【完結】冒険譚「希望の指輪」 アルゴノゥト・ウィザード   作:れいが

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3節 狼の戦士

 「イィーッ!」

 

 全身黒一色の服を着た、蜘蛛の仮面を被った人のようなソレが一人の青年に鉈を振り翳す。

 

 青年は臆する事なく関節部の膝を蹴りつけ、体勢を崩させるとそのまま二段蹴りを頭部に

 叩き込む。

 

 蜘蛛の仮面を被ったソレは力無く倒れ、服と仮面の内側から泡が吹き出てくると中身だけが

 溶けるように消えてしまう。

 

 「何なんだ?こいつらは・・・」

 

 青年が悪態をつくと、何かが折れた音と共に叫び声が劈く。

 

 「ギャァァアアアアアッ!!」

 「ウォオオオオオオオオ!

 

 ソレは、まるで蜘蛛が人になったような異形の姿をしていた。

 

 全身が黒く短い毛に覆われた人の形をしたソレは、容易く狼人の男の腕をへし折りゴミの様に

 放り投げた。

 

 二本の腕の他に背中から生えた六本もの長い腕を使い、別の狼人達を首から掴み上げ

 締め上げている。

 

 周囲の狼人達は、傷付いた同胞を退避させ、捕まってしまっている同胞を助けようとしているが

 為す術がなく動けずにいた。

 

 そんな中、青年が吠えるように叫んだ。

 

 「貴様、我が部族の仲間を・・・何が目的だ!?」

 「我が首領の命により、お前達には働き蟻となってもらおう!」

 「下衆が・・・我が狼の部族を貶した事を後悔しろ!」

  

 ダンッ!と地面がめり込むほどに踏み込み、青年は蜘蛛のようなそれに飛びかかった。

 

 蜘蛛のようなソレは不敵に無い鼻で笑うと、捕まえている二人の狼人を突き出して

 盾にしてきた。

 

 青年は焦る事なく、身を翻して通過する間際に左手に装備していた鉤爪でソレの腕を

 斬り落とす。

 

 それによって捕まっていた解放され、二人の狼人は落ちていき自力で着地するとその場から

 すぐに離れた。

 

 「ほほぉ・・・優れた身体能力だな。貴様の名は!?」

 

 

 「ユーリ。『狼』の部族、族長ロウガの長子だ!」

 

 ユーリは着地し、他の同胞も救おうと蜘蛛のソレが死角となる方へと駆けた。

 

 しかし、何かが飛来してくるのを察知し急減速して足を止める。

 

 直後、先程まで狼人を捕まえていた長い腕が地面に突き刺さり、もう一本の腕は背後から

 迫り来る。

 

 それを宙返りをしてユーリは腕の攻撃を回避し、その腕に乗ると踏み台にして跳び上がる。

 

 

 村を出たクロッゾに続いてアルゴノゥト達も旅立った。

 

 悪路を進んで行くにつれて晴天だったはずの空が灰色の雲に覆い尽くされていく。

 

 雨が降らないかとアルゴノゥトはそう思っている時だった。

 

 突如として頭の中に唸り声が混じったような竜の低い声が響いた。

 

 ―前から向かってきているぞ

 

 そう言われ、アルゴノゥトは速度を少し落すと、目を凝らして前方を凝視する。

 

 すると、黒い影が僅かに動いたのに気付く。

 

 竜が警告した通り、魔物が迫って来るのが見えたのだ。

 

 「リュールゥ!ウィザーソードガンを取り出してくれ!」

 「はい!・・・どうぞっ!」

 「早速使わせてもらおう、クロッゾ!」

 

 アルゴノゥトは受け取ったウィザーソードガンを手にし、片手でハンドルを握る。

 

 フィーナとリュールゥにしっかり掴まるよう伝えると、ハンドルを思いっきり捻り、

 エンジン全開で突き進み始めた。

 

 横転しないよう操作ながら、銃口を魔物に向けて狙いを定める。

  

 息を吐き、呼吸を止めると同時に引き金を引いて銃口から銀色の弾丸を三発撃ち放った。

 

 銀色の弾丸は紅い魔法陣のような衝撃波を残しながら一直線に向かっていき、最初の一発は

 魔物の脚を撃ち抜いて続く二発は眉間と開いていた口を貫通する。

 

 魔物は急所を撃ち抜かれた事でアルゴノゥト達を襲う事なく絶命した。

 

 撃ち抜かれた箇所から血を滴らせる魔物の横に停車し、アルゴノゥトは魔物が向かってきた

 方向を見据えた。

 

 「こんなところにまで魔物が現れるなんて・・・」

 「この領域も、安全ではなくなってきているという事でしょうな」

 「・・・どうやらそのようだ。あの煙が上がっている方へ急ぐぞ!」

 

 アルゴノゥトは灰色の空へと吸い込まれていく様に立ち上る黒煙を目印にし急いだ。

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