前回のあらすじ
達郎の元妻である玲子に話しを聞きに行った廻。そこで過去の娘たちの話しを聞くことができた。そして事件の真相にたどり着き、後は信条の証拠を持ってくるのを待つだけだ。
それでは本編どうぞ!
3日後 有栖川学院高等部 応接室
あれから3日が経った。全ての証拠を揃えられた俺たちは応接室に関係者を集めていた。勿論あの三姉妹もいる。そして友里愛は包帯を巻いている。
胡桃「急に呼び出してどうしたの?」
廻「実は今回の件について真相が分かったからそれを伝えようと思ってな。」
春奈「ほ、本当ですか!?」
廻「本当だよ。ちゃんと犯人まで分かったよ。」
友里愛「あの、その『今回の件』とはどのようなことでしょうか?」
…知ってるのにとぼけるのか。まあいいや。
廻「では早速話していきましょう。」
そうして話し始める。
廻「まず、数日前にワックスがけの途中に生徒が滑って大怪我をするということがありました。」
友里愛「…なるほど、そのことでしたか。」
廻「知ってるんですね?」
真理「えぇ。私と美緒は中等部ですけど、そのことは話題になってたので。」
廻「それだけじゃないですよね?」
美緒「…どういうことです?」
廻「だって、今回の件で怪我したのは『友里愛さん』あなた自身なんですから。噂を聞いた、なんてもんじゃないでしょ?」
友里愛「何故私が今回の件で怪我をしたと言えるんですか?」
廻「防犯カメラにバッチリ写ってましたよ。例のワックスがけをしている教室に入っていく姿が。そう『怪我をした友里愛さん』が入っていく様子がね」
友里愛「…」
弘人「どういうことだ?その言い方だと最初から怪我をしていたみたいになるじゃねえか?」
廻「弘人、お前自身が言ってたじゃねえか。『この件は半信半疑だ』って。」
弘人「!そういうことか。」
気づいたみたいだな。
廻「そう。今回のこの事件、貴方たち3人の自作自演ですね?」
三人「!!」
本当にバカなことをしたもんだ……
美緒「なんで『自作自演』なんて言い切れるのよ!?」
真理「そうです!それにそんなことをして私達に何のメリットがあるんですか!?」
廻「メリットなんてありませんよ。」
真理「じ、じゃあ!」
廻「でもそれは、『貴方たち3人には』です。」
灯「どういうこと?」
廻「落ち着け、順を追って説明してやるよ。先に今回の事件のからくりを説明するぞ。」
まあ、からくりってものでもないけどな。
廻「時系列で話していきます。まず、校門を潜って隠れてわざと友里愛さんに怪我を作る。」
校門はここの制服を着てたから通れたんだろうな。警備員の人にもいちいち生徒の誰が辞めたかなんて教えないだろうからな。
玲央「なんで本当に怪我を作るんだ?後で血糊で怪我に見せるならそんなことしなくてもよさそうだけどな…」
廻「多分、『念には念を入れて』のことだろうな。完璧に怪我に見せれたとしても、近くで見られたり、血の匂いがしなければバレそうだからな。」
灯「あれ?でも弘人の話しだと『血の匂いはしなかった』って言ってなかった?」
廻「だから、ところどころに小さく怪我を作ったんだろうな。逆に大きくしてもわざとらしくて疑われそうだからな。」
玲央「なるほどなぁ…で、あとは友里愛ちゃんが教室に入っていって『事故』に見せかけるってことか。」
そういうことだ。で、その血糊と実際の怪我作りをするところが全部カメラに写ってたわけだ。これは灯から送られてきた防犯カメラの映像から確認できた。
友里愛「確かに怪我をした私の姿がカメラにも写っていたから言い逃れはできないですね。」
お、意外とあっさり罪を認めるのか?
友里愛「しかし、何か大切なことを忘れてはいませんか?」
ん?
廻「『大切なこと』ですか?」
一体なんだ?
友里愛「なんでワックスがけをしていた二人はその持ち場を離れたんですか?二人が離れなければ私が教室に入って怪我をしたように見せかけることもできないのでは?」
確かにそうだな。
友里愛「それに胡桃さんは忘れ物に気付いて教室を出たのでしょう?…まさか偶然とはいいませんよね?」
廻「あー、そのことですか。それは友里愛さんの言うとおり偶然ですよ。」
友里愛「!!」
廻「ただし、胡桃に関しては。だけどな。」
胡桃「どういうこと?」
廻「友里愛さんが怪我をする役割りなら、真理さんと美緒さん二の役割りは、胡桃とみいこを教室から引き離すことだったんじゃないですか?」
美緒・真理「!!」
どうやら二人も動揺してきたみたいだな。
廻「これも生徒たちから聞きましたよ。そしたらいましたよ。美緒さん、あなたがみいこを呼んでほしいって言われたから呼びに行ったって人がね。」
廻「で、みいこは教室から出ていった。で後は胡桃を教室から引き離すだけ。だったけど、胡桃は忘れ物に気づいて出ていったから真理さんは動く必要がなかったってことですよ。」
みいこ「そう言えばあのとき結局呼んでた人がいなかったから少し探したの。それでもいかなったから戻ったけど…」
これで教室には誰も居なくなったってわけだ。
廻「あとはスマホで友里愛さんに連絡して友里愛さんを教室に入れればいい。そしたらあとはまた二人のうちのどっちかが発見する役をやればいい。」
廻「で、怪我のことがバレないように教室から出て、後は胡桃のイタズラで怪我をしたように噂を広めた。それが今回の『事件』ってわけです。」
だから今回の件は事ではなく『事件』ってわけだ。
廻「まあ、どんなに言い訳しようとも貴方たちが血糊を買った場所の防犯カメラの映像があるから、後はレシートなんかを調べれば貴方たち3人がやったってすぐに分かりますよ。」
そう、これが信条さんに頼んでいた証拠だ。
灯「じゃあ最初に言ってたメリットの話は?確か、『三人にはメリットはない』って言ってたけど…」
そうだな、そろそろそっちを話すか。
廻「あぁ、それは簡単に言うとメリットがあるのが友里愛さんたちの父親である『黒木達郎』にしかないからだよ。」
弘人「じゃあ達郎にはどんなメリットがあるんだよ?」
廻「それはだな…」
ガチャ
俺が話そうとしたその時、ちょうどドアが開いて信条さんが入ってきた。
信条「おう、遅れてすまんな。」
廻「やっと来た。」
信条「『やっと』ってお前なぁ…夜勤明けですぐに駆けつけたんだぞ?少しは感謝とか気遣いとかないのかよ…」
廻「悪かったな。」
信条「…まあいいよ。で、どこまで話が進んでるんだ?」
不貞腐れたように信条さんがそういう。
廻「ちょうど信条さんからの証拠と証言がほしかったとこだ。」
実は後数個、今回の件に必要な証拠を持ってきてもらっていた。
信条「ならグッドタイミングだな。ちゃんとあったし聞いてきたぞ。」
廻「…あぁ、話しがそれたな。話しを戻すと、達郎のメリットってのは『白鳥家の評判を落とすことともう1つは強請ること』だな。」
弘人「『強請る』ってそれ脅すってことだろ!?どういうことだよ!」
友里愛「そ、それは、どういう…」
……やっぱり娘たちはそこまでは知らなかったか。
廻「まず事の発端は、達郎の逆恨みから始まるんだよ。」
春奈「『逆恨み』ですか?」
廻「そう。最初話しを聞いたときに一つわからないことがあったんだよ。そもそも何で達郎は横領をしなければ行けなかったのか。」
灯「それは何かお金が必要だったんじゃないの?」
廻「でも達郎は副社長だぞ?そんな立場のやつが金に困るか?」
灯「でもだったらなんで横領なんか…」
廻「そう、だから俺も横領したことが疑問だったんだ。」
弘人「で、なんで達郎は横領したんだよ?」
廻「それは家族には内緒で金を動かさなければならなかったからだ。」
胡桃「? え、どういうこと…ますますわからないよ…」
廻「結論から言うと、黒木達郎は『不倫してた』んだよ。」
友里愛「!!」
真理「ま、まさか…お父様に限ってそんなことするわけが!」
三人は『父親』としての黒木達郎しか知らないからそうなるのも無理はないな。
信条「残念ながら事実だよ。調べていくうちに黒木達郎は一人の女性と関係を持っていることが分かった。それも結婚している間にね。で、通帳とかを調べたり本人に横領で捕まってから事情を聞いていると、『家族にバレずに金を渡すために横領に手を染めた』って言ってたよ。家計の管理は元の奥さんがやってたみたいだから下手に金を動かすとバレると判断したみたいだ。」
まあ、その結果横領がバレて取り返しのつかないことになったんだけどな。
弘人「ん?でもなんで今更そんなことを隠すんだよ?もう離婚してるんなら金のやり取りくらいどうってことないように思えるんだが…」
廻「離婚してからはお金の件に関しては堂々としてただろうよ。けど、多分達郎自身もその女性に脅されてたんじゃないのか?だからお金を渡し続けていた。」
信条「そうだな。確かに取り調べで脅されたとも言ってたな。ただの金づるにしかされてなかったみたいだ。で女性から『金を渡すのを断れば関係を元奥さんにバラす』ってな。」
弘人「それでも今更元奥さんにバレるのが嫌な理由がなくないか?」
廻「…まだわからないのか?」
弘人「?」
玲央「…『不倫に対する慰謝料は3年の間は請求できる』そういうことだな?」
廻「そういうことだ。」
娘たちが高校生になってから離婚してるからまだ離婚して数ヶ月しか経ってないからな。友里愛さんは高校一年で二人は中3だから計算は合うな。
灯「そっか!だからバレるのを恐れてたんだ!」
やっと理解してくれたか。話しを戻すか。
廻「けど、それも長くは続かないで胡桃のお父さんに横領がバレて退職した。」
胡桃「逆恨みってまさか!?」
廻「そう。横領がバレたことを逆恨みして胡桃のお父さんを恨んだんだよ。で、今回のことを計画したってわけだ。」
廻「達郎の計画はおそらくこんな感じだろう。まず、会社で聞いた胡桃の性格を利用して、胡桃のイタズラで怪我をしたように見せかける。そのために娘たちには学校にいたクラスメイトと連絡を取らせて達郎に逐一報告する。そしてワックスがけを胡桃たちがやることを知り、今回の事件を起こした。」
廻「で、噂を流して胡桃を陥れるってわけだ。そしてその後だ。」
むしろこっちの方が本命だろうな。
廻「胡桃を陥れた後は、そのことをネタに胡桃のお父さんを脅迫するつもりだったんだろうな。」
信条「その可能性は高いな。計画書が達郎の部屋の引き出しに保管されてたよ。で、その中身は胡桃さんを陥れた後に、娘たちに写真を撮るか録音して証拠を残して、胡桃さんのお父さんを脅迫する計画が書かれていたよ。」
全く胸糞悪いな…自分が悪くて捕まってんのに逆恨みして関係ない人たちを巻き込みやがって。
まあその計画もこうやってバレたから意味ないけどな。
廻「まあ、その計画ももうこうやってバレてるから意味ないけどな。大方慰謝料とか言って金を騙し取る計画だったんだろうな。」
友里愛「…つまり、私達は最初からお父様にいいように利用されていたってことですか。」
廻「そうなりますね。」
俺がそう言うと友里愛が胡桃の方を見る。
友里愛「胡桃さん…」
胡桃「…」
友里愛「許してもらえるとは思ってない。けど、お父様のせいで迷惑をかけたわね。」
胡桃「…え?」
友里愛「ごめんなさい…」
胡桃「!」
予想以上に素直に謝る友里愛に驚きを隠せない。
てか、わがままに育ったって言ってたからどんな子たちかと思ったら意外に素直じゃねえか。
そう思っていると…
真理「私は認めないわ!」
美緒「そうよ!」
友里愛「真理、美緒…」
どうやらこの二人は認めないようだ。というより父親に利用されていたなんて信じたくないんだろうな。
真理「だって、お父様が言ってたじゃない、『悪いのは胡桃さんのお父さん』だって!」
美緒「えぇ、お父様が大変だから、横領なんて黙ってれば良かったのよ!お父様も『後でお金を返すから大事にしなくても良かった』って…」
廻「…バカだな。」
真理「…はい?」
廻「『バカ』だと言ったんですよ。勿論あなたたち二人に。」
美緒「わ、私達がバカですって!ふん、何と言われようが結構。あなた方のような庶民には一生わからないことですよ。」
廻「そういうことを言ってるんじゃないんですよ。」
真理「?」
廻「不倫なんかして、しかも今回みたいに関係のない人を傷つけるような計画を立てる人が横領した金を『後で返す』なんて本気で信じてるんですか?悪いけど、俺は信用できないね。」
美緒「っ…」
俺がそう言うと思うところがあるのか、美緒さんは黙ってしまった。
真理「け、けど、この計画がうまく行けば、私達も転校してお父様はまた3人で暮らせるって!」
廻「…本当にそうですか?」
真理「え?」
廻「…信条さん、計画には娘さんたちのことはなんて書いてあった?」
信条「…おいおい、そこまで言う必要あるのか?」
廻「素直に謝ってたら俺もそこまで言わなかったよ。けど、そうじゃないから少し現実を見てもらおうと思ってな。」
信条「…仕方ねえな。」
真理「げ、現実?」
信条「…計画では奪い取ったお金は一切娘にやらないと書いてあったよ。理由をつけて働かせるか、比較的お金のかからない公立高校に転校させるつもりだったらしい。」
真理「!!」
廻「そういうことです。それにもし失敗してもあなたたちが『勝手にやったこと』にして自分は責任を取るつもりはなかったみたいです。」
成功したら金は全部自分のもので、失敗したら娘たちのせい…
父親失格だな。
真理「そ、そんな…じゃあ私達は今まで何のために!人まで傷つけたのよ!それを…それを…」
追い打ちをかけるようで悪いが俺は、話しを続ける。
廻「それにそもそもあんたら本当に関係のない胡桃たちを傷つけたまま何事もなかったかのように暮せるのか?」
真理「!」
廻「…実は3人に聞いてもらいたいものがあります。」
3人「?」
そう、実は玲子さんの伝言を録音していた。
そうして俺は録音を再生した。
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
玲子『友里愛、真理、美緒、久しぶりね。』
友里愛「お、お母さん…」
美緒「今更何を…」
友里愛「黙って聞きましょう。」
そうして三人は玲子さんの伝言を聞くことにしたようだ。
玲子『今回のことは廻さんから聞きました。…バカなことをして。』
玲子『…まずあなた達はこれからあの人と離れて暮らしなさい。私も離れることができるように動くわ。』
美緒「は!?」
いきなりのことで驚いている。そりゃそうだろうな。いきなり『親と離れろ』なんて言われたら誰でもビックリするよな。
玲子『もしも廻さんから真相を聞いてるなら分かってると思うけど、あの人と一緒に居てもあなた達にいい影響はないわ。むしろ悪影響でしかないわ。』
玲子『そうして、あなた達はやってしまったことを後悔して、許されなくてもずっと謝り続けるのよ。』
そこで録音が終わった。
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
美緒「な、何よこれ!いきなりお父様と離れろとか!意味わからない!」
真理「そうよ!別れて結構経つのに、今更母親面して!それに、お父様と離れたら私達はどうやって暮らすのよ!」
ここまで玲子さんが言ってるのにわからないのか…
俺が口を開こうとしたときだった。
友里愛「いい加減にしなさい!」
真理「お姉様…」
友里愛「もう、もういいでしょう…」
美緒「でも!」
友里愛「あなた達ももう気づいてるんじゃないの?」
真理「な、何を…」
友里愛「横領事件があった後にお父様に会いに行ったときにお父様が何て言ったか覚えてる?」
友里愛「お父様、あの人、最初の第一声が私達への謝罪や心配じゃなくてお金のことだけしか話してなかったでしょ?」
真理「で、でも…」
友里愛「あの人は私達のことなんて何も考えてないのよ。」
なるほどな…人は窮地に立たされると本性が出るって言うけど、捕まった達郎もそうだったんだろうな。
で、その達郎を見て友里愛さんも思うところがあったんだろうな。だからさっきも一人、素直に謝ったんだろうな。
廻「もう、大人になったらどうだ?」
美緒「え?」
廻「お父様がとか、誰かが言ったからじゃなくて『自分がどうしするのが良いのか』考えろって言ってんるんだよ。」
『誰かが言ってるから』なんて考えで行動してる内はまだまだ子どもだな。
信条「…そろそろいいかな?」
友里愛「…はい。刑事さん、お願いします。」
そうして三人は信条さんと他の警察の人に連れて行かれた。
その時に一瞬友里愛さんが「本当は私もお母さんと暮らしたかったな…」と言ったのを聞き逃さなかった…
本当は玲子さんの愛情も三人は分かってたのかもな…
まあ、何はともあれ
廻「事件解決だな。」
春奈「終わったんですね。廻さん、本当にありがとうございました!」
春奈さんに続いて2人も廻にお礼を言う。そして…
胡桃「あ、ありがとう…」
廻「…何だ、照れてるのか?」
胡桃「ち、違うよ!」
前の仕返しだ。…意外と俺は根に持つタイプだぞ。
廻「そうか?顔が赤いぞ?」
胡桃「!〜!?」
そういうと胡桃はそっぽ向いてしまった。
廻「…やっば」
灯「あ〜あ、廻、やっちゃったね。」
廻「おい、弘人、こういうときどうすればいいんだよ?」
灯「私、しーらない!」
…おいおい、勘弁してくれよ……
こうして有栖川学院での事件は幕を閉じた。
事件の真相
事故ではなく事件。そして、達郎の娘たちの自作自演だった。
そして達郎は娘たちを利用して、胡桃の父親を強請って金を奪いとる計画を立てていた。
以上です。