英雄の魔法と最終の人類   作:koth3

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第二十七話

第二十七話 純毘 準備

 

 「木乃香、真心先生がよんでるよ」

 

 アスナが言った言葉に木乃香は立ち上がり、急いで自身の身だしなみを確認する。

 

 「ホンマか?」

 「うん。何か大切な話があるから世界樹広場に来てくれって」

 

 木乃香はそれだけ聞くと、大慌てで化粧をし始める。内心、慌てているため化粧に失敗しそうだが。

 

 「アスナ、もっと早くいってくれへん? そんな大事なこと」

 「ごめんごめん。けど、わざわざ化粧をする必要はないんじゃ?」

 「念のためや」

 

 そのまま木乃香は化粧を終えると、服を選びだし着替える。

 精一杯のおしゃれをして少しでもよく真心にみられるために準備をして、興奮しながら木乃香は出かける。

 

 

 

 世界樹広場にはすでに真心が刹那と一緒に待っていた。

 橙色の髪がたなびくのを木乃香は見上げながら、

 

 「まー君。話って?」

 

 走り寄り、尋ねる。

 真心はそんな木乃香の質問に普段とは違い比較的真面目な顔で答える。

 

 「近衛門に頼まれてな。お前に魔法を教えてくれとな」

 「魔法?」

 「ああ、それと護身術も身につけさせてくれとな」

 

 真心の言った内容に木乃香は疑問に思い聞く。

 

 「魔法を覚えるのは分かるんけど、なんで護身術も?」

 「簡単なことや、このちゃん。

 接近されたら魔法使いは何もできなくなってしまうから接近されたときの対処を覚えなければならないんや」

 「そうだ。特に木乃香は関西呪術協会の長の直結の血縁だ。所有魔力の多さもあって狙われやすくなるだろうからな。いざという時の保険だ」

 

 真心の言った通りに木乃香は危険なのだ。

 関西呪術協会の長の娘。極東一の魔力。

 それらが重なって危険なめに陥りやすい。護衛を用意したとしてもいざというと時は自身の身を守れなければならない。護衛を突破されたら何もできませんじゃ話にはならないし、護衛から放れて会談しなければならない時もある。そんな時襲われたら今の木乃香ではひとたまりもない。

 そのために護衛である刹那と一緒に真心が鍛えるのだ。

 

 

 

 一方そのころネギはエヴァの自宅玄関に張り付いていた。

 

 「エヴァンジュリンさん、弟子にしてください!」

 「ふざけるな!!」

 

 エヴァの住むログハウスの扉が一瞬で閉まる。

 

 「あっ、ちょっと早すぎません!? もう少し考えてください!」

 「いや、仕方ないと思うけど。ネギ」

 

 アスナがこう言ったのにも理由がある。

 

 「だってね。あの時エヴァちゃんをさんざん罠にかけて卑怯に勝ったアンタが頼んでもね」

 「うう。あの時はそれが一番だと思ったんです」

 

 ネギの言ったことはその時を考えれば間違いじゃなかったが現状ではエヴァを怒らせてしまう原因であり、これではいくら頼んでも失敗するようなものだ。

 ネギは思い浮かべる。あの時の戦いを。

 

 

 「よく来たな、ぼーや」

 「エヴァンジュリンさん、あなたが望むように勝負をしましょう。ただし彼女たちは解放してください」

 

 ネギをここまで案内したまき絵たちの解放をネギは望む。

 

 「ふむ、まあいいか。

 いいだろう。こいつらは解放してやろう」

 

 その言葉をエヴァが言うと同時にエヴァが操っていたメンバーが倒れ伏す。

 

 「安心しろ。しばらく眠っているよう命令しただけだ」

 「そうですか。では」

 「ああ、これからの先はぼーやと私との戦いだよ」

 

 二人の間に停滞した、いや緊迫した空気が流れだす。

 

 「いくぞ、リク・ラク・ラ・ラック」

 

 その瞬間ネギは背中を向け逃げ出した。

 

 「っておい! いきなり逃げ出すか!!」

 

 ネギは今ある魔力を最大限に使い、杖を加速させ目的の場所に向かう。

 

 「っち。敵に背を向けるかこの臆病者が!!」

 

 エヴァはそのまま先ほど唱えていた魔法の射手連弾・氷の17矢を放つ。

 それをネギは用意しておいた魔法具の一部防壁関連のものと魔法薬で防ぎながらさらに加速させていく。

 

 「茶々丸! やれ」

 

 エヴァの声と同時に茶々丸が命令に従いネギを追いかける。その速度は速さに優れるネギにすら追いつくほどだ。

 

 「いまだ! カモ君!!」

 

 茶々丸がエヴァから離れ自身に向かってくるのを確認したネギは前もって準備しておいた魔法具を起動させるためにカモへと合図を出す。

 魔法具戒めの矢Ver。単純に言えば戒めの矢と同じ効力を発揮するだけの魔法具だがネギはこれを茶々丸に使用することでエヴァとの隔離を成功させる。

 

 「よっしゃー!! 兄貴の策がはまったぜ!」

 

 ネギは最初から戦わず逃げだすことを考えていた。そうすればプライドの高いエヴァのことだから追いかけ捕まえようとすると考えその際に最も有効的であるが危険性の高い従者と魔法使いの分離を図ったのだ。

 

 「何!? まさか初めからこれを狙って!」

 「遅いです!」

 

 ネギは取り出した転移魔法符を使いエヴァと自身を転移させる。対吸血鬼、対高魔族用結界。さらに中央には銀の十字架と吸血鬼にとって最も危険な白木の杭を結界沿いにぐるりと張り巡らして用意した。

 

 「これは。フハハ、なめていたのは私だったか。確かにぼーやは今できる最大の準備をして私を迎え撃った。油断しその策に乗りここまで操られたのは私だ。ならば、その策私が力ずくに破壊してやろう!!」

 

 地上に降り立ったエヴァに対してネギとカモ、さらにその前にハリセンを構えたアスナが対峙する。莫大な魔力と覇気によるプレッシャーに押しつぶされそうになりながらもネギは歯を食いしばり続ける。

 

 「これで終わりっへぶ!?」

 

 エヴァが一歩踏み出した瞬間にその足場が崩れ落ち中には水があった。

 

 「は!? ちょ、なんで!?」

 「今です! アスナさん」

 「いいのかな? これって」

 

 ネギとアスナが二人そろって落とし穴のふちからどこかから取り出した袋の中身を投入する。ドバドバと音を立てて投入されるのは野菜のネギとにんにくだ。

 ここにあるすべての魔法具に結界は囮だったのだ。ここまで準備されればここで決戦とふつうは考える。だがネギはその心理を利用しかつてエヴァが破れた戦法を利用した。

 

 「これぞ父さん式対エヴァンジュリンさん用落とし穴です」

 「や、やめ。ネギの匂いが、にんにくが」

 「さあ、降参してください! でなければ貯金をはたいて購入したネギとにんにくを更に投入するだけです」

 

 はたから見ればネギの方が悪役だったが結局エヴァは降参し、ネギはエヴァに勝ったのだ。この後エヴァは蛙の子は蛙の意味がよくわかったと言い、このネギとにんにくの匂いが漂う空間から逃げ出した。

 

 

 「やっぱり無理ですかね、あんなことしたんですし」

 「オレっちもさすがにそう思うぜ。いくらなんでもやりすぎたしな」

 「それでもするしかないんです。三顧の礼よろしく頼み込んでみます」

 

 それだけ言うとネギはもう一度エヴァの家に貼り付きお願いし始める。

 結局、エヴァが根負けして弟子になるための試験を受けても良いというまでネギは頼み込んだ。

 

 

 ネギが古との中国拳法の修行を含めてエヴァとの約束であった試験に合格した数日後のこと。

 

 

 「まー君。このちゃんつよーなったはいいんやけど、私より強いってどういうこと?」

 

 落ち込んだ目でどんよりとした空気を醸し出して刹那は真心に問い詰める。

 

 「いや、俺様も予想外なんだ。ここまで才能があったなんて」

 

 そう言っている二人の後ろで木乃香が格闘団体をポンポン投げ飛ばしていた。

 刹那もすでに投げ飛ばされて、ここにいるのだ。

 

 「なんだと!?」

 「くらえ、漢だっへぶ!?」

 「かおるっぶ!?」

 

 今もなお木乃香の手で三人が投げ飛ばされた。

 

 「枷鎖川遠(かさかわおち)

 

 本来は二人組によって繰り出される技だが木乃香はそれを一人だけで繰り出している。

 間違ったかな~と二人は思いながら今の木乃香を止めるために止めに入る。

 

 「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」 

 

 狂気すらみせ人を投げ飛ばし続けている木乃香だったがさすがにアーティファクトを使った刹那と、真心にはかなわなかったようだ。

 

 「いや~や、もっと投げたいんやうちは」

 「いや、このちゃん。そんな子供が遊びたいっていうような言い方やけどしていることは鬼畜やよ?」

 

 刹那のツッコミはむなしく空に響くだけだった。




今回の題名
純 純化していく木乃香の様子です。(反転した精神の一種です)
毘 恐れという意味を含んでおり、その様子に真心ですらわずかに恐れました。

かっこ悪いネギの戦いでした。まともに戦わずに策を練ってはめました。そのため今作のエヴァは原作と比べてネギに対して辛辣です。

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