「よい、しょっと··············ッ!!」
「ちょっと響、そんな乱暴に突っ込んだら入りきらないよ。ちゃんと畳んで入れなきゃ終わってない課題も全部入らないよ」
「アハハ··············つい面倒で」
立花響は、自身の通っているリディアン音楽院の学生寮へと帰っていた。
明日早くから任務があり、寮のドアを開けるなり荷物の準備をするために同室の未来に荷物整理の手伝いを頼み込んだ。
本来は、持っていくのは汚れがついても目立ちにくい色をした服だけでよかったのだが、期限が迫っている残りの課題も任務に向かっている最中や休憩時間、帰宅時の間に少しでも進められるように持っていくことにした。
時間制限付きの爆弾解除のために奮闘している最中にまた新たな厄介ごとを押し付けられた気分、それが響の頭を少々悩ませる。
「こうして、こうすれば············はい、綺麗に入ったよ」
「ありがとう未来! やっぱり流石だなぁ未来は、今すぐにでもいいお嫁さんになれるね!!」
「もう、からかわないでよ///」
「からかってなんてないよ!! 絶対いいお嫁さんになれると思う!!」
「もう、響ったら。 ·····················でも響となら今すぐにでも··············」
「うん? 何か言った未来?」
「ううん、何にも。 とにかく、行きはいいけど使った着替えは自分で畳んでしまわないと入りきらなくなるから、ちゃんとしてね? それに課題も」
「あはは··············善処致します」
「それじゃあ響は少しでも課題を進めちゃって。私は晩御飯の支度をするから」
「うん! わかった!」
苦笑していた響はすぐさま太陽のような笑顔になって残りの課題を進めるために机へと向かった。それを確認した未来は夕飯の準備のために台所スペースへと向かう。
(それにしても··············)
課題を進めている最中、響の頭はもやもやしたものでいっぱいだった。
今回の事件に関する詳細を聞いて以来、ずっとそうだった。どれだけ考えても解決しない。時間が経っても解決しない。まるで答えのない問題を解けと言われたようで、いつまでも思考は空転を続けるばかりであった。
(·····················島に住む全ての人たちが消えた今回の事件)
ある事柄。
すなわち今回の任務について。
島に住む住人は突如として消えてしまった。確認されたものは現段階ではおらず、実質“全滅”したと思われる。たった数文字の単語に、響の心は大きく揺らぐ。
(一体なんで)
あの島にはパヴァリア光明結社の残党が潜んでおり、今回の事件と何か関わりがある可能性は高い。
であれば、人、建物を分解するアルカ・ノイズの仕業··············と考えられなくもないが、あの映像を見た限りではそうとは思えない。
守秘義務で外部には情報を漏らさないように今まで黙っていたが、
分解することに長けているアルカ・ノイズならば血液ごと分解してしまうはずだ。
だが、あそこには服だけでなく誰かの人骨、血のついた服などがあったことから、もしかしたら事件の首謀者はパヴァリア光明結社ではない可能性もある。
残党とはいえ、パヴァリア光明結社を超える存在。
そう思うと、無意識に体が僅かに震えた。
「·····················」
線引きができない。
こうして考えてみると、これまでいろんな事件を解決して世界を救った響でも、実は少々臆病な一面があった。
(アルカ・ノイズを使役している錬金術師でも敵わなかったものが本当にいるんだとしたら、私たちの歌はどこまで届くのかな··············)
うーん、と悩む響の隣に、何だかお鍋がグラグラと煮える音が聞こえてきた。
「響」
「ふぇ?」
「手が止まってるけど、どうかしたの?」
「え!? べ、べべ別になんでもないよ!! うん、なんでもない!!」
「··············嘘ついてるの丸わかりだよ響」
控えめに指摘されて、ガーンとへこむ響。
そんな彼女の顔を見て、未来はくすくすと笑っていた。
「それよりほら、夕飯できたよ」
「本当!? うわぁ〜、美味しそう!!」
色とりどりの具材がよく煮込まれた鍋が机の中心に置かれると、響はすぐさま課題を片付ける。片付けと準備を終えると二人はそれぞれの席につき、食事にする。
この横殴りの吹雪が部屋の窓を叩くことが多い時期の中、温かい鍋はとてもありがたかった。
先ほどまで精神面が危ぶまれた響であったが、ルームメイトの手料理を摂取したことで丸くまったのか、思考が徐々に落ち着きを取り戻している。
夕飯を食べ終えてからは二人一緒にお風呂に入り、しばらく経つと、
「響」
「うん?」
「························今回の任務、相当危険なの?」
「え················?」
唐突だった。
真剣な声色で問われたその言葉に、響の肩がビクンと大きく動いた。
戸惑っている響を見て、未来の方も衝撃が走る。
「やっぱり················そうなんだ」
「························」
否定はしない。
いや、できない。
いつも相手にしているアルカ・ノイズとは違うかもしれないと考えると、未確認の新たな敵とぶつかる可能性がある。
消えた人々がいたであろう場所に散らばる無数の赤い液体。あれを見てしまった以上、自分たちが向かう場所の危険度レベルは一気に跳ね上がった。
未来はかつて、本当にこの親友に命を救われたことがある。それは一度や二度ではない。よって、響が危ない場所へと赴いて命がけで戦うということは理解している。
それでも、だ。
それを黙って見送るというのは辛いものだ。
大切な親友を一度失いかけた思い出は何度も脳裏に過る。
毎回毎回寿命を削るように戦い続けていれば、また消えてしまうんじゃないかって不安になる.
人助けが趣味、人と手を繋ぐために歌を歌い続けるのも理解しているが、止めるべきなのではないか、と未来は思う。
しかし、それはしない。
理解者である自分が止めてしまえば、響を否定してしまうことになる。
ならば、自分のできることはただ一つだ。
「················あまり抱え込みすぎないでね」
「!」
気がつけば、未来はぽつりと呟いていた。
「響の中ではそれぐらい大きなものがあるっていうのも理解してる。誰かが困ってるなら迷わず助けに行くっていうのもわかってる························でも、でもね。それ全部を響が抱えないといけないってことはないんだから」
「未来?」
「時には助けてほしい、力を貸してほしい。ううん、もっと単純に怖いとか不安だって思ってもいいんだよ? 響一人が戦い続けるわけじゃない。響だけが傷つき続ける理由なんてない。本当に危ないって感じたら、すぐに助けを呼ぶんだよ? 響は、一人じゃないんだから」
「································」
「響がたとえ一人になったとしても、私は響と繋いだ手は離さない。何があっても握りしめてるから」
響の表情が止まった。
その未来の一言が、響の抱えているものを軽くさせた気がした。
未来はちゃんとわかっているんだ。響の抱えている気持ちを。
あの日、コンサートから無事に帰ってきた日、地獄が始まった。
誰にも助けを求めず、自分の中にしまいこんで周りには気にしてない振りをし続けた。精神的ダメージを多く受けたはずだ。にも関わらず、そんな素振りを見せないで見返りも求めない人助けをし続ける。
おそらく立花響には、自分自身すら確証を持てていない『何か』に誇りを持っている。信念があるからこそ、彼女は自分の胸の歌を信じて戦い続ける。もしも、あの頃苦しかった過去の自分に会えるとしたら、彼女は躊躇いなく「生きていてくれてありがとう」と笑って言うだろう。
未来はそれが分かるほど立花響という人間を知っていた。
「響の帰る場所を守るのが、私の役目だからね。私は、私のできることをして待ってるよ················だから響、無事に帰ってきてね」
「未来················」
気がつけば、未来は響を見送る準備ができていた。
『繋いだ手は離さない。何があっても握りしめている』。
その言葉の意味は、何があっても最後まで響の側にいるということ。響の帰る場所で在りつ
づけるということだ。
それを聞いた響は悩んでいたことや恐怖心も忘れて、小さく頷いた。
「うん、そうだね································ありがと! 未来!!」
「うん!! そうと決まれば早く寝よ。あした朝早いんだから」
「あ、うん! ちょっと待ってて、歯磨いてくる!!」
そう言って響は歯を磨くために洗面所へと向かった。
「································」
知らず知らずのうちに、彼女は自分の胸に手を当てていた。
優しく握るようにしてゆっくりと、自分の内側にしまっているものを掴む。
今日この時、小日向未来は改めて知る。
自分の内側には、こんなにも親友を思うほどの莫大な感情が眠っていることを。
(どうか、響が無事に帰ってきますように··············)
未来は胸につけていた鏡のように綺麗に紫色に輝く『アクセサリー』に願いを込めた。
やるべきことはただ一つ。
愛すべき少女の無事を祈り、少女の帰るべき場所を守り抜く事のみ。
・・・_
夜の暗い闇の中に、私は佇んでいた。
シップからやや離れた場所は、不気味な雰囲気に包まれている。
私がここにいる理由は単純で、発せられた信号を追ってきたからだ。
信号の発信源らしき場所までやってきたものの、特に変わったものは見当たらない。
右左を見ても、夜空で黒く染まった深い森林のみ。
頭上を見上げれば星空が広がるが、私にとっては珍しくもなんともない。
「······································」
だが、悪くはない。
この星から見る星空は他の惑星から見るのとは違ってとても新鮮だった。
どこの惑星も文明が進み、都会を優雅にするための街明かりに星たちは脅かされ、星座の輝きが見えなくなった場所が多かった。
別に宇宙空間に出ればいつでも見られるのだが、それとはまた違った美しさが私の瞳に映し出される。
と、星空を眺めている時だった。
周辺の茂みからガサリという葉の擦れる音がした。
私は目を走らせるように振り向き、すぐさまアームキャノンを構えた。
「!」
そこにいたのは見たこともない生物だった。
全身が柔らかい体毛で覆われている小型獣で、耳が大型であった。体毛の色彩は灰色。
私はバイザーを使用してその生物の生態をスキャニングした。
『スキャニング中····································データ照会中······································』
『データベース該当なし。名称不明。
体重:1.8kg、体長:27cm、草食動物。野生では常に肉食動物から狙われる立場の模様。天敵から逃げやすいように、敵が近づく音をいち早く察知するために耳は長く、素早く走れるように足の筋肉が発達している』
「·························································」
どうやら害はなさそうだ。
この惑星の原生生物であろうか。今まで見てきた温厚な生物たちよりもさらに温厚そうで、愛らしい見た目をしている。
私は試しに左手を差し出してみる。
すると、その生物はゆっくりと近づいてきて、鼻を小刻みに動かして匂いを確かめている。
私はその様子を見てつい微笑んだ。
するとまた、すぐ近くの茂みから音がした。
そこへ視線を移すと、この個体と同じ姿をした生き物がこちらを見つめていた。そいつはこの個体よりも少し大きい。その個体が現れると、私の近くにいた個体がそいつの元に向かって行った。
おそらく、親子なのだろう。
二匹はそのまま茂みの中へと消えて行った。
「······························」
何故、今になってあの頃の出来事を思い出したんだろうか。
私の脳裏に、かつて我が子のように思っていた存在、『ベビー』の姿が過った。
・・・_
浮遊生命体【メトロイド】。
あらゆる生物に取り付き、生体エネルギーを吸い尽くす。
β線を照射するだけで、爆発的に増殖するそれは、生体兵器としての資質に富むおそるべき生物だ。
惑星SR388に生息する「浮遊生命体」であり、鳥人族の言葉で「最強なる戦士」という意味を持つ。攻撃性・防御能力・増殖性等、生物兵器として非常に優れた性質を持っている。
このメトロイドは、"鳥人族”という高度な技術力を誇る種族達が生み出した人工生命体で、この時の私は、メトロイドが何故作られたのかは知らなかった。
そのメトロイドが、『
人口生命体、『マザーブレイン』率いる【スペースパイレーツ】は銀河社会を我が物にしようと、要塞惑星ゼーベスの中心部でメトロイドの増殖を開始したようだ。
増殖したメトロイドが一斉に襲いかかってくれば、圧倒的な軍事力を誇る銀河連邦でさえもあっという間に壊滅するだろう。それほどメトロイドという人口生命体は危険視されていた。
私は、銀河連邦の依頼で惑星ゼーベスに侵入し、マザーブレインの野望を打ち砕くと共に、スペースパイレーツを、そしてメトロイドを殲滅した···················はずだった。
その後も私は、賞金稼ぎとしてあらゆる事件の依頼を引き受け、銀河に仇なすクリーチャー達を狩り続けていた。どんなに困難な依頼でも引き受ける私は、いつの間にか銀河中から注目され、「銀河一のバウンティハンター」などと呼ばれるようになっていた。
そんな私のもとに、銀河連邦本部からある依頼がやってきた。
メトロイドが最初に発見された惑星SR388の奥底には、今尚多数のメトロイドが生息していることがわかった。
銀河連邦からの依頼を正式に受け、私はSR388へと向かった············メトロイドを根絶するために。
そこにいたメトロイド達は一筋縄ではいかなかった。
脱皮を繰り返し、より強力な個体へと成長していくメトロイドとの死闘。何段階も強化していくメトロイド達に、私は苦しめられた。
最後に立ちはだかったのは、メトロイドを無数に生み出すことができる【クイーンメトロイド】だった。
私は捨て身の覚悟でなんとかクイーンを倒した。
そして、スターシップに戻ろうとした私の目の前で見慣れぬ卵が孵化し、『小さなメトロイド』が現れた。
その赤ん坊は、生まれて初めて目にした私を、『母親』だと思ったようだった。
まるで母性に飢えているかのようにその個体は私についてきて、危害を加えてこないので私は安全だと判断して、その個体を持ち帰ることに決めた。
私はその赤ん坊のメトロイドを『ベビー』と名付けた。
それから数日後、
銀河連邦は次代のエネルギー源を求めていた。
最初、私がベビーを持ち帰ったことに銀河連邦は驚愕の表情を見せていた。凶暴かつ制御不能な人口生命体を持ち帰ったというのだから当然かもしれない。
私は最初、危険なメトロイドを持ち帰ったことに対してそれ相応の罰を受けるつもりではいたが、彼らにとってはまたとないチャンスだった。規則に反したものの、貴重なサンプルを持ち帰った功績として認められた。
メトロイドが持つ、優れたエネルギー特性の平和的利用。その可能性を信じ、私は宇宙科学アカデミーに『ベビーメトロイド』の未来を託した。
日々の研究の結果、ベビーの持つエネルギーは無限の可能性をもち、たった一匹の個体で一つの惑星の電力を補えるほどの力を持つことが判明した。
ベビーは銀河の希望の光となるはずだった············ところがある日、光は突然闇に落ちた。
復活を遂げたスペースパイレーツたちが、ベビーを奪い去って行ったのだ。
············緊急事態だ。
私はベビーの奪還を目的に、要塞惑星ゼーベスに再び潜入した。
ベビーの姿を探し求め、私はあらゆる敵を蹴散らし、突き進んだ。
そんな私の前に現れたのは、
巨大化し、凶暴化したベビーだった。
ベビーは私のことを忘れ、容赦なく私に襲いかかってきた。
抵抗しようにも、私はベビーに攻撃しなかった。いや、できなかった。私にとってベビーに銃口を向けるということは、我が子を傷つけるのと同じことだった。
そして、私の甘さが招いた結果、ベビーは私のエネルギーを限界まで吸いとり続けた。
意識が遠退いていくのを感じ、ベビーに殺されるのならそれも悪くないと思って、私はそのまま目を瞑った。
だが、限界寸前にまでエネルギーを吸われたところで、ベビーは突如私から離れた。
何故離れたのか、私には理解出来なかった。ベビーは私を見下ろすようにしてしばらく空中に漂っていたが、すぐさま何処かへと消え去ってしまった。
私はその時しばらくベビーが消えていった方を眺めていたが、独り立ちする我が子を見送った気持ちになり、再びスペースパイレーツ殲滅のために、マザーの元へと向かった。
やがて私は、蘇ったマザーブレインの元へとたどり着いた。
一度倒したことのある相手のため、攻撃方法や弱点なども理解しており、難なく倒せると思っていた。
しかし、強力に進化したマザーの圧倒的なパワーは、私を死の淵へと追いやった。
ここで死ぬ。そう確信した私は今度こそ、これから来るであろう攻撃に備え目をゆっくりと閉じた。
··············だが、いつまでも攻撃がやってくることはなかった。
············なぜ私はまだ生きているのだ?
そう思った私は恐る恐る目を開けると、信じられない光景が飛び込んできた。
マザーの攻撃を通さないベビー。
だが、何発も放たれるマザーの攻撃にいつまでも耐えられるはずがない。
やがて、私を守り、そして私に力を与えてくれたベビーは、
私の頭上で砕け散った。
思考が飛んだ。
あの時の私は、目の前で起きた出来事にただ呆然と眺めていた。
だが、その直後に私が最初に抱いた感情は、怒りだった。
今すぐ目の前にいるマザーを消し飛ばしてやりたかった。それに応えるように、パワードスーツが限界以上の力を発揮し、アームキャノンから放たれた一本のビームは、マザーの頭脳を貫く槍と化していた。
悲鳴も、絶叫も、吐血さえも許さない。
当然、単なるビーム砲にも留まらない。
私が放ったそれは、超高速の、それこそ高周波振動の嵐とも呼ぶべき破壊力を見せた。一秒を千でも万でも分割したような、それでいて永遠にも感じられるその刹那。
もはやその攻撃力の原理を理解しようとするのでは間に合わない。しかし、その攻撃には確かにベビーの意志が宿っていた。
そして、私が放ったその攻撃は一定以上の数値を越え、空中分解を連鎖的に起こすかのように、数十メートル、数キロメートル単位で衝撃波をばら撒く大爆発を引き起こしていた。
無論、マザーは跡形もなく消し飛んでいた。
やがて、司令塔を失った惑星ゼーベスは自爆システムが自動的に作動した。
私は無事に脱出したが、惑星ゼーベスは、マザー、スペースパイレーツ·····················そしてベビーメトロイドという存在をまとめてこの世から消滅させた。
・・・_
あれから時間が経ち、スペースパイレーツ、マザー、そしてメトロイドがもはや過去のものとなって以降、私は今日までベビーのことを忘れてしまっていた。
無論、ベビーは私の子供なんかじゃない。
しかし、あの時ベビーを失った喪失感は今まで経験したことがないものだった。
愛する我が子が目の前から消えてしまった絶望感。あの気持ちは今でも忘れられない。
「···································」
話が長くなってしまった。
そんなことよりも早く、謎の信号の発生源を突き止めなくては。
私はバイザーを駆使して、怪しいところを見落としがないように探した。
「!」
何かを見つけた。
自然に出来た地形の中に、明らかに人の手で作られたような鉄で出来た地面がある。
私はそこへと向かい、それが一体なんなのか調べる。
見たところ何かのスイッチのようだ。
私は何の疑問も持たずにそのスイッチを押した。
ガゴンッ!!
「!」
直後、地盤が割れるような音が聞こえてきた。
私がいる場所を中心とし、半径二メートル付近の地面に亀裂が入っていた。そして亀裂が入った地面はそのままゆっくりと下へと下がり始めた。
どうやら私が押したスイッチは、エレベーターの起動装置だったようだ。
第三者による侵入を許さないように、周りの景色と同化させて目立たなくさせていたようだ。カモフラージュさせていたということは、この先には何か見られたくないものがあるということだ。
それが一体なんなのかは現時点ではわからないが、これで信号の発信源へと向かうことが出来そうだ。
私はエレベーターに身を任せるようにして、そのまま地下へと潜っていった。
・・・_
「ぐちゃ··············にちゃ··············」
サムスが降りていったすぐ近くの茂みで、不安定に何か軋むような音が連続していた。まるで、
「グルルルルルルルルルルルルゥ·······」
ふっ、と茂みから一つの影が現れた。
カエルのような大型の生物だった。筋肉質な体に巨大な牙と爪が生えている。
その謎の生き物はしばらくの間サムスが消えていった穴を見つめるが、次の獲物を探すために何処かへと消えていった。
そして、その生物が先ほど出てきた茂みの奥では、
二匹の親子うさぎが、見るも無惨に喰い荒らされた状態で横たわっていた。