虎杖×TS=オタクにやさしいギャル。これテストにでますよ 作:特急樹齢
『宅男超苦手陽人、況美人女』……オタク、よくこれ陽キャを苦手とす。いわんやギャルをや。
皆ご存じ古代漢文明の故事成語である。クラスの中心人物からの悪気無き「○○くん何読んでるのー? へー、こういう可愛い女の子が出てくるのが好きなんだー(笑)」によって精神を病むものが続出して幾星霜。インターネットの砂漠を放浪するうち、我々はある一つの願いを抱いた。
――虐げられたユダヤの民が救い主を求めたように。苦行を重ねた仏陀がその果てに悟りを見出したように。信仰とは常に抑圧から生まれるものだ。誰が言い出したか、
【オタクにやさしいギャルと友達になりたい!】
はたしてそれは実在する者なのか? それとも、教室という社会性の海で溺れる愚か者が縋った妄想なのか? 真偽は未だつかず、しかしその言葉が持つ魔力に人々は引き寄せられていく。
『オタクにやさしいギャルか? 欲しけりゃくれてやる。探せ! 世界のすべてをそこに置いてきた』
『オタクにやさしいギャルは!!! 実在する!!!!!!』
砂漠から一本の針を探すような。深い夜の中に影を求めるような。そんな、長い長い旅だった。いつ終わるとも知れぬ旅だった。
しかし、そんな放浪がついに報われる時が来たのかもしれない。誰もがお伽噺だと、夢物語だと。そう笑ってきたことが、全てひっくり返るかもしれない。
「おっす藤野! お前が勧めてくれたやつ昨日見てたんだけどさ、めっちゃ面白かったわ! もっかい見たいから返すの明日でいい?」
そう言いながら可愛らしく笑う金髪女子。クラスメイトの虎杖である。
――ああ。我が人生、ここに救済の光を得た。
虎杖×TS=オタクにやさしいギャル。これテストに出ますよ
「不平等な現実が平等に与えられている」とはご同業の伏黒恵氏が言った言葉であるが、なかなかどうして含蓄がある。かの慶応義塾大学創設者の言葉も今は昔、世の中の高校生が青春を謳歌している中、僕は廃墟で呪霊を祓っている。こんな不平等があっていいのか? 周りが部活で爽やかな汗を流す中僕は呪霊と格闘し、恋だ友情だに一喜一憂するなか僕は本家との確執に神経をすり減らしている。
「この辛さわかる? 別にこの仕事選んだのは僕だからさぁ、あんまりグチグチ言うつもりはないぜ? 呪詛師になって好き放題したってべつに楽しくないだろうし、まあまあこの仕事もやりがいがあると思ってるよ? でもちょっとこの業界はホスピタリティってものにに欠けてると思うんだよなあ」
術式で拘束した呪霊に対して一方的に話しかける。今回の相手はまあまあ知性がありそうだったので、きっと僕の悲しみも理解してもらえるだろう。
「マジで僕の癒しと言ったら虎杖ちゃんだけだよ。あんなに良い娘呪術界に引きずり込んだらダメじゃない? ってくらいに良い娘。この前もいっしょに東京観光しちゃってさぁ、僕けっこうアニメとか好きなタイプなんだけど、そういうのにも偏見なくってさ」
楽しかったなぁ東京観光。今まで友達とかいなかったので知らなかったが、誰かと一緒にいるだけであんなにも楽しいものだとは。普段通りの景色が輝いて見えたぜ。
「オタクにやさしいギャルって実在したんだねぇ……。一般家庭で育ったから性格もスレてないし。ああいう娘を守ることが僕たち呪術師の使命なんだって強く実感したよ」
呪術界はフィジカルゴリラしか生き残れないクソみたいな業界だが、何とか彼女には幸せになってもらいたいものだ。……まあ彼女も腹筋バキバキゴリラ―ズの一員であるのだが。この前手押し相撲やったら僕がヤムチャみたいに壁に叩きつけられた。呪術界は狂っている。僕みたいなナードは排斥される一方だ。
「あー、早く帰りたい。帰ってアニメ見て寝て虎杖ちゃんとお話したい」
そのまましばらく話し続けること数分。意外と呪霊が粘るので、だんだん飽きてきてしまった。こんな事ならさっさと術式の開示をしておけばよかった。
呪霊に近づき、その体表に触れながら僕の術式について語り始める。僕は自分の術式が最高だと思っているナルシストなので、こういう圧倒的に有利な状況でペラペラ話すのは大好きなのである。
「僕の術式は、相手に貸し借りの清算を強制させるものだ。自分が『助けてやった』と認識し、相手が『助けられた』と認識することで発動する。術式は絶対で、僕に借りのある奴はその借りを返すまで僕の命令に逆らえなくなる」
これが最後のチャンスとでも思っているのか、呪霊が必死に身をよじって逃げようとする。だが、今相手は僕に借りがある状態だ。逃げられるはずもない。
「僕は何回か君にトドメをさす機会を見逃した。君はその時『助かった』と感じただろう? あの時に僕の術式は発動していたのさ。あの瞬間、僕は君の命の恩人となった。命の恩人だぜ? この借りは一生かけて返していかないとなぁ。これは全くもって公正な取引だ。……そうだろう?」
―――傀儡操術
最後のうめき声ともに呪霊が大人しくなる。勝った勝った。帰りにコンビニ寄って帰ろうか。
「はー、早く一級術師になりたーい。2級呪霊チマチマ集めてるだけじゃ稼ぎが少ないぜ」
似たような術式の元先輩が特級呪詛師となって虐殺ぶちかましたせいで、僕の昇級は滅茶苦茶遅れている。クソがよ……。
「実際のところ虎杖ちゃんって僕のこと好きなんじゃないかな?」
任務帰り、たまたま教室にいた伏黒ちゃんにそんな話題を振ってみた。
読書していた伏黒ちゃんが振りかえり、排水溝の汚れを見るような眼でこっちを見てくる。止めろ! そんな目で友達を見るんじゃない!
僕だってこの質問が気持ち悪いって事は理解してるが、伏黒ちゃんならそんな質問も受け止めてくれると思ってのことだ。理解してほしい。
「いや、違うんだよ。そういう中学生の妄想みたいな奴じゃないんだ。僕をそこらのオタクと一緒にしないでくれ」
第一声がヤバ過ぎたことを弁解し、話を続けていく。
虎杖ちゃんって僕によく話しかけてくれるし、笑顔が可愛いし、この前は一緒に東京に遊びに行ったし。これってやっぱそういう事なんじゃないのか?
伏黒氏も虎杖ちゃんから恋バナの相談とか受けてるんじゃないのか? 隠してるだけなんだろ? 頼むからそうだと言ってくれ。
「今のところ一から十まで中学生の妄想でしかないんだが」
ヤバい、伏黒氏の眼がどんどん冷たくなっていく。同じ人類に対して向けて良い顔じゃないぞそれは。
「藤野、どう考えてもそれは勘違いだ。単に虎杖が異性に物怖じしない性格ってだけで、お前に恋心があるわけじゃない」
「で、でも一緒に東京観光に行って……アニメイト見に行ってさぁ……」
「……先週、たしか虎杖は五条先生と遊びに行ってたぞ。東京中の水族館を制覇するとかなんとか言って」
見苦しい言い訳を続ける僕に、呆れた顔でトドメをさす伏黒恵。五条先生とは僕たちの担任で、人格を天与呪縛されたクソ野郎である。そんな彼と、虎杖ちゃんが遊びに行っていた? それも二人で? それマジで言ってる????
「NTRやんけ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!」
「寝てから言え」
NTRは脳を粉々に破壊するよ。やさしいものをみて脳を守ってね。
ちなみに虎杖ちゃんからペンギンのお土産貰ったことにより僕は一命をとりとめた。やったね! いややってるかこれ???
「…………俺も、髪とか染めてみるか……?」
次の日伏黒恵ちゃん(15歳JK)がそんなことを言うので僕はめちゃくちゃたまげた。伏黒ちゃんは黒髪が可愛いという事を熱心に説いたら止めてくれたので一安心である。