Wizard Wars -現代魔術譚-   作:空色悠

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第30話『1日目、終了』

 東帝戦1日目、終了。

 

 

 

【天堂強すぎて草すら生えない】

【はよプロ行け定期】

【アイツだけレギュレーションがおかしい】

【黒乃会長最高】

【他がもうかわいそう】

【斬界がシンプルにチートすぎ】

【神宮寺委員長大好きです】

【チートっつったら藤堂もだいぶよ】

【天音たんはかわいい】

【8号館ごとブッた斬ってた】

【やりたい放題かよwwwwwwwwww】

【ブッ壊れ性能wwwwwwwwww】

 

『……えーハイ、まァ総じてアイツ()がバケモンっつーコトでみんなの意見はほぼ一致してるっぽいケド……』

 

 夜間帯の学園ラジオにて、久世が学内SNSを眺めつつタッグロワイヤルの講評を行なっていた。

 

『どーも掲示板(帝ch)とかからも質問来てるっぽいから……「斬界」について話してこうか』

 

 そうして術式技能指導員の久世は、蒼を最強たらしめるその魔術剣技についての解説を始める。

 

『……まァ結論からいくと、アレはメチャクチャよく斬れる「(セイバー)」だよ。スティーブとかも使ってる飛ぶ斬撃。アレと同じっつーか、ほぼ変わんねーの』

 

 モニターに映し出されるのは、タッグロワイヤルの戦闘ハイライト。蒼が斬界を使用した場面の、リプレイ映像が流れていく。

 

『……ただ違いとしては、メチャクチャ"硬くて""薄い"ってカンジかな。アイツ結構魔力もあるから、それを全部「一点収束」で押し固めて"何でも斬れる斬撃"にしてんだよ。な、シンプルな仕組みだろ?』

 

 久世の口から明かされる、『斬界』の術式としてのメカニズム。

 

 その接触面()は極めて小さく、更にその硬度は極めて高い。驚異的な魔力密度を実現するのは、蒼が持つ膨大な魔力。超薄型かつ超硬質のブレード、それが斬界の正体だった。

 

 その斬撃は理論上この世界に存在している、形ある全ての物質を、またあらゆる術式を切断する事が可能である。その名の通り、まさしく世界をも斬る魔術にして防御不能の一撃。

 

『……だからもう、アレ撃って来られたら基本は詰みっつーかお手上げよ。学生は為す術無しなんじゃない?ガン逃げだよガン逃げ』

 

 プロですら真正面からは受けないだろうね、と補足する久世。

 

『…………えー何なにコメント…… 【S級だろコイツ】あーそうね。今年か来年くらいには行けるんじゃねーの?アイツ。

 

 

 

 あ、そうそう。コレ明日のオープニングで言われると思うけど……今回のトーナメントの優勝副賞で、「S級資格試験」の参加権利もらえるらしいよ』

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

第一学年寮棟、談話室にて。

 

「だあああクソおおお敗けたあああ」

「……久世先生、今サラっととんでもないコト言わなかった?」

 

男子寮と女子寮の中間に存在するこの交流スペースで、日向が唸り声を上げながらテーブルに突っ伏していた。彼の横には天音、向かいには啓治と沙霧が座っており、今日のタッグロワイヤルでの戦闘を振り返っている。

 

その後ろでは創来・陣・凪が、ソファーに腰掛け久世の学内配信を視聴していた。

 

 

 

「オーイ春川お疲れェーィ。如月兄弟との1対2、相当盛り上がってたぜ〜?」

「おーあんがとなー……」

「んな落ち込まなくてもいんじゃない?どーせ天堂先輩相手じゃ、誰が戦っても同じよ同じ」

「うるせーェそれでもこっちは勝つ気だったんでェーィ……」

 

通路を行き交う多くの生徒達の中、数人が日向達の健闘を讃えるように声を掛けて行く。しかし蒼の斬界に完全敗北し、日向はすっかり意気消沈してしまっていた。

 

「ったく……明日からはトーナメントも始まるんだぞ。いつまでも引きずってねェで、さっさと切り替えろ」

「いや……別にヘコんでるワケじゃねんだ。ただ……」

 

気落ちしているような日向に啓治が流石に声を掛けるが、予想だにしなかった角度からの返答が返って来る。

 

 

 

「……折角"新技"作ったのに、使うの忘れてたんだッ……!!」

「バカか。何だそのクソ下らねェ理由は」

「本戦まで無駄に手の内晒さずに済んだんだから、寧ろ良かったでしょ」

 

戦いに没入していたが故に失念していたが、その"奥の手"を使えば勝てる可能性もあった事を悔しがる日向。負け惜しみだと啓治は一蹴するが、天音は敗因を分析し次に繋げるべきと前向きなアドバイスを掛けていた。

 

 

 

「終わった事でいつまでもグダグダ言ってんじゃねェよ」

 

その時背後から声を掛けられると同時に、日向が後頭部を叩かれる。そこに立っていたのは、大浴場から戻って来ていた伊織だった。

 

「あの人に本気で勝とうとしてんなら、今そんなコト考えてても仕方無ェだろうが」

「それはそうだけどなー……」

「……あ、見て春川君」

 

伊織の発破にも煮え切らない声を返す日向だったが、端末を開いていた沙霧がふと口を開く。

 

「今日のタッグ戦で、活躍した人達が取り上げられてるみたい。みんなも載ってるよ」

「「「んん?」」」

「何ナニ、ボクにも見せてーや」

 

そこに表示されていたのは、新聞部の学内SNSによる東帝戦のニュース記事だった。日向と天音と啓治に続き、ソファーから立ち上がって来た陣も画面を覗き込む。

 

【御剣・藤堂ペア快進撃】

『一条・九重・湊を打ち破る活躍を見せた御剣・藤堂ペア。巧みな連携による遠近両対応戦闘で強敵達と渡り合った。』

【風雲児春川日向】

『前半戦で如月兄弟をも圧倒する大暴れを見せた話題のルーキー。最終盤のVS天堂戦では御剣・藤堂との連携も披露した。』

【天堂蒼、三連覇へ始動】

『盤石の強さでタッグロワイヤルを制覇した絶対王者。本戦トーナメントでの三年連続優勝に向け最高の状態でスタートを切った。』

 

 

 

「日向クンに、伊織クンと天音チャンの三人が注目されとるみたいやなァ。一年(ボクら)の中では」

「クソ……俺のはねーのか」

 

啓治がやや不服そうな表情を見せる中、ホログラム画面を下へとスクロールしていく陣。SNS上では今日の感想戦が展開されているだけでなく、明日以降に始まる本戦トーナメントの優勝候補や勝敗予想も飛び交っていた。

 

大本命として蒼、対抗馬には雪華や亜門の名が挙げられていたが、いかんせん最有力候補が飛び抜けている為言及すらあまりされていない。しかし一方で勝敗予想は、日向や伊織がベスト8など上位に食い込む可能性が取り上げられており盛り上がりを見せていた。

 

「アンタも載ってるわよ、御剣」

「そうか……興味ねェよ」

 

日向の隣に座った伊織に天音がそう伝えるが、当人はさしたる興味も示さずコップに入った水を呷っている。その時。

 

 

 

「あの……御剣君」

 

声を掛けられた伊織が振り返ると、そこには同学年に見える三人の女子生徒達が立っていた。

 

「今日の戦い、本当に凄かったです……!」

「明日も頑張って下さい……!」

「あー……そいつは……ありがとな」

 

どうやら彼女達は、今日の伊織の活躍を目にして心を引かれたらしい。面食らいつつも伊織が淡々と礼を返すと、応援の言葉を掛けた三人は嬉しそうにその場を後にしていた。

 

 

 

「…………え、なに今の」

「知らねェよ……」

「………………」

「……何だ。言いてェコトがあるなら言え」

「っ…………別に」

 

日向は唖然とした表情で口を開けており、天音は少しだけ不機嫌そうに伊織から顔を背ける。

 

「まァ伊織クン、愛想とガラはホンマに悪いけど顔はエエもんなァ」

「うるせェよ」

「オマケに師匠(天堂サン)兄弟子(スティーブサン)も女子人気高いし、案外モテるのも当然っちゃ当然……って啓治クンどないした?キミそない般若みたいな顔しとったっけ」

 

陣が持て囃すようにそう話していたが、ふと隣に座る啓治の異常に気付いた。血涙が吹き出さんばかりに血走った目、唇は今にも噛み千切られようとしている。

 

「殺す……お前だけは100殺す……」

「清々しいくらい逆恨みするやん。ガチ僻みすぎて普通に引くわ」

「だァまれ黙れェ!!どう考えてもこのクソ仏頂面がレディに人気なんざ何かの間違いだろォがァ!!俺は夢でも見てんのか!?」

「勝手に言ってろバカ……」

 

勢い良く立ち上がりながら啓治が叫んでいたが、伊織は一切取り合う様子も見せない。

 

「ちェー。俺も結構今日の戦い目立ってたと思うのになー」

「はは……そうだね……」

 

陣が啓治の目を覚ますべく顔面を張り飛ばしている中、日向は何の気無しに呟くが沙霧は乾いた笑いで応える。一方で創来は明日に備えて、凪にいくつか質問していた。

 

 

 

「天堂蒼の『斬界』、実際に喰らってみてどうだった?」

「マジでヤバかった。アレに真っ向勝負仕掛けんのはただのバカだよ」

「「聞こえてんぞ」」

 

日向と伊織が凪に言い返すが、その時談話室のモニターが突如切り替わる。そこには彼等のよく知る人物の姿が映し出されていた。

 

 

 

『よーォ諸君久しぶり。()()()はもう夜か。初日終了お疲れさん』

「センセーじゃん。今どこで何してんの?」

 

声の主は、日向達一年生の担当教員である桐谷 恭夜。

 

『ちっとヤボ用でな。今は「本部(イェルサレム)」だ。所でどうだったんだ?タッグ戦は。お前ら全員蒼にノされたんじゃねーのか?』

「もう知ってるクセに……どうせ久世先生辺りから逐一聞いてるんですよね?」

 

恭夜は『魔術師協会』の本部が存在する、イスラエルへと出向していた。今日のタッグロワイヤルについて聞くと、天音から刺々しい声が返って来る。

 

『ハハ、その調子だと随分こっぴどくやられたみてェだな。まァ気にすんなよ、あと二年もすりゃお前らだってアレくらいには戦えるようになる』

「マジかよ……!?」

 

無茶にしか聞こえない恭夜の言葉だったが、日向や創来は少し楽しそうに笑っていた。

 

『で……明日からは本戦だろ?お前ら(一年)の中からは何人出るんだ?』

「……俺達は出ますよ」

「うん」

「俺も出場します」

「同じく」

 

そこで恭夜が彼等にそう問い掛けるが、応えたのは伊織と日向、そして啓治に創来の四人。

 

『おーそうか。お前らは出ねェのか?』

「私は後衛として連携戦闘でベストを尽くせたので」

「私はちょっと、1対1に自信が無くて……」

「ボクは今日だけで十分SWP(ポイント)稼げたし、満足したからもうエエかなーて」

「みーつー」

 

天音・沙霧・陣・凪から各々の意思を聞き終えると、恭夜は一つ頷き日向達へと口を開く。

 

 

 

『成程ナルホド、OK分かった。んじゃ、明日から本戦を勝ち上がる為に……三つ、オマエらにアドバイスを授けよう。言わば、魔術戦闘の"極意"ってヤツだ」

「「「「極意?」」」」

 

日向ら四人の出場組は、恭夜の言葉に興味深そうな目を向けつつそう聞き返した。

 

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