走り出したら止まれない/Runaway Baby   作:Avigale

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走り出したら止まれない・その4

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「さて、府中駅から学園までは徒歩10分とかからん」

 

「案内するか?」

 

彼女はそう聞いてきた。

 

「僕は電車の乗換と路線が分からなかっただけです」

 

「徒歩でならスマホで調べて一人で行きます」

 

彼女がちょっと驚いたかのように、そして少しだけ落ち込んだかのように見えた。

 

「そうか」

 

「ワガハイは一度ホテルに泊まる、貴様もそうだろう」

 

「ここで別れようか」

 

僕はそれに頷いた。

 

僕は一度学園に寄らなければならないので、必然的に彼女と別れることになる。

それでいいんだろう。

 

「じゃあ、さよなら」

 

「また会えたらいいな」

 

僕は彼女に手を振って、それぞれ逆方向に進んだ。

 

横断歩道で彼女の方向を振り向いたとき、彼女の特徴的な、威厳のある帽子は見えなくなっていた。

 

 

僕はスマホを眺めながら、無事にトレセン学園へとたどり着いた。

 

見渡しても、視界が全部学園の敷地だ。広い。

僕はこんな、巨大な場所に足を踏み入れた挙句、自分のものにしないといけないのかと思うと、怖くなってきた。

 

「あれ? もしかして新入生の人?」

 

後ろを振り返ると、制服を着たウマ娘がいた。

 

「スーツ着てたから先生かと思っちゃった! 背高いね~! 名前はなんていうの?」

 

「え、サードディグリーです……」

 

「私はマチカネマクラウド! よろしく!」

 

僕はマクラウドさんに押されるがまま、学園の敷地内に入れられてしまった。

もう、戻れないんだ。

 

「……」

 

「多分寮に入る手続きのために来たんだよね?」

 

「はい、そうです……」

 

「だったら寮の事務室の方に行けばいいと思うよ」

 

「栗東? 美浦?」

 

「確か、美浦だった気がします」

 

「じゃああっちの方に行けば寮があるよ! 案内しよっか?」

 

「あ、大丈夫です」

 

僕はだんだん怖くなってきて、分からないはずなのに大丈夫と言ってしまった。

 

「そっか! じゃああたしはこれで!」

 

そういってマクラウドさんは校舎の方に向かっていく。

 

僕は美浦寮のある方向へと歩く。

 

スマホの通知が来たので、画面を覗いて確認しながら歩いていると、誰かにぶつかってしまった。

 

「……先生が歩きスマホとは感心しませんね」

 

「……いえ、先生ではなく生徒です」

 

「ほう、でもキミ、歩きスマホはだめだよ?」

 

「……はい、反省します」

 

「私はアンノウンエス。よろしく」

 

「サードディグリー、です」

 

彼女はなんだか不思議な感じを身にまとっている。

アンノウンエスという名前の通り、まさしく未知というべきか。

 

「制服を着てないってことは、手続きに来た新入生ちゃんかな?」

 

「トレセンは良いところだよ、いろいろな人が、ウマ娘がいて、互いに高めあえる。そんな場所さ」

 

「……でも、それはレースを走る人だけ、かもしれませんよ」

 

「ふーん、事情アリ、って感じだね」

 

「僕の目的がレースじゃないってだけです……」

 

「それでも、君の目的が達成されるよう、私も期待しているよ」

 

「じゃあ、またね」と言ってアンノウンエスさんは歩いて行った。

 

彼女から目を離すと、美浦寮の看板が目に入る。

 

僕はそこへ向かっていった。

 

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