俺【リアム・セラ・バンフィールド】は転生者だ。
前世、俺は一般的に見れば善良で真面目な人間だった。
妻がいて娘がいる。平凡だが確かに幸福な家庭を築き上げていた。
だが、俺の人生は狂った。
妻とは離婚し、身に覚えのない多額な借金を背負った。
妻――あの糞女は浮気していた。
浮気相手の男と結託し俺を騙し、借金を背負わせたのだ。
離婚してからも養育費を払っていたが娘も俺の実子ではなかった。
職場では、上司に横領の罪も被せられて会社をクビになった。
ボロいアパートの一室で生活し、バイトでどうにか食いつないで、借金取りに脅える日々。
そんな生活で俺は体を壊し、誰にも看取られる事もなく死んだのだった。
だが、そんな俺にも救いの手があった。
案内人――黒いシルクハットに黒いスーツを着用した少し胡散臭い超常的存在だ。
俺を憐れみ、第二の人生を与えてくれた恩人である。
そして転生させてくれたのは、剣と魔法のファンタジー世界ではなく少し不思議な世界だ。
人々は宇宙へと進出し、宇宙戦艦や人型兵器が存在する世界だ。
その世界で俺は星間国家の一つ、アルグランド帝国という国家に所属し、惑星一つを領地に持つ伯爵家に生まれた――勝ち組だ。
そして俺自身はその惑星の支配者ーーバンフィールド伯爵だ。
俺の前世は搾取される側だった。
死ぬ間際に俺は悟ったのだ。
間違っていたのは世の中ではなく、自分自身だと。
だから、第二の人生は自分のために――そして、どこまでも欲望を満たすために生きると決めた。
そう…俺は悪徳領主になる!!
その第一歩として俺は力を求めた。
前世、俺は単純な暴力に怯えていた。
借金の取り立てに来る厳つい男たちが怖かった。
暴力など無意味と思っていたが、あのような状況になると力は必要だと思った。
他者を踏みつけるために――俺は強さが欲しい。
他者を恐れないだけの力が欲しい。
暴力が欲しいのだ。
そのために強くなりたかった。
この星間国家では個人の力など意味がないと言われているが、それでもだ。
全ては奪われないために。
全てを奪うために――力が欲しかった。
◇
黒い空間に案内人ーーリアムの恩人がいた。
旅行鞄に腰掛け、映像を見ながらニヤニヤしていた。
転生した彼――リアムは七歳になっており、何やら人形ー天城と話をしていた。
クツクツと案内人が笑っていた。
映像の中、リアムは力が欲しいと言っていた。
前世で暴力に怯えた人間が、来世で力を望む――案内人は嬉しくてたまらない。
「奪われないために力が欲しい、ですか。何とも凡人ですね。だが、それがいい!」
案内人は良い存在ではなかった。
悪意の塊と言ってもいい。
そもそも、リアムが前世で不幸になったのはこの男のせいだった
幸せそうな善良な人間が、どれだけ転ぶか見てみたかった――たったそれだけの理由で己の力を使い前世のリアムを不幸にした。
そして今度は転生させてから、上げて落とすことで更なる絶望を与えようとしていた。
案内人が手を伸ばして映像に触れる。
体から黒い煙が発生し、映像に染み込んでいく。
「素晴らしい逸材を用意して差し上げますよ。アフターサービスの充実は私のモットーですからね!」
案内人はリアムの師となる男を探し、その者と無理矢理に縁を繋げる事ができる。
それこそ、詐欺師や香具師――指導を受けても強くなれない者に。
こうすれば、後はどうやってもその男がリアムの武芸の師となる。
「さて、どんな男を師範に――おやぁ?」
案内人が見つけた男は、あばら屋のような家に住み惰眠を貪っている、着物を着た浪人風の男だ。
周囲の評判は、だらしない、詐欺師、香具師など――。
「いいですねぇこの男、評判が最悪です。どうせ大道芸などで食い繋いでいるタイプでしょう。」
案内人はこの男に決めたようだ―― 詳しく調べもせずに。
「楽しんでくださいね、リアムさん。いずれ破滅するその時には、必ず迎えに行きますよ」
口元しか見えない案内人は、三日月のような口でリアムを見ているのだった。
◇
「んぁ?なんだぁ?今の」
あばら屋のような家で住む男―― 名を安士。
安士は妙な気配を感じて眠りから覚めるのだった。
安士(原作の屑さちょっぴり少し銀さんテイスト)
に、できたらいいなぁ