生徒会。
学校生活を送るうえでの課題や問題点の解決を主な目的とし、役員選挙によって選ばれた生徒が運営する自治組織だ。しかしその大層な肩書と異なり、大抵の学校では生徒会役員に出来ることなどたかが知れており、実際には教師の代わりに雑務を行ったり、任期の間に1回2回学校側になにか改善案を要求する程度。
生まれてまだ十数年の子供に、学校を改変できるほどの権力が与えられるわけがない――。
それは、この高度育成高等学校以外の話だ。
私のいるこの高度育成高等学校の生徒会は、他の学校とは一線を画す強大な権力を持っている。
現生徒会長としてこの学校のトップに君臨している堀北学は、歴代で最高の生徒会長と称されるほどの実力を有しており、それに由来する、私では想像もつかないような力を持っている。
次期生徒会長の本命であり、入学当初はBクラスだったのにもかかわらず、Aクラスへの下克上を成し遂げた副会長の南雲雅もまた、その力で2年全体を支配することで頂点に立った。
もちろん、この2人が生徒会役員だからこれだけの功績をなし得たわけじゃない。けれど、こんな歴史に残りかねないような怪物が集まるのがこの学校の生徒会――
私のもう1つの戦場なのだ。
◇
私たちCクラスに突如告げられた中間テストの実施。赤点を取れば、問答無用で退学というその重すぎる処罰に、クラスは一時阿鼻叫喚と化した。平田君と勉強会を開いたり、堀北さんが赤点候補者向けの勉強会を開いてくれたことで、Cクラスは退学者を出さずに済んだだけでなく、学年順位1位を獲得するに至った。
その祝勝会が行われたのがつい昨日のこと、今はその翌日の放課後で、私は今生徒会室の前にいる。
中間テストを乗り切るために、生徒会役員から過去問を入手することに決めた私は、生徒会長であり、堀北さんの実の兄である堀北学と出会い、紆余曲折あって生徒会に勧誘された。
受けるかどうか少し迷ったけれど、私は生徒会に参加することに決めた。今日私は、正式に生徒会役員となるのだ。
「失礼します」
時間になったので扉を開け、生徒会室に踏み込む。
以前ここに来たときは橘先輩しかいなかったので、ただその堅苦しい光景だけが私を歓迎した。
でも今は違う。
生徒会長の席に座る堀北会長を中心に、生徒会役員が勢揃いする生徒会室は、私が感じたこともない厳粛さに満ち溢れた空気を孕んでいた。
そして視線――視線を感じる。
期待、好奇、疑心、人によって込められた感情は違う、けれどもその全てが私を値踏みする視線。
「よく来たな。黒華梨愛」
私を歓迎する堀北会長は席を立つと、そのまま私の前まで歩み寄り、右手を差し出してきた。
「ようこそ生徒会へ。歓迎しよう」
「はい、よろしくお願いします」
私も右手を差し出し握手に応じる。堀北会長の手は男の人らしい力強さのわりに綺麗で、そして最近どこかで感じた温もりを持っていた。
ああ、やっぱり兄妹なんだ――。
「生徒会役員はこの場にいるメンツで全員だ。手続きの前に、挨拶だけでもしておけ」
そう言って一歩身を引いて、私の背中を少し押す。
たかが自己紹介1つに物怖じする性格ではないと自負してるけど、これはさすがにちょっと緊張するかも。
「はじめまして、1年Cクラス、黒華梨愛です。精一杯やらせていただきますので、よろしくお願いいたします」
丁寧な挨拶と主にしっかりとお辞儀をする。格式ある儀式は守らねばならん。
生徒会役員として、ひとまず私がとるべき選択肢、それは積み重ねだ。
信頼、情報、経験。
生徒会としても、生徒としてもどれも足りていない私は、時にはプライドを捨て去ってでものし上がる必要がある。誰彼かまわず生意気言って調子に乗るのは愚の骨頂。表向きだけでも従順で真面目な生徒を演じて敵は可能な限り減らす。
今の段階で権力争いに首を突っ込むのは論外。整備も済んでいないうえに乗りなれてもいない車で交通事故を引き起こすことはない。
パチパチと拍手が鳴る中、1人の男子生徒が私に近づいてくる。すらっとした体格をした金髪の男子生徒、口元にだけは笑みを浮かべているけれど、目はまったく笑っていない。間違いなく、この男が南雲雅だ。
あと蛇足かもしれないけど、めっちゃイケメンだ。
「はじめまして、だな黒華。お前の話は聞いてる、最初の1か月でDクラスをCに上げたそうだな」
堀北会長、橘先輩、南雲副会長の3人以外の先輩方が驚愕に目を見開く。私のことを知らなかったのか、Dクラスが下克上を成し遂げたのを知らなかったのか、その両方か。
「そのうえ今回の中間テストでもCクラスは学年1位だそうじゃないか。今年の1年はAクラスも大概優秀だが、お前らはまさにダークホースだな」
中間テストの結果が張り出されたのは昨日のことだけど、もうその情報を掴んでいるらしい。随分と熱心なことだ。もしかしたら私が2年の先輩に接触して噂の流布を頼んだのも知っているかもしれない。
「ありがとうございます。ですがまだ他クラスと本格的にやり合ったわけではないですからね」
「そうかもな。だがもともとDクラスの生徒が入学早々ここまで名を上げることはない」
そうして私の前までやってくると、一瞬すぐそばの堀北会長に目線を切った。
「だがな黒華。俺にとっちゃお前のその功績ももはやどうでもいいと言ってもいい」
「さすがにその評価は初めて聞きましたね」
「もちろん評価していないわけじゃない。お前は正しく生徒会にふさわしい人間だ。けどな――」
堀北会長を真っ向から見据え、ニヤリと笑う。
「お前が堀北会長直々のお誘いでこの生徒会にやってきたこと。それこそが最も重要なんだ」
最初に南雲副会長の話を聞いた時は、てっきり堀北会長などなめくさった生意気な生徒を想像していた。
けれど、今こうやって堀北会長に顔を向ける南雲副会長の目には、確かな敬意が宿っている。まるでライバルに勝ちたくてしょうがない子供のような目だ。そしてその目を私に戻し、右手を差し出してくる。
正直意外だ、てっきり左手を出してくるかと思った。
「副会長の南雲雅だ。よろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
私も正面から握り返す。
南雲副会長を皮切りに、他の役員とも個別に挨拶をする。橘先輩とも改めて握手し、全員に紹介が終わったところで、堀北会長がまた口を開いた。
「お前には早速今日から働いてもらうことになるが、まだ手続きが残っている。応接室に移動しろ」
了承して応接室の扉を開く。テーブルには数枚のプリントが準備してあった。生徒会役員の連絡先や、規則が書かれたプリントなど。手続きと言っていたけど私が何か書かなきゃいけない資料は何もなさそう。適当にプリントに目を通しながらソファに座って会長を待っていると、少し遅れて橘先輩と堀北会長が入ってくる。外ではガチャガチャ扉が開く音がするので、向こうはもう解散したらしい。
「待たせたな。お前には早速仕事を頼みたい」
「その様子だと、生徒会本来の仕事ではなさそうですね」
「その通りだ。この生徒は知っているか?」
テーブルの上のプリントの内ある1枚を私の前にスライドさせてくる。私が過去問を入手した日に目にした、生徒会を志望する入部届だ。けれどそこには私とは別人の名前が書かれていた。
「一之瀬帆波さん、ですか。名前は知っていますが面識は――」
ありません、と言おうとしたけど、よくよく考えれば昨日掲示板の前でたまたま遭遇した。まぁ会話らしい会話すらしてないので、知っているのは顔と名前、そしてBクラスのリーダー的立場にあることだけだ。
「まぁ顔ぐらいは知っています。彼女がどうかしましたか?」
「お前たち1年の中に、生徒会を志望した生徒が2人いる。Aクラスの葛城と、Bクラスの一之瀬だ」
「2人ともいませんでしたけど」
「一次面接で落としましたから」
私の疑問に橘先輩が答える。
葛城君も一之瀬さんも、各クラスのリーダーを張ろうとするような人なんだから、優秀な生徒であるのは間違いないはず。それでも落としたのは単純に堀北会長のお眼鏡にかなわなかっただけじゃないということだ。
「葛城はあれ以来生徒会を志望するようなことはなかったが、一之瀬は生徒会に強いこだわりがあるらしい。あれからまた面接の申し込みがきている」
「熱心なことで大変結構では? 受け入れてあげたらいいじゃないですか」
私としても他クラスとはいえ、同性の生徒会仲間ができるのは素直に嬉しい。
「おそらくはそうなるだろうな。先日南雲が一之瀬とコンタクトを取ったという情報が入った。ヤツはなんとしてでも一之瀬を生徒会へと入れるはずだ」
つまりは私と同じだ。1年の情勢を把握するための手駒を南雲副会長も欲している。一之瀬さんの生徒会入りはもはや止められないだろうな。『1年の生徒会が1人だけでは、堀北会長が退いてから困る』とでも南雲副会長が言えば、堀北会長も一之瀬さんの生徒会入りを認めるしかなくなる。
「私に任せたい仕事とやらは、一之瀬さんが南雲副会長の手中に落ちるのを防ぐことですか」
「そうだ、頼めるな?」
元より私に拒否権などない。
頼める『か』ではなく『な』であるところに、堀北会長が今回の件をどれだけ重く見ているかがわかる。とはいえ簡単にはいかなさそうなのが私の本音だ。やりようはあるけれど、一之瀬さんの性格如何によってはかなりの長丁場になる可能性がある。
「……了解しました。やらせていただきます」
真っ先に浮かんだのが南雲副会長の悪行を一之瀬さんにそれとなく知らせることだけれど、このアイデアはすぐに消し去る。堀北会長にスカウトされた私が、堀北会長に落とされ、南雲副会長に助けてもらった一之瀬さんに対して南雲副会長の悪口を吹き込むなど、どんな逆噴射が起きるか想像もつかない。
重要なのは感づかれないことだ。人は自分が操られていることに気づくと大抵の場合強い不快感と抵抗感を覚える。私が露骨に一之瀬さんに近づけばまず警戒されるため、先に外堀から――具体的にはBクラスの面々と先に仲良くなり、私の流す噂や情報が一之瀬さんに自然と浸透するようにしないといけない。どうも今のところただの仲良しクラスらしいし、不可能ではないはず。
「にしても、最初の仕事からコレだと、ハードとは言いませんが、馬車馬のごとく働くことが確定したような気がして嫌になりますね」
私の愚痴に堀北会長が薄く笑う。
「やめたくなったか?」
「さすがにそこまでは。忙しくなるのはわかってましたしね」
ひとまず櫛田さんに頼んで適当なBクラスの生徒を紹介してもらおう。別に無理に南雲副会長の悪事を流布する必要はない。必要なのは一之瀬さんが南雲副会長と堀北会長、どちらにつくかを私がコントロールできる状態に持っていくことだ。場合によっては強硬手段も――いや、それはさすがにやめとこう。
南雲副会長と争い合うのか、堀北会長を裏切るのか。
どちらかはわからないけれど、私がこの2人の戦いに巻き込まれていくのは、まだ先の話だ。
御清覧ありがとうございます。
というわけで主人公が正式に生徒会入りです。
生徒会抗争についてですが、原作とは別に6.9章という形でエピソードを書く予定です。ちなみにその時期には生徒会選挙は終わってますので、生徒会内部での争いというより、2年で行われる特別試験に黒華が外部から介入するという形を取りたいと考えてます。つまり原作にはない特別試験を考えないといけません。やっぱ生徒会には入れないほうが良かったとちょっと後悔しております。原作に記述がない部分は妄想で書くしかないのでどうしても時間がかかるのだ。
そんなわけで? 今回の後書きは一之瀬が生徒会入りした時期と、7月のポイント変動についてです。
◇
原作4.5巻を確認したところ、生徒会に入る場合は4~6月末までの間か、10月中の面接にパスすることで生徒会に入れるようです。ちなみに黒華は面接を受けたことに『なってます』 まぁ南雲副会長も堀北会長直々にスカウトしたような生徒の生徒会入りを反対したりしないでしょう。むしろ率先して生徒会入りを催促するはず。
一之瀬は8月にはすでに生徒会入りしているようなので、南雲副会長がよほど強引に一之瀬を入れたのではないのなら、4~6月末までの間に入ったことになります。
つまり暴行事件の時にはすでに生徒会に入ってたんですね。
5月1日に担任の星乃宮先生に生徒会入りについて相談しているので、中間テストの時期は勉強に時間を費やしていたとすると、一之瀬が生徒会に入ったのは6月中になりそう。特に1年の6月はよう実でもほぼ完全な空白期間でしたからね。
次に7月のポイント変動ですが、原作の記述はこんな感じです。
Dクラス:0cl→87cl(+87cl)
Cクラス:490cl→492cl(+2cl)
Bクラス:650cl→663cl(+13cl)
Aクラス:940cl→1004cl(+64cl)
んで2巻冒頭の記述にこんな文があるんですよね。
『Dを除く全てのクラスポイントが、先月と比べ100近く数字を上昇していた』
『他クラスの連中はお前たちと同等かそれ以上にポイントを増やしているだろ。これは中間テストを乗り切った1年へのご褒美みたいなものだ。各クラスに最低100ポイント支給されることになっていただけにすぎない』
……。
考えられるのは、6月に発表されたクラスポイントでは、A~Cクラスはそれぞれ100ポイント近く落としていて、7月にご褒美がもらえたことでクラスポイントが回復したとか。一之瀬も2巻で『ポイントはどうしても目減りする』という発言をしていますからあり得ない話ではないですし、それなら記述と矛盾もしません。
つまり、
Cクラス:490cl→390cl→492cl(+102cl)
Bクラス:650cl→550cl→663cl (+113cl)
Aクラス:940cl→840cl→1004cl(+164cl)
※括弧内は6月から7月へのポイントの推移
これなら話が通りますね。Aクラスだけポイントがやたら増えてますが、原作にもそういう記述がありますし、矛盾もありません。
これだけだとAクラスがSシステムの全貌が明らかにされた後に1か月で100ポイントも落とすんかいとも一瞬思いましたが、ポイントの減少を60くらいだと見積もっても
Aクラス:940cl→880cl→1004cl(+124cl)
という感じで、落としたポイントも最小かつ、得たクラスポイントも最大という結果を導けます。
んで次に中間テストが発表されたのは5月なのに、なんでご褒美が7月なんだよっていう問題ですね。
中間テストの日程ですが
1日から1週間後に平田が勉強会を開始。翌日に堀北勉強会開始&破綻
それから何日経ったのかはわかりませんが、約半月経った日に堀北勉強会再開。この時点で中間テストまで2週間とのことでしたので、テスト当日はおそらく6月だったと思われます。
ちなみにこのことに気づいた時には一章をすでに書き終わってましたので、本作は早速矛盾が生じることになりました。致命的なミスではないのが幸いでしたワ。
まぁこういう理由でポイントがもらえるのが7月になったのだと思われます。
◇
二章を書こうと思い、原作を読み返した時「!?」状態になったのでこうやって整理しました。このまま設定をその場その場で見つけながら書き続けてもまたどこかで必ず矛盾すると思われます。
私はよく知りませんが、『ダンまち』という作品の二次創作に時系列などをまとめた資料があるそうですね。私はSS集は持っていませんのでそこはカバーできませんが、一応最新刊まで持っていますので需要があれば似たような設定集を勝手に作って問題などなければ公開してみようか考え中です。具体的な内容としては特別試験のルールや各クラスにいる生徒の整理とかですかね。他にも今回の中間テストや無人島試験などの詳細な日程と出来事なんかでしょうか。せっかくハーメルンにはアンケート機能もあることですので活用してみようかと思います。投稿は遅れる可能性が高いですが、作ってほしいという意見が多数でしたら作ってみます。
◇
長くなりましたが、今回の後書きはこれで終わりです。
評価や感想、大変励みになっております。これからもどうぞよろしくお願いします
では、アデュー!
よう実の詳細な時系列や特別試験のルール、設定などをまとめた資料を書くかどうか(詳細は1章幕間の後書き参照)
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書け
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是非書いてくれ
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投稿が遅れてもいいので書いてほしい
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どちらでもいい
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投稿が遅れるなら書かなくていい
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別に書かなくてもいい
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書くな
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閲覧用