第二十四話 偏失 変質
「え?」
誰の声かは分からないが誰かのこぼした声に現実は無慈悲に進んでいく。
石の杭は確実に刹那の心臓を突き抜けていた。
「そんな! 何で!?」
ネギの声にこたえるかのようにフェイトが現れ、
「悪いけど、彼にはかないそうにないけどせめて従者は葬らせてもらうよ」
それだけ残し、転移しようとして影から出てきた人影に腕をつかまれた。
「まて、小僧。今の私はすこぶる機嫌が悪いんだ。運動の相手ぐらいにはなれ」
金色の髪を翻し、エヴァンジュリンはフェイトを魔力を込め全力で殴り飛ばす。
「真祖の吸血鬼か。ここで戦っても犬死になんでね。ここで失礼するよ」
それだけ言い残しこんどこそ転移した。
「刹那さん、刹那さんしっかり」
「目を開けてください!」
アスナとネギの声が響く、中木乃香はぽつりとつぶやき真心に詰め寄る。
「せっちゃん・・・
まー君。お願いや。またあの時のようにせっちゃんを助けて!」
それは純粋な願い。刹那に助かってもらいたいという願い。そしてそのためなら自分の身など気にしないほどの純粋で美しい願いだった。
だからこそ、真心は自分には決してできないことを行える
片方は片方を守り、もう片方はもう片方を想う。自分にはこうなれないことを理解してるがゆえに。
「昔に俺が請け負っていることだろう?」
それだけを真心はいい、刹那に近づく。
「刹那」
「まー君? またみたい。ごめんね、迷惑かけて」
「安心しろ。運命は変えられるし、この程度でお前は死なせないさ」
真心は刹那の傷口をふさいでいる石を風化、いや時間軸上から取り除き傷口に
「真心さん・・・なんですかそれ」
ネギが怯えた声を上げる。
なぜならそれは
それを真心は刹那の駄目になった心臓と
まるでパンクしたタイヤを取り換えるかのように。
「何をしているんですか!!」
ネギにとってそれは異常としか見えなかった。いや、他の人が見えても異常としか言えないだろう。
心臓が破れダメになったから他人の心臓を使えばよいなどまっとうな行為とは考えられない。
「大丈夫・・・ですよ。ネギ先生」
刹那の声が先ほどより安定し始めていた。
「私の体の半分近くはまー君の体ですから」
微笑みながら刹那の言った言葉にこの場にいる刹那の体の秘密の一部を知らなかった者たちは驚愕する。
「どういう意味だ」
「言葉通りです」
エヴァのもらした言葉に刹那は答える。
その間にも傷口の中で心臓はつながり大きさを変えて一体化していく。
真心の体は心臓を取り出した際の怪我が癒え、どろどろと溶け出して元の真心に戻る。
「昔、私が死にかけた時にまー君の血と肉で私の体は生きることができたんです」
かつて刹那は死んだ。厳密に言えば、真心がいなければ確実に死んでた。
「
血液を媒介に真心の体の半分を刹那に適合させた。それにより刹那は生きることができている。
それは真心さえいれば刹那は
「ば、かな。そんなことありえん! 治癒魔法ですら半分以上吹き飛んだ部位は治せない。それを治した?」
あまりの内容にエヴァは信じられない。エヴァだけではなくこの場にいるすべての人間が信じられることができなかった。
「せっちゃん!」
だがその程度のことを気にするほど彼女は我慢強くない。
刹那の傷が真心の血液の作用により完全に修復したのを確認し、木乃香は刹那に飛びつく。
「よかったよ、せっちゃん。生きてくれて」
我慢しきれず木乃香はおえつを漏らし始める。
答えるように刹那は木乃香を抱きしめて、
「大丈夫や、このちゃん。私はここにいるんよ?」
二人の様子に周りは何も言えなくなってしまう。
あまりにも異質なその体に嫌悪を覚えた物もいるかもしれなかったがこの二人の様子を見て何か言えるわけがなかった。
「悪いが、少しは現実に戻ってほしい物だな」
真心の声にネギたちは気づき、振り返る。
「関西呪術協会のメンバーとこの事件の主犯を捕まえなければならないから早く後処理をしたいんだが」
そういい、真心はさっさと一人呪術協会へと足を運ぶ。
「お前たちも聞きたいことがあるだろうがそれはまた今度だ」
夜の闇の中太陽は隠れていく。
一つの秘密が暴かれ、箱が開き始める。
始まりの物語りの蓋が。
今回の題名
偏 これから先段々と物語の比率が偏り始めること
失 刹那の失った普通の感性を指す。