【完結】冒険譚「希望の指輪」 アルゴノゥト・ウィザード 作:れいが
「よっ・・・っと」
2日が経ち、
その1つの地区で木材を積み上げているアルゴノゥトの姿があった。
魔物を退治してくれた恩人に手伝わせる訳には、と最初は丁重に遠慮されていたのだが
それでも手伝うと買って出たのだ。
そこまで言ってくれるのなら、と壊された建物を直すために必要な木材を運ぶのを任された。
アルゴノゥトは徐ろに指輪を嵌めると腹部にある掌の形をしたベルトのバックルに手を重ねる。
<<GRAVITY>>
<<PLEASE>>
指輪を嵌めた手を木材に翳すと琥珀色の魔法陣が展開し、表面が上下を向くように宙に浮いた。
すると、木材がフワッと浮遊してアルゴノゥトが歩き出すとそれに付いて行くように木材は
運ばれていく。
周囲の人々は思わず作業をしていた手を止めて、目の前の光景に驚いていた。
―なんだありゃ?
―どうやってるんだ?
―魔法か?けど、杖も何も使ってなかったぞ?
アルゴノゥトはそれを気にせず、運び終えると次に運ぶ木材を集め始める。
他にも手伝える事がないかアルゴノゥトは確認をして、先に骨組みを組み立てた家の
屋根となる材木を上まで運ぶ作業を頼まれた。
アルゴノゥトは骨組みの軒桁の上に立ち、再びバックルに手を重ねた。
<<CONNECT>>
<<PLEASE>>
今度は紅い魔法陣が展開し、その中に手を入れると何かを掴んだ。
それを引っ張っていくと魔法陣をすり抜けて、中から束ねた木板が出てきた。
―あれ?ここに置いてなかったか?
―どこやったんだ?
「おーい、君達。もう運び終わっているよ」
―・・・えぇ!?
下で待っていた大工は突然、木板が消えてしまった事に驚いているとアルゴノゥトが手を振って
既に運び終えた事を伝えてきた事にまた驚いた。
午後を過ぎ、アルゴノゥトは広場の原っぱの上に座り、日誌を綴っていた。
左側のページに文字を記し、右側のページはその日に見た風景を描いている。
屋根を修復している際に見た、都の風景が描かれていた。
「ふむ。・・・ん?」
ふと誰かが後ろに居る気配を感じたアルゴノゥトは振り向いて見る。
そこに立っていたのは昨日、魔物から救った少女だった。
少女は振り向いたアルゴノゥトに驚いたのかその場で立ち尽くし、オロオロと目線を
反らしたりしていた。
アルゴノゥトは日誌をポケットに仕舞い、立ち上がると少女の元へ近寄る。
「やぁ。何か用かな?」
「・・・あ、あの!・・・お昼ご飯、まだ食べていないですか?」
「ん?あぁ、これからどこかで食べようかと思っていたんだ」
「そ、それなら、こ、こちらをどうぞ!」
そう言って少女は背後に隠し持っていたバスケットを差し出してくる。
アルゴノゥトはそれを両手で受け取り、僅かに中から香ってくる匂いで
何か料理が入っているのだと気付いた。
「すまないね。昨日の被害で君達もお腹が空いているだろうに・・・」
「い、いえいえ!とんでもありません!」
「貴方は英雄なんです!これくらいの事しか出来ないのが、恥ずかしいくらいで・・・」
「そんな事、言わないでほしいな。とても美味しそうだ」
アルゴノゥトはバスケットの中に入っていたサンドイッチを見て、そう答える。
するとクウゥゥと可愛らしい腹の虫が鳴いたのを聴いて、アルゴノゥトはキョトンとした
一方で少女は耳まで顔を真っ赤にしていた。
その様子にアルゴノゥトは微笑むと、肩に手を優しくおいて。
「一緒に食べよう。お腹を空かせてる女の子を放って1人で意地悪く食べたりなんてしないさ」
少女はアルゴノゥトの目を見てから、素直に頷いていたが顔はまだ赤かった。
サンドイッチを作った経緯。
「お、お母さん!サンドイッチの作り方、教えて!」
「あら、お腹が空いたの?」
「う、ううん。私は空いてないんだけど・・・その・・・」
「・・・あぁ。あの人に食べてもらいたいのね?」
「うん・・・ずっと働き続けて、休んでないみたいで・・・」
「だから、せめて何か食べてもらいたいなって・・・」
「それじゃあ、簡単なものを作ってあげましょうか」
「うん!」