東方双交伝~裏切り者たちの幻想入り~《更新停止》 作:アルシェス
「つまり、外の世界から忘れ去られた存在が流れ着く場所であり
俺の様に偶々紛れ込んでくる人間は[外来人]と呼ばれると」
食事がてら、千裕は矢守面々から幻想郷の説明を受けていた。
三日寝ていただけで、すでに彼は走り回れるほどにまで回復している。
[彼等]は心臓を貫かれても再生できるほど回復力を持つ。
一日寝ていればもう動けるのだ。
「そうゆうことさ、物分かりが良くて助かるよ」
実施に目の前で幻想郷特有の決闘法である[
目の前で繰り広げられたのだ、信じるしかない。
「その、俺は帰れるんですか?」
歳が近いことも有るので、早苗とは名前で呼び合う仲になったが、
神奈子と諏訪子はさん付けの季語口調で話している。
二人にはタメ口でいいと言われたが、本人なりのけじめだ。
「博麗神社に行けば帰れるさ、早苗、案内してやりな」
「わかりました」
「すいません、何から何まで」
「気にすることないさ」
居心地の良さを感じつつ、千裕は味噌汁をすする。
(いい場所だな)
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その後、千裕と早苗は博麗神社に向かって歩き出した。
普段早苗は飛んでいくのだが(幻想郷の実力者は例外無く飛べる)
今回は千裕に合わせて徒歩での移動だった。
本当は、千裕も飛行可能なのだが。
その為、普段は直ぐに到着する距離も、
人里で昼食をとる休憩時間を必要とした。
そしてやたら長い石階段を上っていったその先に、
目的地である博麗神社があった。
(結構きれいだな)
立派な趣で、それなりに手入れされているようだ。
「霊夢さ~ん!いらっしゃいませんか~!?」
早苗が神社の主を探すが、全く出てこない。
(賽銭入れとくか)
[喰った]能力で作った異空間の倉庫からコッソリ財布を取り出し、中身を確認する。
(あ、小銭が無い)
手持ちの財布は札で厚くなっているが、現在小銭が無かった。
(まあいいか)
千裕は千円札を取り出し、賽銭箱に入れる。
「今、幾ら入れたの?」
振り向くと、早苗と同じ脇が無い巫女装束に身を包み、
長い黒髪を赤いリボンでポニーテールにし、
顔の両脇の髪を一房赤い飾りでまとめた少女が立っていた。
[楽園の素敵な巫女]
千裕の両腕を掴んで激しく揺さぶり、霊夢は更に問い詰めた。
「言いなさい!幾ら入れたの!?」
「霊夢さん!落ち着いて!」
「その前に離せ!酔う!」
早苗が後ろから羽交い絞めにして揺さぶりが弱くなったと同時に、
千裕は掴んだ手を振りほどく。
「千円、外の世界の金だけど」
聞くや否や、霊夢は目を輝かせた。
「ありがとう!外のお札って高く売れるのよ!」
この姿を見て、霊夢を清い人物と思う人間は居まい。
(早苗、この巫女さん何時もこうなのか?)
(確かにお賽銭には執着しますね)
(いいのかよ、それ……)
常識に囚われてはいけない世界だとは言え、千裕は頭痛を覚えた。
すると、上空に気配を感じて見上げる。
そこにはいかにも[魔女]というべき恰好で箒にまたがった金髪の少女がいた。
[普通の魔法使い]
「へぇ、ここに賽銭入れる奴なんて珍しいぜ」
「あんた達が入れないだけでしょう」
冷ややかな視線を向ける霊夢を気にせず、魔理沙は千裕に近づく。
「私は霧雨魔理沙だ、あんたは?」
「亜守千裕、外来人だ」
「物好きだなアンタ、ここに賽銭入れるなんて」
「何よ、ウチには賽銭入れる価値はないって言いたいの!?」
「最低限の礼儀だと思うけどな、まあいい
霊夢さん、俺を元の世界に戻してくれ」
これ以上は不毛だと判断した千裕は、霊夢にお願いする。
「霊夢でいいわよ、今回はお賽銭貰ったし、張り切っていくわ」
霊夢が大幣(お祓い棒)を振るうと目の前に素面に小石を放り込んだような波紋ができる。
幻想郷と外の世界を隔てている[博麗大結界]に、一時的に通り道を作ったのだ。
結界の管理と、外来人を帰還させるのは博麗の巫女の役目である。
「まっすぐ行けば帰れるから」
「わかった、早苗、短い間だったが世話になった、ありがとう」
「い、いえ…気にしないでください」
千裕は早苗に礼を言い、波紋の中に消えていった。
「………」
早苗はその姿を、最後まで名残惜しそうに眺めていた。
「なんだ早苗、あの兄ちゃんのこと好きだったのか?」
「え!?違いますよ!」
魔理沙がからかい、早苗が初心な反応を見せる。
しかし、これで終わるような一件ではなかった。
「あれ?」
「「「え?」」」
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~二時間後~
「は~、は~」
「なんといか、すまん」
その後何度も手順を間違えないまま繰り返したが、
何故か千裕は戻ってきてしまう。
勿論本人の意思は無関係だ。
「は~、なんで帰せないのかしら?」
千裕が取り出したペットボトルの緑茶を受け取り、霊夢は賽銭箱の横にへたり込んだ。
(アレ?ペットボトルなんてどこに?)
早苗は一人、千裕が何処にお茶をしまっていたのか気になった。
「……[外の世界]の地図は無いか?」
少し考え、千裕が霊夢に問う。
「あるわよ」
霊夢がどこからか地図を持ってきて差し出すと、
千裕は受け取り、さっそく広げてみる。
そして端から端まで眺め、畳んで返した。
「原因がわかった、パラレルワールドだ」
「それって、SFのですか?」
「そうだ、俺の住んでいた都市が無かったんだ、結構古くからあるはずなんだが」
「何だ?そのぱられるなんたらって?」
「外の世界の言葉?」
馴染みない言葉に、霊夢と魔理沙は首をかしげる。
「平行世界とも言われてる存在、噛み砕いていうというと
[もしも]が現実になった世界だ
例えば霊夢と魔理沙の立場が逆の世界、
早苗が博麗の巫女をやってる世界、
幻想郷が科学の為にある世界、
もっといって、幻想郷が必要なかった世界とかな」
「それって、ぱられるわーるどは無限に存在してるってこと?」
「ああ、幻想郷と外界をある程度行き来できるのは
結界という壁で囲ってるだけで地続きの同じ世界だからだろう?
だが、全てを受け入れる幻想郷と違って、外界では俺は完全に異物だ
だから弾かれてここに戻ってきてるんだと思う」
自分なりの仮説を説明した千裕は、がっくりと肩を落とした。
「となると、紫に頼むしかないわね」
「紫?」
「八雲紫、この幻想郷を作った妖怪の賢者よ
アイツの力なら貴方を戻せるでしょうね
でも気まぐれで神出鬼没が服着てるようなのだから何時会えるかわからないの
今はモロ事情で安易に呼ぶ手段が使えないの」
千裕は顔を押えて俯くのだった。
「モロ事情?」
魔理沙が疑問を口にする。
「最近、結界を得体のしれないのが潜ってくるのよ
探しても見つからないし、害はないみたいだから気にしてなんだけど
やっぱり君が悪いのよね、だから結界を弱めて予防方法が使えないのよ」
誰も気づかなかった、これが後に重大な結果につながると。
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「……アレ?ここはいったい?」
薄暗い部屋の中、一人の少年が辺りを見渡す。
少しだけ青みがかかった黒髪に少し幼く見える童顔。
身長も体格も平均的で、どこにでもいそうな姿をしている。
彼は宇宙ステーションで、敵の指導者的存在と己の先輩の一騎打ちでの
戦いを邪魔させないために、仲間と共に向かってくる敵を食い止めていた。
しかし気が付けば薄暗い部屋の中、彼は混乱していた。
「どうなってるの?[オルクス]の力?それとも[ソラリス]とかの幻?」
「
彼の右肩に、20cmほどの小人が乗っていた。
白い髪に青い目をしている以外は、小樽と瓜二つの姿をしている。
ホルス、小樽と共生している存在だ。
「とりあえずドアを……開かない」
「う~む、原理は不明だが、中からは開けられないぞ」
「どうしようかね」
二人揃って首を捻っていたその時。
「お兄さん誰?」
後ろから声を掛けられた。