【完結】冒険譚「希望の指輪」 アルゴノゥト・ウィザード   作:れいが

5 / 17
4節 旅立ちの前夜

 「え?」

 「ど、どうしてですか?遠慮する事はありませんよ!」

 

 数週間が経ち、都の復興も無事終わりを迎えようとしていた。

 

 本来であれば1年は再建の見込みがないと思われていたのだが、アルゴノゥトの手助けや

 鼓舞をし続けた結果、町はほとんど元通りになったのだ。

 

 人々はアルゴノゥトに感謝の意を込めて宴を広げようとしていたのだが、当の本人が

 こう言った。

 

 「気持ちだけありがたく受け取らせてもらおう。私は当然の事をしただけなのだから」

 

 これまで町の復興に力を注いでくれた恩人が遠慮していると思った王は、せめて何か

 献上したいと申し出て、アルゴノゥトも都を統治する王の厚意を断る訳にはいかないと思い。

 

 「ここを旅立つまでには考えておきます」

 

 と返答したのだ。

 

 また少し日が経ち、町は完全に元通りとなってアルゴノゥトはそろそろ旅立とうと

 思い始めていた。

 

 

 

 その日の夕暮れ。

 

 アルゴノゥトは淹れたての珈琲を飲んでいた。

 

 今、彼が居るのは町を一望できる丘の上で、そこに天幕(テント)を張って過ごしていたのだ。

 

 焚火の明かりで日誌を読み返していると、誰かが近寄ってきているのに気づく。

 

 フィーナだった。

 

 旅立つ前に何か話に来たのかと思い、アルゴノゥトが問いかけると頭を下げて矢継ぎ早に

 言ってきた。 

 

 「お願いです!私を弟子にしてください!」

 「・・・弟子?」

 

 唐突な発言にアルゴノゥトは困惑する。

 

 一先ずフィーナを座らせて、珈琲を振舞った。

 

 飲んだ事はないという事なので、小瓶から蜂蜜を少量入れて甘さを加えた事によりまろやかな

 コクに仕立てた。

 

 蜂蜜は以前に通りすがった村で貰ったものだ。

 

 フィーナは恐る恐る飲んで、お気に召したのかホッと息をついて安堵したようだった。

 

 そして何故、弟子にしてほしいのか理由を聞くと、フィーナは答えた。

 

 「私もアルゴノゥトさんのように、誰かの手助けをしてあげたいんです」

 「そのためにも、色んな事を教えてほしいと思って・・・」

 「一方的に言っているのはわかっています。でも・・・」

 「アルゴノゥトさんだからこそ、教えてほしいんです!」

 「両親には既に話を通しておきました。アルゴノゥトさんの許可さえいただけたら・・・」

 「私はアルゴノゥトさんの弟子になって、どこまでも付いていきます!」

 

 その力強く思いを込めた言葉にアルゴノゥトは、その赤い瞳でフィーナを見つめた。

 

 フィーナもその赤い瞳から注がれる眼差しに臆する事なく、見つめ返した。

 

 一度目を伏せ、アルゴノゥトは珈琲を飲み干して、フィーナに微笑んだ。

 

 「明日の正午、ここを出発する。王に献上してもらう品が決まったと伝えなければ

  ならないからな」

 「それまでに荷物を準備して、ご両親と沢山話してきなさい」

 「!。じゃ、じゃあ・・・!」

 「私もまだまだ未熟者で君が思うほどの学びは教えられないかもしれない」

 「それでもいいのであれば・・・弟子入りを許可しよう」

 「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

 フィーナは何度も頭を下げてお礼を述べる。

 

 アルゴノゥトは控えめに高笑いをして、フィーナの頭を優しく撫でた。

 

 自分がしていた事に照れくささを覚えたフィーナはちょこんと少し長めの耳が

 赤くなるくらいまで、顔を赤らめた。




 「お母さん!お父さん!弟子入りさせてもらえたよ!」

 「えっ!?ほ、本当に・・・?」

 「うん!王様から献上品を貰って、明日の正午に旅立つって」

 「だから、それまでに準備しないと!えっと、えっと、服とか枕とか・・・」

 「・・・フィーナ。本当に行くんだね?」

 「寂しくなっても、私達は会いに行く事が出来ないのは・・・わかってるの?」

 「・・・うん。大丈夫だよ!アルゴノゥトさんと一緒なら・・・」

 「・・・そうか。じゃあ、しっかり弟子として頑張るんだよ」

 「本当に辛くなったら・・・アルゴノゥトさんに伝えなさいね?」

 「うんっ。わかった」

 「・・・ふぐぅ・・・」

 「お、お父さん?どうかしたの?」

 「娘の旅立つ時がこんなにも早く来るとは・・・」

 「もう。娘よりも先に泣くのは止してください」

 「・・・お母さんも泣いてるよ?」

 「・・・め、目が痒くなっただけだから。・・・ぐすん」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。