序章なのでサクサクかけていますがだんだんと遅くなってしまうかもしれません。
それでも良いのならどうか御読み下さい。
第二話 麻帆良へ
想影真心としてあの魂が生まれ変わって、はや15年の歳月が過ぎた。
京都のとある児童養護施設で暮らしていた真心だが、あるとき今の親である二人に引き取られた。
想影 天
想影 心視
この二人の夫婦に8歳のころに引き取られた。
それから一年後にはアメリカにある学術の最果てとも呼ばれるER3システム、大統合全一学研究所の中で彼は育った。
生まれ変わった際の力。いうなれば転生特典と呼ばれるもののおかげで、真心はいまだにほかの転生した人間とは会っていない。引き取られた環境のおかげで、 ここでは研究以外に興味が移らない人間が多いため、 真心は暴君の力つまり、青色サヴァンの電子世界に対する絶対的な力を駆使しありとあらゆる情報を集めた。
その中でもこの世界には特異な力は多くあったが、転生した力とどうやら違うものが多い。例えばラテン語の詠唱で魔法が発動することや札を基にした陰陽術など。そのためにありとあらゆる情報を集めてきたが、ここ最近魔法世界の英雄と呼ばれる人間が麻帆良という学園都市に訪れるという情報がまほネットに流れている。
「まずいな、麻帆良にはあの二人がいる。別に普通の奴なら何もしなくていいのだが、こんな噂が立つような奴のところに二人がいるのは少し心配だな」
転生したと思われる人物の情報を収集し記載した記録用紙に書かれている内容は
『驚異的な戦闘能力を持ち、自己中心的な性格。派手好きで、英雄であることを鼻にかけており彼の言うとおりに従わないと激怒する。また極度の女好きであり、彼に泣かされた女は数多い。』
「この情報だけ見ると英雄であることを鼻にかけやりたい放題をしている存在のようだが、彼女たちに悪影響を及ばさないかが心配なんだが」
想影 真心は心配そうに考えをまとめていく。
「仕方があるまい。麻帆良に行き、様子を見るとしよう。その結果ガセや噂が嘘だったらよいのだが、そいつ次第でここに戻るか向うに拠点を築くとしよう」
橙色の髪と瞳を翻し、彼は荷物をまとめていく。
「ふん、どこかに行くのか」
彼の後ろから男が声をかけてきた。
「そうさ、麻帆良へと向かう。人類最悪」
「『麻帆良へ向かう』。ふん。ならば俺は計画を進めていくだけだがな。まあいい、お前が俺たちの前に来る前のお友達とやらのためにか。選別をくれてやる。もう帰ってくるな」
どうやら人類最悪と呼ばれた男は彼の事を知っていて彼と同レベルの情報網を構築しているようだ。
「はっ。お前が立てた計画を潰すためにだけにここに帰ってくるさ」
お互いが軽口を言うと二人とも笑い始める。
「くっくっく」
「げらげらげら」
父と子。かつてお互いがお互いを殺し合い、殺しきれなかった存在。彼らの物語は終わりを迎えありとあらゆる物語に関われなくなってしまった。しかし、世界はもう一度物語に関わることを彼に課す。
「ではな、橙なる種、人類最終にして神と悪魔の申し子ニャルラトテップよ」
「じゃあな、クソ親父。人類最悪」
二人は分かれる。二人の物語はすでに終わったのにここまで関係が続いていたこと自体が奇跡なのだ。
なぜなら、最初からこの世界は彼の物語ではなく英雄の子供の物語なのだから。
埼玉県麻帆良学園
疲れた風に真心は顔を曇らせている。彼はここに来るまでにリアルダイ〇ード体験したのだ。ハイジャックなんて普通起きないが。
アメリカヒューストンから航空機に乗り、日本へ向かっている途中その機体がハイジャックされかけていたことに気づいた彼は、だれにも悟られず、ハイジャック犯たちを取り押さえたのだ。
「それより、拠点として借りたアパートに向かわないと」
心の中で愚痴を言い、歩き出す。その姿はまるで上京したおのぼりさんといった雰囲気を出している。
もちろん、これは彼の演技だ。
この地は関東魔法教会と呼ばれる組織によって守護されている。故に余計ないさかいを起こさないように何も知らない田舎ものをよそおいながらこの都市を観察しているのだ。
「ちょっと、そこのアンタ」
そんな彼に突然声をかける少女がいた。
ツインテールにオッドアイが特徴的な少女だ。
「ん、俺ですか」
突然声をかけられたが、動揺すらせず演技を続ける。
「そうよ。ここは女子校エリアよ。何でこんな所にいるの」
「そうなんですか。すいません。ここに来たのは初めてで迷ってしまったんです」
「あっ、そうだったの。ごめんね、疑って」
彼女は真心を不審者と判断した。
しかし、彼女は少々素直すぎる。もし今言ったことが嘘だとしたらどうするつもりなんだろうか。
「いいえ、気にしてませんよ」
「いや~、なんかここ最近物騒でしょう?だから学校でも不審者や不審な物に警戒するようにって高畑先生に言われていて。お詫びに案内してあげるわ。どこか目的地はあるの?」
まずいな、もし本当に迷っていたのならありがたいのだが。しかしここで断ると不審すぎるか。
そう真心は考え、
「ありがとう。〇〇アパートに行きたいんだけど」
「ああ、骨董アパートね。あんなとこに何しに行くの?」
どうやら彼女は少々おしゃべりのようだ。とはいえ、この程度では問題ないにはならない。
そう判断し真心は告げる。
「ああ、そこに住む予定でね」
「え、あんな骨董アパートに?あんなとこに住むんだからお金とか大丈夫なの」
「住めば都っていうだろう。それに準備は前もってしてあるから金銭などの余裕はあるよ」
どうやらおしゃべりだけではなく、おせっかいでもあるようだ。
「そう、大丈夫みたいね。あっ、そうそう私は明日菜っていうんだけどあんたの名前は?」
ここで名前を明かすことにより、真心の存在が広がるかもしれない可能性がある。しかし、真心の名前は一部の場所と人間を除けばそこまで有名ではない。
「想影 想影真心だよ」
「へぇー、真心ね。いい名前じゃない」
どうやら彼女は隣にいる真心自体に興味を持ち始めているようだ。
「でもなんで真心はここに来たの?」
仕方ない。そう思い、彼は用意しておいたカバーストーリーを話し始める。
「ああ、ER3システムで留学していたんだがね、ちょっとしたことでここに来る必要ができたんだよ」
「ええ!学術の最果てに留学していたの。アンタ」
「まあね」
話をしながら案内してもらっていた真心だが、ちょうど目的地に着いた。
「あっと、ここが骨董アパートよ」
「ああ、ありがとう。世話になったよ」
「別にこれくらいどうってことないわよ。じゃ、私もそろそろこの辺で帰るわ。今度は迷わないようにしなさいね」
そう言い、彼女は去っていった。
予想外の事態に巻き込まれたがおおむね真心の目的であった、大体の地形、どこに何を隠しているか、重要な施設などを把握することはできたのだ。
かれは案内されながら、さりげないしぐさ、それこそその道のプロですら不可能と言えるほどの情報をたった十分程度で理解してしまったのだ。
「さて、今日はもうすることもないし、荷物を片付けて、明日の準備をしよう」
それではまた次回会いましょう。