メトロイド Noise Echoes   作:織姫ミグル

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第6章

 

 

崩壊している場所へと足を踏み入れるには勇気のいる場所だった。

もはや生存は絶望的··························何より、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

『これじゃあ·············もうッ!!』

 

『無理·············デスよッ!!』

 

『·······································っ!!』

 

 

マリアが進んでいるエリアは、まだ響達が進んだところの半分もいっていない。いや、行けないのだ。

 

被害は甚大。

活気溢れていた観光地は今尚崩壊中。本来こんなに崩壊するのはあり得ないのに、地面は呑み込まれるように消えていっている。マリア達は被害に巻き込まれないよう一歩一歩下がって様子は見ているが、これじゃあどう考えても響達がいた場所へ行くことは不可能だ。

 

景色の崩壊という壁に阻まれる。

モニターの向こうだけでなく、潜水艦の外で巨大な炸裂音が発せられ、映像が大きく歪む。しかし爆風や破片が本部を傷つけることはない。

 

 

「島の7割の地盤崩壊を確認!!」

 

「完全崩壊までおおよそ五分!! このままではマリアさん達だけでなく島付近にいる我々にも被害が及ぶ可能性がありますッ!!」

 

 

もはやこの場所は娯楽や至福を与えてくれる場所ではなく、『絶望』で埋め尽くされている場所だった。

 

 

『あり得ない·············明らかに被害拡大が早すぎるッ!!』

 

『こんなのおかしいデス! どう考えても地震だけが理由じゃないデス!!』

 

 

景色を呑み込む現状を見て調と切歌の二人がそんな事を言う。

 

 

「··························」

 

「司令、これはどう考えても·············」

 

「ああ··························藤尭」

 

「はい!!」

 

「島全体に向けてソナーを放て。おそらく島の地下に広範囲の空洞がある」

 

「は、はい!!」

 

 

言われた通りキーボードを操作して島全体に行き渡るように音波を放った。音波の影響で崩壊の進みが微かに広がる可能性もあるが、今更だ。もう始まっているものに音波を発したところで止まることはない。それどころか進んでしまうだろうが、ならば現状を把握してより良い対策をすればいいだけのこと。止めることができないならば、職員達の速やかな安全確保を優先して動くしかない。

 

 

「解析結果出ました! 島の地下に空洞部分がいくつもあります!!」

 

「やはりか」

 

 

島の構造の秘密を暴いた。これで少しは対策できると思いたい。

地下にある謎の空間によって、建造物などを支える基礎を失わせて崩壊を加速させている。何故島の地下にそんなものがあるのか、パヴァリア光明結社が絡んでいるとわかっていた時点で察せれる。

 

 

『こちらマリア』

 

 

そんな中、危険地帯にいるマリアが二人の安全を確保しつつ、少し離れた安全地帯で連絡を待っているであろう風鳴司令に連絡を入れる。

 

 

『連絡が途絶したポイントに向かおうにも崩壊が広範囲に広がっていてこれ以上は進めないわ···········明らかにこの広がりの速度は異常よ。そっちで何があったのか確認できる?』

 

 

渋滞に捕まった程度の軽い苛立ちの表情ではない。人の命がかかってるのに自然界による足止めでこめかみに青い筋がうっすらと浮かび上がる。どうしようもないこの感情をどこにもぶつけられない彼女は冷静さを保ちながらも本部に連絡をよこした。

 

 

「ああ。先ほどソナーをこの島全体に発射した結果、地下施設があったことが判明した。広がりが早いのはそのせいだろう。このままではいずれ、島全体が跡形もなく崩れる」

 

『··························ッ!!』

 

 

言葉ではなく、息を飲む音だけ聞こえてきた。

事態の把握が済んだ、そしてこれからの被害予想も。

 

 

「···············司令」

 

「どう、致しますか?」

 

「·············································」

 

 

迫られる選択、究極の決断。

冷静さを失わないようにするだけでも一苦労だった。一見無表情に見えるが、司令の表情は徐々に険しくなっていく。歯を食いしばり、それでもなんとか解決策を見出そうと奮闘する。

 

······························だが、見つからない。

 

どんなに力があっても、神をも殺せる力を持っていても、自然という理不尽で現実的な力にはどうしても敵わなかった。

 

 

「···············クソッ!!」

 

 

大きく吐き捨て、司令はモニターに映っているマリア達に叫んだ。

これ以上ないくらい、苦渋の決断をまだ世界の半分を知らない子供達にやむなく押し付けるように、

 

 

「全員そこから退避しろ!! まもなく島全体が完全に崩壊する!! 急いで本部に戻ってくるんだッッ!!」

 

 

 

 

・・・_

 

 

 

 

数秒。

沈黙だけが続いたが、やがて成年には至っていない二人組の口が開いた。

 

 

「な、なんデスかそれッ!? そんなのってないデスよッ!!??」

 

「見捨てろっていうの···············? まだ、生きてるかもしれないのに···············ッ!!??」

 

 

受け入れられない現実に反論。

だが、わかっていたはずだ。何より、一番近いところでこの絶望の塊のような現状を目の当たりにしているのだから。

 

しかし。『災厄』とは、そんな企画を無視して唐突に襲いかかってくるものだ。

 

迅速な対応だったと判断できるだろう。

恨まれる、幻滅される、何もかもがマイナスに捉えられると理解しながら、彼はそれを実行した。

 

何より、苦しいのは彼だけではなかった。

超人気アイドルをマネージメントしてきた緒川だって覚悟はしていたはずだ。

また片翼を失う。片翼でも空を羽ばたいてきた大切な人を戦場に送り続けている時点でいつかはこうなるかもしれないと覚悟はしていたはずだ。翼の意志だったというのもある。止めるべきだったというのもわかっている。

 

だが、できなかった。

 

理屈で言えば、その意見を無視して助けに行くべきだ。

 

にも拘らず、彼は動かなかった。

 

動けなかった。それらを粉砕するほどの圧倒的な理不尽な現実が、もう目の前で起こってしまっているんだから。

 

 

『······························ッ!!』

 

 

拳を壁にぶつける音が通信機から発せられる。しかし、誰もそれを責めない。

声にならない、表情が見えなくてもわかる感情。その音を聞いて、二人の少女は口を閉じてしまった。

 

 

「·············································了解」

 

「「!?」」

 

 

そして、震える唇で、二人の保護者役である彼女はその意見を肯定した。

 

 

「マリアッ!!」

 

「待つデスよマリアッ!! そんなのって────」

 

「黙りなさいッ!!」

 

「「!!」」

 

「····························ッ!」

 

 

普段は二人に優しく、少女達の前では温厚な彼女が珍しく本気で怒鳴った。

そして、二人は目撃した··········································彼女が奥歯を噛み締めるのを。

 

 

「····························私たちも、避難するわよ」

 

「「····························」」

 

 

何も言い返せなかった。

別に怒鳴られたから、少女達は黙ってしまったわけではない。

仮に、司令の命令を無視してギアを纏って救いに行ったとして、果たして本当に響達を助けることができるのか。いいや、もっとグレードを落として、仮に助けに行ったとして響達は本当に無事なのか、そしてまた仮に救いに行ったとして、確実にそれを成功できるのか。

 

断言はできない。

むしろ可能性は低い。彼女達は特別な訓練を積んではいるが、それでもただの人間だ。稀有で強大な能力を扱えるわけではない。特殊な薬品を扱わねばギアを纏えないような、そんな程度にしか過ぎないのだから。

 

奇跡を起こしたのは自分たちの力ではない。たとえ命を賭けても、全てをなげうって立ち向かっても、そんな簡単な事ですら今の彼女達には確約できない。自分が生まれた時から素晴らしく恵まれた主人公のような人間だったら動けたのかもしれない。何か大きな喪失感を覚え、三人は歯をくいしばる。

 

積み上げたものが崩れたわけじゃない。

幾度も勝利しておきながら実はそこから何も変わっていなかった事に、三人はもう一度自覚させられた。

 

『世界を救った』んじゃない。『世界の今の状態を保った』だけだったのだ。

 

 

(··············何が短時間で頂点に立った歌姫よ。結局、私はこれまで通りの私でしかない。いくつもの事件を解決して何かが劇的に変化しただなんて、そんな都合のいい話なんかなかったんだわ)

 

 

くそ、と女には似合わない言葉を吐き捨てそうになる。これ以上二人の前で弱いところは見せないと前を向く。

 

····························しかし、彼女は心の中で強くこう思う。

 

 

(簡単にくたばったら許さないわよ、三人とも)

 

 

こんなところで死ぬような奴らではない。

かつて私たちに手を伸ばし、奇跡をその身に纏い、神をも凌駕した力を持つ少女達が、こんな呆気なく死ぬわけがない。

 

必ず····························私たちの前に再び現れる、と。

 

ならば信じよう、彼女達の奇跡(胸の歌)を。

 

 

 

・・・_

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセス開始・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀河連邦所属・・・・・・・・・・・・・・・サムス・アラン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

データ収集開始・・・・・・・・・・・・・・完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パワードスーツデータ・・・・・・・・・・転送完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スペースパイレーツデータ・・・・・・・転送完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『特殊機密データ』・・・・・・・・・・・・・・転送完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロジェクト構築中・・・・・・・・・・・・・・完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『PROJECT : METROID』・・・・・・・・・・・・・・・開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甚大な量の粉塵が大空へ舞い上げ、酸素濃度はおろか、人が跡形もなく消滅した危険域。

その灼熱を極めた元島の中心にて、()()()()()()()()()()()()

 

 

 

・・・_

 

 

 

雲をぶち抜き、中心から吹き散らして、天を焦がす渦が島から飛び出した。

 

 

「「「「「「「「····························」」」」」」」」

 

 

爆音が思考をぶっ飛ばした。

無事に避難し、安全面ではかなり保証されている分厚い潜水艦の中へと逃げ込んだ。その後、島が崩壊するかと思いきや、それ以上のことが起こった。

 

跡形もなく消し飛ぶほどの爆発。何が原因でそうなったのかはわからない。

 

わからない························が、

 

今、その結末をS.O.N.Gは目撃していた。

 

 

「·····················ッ!!」

 

 

どうにもならなかった。

ただ自然界で起きた出来事とは思えない光景にただ眺めていることしか出来なかった。

 

人類最強と言われる者でさえ自然の法則には勝てなかった。

今は被害が及ばないところを目指して全速力で後退している。かなり遠くまで来たはすだ。が、それでも尚それはよく見える。

 

 

「また·····················俺はッ!!」

 

 

長いこと生きていれば絶望にぶち当たる。

戦場や危険地域に送ってしまっている時点でこうなることは覚悟していたとしても、なお目の前の現象を受け入れがたい。

 

これはもう、人間の力では敵わないところまで来ている。運命や因果律といった問題だ。それを人間の力でどうのこうのできるわけがない。

 

だが、これしか解決策が思い付かなかった。

 

悪いのは誰でもない、ノイズでもない。別の何かだ。

であれば、この問題は許されるとでも?

 

 

「くそ·······················翼ッ!!」

 

「·····················クリス先輩······」

 

「···································響さん」

 

 

深い悲しみを覚えるよりも前に、感情の歯車を回すためのピースすら足りない。そして、今いるみんな、こうなった原因の答えを求めることもしなかった。

 

深い呼吸を維持しているものも少ない、焦りと不安で浅い息を繰り返している。

 

奇跡を願っていた? そうかもしれない。

だが、それらしい兆しも見えない。ならばもう··············何も思えない。

 

 

「·····················」

 

 

ここの責任者は何も言わない。

言えない。云えない。癒えない。

しかし、それでは皆を余計に不安にさせるだけだ。最高責任者である以上、決断した責任を持って皆の命を守るために動かなければ。

 

 

「····························調査は、終了だ。日本に、戻るぞ」

 

「····························はい」

 

「·····················了解です」

 

 

言葉を言うのに妙な間をあけてしまった。

司令だって辛いのだ、ということは皆理解している。

 

この組織が出来上がってからというもの、別れの日々だ。

エージェントはこれまでにいくつ失っただろう。数えきれないくらい目の前からいなくなった。何より、自分の姪の大切な人まで自分のせいで失ってしまった。

 

うまいやり方はなかったのか、もう少しいい解決策があれば皆救えたのではないのか。その後悔でいっぱいだ。

 

だが、今は前に進まなければならない。

誰がなんと言おうと、こうなった原因を確かめる。そうでなければ、我々はこれから先、どの方向に向かって歩けばいいか分からなくなる。

 

そうでなくては彼女達が報われない。ツケを払わせなくてはいけないのだ。

 

そこまで思い悩んだ末、具体的な手順まで考え始めながら、司令はスタッフに指示を出そうとした··············その瞬間だった。

 

 

 

Beep Beep Beep Beep

 

 

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 

艦内全域に渡って、甲高いサイレンの音が吹き荒れる。

 

 

「司令ッ!!」

 

「なんだッ!! 何事だッ!?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんだとぉッ!?」

 

「メインモニターに映しますッ!!」

 

 

場の空気は荒れる。

こんな時に限って非常事態発生。そんな空気も読めないサイレン音に内心ぶちギレ寸前であった。

 

そして、モニターに表示された映像を見て、一同は驚愕する。

 

機体。

 

ボディカラーはオレンジ色で、フロントガラスの色は緑色。機体底面には姿勢制御および垂直離着陸を可能にする4基の可動式スラスターみたいなものが取り付けられ、機体後部にも2基のロケットエンジンが搭載されている。

 

飛行するために必要な翼もなく、明らかに物理法則を無視しているように見えるそれは、潜水艦上空で停止した。そして、潜水艦が浮上しているのをいいことに、許可なくその機体は司令達のいるほぼ真上に着陸した。

 

 

「な、なんデスか今のッ!?」

 

「飛行原理も不明で見たこともない飛行物体··············まさかッ!!」

 

 

切歌と調が互いに顔を合わせる。

互いの目を見て、まるで事前に練習していたかのように、

 

 

「「宇宙船(デス)!?」」

 

「全員上に上がるぞ! 必ず武器は所持しろ! 相手が何者なのか不明な以上、警戒を怠るなッ!!」

 

「「「「「「「了解!!」」」」」」」

 

 

全エージェント達に告ぐ、至急未確認飛行物体の前に集合せよというアナウンスが流れる。ざっくりとした知らせに事態を知らなかった者達は一瞬どういうことなのかわからず取り残される。が、プロ意識がちゃんと働いて即座に対応すべく動き始める。

 

司令達も急ぎ外に出るために通路を駆け抜ける。

侵入者が艦内に侵入しても簡単にメインルームにたどり着けないように設計された通路を走り回っている内に、ようやく外へと出れる場所まで来た。

 

先に待っていたエージェントが一番乗りに出た。

一瞬、目の前にある未知の飛行物体に足を止めてしまうものの、すぐに切り替えて銃器を展開して備える。映画をたくさん視聴している弦十郎もさすがにこの状況に警戒している。まさか、本当に地球外生命体なのか、と。警戒を怠らないように指示し、狭い足場の中で取り囲む。そんなことを言われなくても、圧倒的に理解が難しい状況に誰もが警戒をしている。

 

未確認飛行物体らしきものが目の前にある以上、未知なる驚異が襲ってこないよう、銃口を向けていつでも発砲できるよう備える。

 

 

 

そんな彼らの前に、奇跡が舞い降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「師匠ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはまだ20にも満たない少女の声。肩まである髪に、活発そうな顔立ち。

見間違えるはずがない、あれは、

 

 

「響君!?」

 

「師匠!!」

 

 

飛び込む少女を無事受け止める。

 

身構えてなかったため体重に押されそうになるものの、それでも彼は抱き留めた。

 

一体どういうことなのかわからない。

今日の一日から、わけがわからないのオンパレードだ。通信が途絶してから行方がわからなくなった少女が何故目の前の未確認飛行物体から現れたんだ?

 

それも、その少女だけでなく、

 

 

「翼ッ!?」

 

「翼さんッ!!」

 

「「クリス先輩ッ!!」」

 

「··············よ、よう」

 

「マリア、緒川さん··············心配をおかけしました」

 

 

それぞれ仲間達は再会の喜びで抱き締め合う。

顔を引き釣りながらも後輩たちの飛び込みを受け止めるクリスに、涙を溜めながらやって来た二人に翼は明るい笑みを浮かべる。心配をかけてしまった罪悪感に苛まれながらも、二人はそれぞれ飛び込んできた仲間達の背中に両腕を回して優しく抱き締めた。

 

エージェント達も唖然としている。

 

あの島と運命を共にしたはずの装者達が目の前に現れたんだ。死んだと思っていた響達が生きて目の前にいる。これは幻覚か、あるいは夢かと、どちらなのかすら判断が出来ないほど目の前で起きていることが信じられない。

 

 

 

ズシンッ!!

 

 

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 

そんなどよめく群衆を前に、正体不明の人物が現れる。

 

 

「····························」

 

 

足場に衝撃が伝わってきたかと思いきや、目の前に武骨な鎧が無言で立ち尽くしていた。

 

無論、エージェント達は警戒。

見たこともないアーマーに、明らかに目立つ右腕のキャノンを見てしまえばそうなるのも当然だろう。

 

感情も表情も読み取れない者に全員が銃口を向ける。

謎の素材でできたアーマーに身を包んだ者が、屈強な男達の陰に隠れてしまう。

 

それを見て異を唱える者達がいた。

 

 

「ま、待ってッ!! その人は悪い人じゃないんですッ!!」

 

「こいつはあたし達を救ってくれたんだッ!! 敵じゃねぇから銃を下ろしてくれッ!!」

 

 

響とクリスがエージェント達を掻き分けて正体不明の人物の前に出る。

 

しばしの沈黙の後、眉をひそめた司令がどういう事なのか問い詰める。

 

 

「どういう事だ?」

 

「立花達が言った通りです。窮地に陥った我々に手を差し伸べ、危機から脱することが出来たのは彼女の協力があったからなんです」

 

「彼女?」

 

 

あのアーマーを身につけているのは女性なのかと、司令はただ前方にいる人物に視線を固定している。

 

 

「···············································」

 

 

彼女は何を思っているのか一言も発しない。

正面から向かい合う司令は注意深くアーマーに身を包んだ女性を観察する。

 

意味が不明。

しかし、何かを隠している素振りもない。むしろ平然と司令たちと向き合っている。右腕に取り付けられたキャノンをこちらに向けるような動作も一切しない。敵意も一切感じない。何か敵対関係のきっかけになるようなことをしてくると最初思ったが、響達の証言もあって警戒は必要ないと次第に思えてきた。

 

そう思った司令は警戒を解き、組織を代表して彼女の元へと歩み寄る。

 

 

「まずは、非礼を詫びさせてくれ。事情を知らぬとはいえ、あなたへの数々の無礼を許して欲しい。そして、礼を言わせてくれ。我々の大切な仲間を救っていただき誠にありがとうございました」

 

「·························································」

 

 

90度の角度を保つように頭を下げてきた。

彼女はそれに対しても、無反応。いや、もしかしたらバイザーの奥では何かリアクションをしているかもしれないが、現時点では彼女の顔色を窺うことは出来ない。

 

 

「それで、仲間を救ってくれた恩人に無礼を承知で聞きたいことが山ほどあるのだが、まずはこれに答えてほしい」

 

 

救ってくれた恩人に尋問紛いなことをするのに心が痛むが、最高責任者である以上、正体不明な彼女のことを一つでも知っておかなくてはならない。この人が敵じゃないとは今の段階では判断できない。いずれ敵になる僅かな可能性が万に一つもある限り、油断をするわけにはいかない。

 

そして司令は、彼女の目の代わりとなっているバイザー部分を見つめながら、

 

 

「あなたの名前、そして何者なのかを教えてほしい」

 

 

単純でよくあるような質問であったが、ここにいる誰もが知りたがっているものだった。

 

 

「······································」

 

 

その質問に、彼女は無表情ながらも思わず笑ってしまった。

無礼を承知というから何を聞いてくるかと思えば、全く見当違いのことを真顔で語ってきた司令がちょっとおかしかったという様子で僅かに口角をあげた。

 

そして、それは口を開く。

 

パワードスーツのヘルメット越しに正面に立っている司令に対し、彼女はまるで旧知の仲のように冷静に、男のようなくだけた口ぶりでこう告げたのだ。

 

 

 

 

 

「私は“サムス・アラン”。フリーのバウンティーハンターだ」

 

 

 

 

 

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