第二十八話 抱懐 崩壊
ネギと木乃香が違う師匠相手に修行をし始めていくらかがたった。
ネギは順調に戦闘方法を確立させ始めてきているが、木乃香はここで足止めしてしまった。
なんだかんやとはいえネギの中にはある程度の戦闘経験がある。しかし、木乃香にはそんな経験がない。戦闘技術はあってもそれを効率的に使用する方法がないのだ。
「う~ん。どうしてもあの時からせっちゃんを投げれない」
「このちゃん……、投げられるうちのことも考えて……」
木乃香と刹那は真心が用意した結界内で修行をしている。最初の時は刹那の油断と慢心から木乃香に投げ飛ばされたが木乃香は技量が高いだけでそこまで強いわけではない。そのため、あれから刹那は木乃香に投げ飛ばされるといったことはおきていない。
「このちゃんは戦闘経験がないから体を効率よく動かせないんや。間合いの取り方虚実の入れ方。これだけで戦い方は全然違うんやで? たまにまー君みたいにそんなものをとらなくても戦える人はいるけどこのちゃんはきちんと取らなきゃ戦えへんで」
「そっか。なんか投げられないと思うたけど、せっちゃんに間合いを外されていたんか」
「そういうことだ」
「「まー君」」
二人が話しているなかに真心が現れて二人に話しかける。
「まあ、戦闘経験が圧倒的に足りないのはしょうがない。だからこそすぐに戦闘経験を積ませるために今日はとある道具を用意した」
そういって真心が取り出したのは一つの巻物だ。
その巻物を木乃香に渡しながら刹那には違う巻物を渡す。
「その二つには人工精霊である俺様がいる。二人にはちょうどいい経験の戦闘相手になるように設定してある。巻物の中ではこの時間の百倍の時間が流れているが、精神が取り込まれるだけだから肉体には何の影響もない。今日から一週間以内で巻物の中にいる俺様を倒せばいい」
それだけ言い残して真心は去っていく。不吉な言葉を言いながら。
「まあ、一週間でクリアできたらそれだけでどんな状況下でも勝てる力はあるがな」
「最後の意味ってなんやったんやろ?」
「わからへん。けど巻物を開こうか?」
二人は知らない。今まで目を背けてきたことに強制的に向き合わされることを。
刹那と木乃香が巻物を開いた瞬間二人はそれぞれ違う空間に閉じ込められた。
刹那のいるこの空間は竹林が生い茂る小さい山のようだ。
「ここは?」
刹那はあたりを見回しても特に何もないことを確認するといったん頂上からこの山の地形を確認しようと翼を出そうとするが。
「!? 翼が使えない!?」
しかし、翼が使えない。驚いた刹那は翼以外にも気を使えないかも調べたがこちらも使えなかった。
「どういうことや? 翼も気も封印されたんや?」
刹那は最初の予定に沿い山を登り始めている。翼が使えず気も使えないが身体能力は大人顔負けであるためこの小さい山を登るくらいなら何の問題もない。
「やあ、君が刹那君か。待っていたよ!」
突然竹林が開け、広場があった。そしてそこにいたのは真心だった。いや、体は真心だが普段の真心ならしないような言動をとっている。
「まー君? いや、違うか」
「正解だよ! 確かに私は想影真心の体を使っているが私は彼の力の一部であり、それ以上でもそれ以下でもない!」
男は大業な振り付けで動く。体は真心であるのだがなぜかその印象は針金のような男という印象がある。違和感から真心とは違うことを認識できた刹那だったがこの男が何をするかわからず、警戒するしかない。
「さて、私の試練は何をしようかね?」
「試練? 戦うのでは?」
「うん? それがいいのかい? それでは面白くないだろう。せっかく女子中学生と会えたんだ。殺し、殺されるなんて野暮なことは私はしないよ。それに私は平和主義者なんだ。そんなことはできるだけしたくない」
男の様子から刹那は本心から言っているということを理解し、警戒をとる。それが絶対的な間違いであることに気付かずに。確かに彼は
「君はそういえばなぜこちらへ来たんだい?」
「まー君が渡した巻物がここへ通じていただけですが?」
「ふうん。なるほど。ところで君は何か好きなものはあるかい? いや、人でも構わないけれども」
「好きな……ですか?」
突然男が話した内容に刹那は呆けてしまう。
自分がここに来た理由を彼は知らないのだろうか。それともただ、ごまかしているのだろうか。
「あの、私がここに来た理由は」
「ああ、私を倒せばいいんだろう? だけど私は今は戦う気はないからね」
刹那としても戦意のあるものを切れても戦意のないものを切ることはできない。
そのために、どうすればいいかわからず先ほどから戸惑うばかりだ。
「質問した内容が理解できなかったかな? 君の答えが返ってきていないのだが」
「あっ、すいません。えっと、私は」
「いや、もういいよ。
なんというか君はえらく不安定だ」
刹那は足元が揺れた気がした。
「不安定で負荷式で不可思議だ」
ぐらぐらと視界が揺れる。まるで自分が見透かされるように彼に見られている。
その視線が怖い。視線だけで人を怖くなったことなど初めてだった。
「質問したことには回答せず、私がもう一度訪ねて始めて考え出したことといい、そのあとの自分の好きなことを回答出来ないこといい、君はどうしようもないほど不安定だ。君ぐらいの年ならむしろ好きなものがいくらでもあげられるはずなんだけどね。きっと君は私がした質問に答えようとしなかったのではなく答えられなかったのではないかい? それをごまかすために無意識的に話を変えようとしたし、言葉が詰まったのではないのかい? 私のいった事があっているのなら君は常に自身を偽る負荷という式を自身にインプットし続けている。そんな不可思議な存在になってしまっているようだが」
やめろ、その先を言うな。それは私が私でいるために必要なものなんだ! そう声を張り上げて叫びたくとも刹那ののどは少しも動いてくれない。
「君は本当は全てが嫌いなのではないかい?」
「ああああああああああああああああああ!!」
刹那は耐えきれなくなり理性を放棄した。そんな様子を彼は見て、
「少し追い詰めすぎたかな? まあ、君の試練。いや、試験の結果発表だ」
「不合格」
刹那は理解できなかったがそれは周りから見れば異常だった。
スーツから取り出した特殊な形の鋏、和式のナイフをネジで固定したようなもの。そんなもので彼は半狂乱となり、野太刀を振り回す彼女の懐に鼻歌すら歌えそうな余裕を見せ入り込みその鋏を一回閉じただけ。その結果刹那の首は切り落とされていた。
「安心しなさい。ここで死んだとしても問題はない。君が答えを見つけたらここへ来ると良い」
それだけ言うと彼は後ろを振り向きかけ、
「スパッツだと!? 君みたいな子が悪魔の道具を穿いているなんて! ああ、なんと嘆かわしい!!」
変態ということがよくわかる内容を口に出していた。
元ネタは皆さん分かるでしょう。そう変態です。(違う)
二十人目の地獄でした。
今回の題名ですが書く必要ってあるのか疑問に思い始めて書かないことにしました。もし、書いた方がいいという意見が多数来た場合はまた、書きます。