錬金術師様、骸骨騎士と共に異世界へお出掛け中   作:ジェイ・デスサイズ

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こんにちは、ジェイです
今回の話はアーク達が城内で暴れている一方、キャロルは何をしていたのか。といったお話になります。皆様の暇つぶし程度になれば幸いです。
それでは本編をお楽しみ下さい。


第3話 錬金術師、夜襲

 市民が寝静まった深夜、私は公爵が住んでいる(あの後調べ確定させた)城へ行き裏門近くの路地で身を細めていた。

 

「・・・裏門の警備、たった数名なのか。余程自信があるのか、平和ボケしてるだけなのか」

 

『あの感じ、十中八九後者だと思いますけどね〜。どうするんですか、マスター?別にマスターなら余裕だと思いますよ?』

 

 蒼のアーティファクト、『ガリィ』が私に尋ねてくる。だけど、変に騒ぎになっても困るし-

 

「騒ぎにするのは侵入してからだな。透明化を掛けて侵入するぞ」

 

 私は自身に透明化の魔法をかけ、城内の庭へ侵入。罠も無くあっけなく中へ侵入でき地下への階段も容易に見つけることができ地下へ向かった。地下には牢屋がいくつかあり、既に連れて行かれた後なのかそもそも使われていないのか、判断はできなかった。見張りは来る途中気絶させたので、透明化を解除する。

 

「此処には誰も囚われていないようだな・・・という事は公爵とやらの近くか?」

 

 私が自分で集めた情報を整理していると、蒼のアーティファクトが私の帽子から外れ、一瞬蒼い光を放ち、光が収まるとゴスロリ風の容姿をした、青を基調とした自動人形(オートスコアラー)が現れた。

 

「どうした、ガリィ」

 

「生命反応がありますよ、マスター。この牢屋の奥に」

 

 ガリィが指した牢屋の奥には確かに小さな人影らしきものと、弱い呼吸する音が聞こえた。もしかしたらエルフ以外にも捕まっている子がいるのかも知れないと思い、確認することにした。

 

「ガリィ、鍵を壊せ。確認するぞ」

 

「了解ですよ、マスター」

 

 

 ガリィは牢屋の鍵の所を水で覆い、それを凍らせ、手に作った氷剣で凍った鍵を破壊した。ガリィが先に入り、その後に私が中に入る。ガリィは囚われている子をしゃがんで抱え私に報告する。

 

「マスター、恐らくですが《魚人》じゃないですかね。側頭部にヒレみたいなのありますし、手のひらに水かきの様な大きな膜がありますよ」

 

 そこにいたのはガリィの言う通り《魚人》だった、それも小さな女の子の。こんな小さな子供でさえも金にしようだなんて・・・

 

「ちっ、この世界の人間はクズしかいないのか・・・ガリィ、その子を保護する。応急手当を頼む」

 

「かしこまりました、マスタ~」

 

 ガリィはその子供の首から下を回復魔法を付与した水で包み、傷を癒していく。すると弱い呼吸だったのが安定した呼吸に変わり始めた。

 

「よし、呼吸も安定し傷も癒えた。後は―」

 

次の作業の指示を出そうとした瞬間、《ヒュッ》と何かを投擲した音が聞こえた。

 

 ―それは私に向かって投擲されていた物の音だった―

 

 《キィン》と、金属同士のぶつかる音がした。それは投擲されたと思われるクナイと、緑のアーティファクトから現れたオートスコアラー・・・ファラの剣がぶつかる音だった。

 

「マスター、御怪我はありませんか?」

 

「あぁ、問題無い。問題なのは―」

 

 私はクナイが飛んできた方へ顔を向ける。そこには・・・忍者がいた。しかも、ケモミミの。私は「忍者!?」と声が出そうになるも、相手の問い掛けにより出なくなった。

 

「貴方達、その子をどうするつもりですか」

 

「どうする、だと?突然現れ攻撃をしてきた奴に素直に答えると思ってるのか?」

 

 お互いに牽制しあっていると、ガリィが呆れた声で

 

「マスター、そんな事している場合ですか~?今はこの子の安全が優先じゃないんですか~」

 

 若干煽る様に言ってくる。

 

「分かっている!・・・オレ達は此処に捕まっているエルフや他種族を解放しようと忍び込んだ、そして衰弱しているこの子を見つけ治癒し保護した・・・これで満足か」

 

 私の説明を聞いたケモミミ忍者は目を見開き驚いた表情をしていた・・・え、何か変な事言った?

 

「解放・・・?人族の貴方達が何故その様な事を?」

 

 武器を収め話にのってくれた・・・っていうか、この世界の人ってそんなに悪人多いの!?

 

「オレ達は正確には人ではないからな、そのせいだろうな。こいつらの関節とか良く見てみろ」

 

 私は親指でくいっとし、視線を誘導する。ケモミミ忍者は私の言う通り目線をガリィ達へ向ける。

 

「関節を?・・・なっ、か、絡繰!?」

 

「その通り、私達はマスターによって創造された自動人形(オートスコアラー)。以後お見知り置き」

 

 ファラは優雅にお辞儀しながら簡潔に説明した。ポカンとするケモミミ忍者、まぁ珍しい・・・かな?とりあえず、これ以上は戦闘にならなさそうね。

 そう考えていると上の方から何かが崩れた様な音と鐘の音が同時に聞こえた。

 

「マスター、最上階付近での音の様ですわ」

 

「あの時の2人が上から侵入して、速攻見つかってたりして」

 

 くすくすと笑うガリィに、私の判断を待つファラ・・・そうね。

 

「あの2人が来たのなら、捕まっている奴等はあいつらに任せよう。オレ達はその子を連れて脱出だ」

 

 そう言うと2人は頷き撤退の準備をする。するとケモミミ忍者は武器を仕舞い謝罪をしてきた。

 

「問答無用に攻撃を仕掛けてすみませんでした・・・。それと、失礼を承知の上でお伺いするのですが。この街を明日には出られますか?」

 

 なんでそんな事聞くんだろう、と一瞬思ったが悪い子ではないから素直に教えてあげよう。

 

「あぁ、この街にもう用は無いからな」

 

「!・・・それでしたら、明日お話したい事がありますので朝方に門の前の木でお待ちしております。では!」

 

「は?ちょ、待っ―」

 

 引き留めようとしたらケモミミ忍者はフッ、と消えてしまった。

 

「あらら、一瞬で消えちゃいましたね」

 

「・・・はぁ、まぁ急ぎの用もないし乗ってやるとするか。とにかく、まずは脱出して宿屋に戻るぞ」

 

「了解~」「畏まりましたわ」

 

 こうして私達は魚人の小さな女の子を保護して宿屋へ戻った。その途中、城から爆破の音が聞こえたが・・・アイツら、派手にやりすぎでは無いか?

 取り敢えず宿屋に戻った私はガリィとファラに魚人の子を世話を命じ、今は身体を洗ってあげている。

 

「やれやれ、のんびり異世界ライフは出来そうに無いな。これでは」

 

 窓辺に肘を置き、夜空を眺めながら呟く。だけど、私は残念がってない。寧ろこれからが楽しみで仕方ない・・・どんな事が起きるのか、此処の世界の暮らしや歴史はどのようなものなのか。その他諸々。

 

「ふふ、面白くなりそうだ」




いかがでしょうか。
今後はこの魚人の子も交えたキャロル達を書こうと考えております。それと、オートスコアラーについて知っている人もいるかも知れませんが、知らない人もいらっしゃると思いますので出て来たら此処に書こうとおもいます。
それでは、次回縁があればお会いしましょう。

【ガリィ・トゥーマーン】:可憐な容姿とは裏腹に自動人形の中でもとりわけ悪辣であり、主人であるキャロルに対しても人を食ったような態度を取り、バレエやフィギュアスケートのような挙動が特徴。空気中の水を操作する能力を持ち、水や氷塊を意のままに生成・操作することが可能。これを用いて水柱や氷剣による直接攻撃、氷の足場を滑走することによる高速移動、水を鏡に見立てた現像投影による幻惑など、幅広い戦術を得意とする。

【ファラ・スユーフ】:風を発生・操作する能力で風をその身に纏い、戦場ではフラメンコを彷彿とさせる優雅な振る舞いに乗せて大剣を思わせる哲学兵装「剣殺し(ソードブレイカー)」を振るう。風を操る力は単に機動力を高めるのみならず、空気の層を操り光を屈折させその身を周囲の背景に溶けこませる事を可能。
剣殺し(ソードブレイカー)はその名の通り刀剣類を破壊する為の装備であるが、概念そのものに干渉し、剣と分類・定義される物をその性能に関係無く確実に破壊する。普通の剣としても使用可能であり奥の手としてもう一本所持している。
基本性能こそ四体のオートスコアラーの中で最底辺に位置するものの、戦闘能力は人間以上の為、化け物レベル。

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