突然のことで分からないでしょうが私の作品をお気に入りにしてくださった方が100人を超えました。
こんな駄文の知識も経験のない作者がひねり出すこの作品をどうかこれからもよろしくお願いします。
第九話 木と桜、咲き香る少女たちの願い
あの後、真心に問い詰めていた木乃香に事情を話すことを約束し真心は解放された。
「予想していたとしても疲れた」
しつこく木乃香は言い寄り真心も木乃香を落ち着かせるために話をし、なんとか落ち着かせることに成功したのだ。
「いや~、木乃香君があそこまで言い寄るなんて。真心君、君いったいなにしたの?」
「何にも。あいつとは幼馴染くらいだよ。それよりもそのにやけた顔をやめろ。なぐるぞ」
「おっと、それは勘弁かな。君の力で殴られたら入院しなければならないからね」
普段真心の無茶に付き合わされるタカミチはこの機会に真心をいじり始めた。
とはいえ、タカミチ自身もそこまでちょっかいを掛けないため、真心もそこまで怒らないが。
「それにしても、あそこまで木乃香君に好かれているなんて。よかったじゃないか刹那君にも好かれているんだろう。」
「タカミチ。そこまでよいもんではないよ。少なくともこの体のことを考えれば」
人類最終。その体の異常な能力のうち、一つに寿命の増加が挙げられる。今の真心の体は普通の人間の数倍以上生きられる。それこそ、タカミチの孫の死に目を見れるくらいには生きられる。
だからこそ彼はあまり関係を持たない。
「どういう意味だい?」
「口が滑っただけだ。忘れてくれ」
少し言いよどみながらもタカミチに返答する。
それを見てタカミチも話を変える。
「あっ、そうそう」
「ん、どうした?」
「伝え忘れるところだったが、今日の夜に集会があるんだよ。夜十時から世界樹広場前に集合だから」
「ちょ、ちょっと待て。俺様はこれから明日の準備もしなければならんし、木乃香とも話さなければならないんだぞ!それらの時間を合わせれば、絶対に時間が足りんのだが」
「がんばれ!遅れた場合減給だって、学園長が言っていたよ」
肩に手を乗せ、満面の笑みで言うタカミチ。
所詮人の恋路だと思っているのだろう。
これからの修羅場について楽しみにしているようだ。
「くそ!」
悪態をはき、明日の授業の資料を集め計画を立てていく。
ノートパソコンを合計六台近く稼働しながらそれらを操り、作業スピードを速めていく。
周りの職員たちはその作業を見て驚いているが、タカミチにとってもはやこれくらいでは驚かない。
ナギと戦ってこいと言われ無傷で帰ってくるぐらいするだろうとそう思っているからだ。
彼とペアになった夜の防衛などではもっと驚くことがあるからだ。
「もうそろそろ、木乃香君のほうに行ったほうがいいんじゃないかな?」
「そうだな。すまんタカミチ。少し早いが抜けさせてもらう」
真心は立ち上がり、木乃香との待ち合わせをした喫茶店に向かっていった。
「いらしゃいませ。おひとりさまでしょうか?」
「いや、待ち合わせだ。」
「そうですか、ではごゆっくり」
店員との定型的な話を終え、木乃香のいる机に向かう。
どうやら一番奥にいるようで見づらいが、そこに木乃香がいるのは確認できた。
「悪いんやけど、どっかにいてくれへんか」
木乃香のいら立ちを含んだ声が聞こえた。
それと同時に
「黙れ、お前なんかに名前を呼ばれる筋合いはない」
刹那がどうやら話している相手を拒絶したようだ。
それと同時に背の高い男が一人奥から出てきた。
「ちっ、まあいい。ゆっくりと好感度を上げていきゃいい」
そう言いながら、彼、神先は真心の隣をすり抜け、こちらに気付くことなく店を出ていく。
「なんなんあいつ。せっちゃんの秘密を知っていたようだけど」
「このちゃん大丈夫や、あんなやつ気にすることあらへん」
二人が神先に対して悪態をついていたのを聞きながら真心は木乃香と刹那の前の席に座り、音を遮断し空間を作った。
「二人とも少し落ち着け。ほかの客の迷惑だ」
「「あっ、マー君」」
真心の声に反応し二人がこちらを向く。
そんな息の合った二人を見て思わず笑いがこぼれる。
「何があったんだ?一体」
「あいつがいきなり私たちの前に来てなんかごちゃごちゃ言い始めたんや」
「ええ、本当に失礼な男です。なぜだか分かりませんが私の秘密を知っているようです」
近衛木乃香 桜咲刹那
この二人は本来、刹那の秘密を知るまですれ違っていた。
だが、そこに請負人、請けて背負う人間が混ざることで物語は加速しバックノズルが発生した。
全ての物語が行き着く所は同じ。人類最悪の持論にして、重要視した理論。
それにより二人の仲はすれ違う期間をとばし、お互いを理解したのだ。
「刹那の?不可能だ。
刹那のことは分からないように俺様自らが関係した人間にプロテクトをかけ、罠を仕掛けて知ることができないようにしたはずだが」
「電子的なことだけやないもんな。マー君確か、操想術でせっちゃんのこと知っている人間の記憶をいじったもんな。それに脳内干渉も使ったんやろ?あのときに」
「ああ」
「あの時は、ありがとう、マー君。私の体のことを隠すのを手伝ってくれて」
刹那の秘密は烏族と人間のハーフということだ。
この秘密をあるとき真心と木乃香は知り、掟で別れなくてはならないことを話した刹那が木乃香と一緒に真心に助けを求めたために。真心は初めて請け負い、長い時間をかけ記憶と証拠を消していった。
そのためこの二人は真心の力を一部とはいえ、知っている。
「まさか、実の父親にも改ざんを施してくれというとは思わなかったが」
「しょうがないやん。あのままやったら、私はきっと記憶を改ざんされてたよ?」
そう、真心はありとあらゆる手を打ったがそれでも木乃香の家族である詠春には行わなかった。
だが、木乃香自身がそれを望み報酬を支払ったのだから真心は詠春も認識を改ざんした。
「まあ、あいつがなぜこのことを知っているか知らんが、調べて問題があるのなら記憶を改ざんするか消去するしかないだろう」
「ごめんな、マー君」
「ごめん、マー君」
木乃香と刹那二人が頭を下げるが、真心のほうは、
「別に問題ないさ。それに、俺様は身内には甘いんだ」
その言葉に二人は安堵し、喜ぶ。
「じゃ、あいつの話はここでおしまいや。さて、はいてもらうで。マー君」
今までの話とがらりと変わり、まるで浮気した亭主を問い詰める妻のように木乃香は言う。
「せっちゃんははいたで。にげられるとはおもわへんことやで?」
妙にゆっくりした声で問い質され、半年前には麻帆良にいたことを刹那から聞いていた木乃香の怒りをなだめるために、財布の中身全てを使いケーキなどを貢ぐ真心の姿が喫茶店にあった。