僕は投獄された。その事について論じるつもりもなければ、どうでもいい。たった千年の間、じっとしていればいいのだからそんなに難しい話でもないですしね。でも、やっぱり退屈に思うこともあったが、そういう時はこの刑期が終わった後のことを考えるようになった。
『どこかに家でも建てて隠居でもしようかな』とか『後輩たちの顔も見て見たいな』とか考えることは色々とあった。
そしてそんな僕もやっと刑期が終わって、お天道様の下に突っ立っている。久しぶりに生きていると感じることが出来る。今までは暗闇の中での生活が当たり前すぎて、千年振りの太陽の日の光に少し圧倒されてしまうけど、それでもいいんです。
「やっと僕は生きている!」
周りの人たちは奇怪な目を僕に向けているが、そんなことは気にならない。だって僕は久し振りに自分の命に感謝することが出来ているのだから。
そして十分ほど突っ立っているとさすがに飽きてきた。
「じゃあ、どこに行きましょうか」
俺は色々と考えた末に街をぶらぶらと目的なく歩いてみることにした。さすがに千年前とは見える範囲でも色々と違うみたいですしね。逆に自分の知っている者がないと言ってもいい。
そこら中から良い匂いがするので何かを食いたいがお金がない。これだとさすがにキツイ。
「出る時に少しぐらいもらっておけばよかった」
さすがに無一文でこんなところに放り投げられても何もできない。まずはどこかで働き口でも探そうかなぁと考えていると後ろから肩を叩かれた。
振り返るとそこには…四十代ぐらいの男性が立っていた。どこかで見たことあるような顔だけど思い出せない。
「どうしたんですか?」
「いや、キミが食べたそうな顔をしてあそこの団子を見ているもんだからさ」
「食べたいけど…今はお金がないんです。また出直します」
それから僕はその四十代の男こと京楽という死神に団子を奢ってもらった。本当に感謝だ。
「それにしても何で見ず知らずの僕に団子を奢ってくれたんですか?」
これだけはずっと謎だった。少なからず僕は接点もないような人に団子を奢るようなことはしないと思う。だからこそ、そんなことをしら理由を教えて欲しい。まあ、僕としては有難いが。
「…キミは美味しそうに団子屋さんを見ていたのもあるけど、やっぱり一番は知っている人に似ていたからかな」
「そんなに僕と似ているんですか?」
「うん。僕もさすがに記憶が曖昧になってきているんだけど。キミは似ている。もう会うことはないと思っていた人に」
その話し方だとその人は死んでるのかも。だとしたらこれ以上、ズカズカと入って行かない方が得策。変に突っ込み過ぎると相手を不快にさせるだろうし。
「そうなのか」
そして団子を食べてから僕は京楽と別れた。別れる前に「この恩はいつか必ず返します」と伝えた。さすがに恩を受けたまんまではいられないですしね。
その後は色々と見て回ることにした。やっぱり僕が暮らしていた頃とは変わっていた。
「実家に帰っても誰もいないだろうし。いたとしても入れてはくれないだろうなぁ…」
さすがに投獄されるような男を笑顔で迎えてくれるとは思わない。それにもしかしたら忘れられているかも。
そんなことを考えながら歩いていると…目の前から一人の女性が歩いてきた。顔立ちは整っていて黒髪。僕はどこかで見たことあるなぁと思ったもののそれが誰なのかは思い出せなかった。
すれ違う時に「おかえりなさい」と聞こえた気がするが多分、気の所為だと思う。
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