【完結】冒険譚「希望の指輪」 アルゴノゥト・ウィザード   作:れいが

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3節 旅路にてⅢ

 ―6日目、昨日ですね。

 ―何をしていたかと言うと、師匠に体術を教わっていました。

 ―何でも師匠の体術はお父さんから習った技なんだそうです。

 ―若き日の頃、修行の旅をしていたお父さんは極東で柔道、空手、護身道、刀道など様々な

  武術を身に付けて、生まれてきた師匠に全てを教えたそうです。

 ―それもあって魔物や盗賊団を相手にあんな風に戦えていたんですから、納得しちゃい

  ましたね。

 ―魔物を倒せるようになったのは竜のおかげと言っていますが、人を相手にした時は

  一切負けた事はないと言っていました。

 ―盗賊団を魔法で撃退したのは私が居たからだったんでしょうね・・・

 ―まぁ、それはそれとして・・・正直に言いますと、師匠に勝てません。無理です。

 ―だって近付いたら顎を指先で押されて背中から転ばされましたし、その辺の木の枝で

  叩こうとしたら手首を掴まれて逆に私の頭を叩かれましたし、挙げ句には目隠しを

  しているのにも関わらず投げた石を掴み取ったんですよ!?

 ―前者の二つはともかくとして最後は絶対に人間離れしてますよ!そもそも竜と

  一体化していますからそうなんですけど!

 ―・・・まぁ、そんな訳で改めて師匠から体術を教わる事にしました。

 ―拳打、蹴り技、護身術という先程話していた技、杖による棒術などの基本的な姿勢から始めて

  師匠に手解きをしてもらいました。 

 ―体が硬いから上手く出来ていない、と言われてストレッチという体を柔軟にする運動も行ないました。

 ―痛かったです。それだけしか言いたくありません。

 

 ―夕暮れ時になって、当りが夕焼けに包まれる時間となり夕食を作るための準備を

  していました。

 ―もうクタクタで薪を集めて火を起こすだけでも辛かったです・・・

 ―汗も掻いていたので、少し不快に感じていました。

 ―そこへ、森の中に入っていっていた師匠が戻ってきてついてくるように言いました。

 ―何故か、寝巻きとタオルも一緒に、と。

 ―少し奥へ進んでいくと、モヤモヤと湯気が漂ってきて水がお湯になった時の匂いが

  してきました。

 ―師匠が足を止めて、目の前にあるものを見せてきて私はビックリしました。

 ―木々が生えていない少し開けた場所の中央に、お湯が溜まってる池があったんです。

 ―師匠がいくつかの魔法で簡易的に創り出した露天風呂というものでした。

 ―中に置かれた岩を熱して、貯めた水をお湯にした、と教えてもらいましたが、普通に

  考えてとんでもない事をしてると思いました。

 ―夕食の用意は代っていただく事にして私は早速、露天風呂に入る事にしました。

 ―湯加減は丁度良くて、汗を流してからゆったり入ってみると全身を包み込む温もりで

  とっても癒されました。

 ―木々が生えていない場所なので、綺麗な夕焼けを眺めました。

 ―これが旅というものなんだという楽しさを味わって、露天風呂を堪能した私は

  寒くならないようにキチンと全身を拭いて寝巻きを着ると師匠の元へ戻りました。

 ―師匠は露天風呂へ呼ぶ前、既に汗を流していたので一緒に夕食を食べました。

 ―盗賊団から救った村で貰った食材を極東製の土鍋に入れ、美味しくいただきました。

 ―師匠に露天風呂へ入らせてくださったお礼を伝えると師匠は、風呂は一日の最後において

  自身の心身を癒すためのものだから当然だよ、と言いました。

 ―私は師匠の恩意を感じ、もう一度お礼を言って師匠と一緒に寝ました。

 

 

 ―そして、一週間が経った今日。

 ―師匠と私は森の中に続く道を過ぎようとしている途中でした。

 ―もうすぐ森を抜くといったところで、急に師匠はを止めました。

 ―後ろに跨がっていた私は思わず師匠の背中に抱きついて振り落とされないようにしました。

 ―どうしたのかと思い、前を見てみると・・・

 ―白く長い羽根の装飾を付けた深緑色の帽子を被った、薄緑色で長髪の人が倒れていました。

 ―急いで近寄り、魔物に襲われて怪我を負ったのかそれとも急病で倒れたのか安否を

  心配しました。

 ―その時、ギュルルルルとすごい音が聞こえて、近くに魔物が潜んでいるのかと私は杖

  を構えました。

 ―師匠に習った通り、先に顔を動かして周辺の状況を視野に入れながら利き足とは反対の足を

  軸にして周囲を見渡しました。

 ―しかし、師匠が杖を下げるように言って、その人を背負うと森の出口へ急ぎました。

 ―森を抜けると、そこは大草原が広がっていて倒れていたその人を寝かせてあげました。

 ―よく見ると、容姿端麗な女性・・・と思いますが、耳が長いのに気付きました。

 ―その人はエルフだったんです。

 




 「師匠、さっきのは何だったんですか・・・?」

 「魔物の呻き声ではなかったのでしたら・・・」

 「この人の腹の虫だ」

 「・・・え?」

 「空腹で行き倒れになったんだろう。簡単にだが、何か作ってやらないと」

 「・・・わかりました。では、火をつけましょうか?」

 「ああっ、頼む。食べやすくするためのスープも作ろうか」

 「はい!」
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