メトロイド Noise Echoes   作:織姫ミグル

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第3章

 

 

 

 

 

ーーー生命維持ステータスーーー

コールドスリープシステム安定  心拍数 15拍/分

 

 

 

 

血圧………

 

 

 

 

 

 

生命維持ステータス異常

神経系測定値表示

 

神経ベクトrCool/n········································0zsonejfjSSSS

 

^G/A…QJDE mfsjjjyg0039214DIE0372921N33V44325X1982119

’’%s(error %d)**ーー001003201kifjeksfhs

####################危険######超過########

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ブツンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「················································フシュウウウウウウウウウウウウウウ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー命令コマンドーーー

・・・オフライン

 

 

 

 

 

 

 

警告:

 

 

 

 

 

 

 

型式ナンバー:4978

個体名:『バーサーカーロード』

 

 

暴走

 

 

 

 

 

 

 

 

グゥオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 

 

 

 

 

 

・・・_

 

 

 

 

 

 

地下へと潜った私に待ち受けていたものは想像を絶するものだった。

 

 

「ッ!!」

 

 

少し前までここは施設として機能はしていたのだろう。

だが、今は暗闇と静寂だけがこの空間を支配していた。機械的な風景の作りではあるものの、ひどく趣味的な建造物が混じっているのが目に入った。

 

そう、培養カプセルだ。

 

複雑な装置が取り付けられているそれは通路の奥までびっしりと続いていたが、どれも内側から破られるようにしてガラスが割れていた。

これが何を意味するのか、長年バウンティハンターとして活動していた私には容易に想像できた。

 

私はさらに奥深くへと突き進んで行った。

 

途中、鉄が錆びついたような悪臭が鼻につく。壁や床を見ると、既に景色と同化したかのように赤い液体が不規則な形でありとあらゆるところに付着していた。人の気配は一向にしない。そればかりか先ほどから遺体のいの字も見当たらないほどだった。

どう考えても異常だった。

 

では信号を送ったのは誰だったのか。

 

私は警戒を強めながら先へと進む。

 

 

「···························!」

 

 

すると、見覚えのあるものが私の目に入った。

青くて円形状に作られた扉。私はその見慣れたブルーゲートを見た瞬間、一発だけそのゲートに向かって発砲した。

 

ゲートは私が放ったビームエネルギーを感知してロックを解除した。自動的に開かれたゲートの先に待っていたのは、目を疑う光景だった。

 

鉄でできた地面が下から吹き上がるように吹き飛ばされていた。

 

多くの破片が部屋じゅうに撒き散らされ、壁やモニターなどを粉々に砕いていた。大きな穴に近づいていきよく見て見ると、物理的な破壊力で壊されたというよりも、何か胃酸のようなものを吐き出して溶かしたようにも見える。溶けかけている鉄の床から出てきたのは一体なんなのだろうか。

 

と、周りを捜索しているとあるものに私は目を止めた。

 

 

「?」

 

 

これはなんであろうか。

砂つぶよりも細かい粒子となった赤い“何か”が密集しているそれは、人の形のようにして床に固まっていた。人の影のようにも見えるそれは手に見える部分だけ異様に上へと伸びていた。手らしきものを見て見ると、人差し指のようなものが突き出ている。その人差し指らしきものが差している方向を見ると、メインコントロールのモニターがそこにあった。

 

 

「····································」

 

 

明らかに不自然だ。

自然と汚れが人に似た形でそこの地面に現れ、モニターを指すようにして偶然人差し指のようなものが出来上がったなんて馬鹿げている。

 

···························おそらく、これは。

 

とにかく私はモニターの方へと向かい、キーボードを操作して電源を入れる。

 

 

電源が入り、大型のモニターに表示されたのは···························

 

 

 

・・・_

 

 

 

ファイナルレポート:09.024.7

G.F.M.C  Task Force Gungnir

キャプテン:V・オティウス

 

 

 

・・・_

 

 

 

『・・・これを見ているものがいるなら幸運を祈る』

 

 

『我々、銀河連邦所属支援物資輸送旗艦グングニルはエディット星系を航海中に未知のワームホールへと引き摺り込まれた。不安定な次元空間が突如として目の前に現れ強力な引力に捕まった我々は、空間が不安定な中を45.2秒に渡って突き進んだ。不安定な次元の中、空間を歪曲させる磁気嵐に遭い宇宙船が大ダメージを受けてしまった。また、その影響で銀河連邦本部との交信も不能。孤立状態となった』

 

 

『ワームホールを抜けた場所は、銀河連邦も手をつけていない未開拓の惑星であることが判明。この星での物資の調達は難しいとは思うが、我々は中隊を三つの分隊に分け、オペレーションチーム基地の設営と宇宙船の修復、そしてこの惑星の調査にかかった』

 

 

『そこで我々は、この星の原住民らしき者たちとコンタクトした』

 

 

『姿形は我々と同タイプであった。そして、どういう理屈かはわからないが彼らが口にした言葉は不思議と理解ができた。同タイプとはいえ、文化や文明が異なる者同士では話す言葉は違ってくるはずだ。体格や骨格が違えば発声器官の構造も違う彼らに我々の言語を発声および理解することはできないはずだが、どうやら我々と彼らの間に言葉の壁というのは必要ないようだ。いずれ、それについて調べていこうと思う』

 

 

『彼らはとても友好的で、必要な物資を我々に分け与えてくれた。それだけでなく、彼らはこの惑星の技術を使って我々を支援してくれた。彼らの持つ技術には興味が湧いた。この星ではその技術をレンキンジュツと言うらしい。彼らのその技術と我々の技術を用いて、一時的なものだが地下に施設を作ることにした。この技術は我々にはなかったものなのでとても興味深いが······················我々はその技術を危険視した』

 

 

『そのレンキンジュツで生み出された物質を分解することに特化した人口生命体、【アルカ・ノイズ】。彼らは【ノイズ】と呼んでいたが、万が一そいつらが人を襲うようなことがあればと思うと·············しかし彼らは完全に制御しているから安全だと抜かしていた』

 

 

『我々はその時に気づくべきだったのだ······················彼らの真の狙いを』

 

 

『それは突然だった』

 

 

『彼らが急に襲ってきたのだ。【アルカ・ノイズ】を使役して、我々の持つ技術、研究資料、そして原生生物たちを奪おうとしてきたのだ。逃げようにも艦は完全にノイズに分解されて跡形もなくなり、ここは孤島なので逃げようにも逃げられなかった』

 

 

『無論、我々は抵抗した。幸いなことに、ノイズに対して我々の兵器は有効だった。我々のパワードスーツに備えられているエネルギーシールドも一定以上は保つようで、触れても分解されなかった。一匹一匹はそれほど脅威ではなく、簡単に倒せた。しかし、奴らは数の暴力で攻めてきた。その数3000以上。それだけのノイズを召喚されては、我々のパワードスーツのエネルギーは保たなかった』

 

 

『スーツのパワーが切れた者から消えて行った。一人、また一人とノイズに分解されて、ついには私だけとなった』

 

 

『私は捕虜として捕らえられ、我々の技術、そして捕獲した原生生物の知識を求められた。私は断ったが、脅されて抵抗も許されなかった』

 

 

『それからおよそ二年。それは起こった』

 

 

『施設内が妙に騒がしかった。どうやら原生生物たちが基準値の力を超えて培養器から逃げ出したようだ。なぜそうなったのか、それは後に知ることになる』

 

 

『今まで原生生物たちに何をしていたのか知らなかったが、どうやら彼らはレンキンジュツを用いて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それだけでなく、彼らは資料に載っていた【スペースパイレーツ】たちのDNAを解析し、レンキンジュツで再構築させて復活させ、そいつらにも【アルカ・ノイズ】の特性を混ぜ合わせたようだ』

 

 

『奴らはクリーチャーたちを利用して世界を支配するという目的を持っていたようだが、奴らに制御なんてできるわけがない。普通の原生生物ならまだしも、スペースパイレーツ達を制御しようなんてマザー以外には不可能だ。そして今日、暴走したクリーチャー達が逃げ出し、施設内にいる者達を分解、もしくは捕食をしているようであった』

 

 

『この騒ぎに乗じて私はなんとか逃げ出せたが、いつ奴らに襲われるかわからない。今これを書いている自分も数分後にはいなくなっていることだろう。消える前にどうか、ここのメインコントロールへと行き、このレポートを残そうと思う。そして、救難信号を送ってこれを読んでくれるものが現れると信じて待つ』

 

 

『制御を失ったクリーチャーを倒すには普通の手段では効果は薄い。分解という力を加えられたクリーチャー達はより強力な肉体へと進化し、それを上回る力で倒さねばならない。さらに我々のようなエネルギーシールドが備わったスーツがなければ危険だ。分解という特性を持つ以上、触れたら体が分解される危険性がある』

 

 

『このレポートを読んでいるものがいるならば、奴らに対抗できる力のデータを手に入れたのでダウンロードしてほしい。そのデータをメインコントロールルームの隣にあるデータルームに入れておく』

 

 

『そしてもう一つ、奴らはこの島だけじゃなく、他の場所にもクリーチャーを移動させていたことがわかった。世界を征服するために広範囲で活動する予定だったのか、彼らの仲間にデータを送り、そこでもクリーチャー達を製造していたようだ。彼らが所有していた基地のマップも一緒に入れておく。どうか、奴らを一匹残らず殲滅してくれ』

 

 

『わたsはもうすぐsnだろう。ここに来るまでn奴らに襲われてしまった。あしをtう噛まれてしまつて足が塵とかしている。いたmiでうまks文字gうてnい。どうkこれw見てirうものがいrうなら、私の二の舞にnら内容にちゅういしてkれ』

 

 

『健闘をいn』

 

 

 

・・・_

 

 

 

「·············································」

 

 

そこで文章は終わっていた。

なんとかメインコントロールルームへやって来たようだが、奴らに襲われて塵と化してしまったようだ。信号を送ったのは数日前、それを私が今日偶然拾ったということだろう。

 

私はV・オティウスだったものに目を向ける。

 

 

「······················································」

 

 

彼の意思は無駄にはしない。

そう心に誓った私は、その対抗手段が収められているデータをダウンロードするために、隣のデータルームへと向かう。

 

狭い部屋の中にある円形の台に私は立ち、データがパワードスーツに転送されていく。

 

 

『情報記録およびシールド回復シーケンス作動中···················』

 

 

···············································································································································································································································································································································································································································································································。

 

 

『シーケンス終了、パワードスーツアップグレード。対強化クリーチャー殲滅システム【Phonic gain system】ダウンロード完了』

 

 

スーツのAIがデータを正常にダウンロードしたことを知らせてくれた。

 

 

「··································································」

 

 

一見何も変わっていないように見えるが、パワードスーツに【Phonic gain】と呼ばれるエネルギーが付与されているようだ。

 

この力は有限のようで、空になったら補給せねばならないが、その【Phonic gain】がどこで手に入るのか私にはわからなかった。何より、この力の原理が理解不能だった。

 

 

放射性物質【フェイゾン】と似たような力だろうか?

 

 

フェイゾンに耐性を持たない生命体は、接触や被曝しただけで死亡するが、フェイゾンを照射・注入された生命体がその毒性に耐えた場合、筋肉や質量の増幅・特殊能力の強化や発現・形態変化など、遺伝子レベルで急速に突然変異を生じて強靭に進化するエネルギー。

 

それを利用するために銀河連邦はフェイゾンの研究を進め兵器として開発した。

 

フェイゾン強化装置を組み込んだPEDスーツ、通称【ハイパーモード】。

【フェイゾン】エネルギーを強化装置に組み込んだそのスーツはアームキャノンのみならず、スーツの防御力や一部の装備も大きく強化される。 

 

それと似たような力だと、勝手に私は思った。

 

と、手に入れた力について考察していると、

 

 

グルルルルルルルルルゥッ!!

 

 

「!!」

 

 

後ろから気色の悪い鳴き声が聞こえた。

振り返ると、甲殻類型ヒューマノイドのような外見で腕が大きなハサミのようになっているのが大きな特徴の生物がいた。

 

ゼーベス星人に似たようなやつだった。

 

だが、通常のゼーベス星人とは違って人の手が加えられているようで、液晶ディスプレイのように輝く部位が存在した。

 

するとそいつは、腕のハサミを開いて内部からビームを発射して来た。

 

 

「ッ!」

 

 

敵の攻撃だと察知した私は、パワードスーツの背面から緑色に輝くジェットを噴射し、全身に回転をかけながら素早く移動することで難を逃れた。

 

奴が放ったビームは私には当たらず、そのまま後ろの壁に当たった。壁は分解され、そのまま赤い塵と化していた。

 

溶かすのではなく分解、ゼーベス星人なら金属を腐食させる性質を持つ強酸性の体液を放ってくると思うが··················これがレポートにあった分解か。

 

確かに、普通に戦えば脅威に感じられる力だ。

だが私は怯まない。焦りの表情など一切出さない。

 

早速この力を試す機会がやって来たのだ。これを試さないで背を向けて逃げるなどありえない。

 

 

グルルルルルルルルルォアアアッ!!

 

 

私はアームキャノンを構え、戦闘態勢に入る。

 

 

································さあ、狩りの時間だ。

 

 

 

・・・_

 

 

 

午前6時。

潜水艦は無事に目的地の島の沖付近に着いた。

 

しかし降りるだけでも一苦労だ。まず、ここからは潜水艦では進めない。島の周りは浅瀬であり、これ以上は海底にぶつかるため近づけなかった。

 

そこでゴムボートを膨らませて10隊ほどが浜辺近くに到着する。

 

 

「およ~」

 

「·········誰もいない」

 

「情報通りね。島全体がゴーストタウン化している」

 

 

先に切歌、調、マリアが件の島に足をつけて周りに何かあるか見渡した。情報通り、人の気配はない。

 

·······だが、

 

 

「明らかに不自然だな」

 

「ああ、休暇で旅行するにはうってつけな島って感じで、浜辺にはビーチパラソルがあちこちにまだ残ってる。でも今日出したもんじゃねぇ、数日前から設置されてたっぽいな」

 

「··············」

 

 

先ほどまでここに人が優雅にバカンスしてたよと言わんばかりにほったらかしにされたビーチパラソルやビーチボールがあちこちに残されている。このビーチの管理人がちゃんとしているなら昨日のうちに片付けているはずだ。

 

早朝から営業開始のため早めにお客様のために設置したというなら話は別だが、ならば砂浜に敷いてあるビニールシートや飲料の入ったクーラーボックスや子供用の浮き輪があるのは不自然だ。

 

そして何より、

 

 

「砂浜に混じってる赤いこれは··············」

 

「あぁ、おそらく·····················」

 

 

クリスと翼が砂浜をチェックしていると、砂粒ではない赤い塵のようなものが混入されているのがわかった。

 

赤い塵のようなもの··············それはつまり、

 

 

「·····················アルカ・ノイズッ!!」

 

 

響は思わず拳を力強く握りしめる。

かつては人だったものが砂浜に埋められていることがわかり、助けられなかった悔しさが装者達を苛立たせる。

 

しかし、だとしたらやはりおかしい。

 

 

「アルカ・ノイズの仕業なら、錬金術師達は生き残ってるはずよね?」

 

「ああ。しかし、昨日の映像では錬金術師達のローブがこの島の各地で確認された。服だけが残されているのを見ると、奴らもノイズにやられた可能性がある。だが、ノイズを操ることができる錬金術師がノイズにやられるなんてこと··············」

 

「普通ならありえない、よね?」

 

「デース··············」

 

 

ノイズが反乱を起こして召喚した主達に襲いかからない限りありえないが、事実錬金術師達はノイズにやられたようである。

 

 

「··············う~む」

 

「錬金術師が召喚したノイズが錬金術師を殺した··············現段階ではそう考えるのが普通ですが··············」

 

「そんな事例、今まで聞いたことがないな」

 

 

司令と風鳴翼のマネージャー兼、S.O.N.Gのエージェントである“緒川慎次”が現状を見てポツリと呟いた。

 

錬金術師が集団自殺、もしくは集団心中なんて馬鹿げたことを考えない限りこうはならない。そもそも、民間人を巻き込んで自殺するなんて奴らに何のメリットがあるのかわからない。

 

まるで嵐が過ぎ去ったような静けさ。

その静寂さが余計に謎を呼び、そして不気味さを醸し出している。

 

と、いつまでも広々とした砂浜にいても仕方がない。

 

わからない以上、この島で何があったのか調査して真実を突き止めなければならない。

 

 

「司令、どこから見て回りますか?」

 

「無論、生存者の捜索が最優先だが、俺達はここで何があったのかの痕跡を追って下調べをしたい。故に、装者以外はあまりここから動かない方が得策かもしれんな」

 

「では··············」

 

「ああ、ここから先は響君達に任せよう」

 

 

そう判断した司令は響達を一ヶ所に召集させ、今回の作戦内容を改めて通達する。

 

 

「ここで何があったのかは現段階ではまだわからないが、もう気付いている通り十中八九ノイズの仕業と見て間違いないだろう。ノイズがまだこの島を彷徨いている可能性がある以上、俺達はあまりここから離れないようにする。君達には、生存者の捜索を優先して安全の確保、及びここで何があったのかの調査をしてもらいたい。警察署、病院、それから商業施設。為す術もなく人が消えたとしても、必ず何かの記録は残っているはずだ。調査範囲を広げるため安全地帯を確保をしつつ、調査にあたってくれ」

 

「「「「「「了解(デース)!」」」」」」

 

 

司令の命令を聞いた装者達は効率を考えて二手別れた。

調、切歌、マリアのグループは戦いの際にはLiNKERの使用が求められるため、予備は所持してあるが万が一LiNKERを使い果たして効果が切れても問題ないように仮設テントが置かれている場所から近いところをを調査する。

 

響、翼、クリスのグループは何の問題もなくシンフォギアを纏えるため、本部より離れた島の反対側を目指して調査を開始した。

 

 

 

・・・_

 

 

 

「やっぱり··············」

 

「誰もいねぇな··············」

 

「····························」

 

 

この島の広さはハワイのマウイ島に匹敵するほどだった。

海辺付近の道路を歩きながら調査していた三人だったが、ここまで歩いて人の影すら掴めていない。

 

 

「やっぱ··············ここにいた連中は」

 

「雪音、そう判断するのはまだ早いぞ」

 

「つってもな、こんだけ歩いて探し回ったのに人っ子一人見つかんえねぇんじゃもう·······」

 

 

クリスはもう、『ここにいた市民は全滅した』で話をまとめようとしていた。静寂だけが包んでいるこの島で、生存者がいる痕跡すら見当たらないのではある意味当然かもしれない。ただ一方で、まだ生き残りがいるかもしれないという展開を望んでいる節もあるようなのだが。

 

 

「··············あれ?」

 

 

そしてしばらく歩いて、アパレルショップやらが立ち並ぶ商業区画にたどり着いた辺りで、響がおかしな声を出した。

 

 

「なにこれ? ガムテープ?」

 

「ダクトテープのようだな。日本の一般的な粘着テープよりも粘着力および強度が高い。日本ではあまり馴染みはないものだが、発祥となったアメリカ合衆国方面では補修など様々な用途に使われているものだ」

 

 

それが、店の入り口のあちこちで確認した。

 

どの店も両開きのガラス扉を固めるように分厚いテープを貼り付けてある。ドアの真ん中、ドアの隙間を··············いや、上も下も、そして蝶番までも全部徹底的に目張りがされている。

 

 

「なんでこんなにもテープを?」

 

「考えられるのは、なんかが入ってくるのを防ごうとした、だな。その証拠に、ドアの奧側にはテーブルや椅子を敷き詰めてバリケードにして塞いでやがる」

 

「··············それでも、人の気配はない」

 

「ああ、おそらく簡単に侵入されちまったんだろうな。侵入した跡がどこにも見当たらねぇのが謎だが」

 

 

ドアのガラスからわずかに見える椅子やテーブルの角でバリケードを作ったというのはわかったが、肝心の侵入場所がどこにもなかった。店の出入口は塞がれていて出入りはできないし、店の建物には穴一つない。

 

これがもしアルカ・ノイズの仕業なら、どこかを分解して侵入したはずだ。

 

分解能力を発揮するに位相差障壁のエネルギーを解剖器官に回す必要があり、その結果、従来型のノイズと比較して防御性能が損なわれているため透過することはできず、壁を分解しないと入れないはずだ。

 

ではノイズではない?

 

それを確かめる方法が一つだけある。

 

 

「··············んじゃ、やるか」

 

「へ?」

 

「ぶち破るんだよ。人の気配がねぇなら遠慮はいらねぇだろ?」

 

 

そしてクリスは赤色のペンダントを構えると詠唱を唱える。

 

 

「Killter Ichaival tron」

 

 

するとクリスは赤い装甲をその身に纏っていく。

 

両手にはクロスボウ、忌むべき対象と言う形で彼女の心に強く残ってしまった重火器のイメージが反映された結果がギアを通して具現化していく。

 

ギアを纏い終えると、クリスは銃口を扉へと向ける。

 

 

「ちょっ!? クリスちゃん!?」

 

「ちょっせえっ!!」

 

 

響が慌てて止めようとしたが、少女は容赦なく引き金を引いた。

 

ズバァン!! と甲高い銃声が炸裂し、固く閉じられた扉は跡形もなく吹き飛んだ。

 

 

「·····················」

 

 

それを見ていた翼はやれやれといった感じで頭に手をあてている。

まあ、結果的に開いたんだからいいだろう。こんなことでシンフォギアを使ったら本部にいる職員達がアウフヴァッヘン波形を感知してノイズが出たのか!? と思われそうだが、そこは後で戻ったときに説明しよう。

 

三人は警戒しながら店の中へと入っていく。

それだけで景色がガラリと変わった。外にいる時間が長かったのか、それとも無人の島の異常さにおかしくなってしまったのか、明かりもついていない店内に入った瞬間不気味さが強制的に三人の心を鷲掴みにしてくる。

 

 

「これはっ!?」

 

「「ッ!!」」

 

 

店に入った途端、自分達が見ているものを疑った。

 

 

「ひ、ひでぇ··············」

 

「ッ!!」

 

 

二人もその光景を見て顔をしかめる。

 

··············死体だ。

 

それも無惨に喰いちぎられて人の形を保っていなかった。

店のあちこちでハエが飛び回り、天井には大きな穴が開いていた。さっきは見落としていたが、侵入者の侵入経路はひどく単純で、上から侵入したようであった。

 

だがそれよりも、この目も当てられない現状の方が三人の意識を集中させた。響は顔色を青くして後ずさった。もし朝食を多く摂っていたら耐えきれず戻していたことだろう。

 

悪臭が三人の鼻の中へと侵入し、不快感を強制的に発生させる。

三人は店の奧へと入り、嫌悪感を抱えながらも調査にあたった。

 

 

「ッ!!」

 

 

そんな中、響はある死体に目が行った。

 

その死体は、幼ささえ残る少女だった。

自分達と同じくらいの年頃の少女のその虚ろな瞳はぼんやりと空を見上げており、口は力なく半分開いている。その下、衣服と思われる布切れが手や足にひっかかるだけで、そのほとんどは剥ぎ取られている。そして······外側へ肋骨が開いていた。そこは空洞だった。お腹のあたりは消え失せ、そこからぬらぬらとした長いものが······腸が、だらりとぶら下がっていた。

 

··············あれが腸だとしたらその上の袋状のものは胃袋だろうか?

 

一気に熱いものがこみ上げてくる。

 

 

「ううっ、ぐ··············」

 

 

手を口に押し当てて必死にこらえた。

 

膝をついた。

 

目がしらが熱い。

 

涙が出る。

 

口の中に酸っぱい味がした。

 

懸命に飲み込み、耐える。

 

 

「··············おい」

 

「っ!!」

 

「··············大丈夫か?」

 

「··············クリスちゃん」

 

「気分が悪いんだったら一旦外に出て休んでろ。ここは私と先輩で調べておくから」

 

「····························」

 

 

クリスの慈しみらしきものが籠った表情が響の精神を安定させた。

 

 

「ううん、大丈夫だよクリスちゃん。心配してくれてありがとう」

 

「··············無理すんなよ」

 

「うん」

 

 

気を取り直して調査を開始する。

 

しかし、明らかにおかしい部分がたくさんある。

浜辺で見かけた赤い塵はおそらくノイズに分解された人間達の成れの果てだ。ノイズがこの島にいた人間を襲ったなら、この無惨に喰い荒らされた人達が今現在も肉片を残しているのはおかしい。

 

普段は感じない、水とは違う粘り気のあるそんな嫌な感触を靴の下から感じつつ、死体達を調べる。

 

むせるような血と臓物の臭いが鼻にまとわりつく。

 

 

「··············ノイズがやったんじゃねぇのか?」

 

「でも、浜辺で見かけたあれは多分ノイズに襲われた人達だよね?」

 

「ああ、だとしたらこれはなんなんだ。ノイズが分解せずに人を喰ったってぇのか?」

 

 

謎の多い死体にまた謎を呼ぶ。

結局はわからないことだらけであった。

 

 

「·····················」

 

 

一方で、風鳴翼は窓のステンレスサッシに人差し指の腹を押し当てていた。片付けができない彼女だが、まるで小姑さんのように汚れをチェックしながら、ポツリと呟いた。

 

 

「··············なんだこの妙な窪みは?」

 

 

まるで水をそこに垂らしたかのような不規則な形をしたへこみがそこに出来ていた。

 

物を落として出来た窪みではない。では一体これはなんなのか、と翼が眉をひそめた直後、

 

 

 

 

 

グゥオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

突然、()()()()()()()()()()()()()()()()

距離は圧倒的に近い。

 

 

「なっ、なんだ··············ッ!? 今の、怪物みたいな雄叫びは!?」

 

 

視覚、聴覚全てを響かせる雄叫びに、クリスは声を失いながらもなんとか絞り出した。

 

と、三人が先程の雄叫びを気にしているときだった。

 

 

「?」

 

 

翼の耳に何か妙な音が聞こえてきた。

 

相当な音だった。何しろ、地面そのものを響かせるようにして聞こえてきたくらいなのだ

から。

 

ボコボコボコボコ!! という地を飲み干す破壊の音が近付いてくる。

それがなんなのか、実戦に慣れている翼にはすぐにわかった。

 

 

「警戒しろ二人とも! ()()()()()!!」

 

「ッ!!」

 

 

そして、破滅の導火線は三人の足元までたどり着いた。

 

その直後、

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!

 

 

 

と、強固なアスファルトが一斉に崩れた。

 

 

「「「!!?」」」

 

 

一面二十メートル四方がまとめて崩落し、重力の感覚が消失する。

 

歌を歌うことも許されないそのいきなりの現象に三人は、あっけなく地下深くへと呑み込

まれていった。

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