【完結】冒険譚「希望の指輪」 アルゴノゥト・ウィザード   作:れいが

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4節 陽気な流離妖精

 寝かせられていたエルフは目を開けて、ガバッと勢いよく起き上がる。

 

 見渡していると、意識を失う前に見た木々が分かれて出来た道とは異なる大草原が

 広がっていた。

 

 「(はて?何故私はこんな所で・・・うん?)」

 

 ふと鼻を嗅ぐと、どこからか香ばしい香りがしてきた。

 

 その匂いを辿ると、横でそのエルフを助けたアルゴノゥトとフィーナが料理を作っていた。

 

 鼻腔をくすぐる香りに、腹の虫がまたこれでもかというほど鳴ってエルフは手で腹を押えながら

 悶絶した。

 

 腹の内側が少し痛むほど、空腹になりすぎていたのだろう。

 

 「(むぅ・・・これほどまでに空腹となるのは・・・)」

 「(指輪の魔法使いとその弟子を見つけ出すのに夢中になって食事を摂らなかったのは

  流石に堪えたか・・・)」

 

 そんな自身の間抜けさに悔やんでいるエルフにアルゴノゥトが近寄ってきて、作りたての料理を

 盛り付けた皿を差し出した。

 

 ジャガイモ、アスパラ、タマネギなど様々な野菜を半熟の目玉焼きで包み込むように焼いた

 アルゴノゥトの得意料理だ。

 

 その香りにエルフの腹の虫の音が一層大きくなる。

 

 「遠慮せず食べなさい。おかわりはまだあるぞ」

 「いただきます」

 「おかわりお願いできますかな?」

 「ちゃんと噛みましたか!?」

 

 受け取ってものの数秒で食べたのにフィーナは思わず目を反らして、皿を持っている指

 に熱々のスープを掛けてしまいあまりの熱さに叫びながら頭上に投げ飛ばしてしまう。

 

 アルゴノゥトは即座に魔法の指輪を中指に嵌め、魔法を発動した。

 

 <<GRAVITY>>

 <<PLEASE>>

 

 琥珀色の魔法陣が展開して落下しそうになった皿と中のスープは宙に浮いた状態となる。

 

 それを見てエルフは目を見開き、驚きと同時に歓喜した。

 

 やっと追い続けていた指輪の魔法使いとその弟子と出会えたからだ。

 

 アルゴノゥトは魔法陣を動かして、まず皿を掴んで動かし浮いているスープを下から掬い上げて

 入れていく。

 

 その間に、フィーナが謝っていたが寛大にアルゴノゥトは許してあげていた。

 

 全て入れ終えると魔法陣を閉じ、スプーンを添えてエルフに差し出した。

 

 「すまないな。驚かせてしまって」

 「いえいえ、寧ろ本当に指輪の魔法をこの目で見る事が出来て感激しております」

 「ん?・・・村で私の事を知ったのか?」

 

 アルゴノゥトはそう名乗ったのは、盗賊団から救った村が初めてなのでそう問いかける。

 

 リュールゥは頷いて、受け取った皿のスープをスプーンで掬って啜る。

 

 「ええ、そうですとも。ここから少し離れた村で、貴方達の事を聴きまして」

 「山の中を探し回っていたのですが・・・夢中になり過ぎて、不甲斐ない姿を見せてしまった

  次第です」

 

 自嘲めいた笑みを浮かべて答えるリュールゥ。

 

 アルゴノゥトは何故、自分達を捜していたのか気になったが一先ずリュールゥに食事を

 摂らせる事を優先した。

 

 3回ほど料理をおかわりをして、リュールゥは満腹になったようだ。

 

 フィーナはその食べっぷりに引き笑いを浮かべ、アルゴノゥトは満足してくれたリュールゥに

 微笑みかけながら、食後の珈琲を差し出す。

 

 リュールゥはそれを受け取って一啜りし嗜むと、大きく息をついて満足そうにした。

 

 フィーナは顔を振って意識を取り戻すとリュールゥの近くに寄って、問いかけた。

 

 「貴女は・・・エルフ、ですよね?」

 「ええ、私はエルフ。流離人ならぬ流離妖精。名前はリュールゥと申します」

 「貴方が指輪の魔法使い、そちらのお嬢さんがその弟子ですね?」

 「ああっ。アルゴノゥト=クラネルだ。彼女はフィーナと呼んであげてくれ」

 「は、初めまして。フィーナです」

 「初めまして、同じ血を分けた同胞の人にして混血を蔑視する時代を無くする英傑さん」

 「あ・・・」

 

 その言葉を聞いてフィーナは目を見開き、小さく声を漏らす。

 

 それに構わずリュールゥはまた珈琲を嗜み続けた。

 

 「いやぁ、とても素晴らしい夢を口上にしましたね。その夢はいずれ世界を変える

  偉業となりましょう」

 「そ、その・・・蔑まさないんですか?そんな事を言っている私を・・・」

 「はっははは!血が混ざっているからと、見下すなんてくだらない事ですね」

 「先程言った通り、素晴らしい夢ですよ。私は強く共感しますとも」

 「・・・ありがとうございます。そう言っていただけて、嬉しいです」

 

 フィーナは自分の思いを理解して答えてくれたリュールゥにお礼を述べながら頭を下げる。

 

 リュールゥは軽くて手を挙げて応えると、珈琲を飲み干しアルゴノゥトにカップを手渡して

 返した。

 

 「私からも礼を言わせてほしい。ありがとう、フィーナの思いに共感してくれて」

 「いえいえ。私は単なる変わり種に過ぎませんよ」

 「・・・そうか。ところで、何故私達を追っていたんだ?」

 「それはもちろん、貴方の偉業をこの目で収めるです」

 

 リュールゥはアルゴノゥトに微笑み掛けながら追っていた理由を告げた。

 

 偉業という言葉にアルゴノゥトは首を傾げ、疑問に思う。

 

 「偉業・・・私はただ、人助けをしているだけに過ぎない。英雄でもないのだから」

 「ええ、誰でも最初は英雄ではありませんとも」

 

 リュールゥは横に置いていた竪琴を拾い上げ、撫でるように弦を弾いた。

 

 すると、そよ風が吹いて草原が静かに揺らめく。

 

 「ですが、その人助けも幾年もの時が経つ間に英雄の偉業として人々が語り継ぐのです」

 「そして英雄譚とも詩ともなります。勇敢に気高く、大願を抱いて死んだ英雄の物語が」

 「ですから、貴方の偉業をこの目に抑めて、詩にしたいのですよ」

 「・・・なるほど、だからそれを意識がないのにも関わらず、手放さなかったのか」 

 「その通りです。ご理解が早くてとても助かりますね」

 

 竪琴を愛おしそうに抱きしめて、自然の木で作られた胴の葉っぱを指で撫でた。

 

 「つまり吟遊詩人、というものですよね?師匠の偉業を詩にして、どうするんですか?」

 「私はこれまで目にした英雄達の偉業を詩にし、伝える使命を帯びて世界に希望の詩を

  広めております」 

 「それが私の夢なのです。混血を蔑ます時代を無くすという夢を抱いている、

  貴女と同じですよ」

 

 フィーナは戸惑いと嬉しさの両方が同時に沸き立ってきて、ただリュールゥを見つめる事しか

 出来なかった。

  

 アルゴノゥトは疑問を晴れて、納得したようだった。

 

 リュールゥに手を差し出し、握手を求める。

 

 「・・・素晴らしい夢だな。フィーナの夢にも引けを取らない夢だ」

 「お褒めいただき大変嬉しく思います。アルゴノゥト殿、フィーナ殿」

 

 その差し出された手を握り、リュールゥは本当に嬉しそうだった。




 「あ・・・ふ、触れる事も大丈夫なんですか・・・?」

 「もちろんですとも。ただ、汚れていた場合は遠慮しますが」

 「それは当たり前だな。私もそれは遠慮したい」

 「そうでしょうとも。では、アル・・・。・・・ふむ」

 「失礼ながら、愛称としてアル殿と呼んでよろしいですかな?」

 「ん?あぁ、構わないぞ。そう呼ばれるのは初めてだが」

 「ありがとうございます」

 「し、師匠!わ、私もアル師匠と呼んでいいですか・・・?」

 「何?師匠を愛称で呼ぶつもりか?」

 「ひえっ!?ご、ごごごご、ごめんなさ」

 「もちろんいいとも」

 「はえ!?」

 「ハッハッハッハッ」

 「もう、師匠~・・・」

 「はははははっ。面白い師弟ですなぁ、見ていて飽きません」

 「お、お恥ずかしい限りです・・・」
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