDLCキャラとして参戦してるんですよね風魔さん

寧ろ…なんなら11章なんて悪魔城ゲーなのに丸々『月風魔伝』ってステージそのものが月風魔伝を原作再現してるじゃないですかー!やだー!

蒼真くんとかも普通に【龍骨鬼】のソウルとか使ってるし






あと遅ばせながらですが、34年の時を経て完全新作の『月風魔伝:Undying Moon』の発売おめでとうございます!

悪魔城GoSの日本語版が出始めたこの時期といい中々のタイミングですね!

スマホゲーあるあるのコラボ企画とかで月風魔伝コラボ、来ませんかね!?


シモンと風魔は『コナミワイワイワールド』からの長い付き合いですし来ませんかね!?

…ダメ? 駄目なんだろうなぁ…
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