ベティと流はあらかた工場内に跋扈していたバルタン星人達を撃破することに成功した。最後の一体を共闘して倒した二人の間には戦友の絆が芽生えつつあった。
そんな二人はバルタン星人の奇襲に始まった反撃に遭い、戦いは巨大バルタン星人達と新科特隊の激突に縺れ込む。霧野隊員が駆るハイビートルと五十嵐隊長の変身したウルトラマンアルファの連携でほとんどのバルタン星人を殲滅した矢先、漆黒のバルタン星人が遂に牙を向いた。
圧倒的な実力差でハイビートルを撃墜しウルトラマンアルファを叩きのめしたバルタン星人ブラックはウルトラマンにトドメを刺そうと迫り来る。
流の機転で生まれた僅かな隙を逃さず、底力を爆発させて何とかバルタン星人ブラックを撤退に追い込んだ人類は、辛くも勝利を掴むのだった。
喜びもつかの間、ベティの前から流は忽然と姿を消してしまった。戦士の行方は?そして実力差を思い知らされた人類は地球を守れるのか?
第六話 深夜の連続殺人事件
ヨミと呼ばれる地下世界、そこには地上では暮らせない特殊な者たちが身を寄せあい、騙し合い、ひしめき合って暮らしていた。ヒトでは無いものも非常に多く、異星人やサイボーグを見かけるのは日常茶飯事だ。そんな発狂してしまいそうなダウンタウンの一角に、流の勧めで身を隠していたザラブ星人のイギは友人の来訪に歓喜し、彼が持ってきたニュースに驚愕した。
「ナガレ!言ったはずじゃないか、バルタン星人の一件には関わらない方がいいと。殺されなかったからいいものを、もし一歩間違えたら僕は友人を失うところだったんだぞ!」
言葉尻には隠しきれない怒気が見え隠れする。そんなイギを前にしても、流は落ち着いて話を続けるのだった。
「ま、良いじゃないか。ウルトラマンが助けて暮れたんだし。結果オーライだってば。
それよりこいつ、この黒いの。これ本当にバルタン星人なのか?信じられないぐらい強かったぞ。」
スマートフォンで撮影した、ウルトラマンアルファのスペシウムフレアに悶絶するバルタン星人ブラックの写真を見せると、イギは頭を抱えて椅子にストンと崩れ落ちた。
「ああ、終わりだ。お終いだよ、こいつが出張って来たなんて。」
「知ってるのか?」
「ブラキオ。地球の言葉だと黒って意味で、ほら、英語ってやつのブラックが近いかな。こいつはバルタン星人たちの中でも特に強力な殺し屋として有名なんだ。あいつらの母性は頭がおかしい科学者の実験で滅びたからほとんどのバルタン星人は絶滅して、生き残りの難民たちもいつの間にかどの宙域でも見かけられなくなったんだけど、そんな訳でバルタン星人のほとんどはクローンなんだ。だけど奴は違う。天然のバルタン星人で何度も激戦の中で脱皮を繰り返したから黒くなったとか、特別な改造をしたとか、ドラッグとか色んな説があるけど実力は折り紙付きだ。申し訳ないが地球程度の文明レベルじゃあいつにはとても勝てっこない。」
俯くイギの解説を頷きながら聞いていた流だが、最後の言い分には思うところがあるらしく、啜っていた飲み物を置いて反論した。
「撃退には成功したんだ。こっちにはスペシウムもある。さすがに単体で地球ごとぶっ壊せるって訳でも無さそうだし、いくらブラキオが強くてもやりようはあるんじゃないか?」
「ナガレ、君はちょっとポジティブに捉えすぎだ。良くも悪くも、危機感が足りないよ。そのお陰で僕のことも黙ってくれたようだから言いっこなし何だけど、それでも言わせてくれ。」
ザラブ星人は自分と流の冷めかけたコーヒーにお湯を継ぎ足しながら続けた。
「思い出してみるんだ。僕には情景が手に取るように分かる。ウルトラマンは勝っていたかい?」
流は押し黙るしか無かった。ウルトラマンは勝っていたか、無論そんなことは無かった。全くの逆だった。なすすべもなく叩き潰され、殺される一歩手前だった。あの時、自分がベティの反対を押し切って行動を起こさなければ間違いなくウルトラマンは斧でバラバラに切り刻まれていただろう。
「でも、大丈夫。」
「え?」
イギの言葉にしばらく押し黙っていた流は、考えた末に結論を口にした。その様子に、イギも思わず毒気を抜かれる。
「大丈夫って何が?」
「倒せるって事さ。」
「ナガレが?」
「ウルトラマンが。そんな心配すんな、あのゼットンが来たって何とかなったのが地球だぞ?今回も大丈夫だって。」
今度はイギが押し黙る。五十年前、銀河自由同盟の一員だった頃に聞いた話だが、未だに信じられない。ウルトラマンを殺した以上ゼットンは本物のゼットンのはずだ。それを人類の手で、しかも五十年前の科学力で倒せたとは到底考えられないのだ。しかし事実として、地球はある。ゼットンはもう居ない。本当に何とかなってしまうんじゃないだろうか。願いと理性がせめぎ合うように、イギは俯いたまま暫くコーヒーカップを覗き込む様にして見ていた。
「んじゃ、俺もう行くわ。またなんか進展があったら来るから。コーヒーごちそうさま、美味かったよ。」
プレハブの扉に手を掛けながら流はイギに手を振った。
イギはコーヒーを置いてガタッと立ち上がると、帰ろうとする流に駆け寄った。
「やっぱり追うのかい?」
「ああ。俺は俺のやり方でやるさ。心配してくれてんのに、すまんな。」
「いいんだ。なんかあったらここで匿うからさ。死ぬような事だけは・・・」
最後まで言えず、結局イギには流を止められないという無力感だけが残った。とても不思議な人間だ。そんな事は無いと頭でわかっているはずなのに、心のどこかで『アイツなら何とかしてくれるかも』という気にさせてくれる。
同じ頃、新科特隊本部ではベチャッとデスクに突っ伏したベティが貧乏ゆすりしながらスマートフォンをいじっていた。ここ二週間はこんな感じだ。バルタン星人たちと交戦して、というよりは流が姿を消してからというもの、もう暫くこの調子である。任務らしい任務も無く、かと言って私用で警察を使う訳にもいかず。拗ねた彼女は見た目通りの年頃の少女に思われるだろう。
『警視庁から新科特隊本部へ、応答せよ!応答せよ!』
退屈そうにしていたベティはのっそりとヘッドホンを被って応答の操作をタッチパネルで行った。
「ハイハイ、本部本部。どうしたの?」
『ハッ、ベティ特尉でありますか。新科特隊の方で見て頂きたい事件がございますのでご連絡させて頂きました。』
「ウチらで?」
『データをそちらのデバイスに転送します。先ずは目を通してください。後ほど回答を・・・』
「待って。すぐ返事するから。データだけ早くね?」
不思議そうに首を傾げると、担当者は必要書類のファイルを片っ端から新科特隊の方へ送った。ページにして数百枚を超える報告書だ。事件概要に被害者一覧、各被害者のデータ、その親族などに至るまで、必要な情報は一式揃えて送った。これを『すぐ』読んで返事は無理な話だ。無理な話のはずだが・・・
「あ、データ来た。うんうん、うん、え、マジで!?うんうん、理解理解。ハイハイおまたせー。これ確かにウチらの仕事かもね。」
『よ、読まれたのですか?この数秒で?』
驚愕する担当者にベティは軽い感じで答える。
「もちもち。深夜に爆音が聞こえて、朝見たら人間が破裂していた。これが現在ここ一週間以内に3回続いてるんだってね。しかもいつも同じ新練馬のどっか。狙いはどう見てもランダムで無差別。許せないね。話は隊長に伝えてから正式な連絡はするけど、隊長もこういうの放って置かないタイプだから。」
事件の概要はこうだ。深夜の二時頃、周辺住民は二回に渡る爆発音を聞いた。それで起きたという人もいれば、たまたまトイレに起きた時に聞いた人や徹夜で仕事をしていた時に聞いた人もいた。朝になって確認すると、必ずクレーターが二つ出来ていて、内ひとつにはぐちゃぐちゃに破裂して無惨な姿になった人間が確認されている。一人は大学生。サークルの飲み会帰りに酔って公園で休んでいたとされる男性だが、ターゲット第一号として狙われた彼は壮絶な死を遂げてしまった。二人目は残業帰りの女性社員だった。功績が認められ、つい最近管理職に昇格したが、その為に仕事の残業が増える一方で、付近まではタクシーで来ていたという。死因は全く同じ。しかし場所は最初の事件発生現場から十五キロメートルも離れた別の公園だった。三人目の被害者はやはり十五キロメートルほど離れた地点の湾岸に位置する駐車場で見つかった家出中の女子高生。少し前まで頻繁に家族と釣りに来ていたスポットの近くだという。
無作為とも計画的とも取れる犯行。非常に残忍な通り魔的な手口に、報告書を読んだ誰もが怒りに震えた。
「みんな聞いて、犯行現場の情報が出揃ってきたわ。」
白衣姿のアナスタシアが片手で眼鏡を直しながらノートパソコンを持ってきた。
通報が来て数日、アナスタシアは遺体の状態や犯行現場を独自に調査し、様々な視点から情報を集めていたのだ。
「面白い、って言い方は不謹慎よね。でもこれぞ科学特捜隊って感じの事が久々にできたわ!」
パソコンをプロジェクターと繋げ、スクリーンには急いで作ったと思しきまるで飾り気のないプレゼンテーションが表示され始めた。
「お前にとって面白いって事は、やっぱ宇宙人絡みか?」
質問する霧野にアナスタシアは「まあね」とだけ言ってスクリーンの前に立った。
気分は大学時代で様々なレポートや研究結果を発表していた頃に戻ったようだ。お陰で自分自身が少し若返ったように錯覚する。
「コホンッ、はい注目!それではここまでの調査結果を報告します。」
身を乗り出すベティ、うーむと腕を組む五十嵐隊長、半開きの目でズズッとコーヒーを啜る皇顧問に「焦らすなよ!」などと野次を飛ばす霧野。皆が様々な反応を見せながら一様にアナスタシアの発表に関心を寄せる中、彼女は徐々に本題へと移っていった。
「それじゃ、先ずは被害者の皆の死因から。結論を言うと、これは高所からの落下ね。」
「え、でも報告書には爆殺って・・・」
チッチッチッと人差し指を立て首を横に振るアナスタシア。
「そもそも報告書には破裂と爆音って書いてあっただけよ。爆殺はあんたの勝手な想像よ。」
「そ、そうだったのか?」
恥ずかしそうに頬をポリポリとかく隊長、思わず苦笑いするアナスタシアは「隊長もですか、全くもう・・・」と溜息を着いた。
「さ、次のスライドを見て。この略図は現地のクレーターを簡単に表したものよ。この図Exが実際の被害者が確認されたクレーターね。私たち研究班は被害者たちの身体の破損状況からインパクトの時にかかったと考えられるエネルギーを計算して、それが爆薬だった場合をシミュレーションしてみたの。図Aが地雷だった場合、図Bは手榴弾かそれに類するものの場合よ。重ねて見ると分かりやすいけど、ほら地面のえぐれ方が全然違うでしょ?」
そう言ってスライドを進めると、図Exに図AとBが重なった様子がスクリーンに映し出される。ズレ部分は赤色で塗りつぶされてわかりやすく差が示されていた。
「さらに言うと、現場には火薬も爆薬も、そればかりかエネルギー波の痕跡もなかったわ。詰まるところ、これは間違いなく爆発ではなかったって事なのよ。
じゃあ一体どうやって、って思うでしょ?仮説は次のスライドの通りよ。」
そう言って机に置いてたノートパソコンの方へと屈むと、キーボードを操作して次のスライドを表示させた。そこにはまた別の図が二つ用意されていた。
「私が思うに、これ死因はプロレス技なのよ。スケールが違いすぎるけどね。」
は?とどよめく一同を見て、アナスタシアは想像通りの反応に心の中でガッツポーズを決めた。そしてスライドを進めてアニメーションを表示する。
「被害者がこうやってこの角度で落下して地面に叩きつけられれば、人間の肉体の強度ではとても耐えられず、あのような割れた水風船のようになっちゃいます。コンクリートの強度と被害者の体重、それから重力加速度の計算式は以下の通りよ。」
表示された計算式を見せられてもベティ以外はてんでピンと来ない。そう言われればきっとそうなんだろう、という認識しかできない状況だ。
そんな中ベティはピンと手を上げて席を前のめりに立ち上がった。
「はいはーい、先生質問!そのデータだけだと被害者が受けたエネルギーには届かないよね?それから、近くにそんな高い建物はないと思うけど。その辺どーなの?」
「ふふっ、いい質問ねベティ。そういうの待ってたわ!そこでこっちの左の図の出番よ。
これは被害者とは直接的な関係がよくわかっていなかった謎のクレーターの様子。この深さと広さ、そしてこの角度のえぐれ方がジャンプによるものだと仮定すると、放物線はこんな感じになるわ。」
おぉ、とまたもやどよめき。
図に描き出されたのはクレーターからクレーター繋がる放物線で、これなら高い建物が無くても落下は成立する。そして被害者が受けたような壮絶な身体の破損も理論上不可能ではない。爆音、というキーワードの謎もここで解ける。
「つまり、仮説はこうよ。
犯人はこうやって抱きかかえる様にして被害者を捉え、五、六十メートル相当の大ジャンプを行った時に地面はバーン!んで、落下と同時に地面に被害者をバコーン!
想定される敵は恐らく宇宙人ね。足はこうやってバッタみたいになってて、上半身も筋肉質出なければ成立しないわ。予想図はこんな感じ。
何かさて、何か質問はあるかしら?」
プレゼンを聞き終えて最初に口を開いたのは霧野だった。
「なるほどな。どっちみち酷ェヤツってのは変わらない訳だ。よーし、ここまで見た目も能力も分かってるんならあとはこっちから打って出るだけだな。」
「それが出来たら痛快よね。でも、今のままじゃ次の犯行があるのかも、どこで起きるのかも分からない。前例を見るに、また十五キロ圏内のどっかで起きるんだろうけど。」
新科特隊も、その指揮下で働く研究員たちや整備班も皆不眠不休だ。既に時刻は午前五時半を周り、そろそろ仮眠室で二日ぶりの睡眠を取りたいとアナスタシアは考えていたところだ。
実のところ、ここ数日間は隊員たちにも研究員たちにも寝ろ寝ろとうるさく言われていた。どこを向いても誰に話しかけても二言目には寝ろ寝ろなんだからいい加減しつこいにも程がある。逆張りの精神が彼女をここまで活動させてきた原動力でもあるのだ。データを絞り切るまでは、計算式を完成させるまでは、プレゼンテーションを書き上げるまでは、そしてみんなに大切なことを発表で伝えるまでは。そんな具合に繋いで来た意識も、目標が無くなった途端にどこかへ吹っ飛んでしまいそうだった。
アナスタシアは戦場でみんなと同じ戦いは出来ない。ハイビートルはおろかオートマ車すら運転できないし、ウルトラマンに変身して戦ったり、ベティのように生身で宇宙人たちを殲滅することも無い。彼女の戦いはデスクの上で行われる。最高の予備知識と作戦を彼ら戦士たちに提供し、勝利への道を開く。アナスタシアに出来るのはそれだけなのだから、それだけを全力でこなす。私はもう走り抜けた、あとはあなた達が勝利を取ってきてちょうだい。そうとでも言いたげに、冷めきったコップいっぱいのコーヒーに口をつける。
「科特隊の皆さん!大変です!第四の被害者です!」
急いで駆け込んできたのは白衣の研究員の一人だった。手には二つ折りにしたコピー用紙をつまんで、息を切らしていた。
「はァ、はァ。今まで通り新練馬、先程早朝にランニングをしていたという一般男性からの通報がありました。」
「場所は?」
怒鳴るように聞く五十嵐隊長。怒りの矛先はもちろん犯人に向けてのものだ。宇宙人であれなんであれ、こんな無差別に、しかもゲームか何かのように人の命を奪うまだ見ぬ敵に怒りがフツフツと湧き上がる。
「読み上げます!新練馬地区Pー四四、Xー二一地点です。やはりというか、犯行現場は公園でした。被害者の身元は近くで発見されたネームプレートから分かったもので、最近捜索願いが出されていた認知症のお爺さんだそうです・・・」
怒りのあまり机を叩いた霧野隊員は直ぐに読み上げられたポイントへ向かおうとスーパーガン改とスパイダーショットエクストラを持って作戦室を飛び出そうと駆け出す。
「待ちなさい霧野隊員。」
ここまで一言も発さなかった皇顧問が霧野を止める。
「どうしてですか!?今ならやつを!」
「午前二時頃の今なら、ですよ。時計を見なさい。もうかなり過ぎています。それに、やるならもっと上手くやった方がいいと思いませんか?戦いを制するのは常に冷たいものです、熱くなるべきは最後のひと押しのみ。
ベティ、あなたなら私の言いたいことが分かりますね?」
その場の注目がベティに集中する。当のベティは皇顧問を一瞬見ると、アナスタシアに向き直って席を立ちながら言った。
「スメラギさんが言いたいのはね、あと二日待てばきっとまた犯行が繰り返されるって事。最初に事件が起きたのは木曜で、その後の金土はなんもなし。日曜日の女の人が殺されて、月火はやっぱり音沙汰無し。そして水曜日に家出の子がやられて、一昨日と昨日は何もなし。それで今日って事はなんもない二日を挟んで事件が繰り返される、そういう事を言いたいんじゃないかな。」
淡々と、しかしとても悲しそうにベティは解説した。皇顧問は「ご名答」とだけ言って黙る。それは暗にベティに対して、「推理を続けるように」という指示だった。
「それから、犯行は多くてあと二回を最後に無くなるよ。」
皇顧問を除く一同は目を丸くする。
「どうしてそう思うの?」
アナスタシアが聞くと、ベティはアナスタシアにプロジェクターで新練馬の地図を表示するように頼んだ。アナスタシアがそのようにすると、ベティはスクリーンとして使っているシートに直接赤色のマーカーで書き込みながら説明する。
「見て、ここが最初の事件。そっから十五キロの二回目がここ。次ここで、四四の二一はここだね。この四つの点は特に何の共通点も無いけど、こうやって線で結ぶと・・・」
キュッ、キュッとマーカーが音を立てて線を描く。フリーハンドにも関わらず直線にはミリ単位でブレがなく、そう言った所作からも彼女が非人間だと言うことが否応なく伝わってくる。
「結ぶと、こうやって変な形ができるでしょ?なんかに似てるなって思ってさ、でもこれが五芒星なら納得なんだよね。」
そう言って今度は点線をひき始める。
「五つ目の頂点が五回目の犯行で、一つ目に戻って六回目。この六回目があるかは知らないけど、二日挟んでのこのPー八一、Xー五六。緑地化計画で公園になってるここには高い建物は無いし、深夜や朝方にも多少の人通りはあるよ。
ここに午前二時に行けば、多分私たちは犯人を現行犯でぶっ飛ばせるはず。そうでしょ、スメラギさん?」
コクコクと頷く皇顧問。アナスタシアは一本取られたとばかりにそっぽを向いて後頭部をかいた。完全な学者肌の彼女の根幹にあるのは数学的思考だ。確定情報だけで推理を組んで、確定した結論を主張とする。しかしそれでは見落としてしまうものもある。倒れそうなほどの寝不足とはいえ、こんな簡単なことに気づかなかった自分が恥ずかしい気持ちで耐えられそうにないので、
「ごめんみんな、もう限界だから私寝るわ。おやすみ、起こさないでね。じゃあね!」
と、手をヒラヒラさせて振り返りもせずに自室へ行ってしまった。
決戦は、平和な二日を挟んだあとの深夜二時。各員はそれまでにコンディションを整えて、最高の状態で迎え撃てとの命令が唯一の任務内容だった。隊員たちはここまで頑張ってくれたアナスタシアに感謝を告げると、受け取ったバトンで必ずまだ見ぬ連続殺人宇宙人に勝利しようと強く心に誓ったのだった。
つづく
いかがでしたか?
初めから読んで見たい方はこちらから!→novel/series/8703459
謎が謎を呼ぶ連続殺人事件。その真相に果たして人類は到達出来たのか?
次回もお楽しみに!