ウルトラマンガンマ   作:無銘@気ままに執筆

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第一話 仕組まれた変身

 

 

地下、そこは地上とは全く隔絶された世界である。何らかの理由で地上には居られない者たちが身を寄せ合い、そして出し抜き合う。極端な富裕と貧困にゆがんだこの領域はヨミと呼ばれ、凶悪犯罪者や追っ手を逃れた侵略宇宙人、借金まみれで首が回らない者たちなどが暮らしている。

 そんな中でも特別は関心を集めるのが、長らく地球人のチャンピオンがいなかった地下闘技場だ。賭博に殺戮に人身売買と、ヨミの汚点をかき集めたかのようなこの場所に今宵も怖いもの見たさの金持ちたちが所狭しと集っていた。

 

「赤コーナー、チャンピオン!ホシーフルゥ…ンナァガッレッ!!」

 

よく響く声がこだますと、ゲートの左右からスモークが吹き出し勇猛ながらどこか危険味を醸すデスメタル調の音楽が流れる。7色の目まぐるしく入れ替わるライトは花道を照らし、軌跡の上を青年が歩いた。演出とは対照的に、落ち着きながらもどこか悲しそうに。

青年の名は星降流(ほしふるながれ)。1年前からこの闘技場で戦う戦士で、現状無敗のチャンピオンだ。圧倒的な戦闘センスとカタにはまらない変幻自在なスタイルでいくつもの難敵を下し、威風堂々と地下の王者に君臨している。

 

「対する青コーナー、チャレンジャー!サイクロプスドン・ファウストだァッ!!」

 

どよめきと歓声に空気が揺れる。花道には何も現れず、ただ先程とはやや違う調子の音楽と似たりよったりの光の演出がなされた。既にリングに上がった流の前にはカチャカチャとゆっくり大きな鳥籠のようなものが降りてくる。籠の中のものが暴れているのか、大きく揺れて今にも飛び出しそうだ。やがて籠が開くと中からは三メートルに届く黒い巨体が現れた。サイクロプスドン・ファウスト。怪獣サイクロプスドンと侵略宇宙人ファウストを人工的に掛け合わせた怪物だ。足は短く、逆に腕は太くて長い。大理石の柱のように重く強靭な手足とそれが支えるボディービルダーのような肉体、そして首と頭部の代わりにアンバランスな痩せ型の人影があった。カマキリを思わせる逆三角形の頭と折りたたまれた大鎌を腕につけ、「キシャァァァァ!!!!」と大きな雄叫びをあげる。

リングをドーム状に覆う電磁フィールドが発生し、デスマッチが開始される。

 

「人類の限界者にして我らがチャンピオンは、今夜も我々霊長類の最強神話を打ち立てるのか?それとも怪物が次元の違いを思い知らせてしまうのか?世紀の戦いが・・・

今始まったッ!!」

 

 

 

 

結果は無残なものだった。腕をもがれ、腹を裂かれ、とどめとばかりに頭蓋を打ち砕かれる壮絶な戦死を迎えた巨獣は、おそらく自分が何をされたかも分からないまま息を引き取っただろう。コンビニから家に帰るぐらいの無感情で流は先ほど歩いてきた花道を戻ると、返り血に汚れた頬をぬぐってため息をつく。

 

 

「すごかったっすね、五秒でしたよ流さん!」

 

駆け寄ってタオルを渡してくるのはジョニー・ジャクソン、同じく闘技場戦士として登録されている、同僚のようなものだ。

 

「ありがとうジョニー。でもあれぐらいだったらこ慣れたたようなもんだろ?」

 

「はは、冗談はよしてくださいよ。ああいう試合は悪趣味な奴らがバラバラになる人間を見たくてやるもんですわ。その辺もろともぶっ壊してくるのなんて流さんぐらいっすよ。」

 

 

そうか?と気のない返事をして体をふくと軽く挨拶を済ませてシャワー室へ向かう。闘技場の施設や待遇そのものは充実しているので、命の重さが毛ほども考慮されていないことを除けばなかなかいい生活だ。

 

 

 

 そもそもなぜこの男は地下闘技場戦士などというけったいな職についているのか。流はかつて父親と一緒にホシフルコーポレーションという会社を運営していた。しかし父は暗殺され、隠していた六千万ドルを超える借金が露呈した。追い打ちをかけるように会社経営は困難になり、流の人生は加速度的にどん底へと向かっていったのだった。借金を返すため、土木建築や清掃員としてのアルバイトを転々としていた彼は人伝えにヨミのことや地下闘技場の事を知った。

 

 

 

「試合を見せてもらった。見事だ。」

 

 

これまでのことを漠然と思い返しながら廊下を歩いていると、スーツ姿の男二人が立ちはだかる。

 

 

「サイン、って感じじゃないな。なんなんだ、あんたら?」

 

 

身長は流より頭一つ分は高く、まなざしはサングラスに遮られてうかがえない。一人は上着を脱いでいて腰に奇妙な拳銃を装備し、もう一人はアタッシュケースを手にもって微動だにしない。

 

 

「君にいい話を持ってきた。結論から言えば借金は帳消しになる。」

 

 

「へぇ・・・」

 

 

「詳細は落ち着いて話そう。今はシャワーでもあびてくるといい。」

 

 

 背筋が凍るほど優しい二人組の口車に乗って、流は促されるとおりにシャワー室へ向かった。キュキュッと音を立ててハンドルをまわすと、あたたかい水滴が雨のように降り注ぐ。足元を見ると薄赤色の液体が排水溝で渦を巻いていた。やがてそこには泡が集まり、薄赤色に変色した泡も白く脱色しいて、様々なことをなかったことにしていくように泡すらいつしか消えてなくなっていた。

 

 部屋に戻ると既に二人の男たちは直立して待機していた。こちらはタオル一枚とスリッパだけという恰好なのに相手がフォーマルなかっこうをしていると、まるで自分に常識がないかのような気分に陥る。「こんな時に何考えてるんだ、いったい・・・」、口には出さずため息だけつくと二人に向かいベッドの方を指さして、

 

 

「立ち話もなんだし、あんたらも座れよ。用があるなら聞いてやる。それでどうするかは聞いてから考える。」

 

 

自分も椅子を引きながらそういうと、男たちは一瞬顔を見合わせ促されるままにベッドに座る。そしてアタッシュケースを持った方の男は、ケースを膝に乗せると持ち手辺りをカチャカチャと操作し開けて見せた。

 

 

「気遣いどうも。我々は君にこれを新東京駅の108番有料ロッカーへ運んでもらいたいと思っている。この筒状の装置はウルトラフラッシャーと呼ばれ、個別名称は・・・」

 

 

「おい、」

 

 

「・・・個別名称をウルトラフラッシャーガンマ、三番目の製品ということだ。」

 

 

「おってば・・」

 

 

「五十年前に地球上に現れ、そして死亡した生命体・ウルトラマン。それを再現した人造ウルトラマンである『ウルトラトルーパー』を我々は開発した。それを使えば短時間ながらウルトラトルーパーの姿で活動・・・」

 

 

「いい加減にしろッ!」

 

 

椅子が後方へ倒れる程の勢いで立ち上がると、流はなかなか話を中断しない男を一喝する。

 

 

「どうしてそんなことまで俺に話す?ケースをもってけって言えばそれでいいじゃないか!あんたら、何を企んでやがる?」

 

流の挙動に一切の驚きを見出ず、スーツを脱いでいる方の男がバトンタッチでもしたように口を開く。

 

 

「聞いての通り、このケースにはいっている代物は何があっても送り届けられなければならないものだ。間違っても破損や紛失、損失、着服などあってはいけない。君には自覚をもって運んでいただかねば困るというわけだ。それを狙うものは数多くいる、運搬だけでも君の借金をカバーして余りあるほどの勝ちだあるというわけだ。」

 

 

「・・・俺じゃなくてもいいじゃないか。なんで俺なんだ?」

 

 

「先ほど言ったとおり、この運搬には危険が伴う。何もないかもしれないし、あるいはこのヨミに住まう異星人が奪いの来るかもしれない。」

 

 

「あんたらが運べばいいじゃないか。いいもん持ってんだしさ。」

 

 

「我々では力不足だ。だから頼んでいる。悪い条件ではないはずだ。」

 

 

 少し考えて、流は依頼を受けることにした。地上に戻ってやり直すチャンスとしては破格すぎる。たったこれだけで借金も無くなり自由に暮らせるようになるならそれに越したことはない。例え道中に危険が舞っているとしても、ヨミの街にはもう慣れているし宇宙人たちに絡まれても対処できる自信は確かにある。さらに流は闘技場チャンピオンとして知られており、よほどの命知らず化酔っ払いでなければ絡んでは来ない。

 

 

 

 

 ボロボロのリュックサックにアタッシュケースを詰め込み、革ジャンを羽織って靴をはく。そういえばジョニーに挨拶してないな、などと心の中で呟きながら闘技場の選手用施設を後にする。

 

 

 すれ違う内の三人に一人は人間じゃない。緑や青色の肌をしていたり、昆虫のような口をしていたり、羽がジャンパーからはみ出ていたり、見るものを飽きさせない一方で正気を保つのもやっとな街並みを地上の方へ向かって過ぎていく。商店街には相変わらず地上から入ってきたであろう電化製品やポテトチップスが法外な値段で売られ、一般人が手を出せるのはセミやカブトムシの串焼きだったり、よくわからないが容易に養殖できるためにありふれている宇宙ヒルのスープだ。最早慣れたものだが最初のうちは腹を壊してよく吐いたものだ。食事の度に入れているのか出しているのか分からなくなったのはとても嫌な思い出だ。あれをうまそうに平らげる宇宙人達の気が知れないが、あれでも店主たちは自分の味に誇りを持っているという。

 

 何人かの顔馴染みとすれ違い、世間話をしながら地上へ進む。警戒していた襲撃の類はなく、見上げるとギリギリ届きそうなところまで配線や管の類が垂れてきている。高い吹き抜けのような空洞に螺旋状にに広がるヨミのここが最も地上に近い領域だ。住民はほとんどが人間で、実はここが一番危険だったりする。それでも流の顔は覚えられていて、わざわざチャンピオンにカツアゲをしようなどという猛者は現れなかった。

 

 エレベーターと入り組んだ迷路のような回廊を乗り継ぐようにして計五回、チンッと言う音と共に新東京駅の地下駐車場似て扉が開いた。エレベーターを出ると薄黄色のライトがともった箱は下っていくが、押しボタンのパネルに下へ戻る表示はない。ヨミは基本的に存在しないものという扱いのため、そこへ下るのはとても難しいのだ。特定の時間、特定の日にのみ道は開く。逆に地上へ戻る場合も、正しいエレベーターを乗り継がなければ上へ行くことはない。それらの難関も男たちに渡されたメモで簡単に突破できた。

 

 

「あとはロッカーか。いやにあっけないな。ま、いいや、さっさと終わらせよう。」

 

 

少々響く地下駐車場で独り言を言うと、誰かに聞かれてないか心配になる。だが見渡しても誰もいない。僅かに安堵の粋をはくと、階段を上って売り場の方へ向かった。そこには駅の詳細なマップがあり、ロッカーの場所が一目で分かるのだ。

 

 

「えっと、こっちの階段を行って右か。」

 

 

 

 

 

ドカンッ!

 

 

爆音と衝撃は唐突にやってきた。蛍光灯が点滅し、コンクリートが割れて鉄筋がむき出しになる。逃げ惑う買い物客に覆いかぶさる瓦礫、パニックがパニックを呼び阿鼻叫喚の中に陽気なお買い物ソングが皮肉のように木霊した。

 

 

「新東京都第三地区にて怪獣出現!」

 

大きなスクリーンに表示されたマップを見ながら逼迫した声で金髪をなびかせながら女は振り返ると、ほかの者たちに告げた。簡素ながら最上級の繊維で編まれた隊服は幾度も改良をされながらも五十年前の色を保ちシルエットを未だに彷彿とさせる。彼らこそ新科特隊。現代の地球を怪獣や侵略宇宙人から守る人類の希望である。

声を上げたのは東堂アナスタシア(とうどうアナスタシア)。若輩ながら人智を百年先取りしたと称される才女であり、作戦立案および通信や解析等担当する新科特隊の頭脳である。

 

「東京湾から来たのか?」

 

問いを投げたのは新科特隊隊長の五十嵐貴文(いがらしたかふみ)。文武両道の軍人であり長らく『ウルトラマン』に関わってきたその道のプロだ。確かな実力と豊富な経験を活かして堅実に仲間を引っ張り確実に任務を遂行する頼れるリーダーである。

 

「いいえ、そんな形跡はありません。また突然瞬間移動してきたタイプかと。」

 

「じゃあ、銀河自由同盟って事か?」

 

組んでいた腕を解くと、スクリーンに目をやって顎を指でかく。いつもの癖が出てしまった彼は霧野貴之(きりのたかゆき)、元空軍のエースパイロットで新科特隊の一番槍。並外れた才能が確かな実力に裏打ちされたメカと戦闘のエキスパートだ。

 

「解析結果は?」

 

「今わかってる限りで言うわ。怪獣は過去に出現したネロンガ種と同タイプだけど大きく能力が向上してる。改造ネロンガってとこかな。アレ頭部だけじゃなくてセビレからも放電できるみたい。向かってる先は・・・嘘、人口密集地帯!?今までなら真っ先に発電施設を狙うのに。」

 

隊長の問いに答えるはずが、いつしか思考を声に出して独り言に移行してしまうアナスタシア。それを聞いていても立っても居られなくなった青髪の少女は寄りかかっていた壁から弾けるように飛び出すと作戦室から飛び出しながら叫んだ。

 

「ベータで行く!アナ、カプセルの用意をお願い!」

 

「ちょっ、まだ出撃命令は・・・」

 

引き止める声を無視して少女は部屋を飛び出すも、その疾走は回廊を逆方向から来る初老のスーツの男に阻まれた。

 

「不許可です。持ち場に戻りなさい、ベティ。」

 

「でも人間達が・・・」

 

「戻りなさい。ウルトラトルーパーは最高機密です。まだ衆目には晒せない。君は聞き分けのいい子だ、違うかな?」

 

「・・・・・」

 

ベティ、そのように呼称された少女は男の言葉に反抗を試みるも、より大きな抵抗力によって次第に押し黙り促されるままに作戦室へ二人で向かっていくのだった。男の名は皇十蔵(すめらぎじゅうぞう)、この新科特隊を立ち上げた張本人であり最高責任者。特別顧問という立ち位置の元、組織をまとめている。

 

「さて。今防衛軍が対処に当たったとの情報を上から頂きましてね。確かにあれなら彼

「さて。今防衛軍が対処に当たったとの情報を上から頂きましてね。確かにあれなら彼らでも何とかなるでしょう。我々の成すべきことは、彼ら防衛軍の作戦にとっての想定外に対応することです。引き続き敵の観察と監視を。それから周辺の様子にも気を配るように。」

 

 

「「「了解!!!」」」

 

隊員たちは声を揃えて皇顧問の命令に返事をすると各計器に目を向けて数値を報告し合う。そして当の皇顧問は隊長席の脇に位置する自分のデスクに腰掛け、腕を組んでメインスクリーンを睨みつける。そろそろ防衛軍の戦闘機が攻撃を開始する頃だ。

 

空を切り裂く黒い流星群はある程度改造ネロンガに近付くと弾けるように奇跡を屈折させる。その度に元の奇跡を踏襲するかのようミサイルを飛ばしていき、これを五機が三度程繰り返した。その一撃でも高層ビルを貫くミサイルは、あくまでも生物である怪獣にも十分に有効だ。被弾部の外皮は削れ、肉が飛び散り、焼けただれて痛々しい傷を残していた。

 

「見物しないでください!早く避難してください!」

 

「怪我した方はこちらへ!それ以外の方は慌てず列にお並びください!」

 

地上では避難誘導が行われていた。危険な戦闘を物珍しさで見物したがる野次馬はかなり多く、市の役人たちも苦労しているようだ。怪獣災害の場合、特定の避難所を近場で設けても怪獣が移動して破壊されてしまうので避難バスで被災者を遠くまで運ぶのが一般的である。通常のバスと違って座席は極端に少なく出入口の扉の代わりにバスのサイドが全て開くという設計だ。素早く大人数が乗り込んで安全地帯まで送り届けられるような様々な工夫がなされている。

流もまた避難誘導されている内の一人だ。防衛軍の迅速な対応に感謝しながら一抹の不安を抱いてバスへの列に並ぶ。こうなっては駅のロッカーも瓦礫の下だ。今は箱なんかより自分の命だ。そう思いながらも背後をしきりに見やる。

旋回する戦闘機から幾度も幾度もミサイルを受け身体から黒煙をあげる怪獣、だが疲弊した様子はない。そればかりか、背中には炎とは少し違う発光があった。

 

瞬間、雷ーーーー!

 

アーチを描く放電に戦闘機の一機が貫かれ、大地が揺れる。次いで、戦闘機は爆発四散。辺りは一面パニックに陥る。列は既にその体を成さず、我先に誰もがバスへ走った。

 

雷撃、再び。

 

大きな咆哮に合わせて、今度は二、三回に分けて連続的に放電が行われた。特徴的なセビレが光り、周囲のビルを、道路や公園を、そして勇敢に戦う戦闘機部隊を無惨に破壊する。

 

「どけ、突っ立ってんじゃねぇ!」

 

「邪魔だ!死にてぇなら一人で死ね!」

 

流は何度も突き飛ばされ罵声を浴びせられる。あの怪獣に目が釘漬けになっていたから当然だ。こんな時に人の邪魔になっていたのだから。それも目は離せなかった。彼をその場に縛り付けているのは、言いようもない歯がゆさだ。困った人を見ると助けなければ気が済まない性分の彼は、しかし相手が怪獣ではどうしようも出来ない。格闘がどれだけ出来たってたかが知れてる。何がチャンピオンだ!と、噛み切るほど強く唇を噛んだ。

 

 

 

 

 

「くそぉぉぉぉぉ!!!!」

 

依頼なんてもう知ったことじゃない。駆け出した流れを止められる者は居なかった。止める誰かの声はしたが、その言葉を言い終える頃には当の流は遠くへ消えていた。道は次第にひび割れだらけの凸凹になり、凸凹は明確な瓦礫と化す。怪獣に近付くほど辺りは地獄の景色となり、炎と黒煙と人の焼ける嫌な匂いで充満していた。

流は持ってきたアタッシュケースを取り出すと、両手に力を込めて無理やりこじ開けた。取り出したのは懐に入る程度の大きさの筒だ。ウルトラフラッシャー、そのように説明され、簡易的なイラストで用法も説明されていた。流は静かにフラッシャーを掲げるとグリップのボタンを強く押し込んだ。

 

爆発、そうとしか思えない光が掲げられた筒から放たれ、黒い雷がスパークする。光は次第に人型へ収束し、禍々しい放電が巨人の輪郭を整えていく。その姿は確かに五十年前に倒れたはずの伝説的な巨人、ウルトラマンだった。白銀に輝く五体に赤い模様が描かれた独特の見た目で、神々しく、そして力強い。しかし見る者は安堵より先に言葉にならない予感のような不安を抱いた。その巨人は細部がどこか人工的で禍々しい。理解より先に心に訴えかけるニセモノ感が歓声をどよめきに変える。

そして、どよめきは新科特隊の作戦室にも広がった。幽霊でも見たかのように目を丸くする一同。皇を置いて誰もが口をあんぐりと空け、何か言いたいが適当な言葉が舌に乗らずただ僅かに喉を鳴らすだけだった。

 

「計器を見る限り、状況はスクリーンの通りよ。アレは間違いなくウルトラトルーパー・・・だけど、アルファでもベータでもない。なんなのよいったい・・・?」

 

困惑しながらも何とか知る限りのことを報告するアナスタシアに次いで皇顧問が口を開いた。

 

「アレはウルトラトルーパーガンマ。我々が建造した人造ウルトラマン第三号だ。」

 

隊員たちに戦慄が走る。聞いたことの無いウルトラマン、自分たちでさえ知らされなかった極秘情報の塊が、これ以上無いほど広く衆目に晒されてしまってる。何に驚けばいいかも分からないまま隊員たちは顧問の次の言葉を待った。

「じゃあ、私の弟?」

 

唯一事の急を理解して居ないのか、ベティは皇に無垢な声で聞いた。しかし皇は「いいや、君とは関係ないよ」とだけ返し、座席から立ち上がる。

 

「不測の事態ではあるが、これは好都合ですね。これまでガンマに適合する人材はおらず、あのウルトラマンは誰にも扱えない代物でした。埒が明かないのであとはコチラでできる限りの事はすると言って寄越してくるように頼みましたが、誰にも使えない兵器など置物以下ですよ。維持費を食うだけゴミより厄介です。

ふふ、結構じゃないですか。戦ってくれる分には願ったり叶ったりだ。それで壊れてしまうようならあっても無くても変わらない。」

 

 

カツカツと革靴を鳴らして皇顧問はメインスクリーンに近付くと、ニヤリと笑って流が変身したウルトラマンに語りかける。

 

「お手並み拝見と行こうではありませんか、ウルトラ泥棒さん?」

 

スクリーンに映し出されるウルトラマンの後ろ姿は、仁王立ちの姿から一変して轟速で駆け出した。向かう先は無論、怪獣だ。すれ違ったビルの窓ガラスは衝撃波で消し飛び、踏み締められるコンクリートの道路はスナック菓子のような容易さで割れ潰れる。

 

「シュアッッ!!!!」

 

怪獣もまた突如として光の中から現れ猛突進する巨人を前に呆気に取られる。それでも本能が危険を理解したらしく、四足の体勢から後ろ足立ちに姿勢を変え今までにないほど背鰭をスパークさせると頭部に膨大な電力が収束する。

 

拳を握って飛び込む巨人、雷光に輝く巨獣、

 

 

「「■■■■■■■■■■ッッッッ!!!!!」」

 

二つの咆哮が重なり、次いで爆音が轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

つづく




二次創作小説『ウルトラマンガンマ』第一話、お楽しみ頂けましたか?
不定期で緩く投稿していくので気が向いたら目を通して頂けると嬉しいです。
ちなみに、同小説はPixivの方にも方にも投稿しています。あっちのアカウントではイラストや設定解説もしているので見てくれたら嬉しです。
Pixiv→https://www.pixiv.net/novel/series/8703459
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