【完結】冒険譚「希望の指輪」 アルゴノゥト・ウィザード   作:れいが

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3章
1節 しがない鍛冶師


 北方の地に近づくに連れ、草木が少なくなってきた。

 

 少し肌寒くもなってきたため、体温を下げないようアルゴノゥト達は服装を防寒着に

 替えている。

 

 地面が剥き出しとなっている道を進み続けていると、小さな村を見つけた。

 

 そこで一休みをする事にして、村へと入っていく。

 

 「では、集合場所はここにしましょうか」

 「そうですね。一番目立つこれがありますから」

 「ああっ。では、トラブルがないようにな」

 

 駐馬場に疾走の鉄馬(サイクロン)を置き、3人はそれぞれ思い思いに動く事とした。

 

 

 活気溢れる商店が並ぶ通りを歩いていると、アルゴノゥトはふと足を止めた。

 

 立ち止まった傍には様々な武器を並べている鍛冶屋が居眠りをしている。

 

 商売の最中に寝ていて支払われた金銭を盗られないか心配になりそうだが、雰囲気から察するに 

 全く売れていないため寝ているのだろう。

 

 アルゴノゥトが並べられている武器を見ようと、片膝をついて一つ一つ確かめながら見ていく。

 

 そんな中、一振りの刀に目が留った。

 

 アルゴノゥトはそれを手に持ち、あえて起こす程度の声量で言った。

 

 「見事なものだな。極東で使われる刀を打てるのか」

 「ん?...ああっ。そいつは、以前に作り方を学んできて打ったもんなんだ」 

 

 鍛冶師は口の端から垂れていた涎を拭い、アルゴノゥトに答える。

 

 日の光で煌めく鋭い刃の刀身で、波打つようになだらかで美しい波紋。

 

 その切れ味は如何ほどのものなのか興味深く眺めながら、アルゴノゥトは問いかけた。

 

 「なるほど。私が知る限りでは、複数人で鉄を打っていた記憶があるが・・・」

 「まさか、一人だけで全ての工程を熟しているのか?」 

 「見ての通りな。けど、事実それを打ったのはこの俺だ」

 「実にすごい腕だな。私はアルゴノゥト・クラネル、そちらは?」

 「俺か?俺はクロッゾ。ただのクロッゾ。ちっとも武器が売れない、しがない鍛冶師だ」

 

 そう言いながらクロッゾは短刀を持つと、汚れていたのか羊毛で拭き始める。

 

 アルゴノゥトはその言葉に眉間を顰めて刀の反りを見ながら、答えた。

 

 「売れない?これほど精巧な造りにして、刃紋の美しさも素晴らしいというのに・・・」

 「そんなに褒めるほどでもないだろ。まぁ、そう言ってくれるのは、鍛治師冥利に尽きるな」

 「アンタ、見たところ旅人って感じだな?どうだ?一つ買ってくか?」

 「ふむ・・・そうだな。徒手で魔物を倒すのも、容易ではなくなってきたところだ。

  買わせてもらおう」

 「(俺の聞き間違いだよな?徒手で何を倒したって?)」

 

 クロッゾは聞きそびれてしまうが、事実アルゴノゥトは武器を持たずに今まで魔物を

 退治してきた。

 

 この村へ来る道中でも魔物に襲われたりしていたが、手強い魔物だけを倒してフィーナが魔法で

 戦うための特訓という事で相手になりそうな魔物はフィーナが倒すという事をしていたのだ。

 

 アルゴノゥトは一度刀を置いて、改めて並べられた武器を見た。

 

 その時、クロッゾの背後で一瞬何かが輝いたのに気付く。

 

 「・・・あれは?」

 「ん?あぁ・・・これか?これは・・・俺が初めて特別な力で打った剣だ」

 「特別な力?」

 「信じるかはお前次第だが・・・魔物に襲われていた精霊を助けてやった事があるんだ」 

 「で、死にかけの俺に精霊、確かウルスつってたな。そいつから血を与えられて、

  傷が癒えた上に変な武器まで作れるようになったんだ」

 

 クロッゾはその剣の刀身を撫でながら、自身の起きた経緯を話した。

 

 「俺はそれを魔剣と呼んでる。但し、こいつはそうじゃない」

 「剣銃(けんじゅう)っていうんだ」

 「剣銃(けんじゅう)・・・銃とは、何だ?」

 

 銃という聴いた事のない言葉にアルゴノゥトは問いかけると、クロッゾは徐ろに

 刀身の根元にある突起を押しながら傾けさせた。

 

 すると、刃が刀身の中へ収納されて切っ先から刀身の半分がジョイント部を境に

 棟部分へ折れ曲がる。

 

 変形したその剣にアルゴノゥトは目を見張った。

 

 「それが、銃という武器か」

 「そうだ。最も西の方角にある国で作られていた武器だったんだが・・・」

 「あまりにも作るのが面倒で値段も張るもんだから、もう作られなくなってるんだ」

 

 銃の仕組みがわからないアルゴノゥトだが、手間と費用がかかる物だと最終的には

 没となるという事は理解している。

 

 どれだけ強力な武器でも、少なからずそうなってしまう事も。

 

 「具体的にどんな武器かと言えば、矢が尽きるまでいくらでも素早く連射出来るボウガンだな」

 「なるほど。確かに形状がどことなく似ている気がするな」

 「だろ。その銃の仕組みを教えてもらい、極東の鍛冶を用いた剣と組み合わせた。

  それが剣銃(けんじゅう)だ」

 

 クロッゾは刀身を支えながら根元の突起を押し、握りを刀身と平行に真っ直ぐにさせる。

 

 半分に曲げられていた刀身の半分も平行になるよう戻った。

 

 「・・・では、売る事は出来ないのか」

 「いや。売ってやらない事はないぞ?けど、扱えるかどうか、俺も判断させてもらわないとな」

 「なるほど。・・・では、私なりの剣術をお見せしよう」

 「そういうと思ってたんだ。ほらよ、俺を認めさせてみろ」

 

 クロッゾは立ち上がって、アルゴノゥトに剣銃(けんじゅう)を差し出す。

 

 剣銃(けんじゅう)を受け取って、アルゴノゥトはどこか広い場所で試す事とした。




 「ところで、リュールゥさんが持ってるその竪琴はどこで購入した
  物なんですか?」

 「これは私の家系が代々受け継いできた物でして、わからないんですよ」

 「恐らくは100年以上の物ではありましょうなぁ」

 「へぇ~。それはすごいですね・・・」

 「ただまぁ、弦は痛み始めたらキチンと交換していますよ」

 「美しい音色を奏でるためにも、弦は常に綺麗でなければなりませんから」

 「なるほど」
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