盗作・魔法少女マジカルかりん   作:ノッシーゾ

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 これにて完結です。
 当初の予定より、だいぶ長くなってしまいました。
 にも関わらず、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。


第二十八話 ある漫画家

 

 カルーア・ノイジ

 話題の女子高生漫画家。

 半年前に世界を席巻した名作『盗作・魔法少女マジカルかりん』の作者アリナ・グレイに才能を見出され、同作に唯一のアシスタントとして参加。

 同作完結後に連載を開始した『芸術の魔女』は『盗作』に続く、業界を牽引する作品として期待されている。

 

 今回は名作『マジかり』完結から半年を記念して、同作の魅力を味わい直すために、消息を絶った作者に代わり、お忙しい中わざわざ時間を作っていただいた。

 

 

 

 ────こんにちは、カルーア・ノイジ先生。ええと、いきなりですが、何と呼べばよろしいですか? 

 

 

 こんにちは、よろしくお願いします。

 ええと……呼び方、ですか? 

 とくに拘りはないですけど、そうですね。

 じゃあ「ノイジ」とかでお願いします。

 このペンネーム、気に入ってるので。

 

 

 ────わかりました。では、ノイジ先生と呼ばせていただきます。ちなみに、このペンネームって何か由来があったり? 

 

 

 ああ、はい。

 もちろんありますよ。

 実は、アリナ先生が私の名付け親なんです。

 

 

 ────へえ、あのアリナ・グレイが。ノイジ先生とアリナ・グレイの師弟関係は有名ですが、『漫画家とアシスタント』という以外にも、何か交流があったりするんですか? 

 

 

 いえ、アリナ先生と私との関係は、もう完全に『漫画家とアシスタント』です。

 年が近いからって、どこかに遊びに行くとか、そういうのは全くないです。

 私がアリナ先生をどう思ってるのかって言われると

 

「この世界の最高神」

 

 なんですけど。

 関係性って言われると……。

 アリナ先生は、あんまり私のこと気にしてないんじゃないかな(笑)

 

 

 ────「最高神」ですか(笑)それだけ漫画家として尊敬なさっている、と。

 

 

 はい、それはもちろん。

 あと、ちょっと聞いていただきたいんですけど、わたし一時期自殺しようとしてた時期があるんです。

 漫画家になる才能がないから、生きてる意味ないって。

 それで、ビルから飛び降りよう。

 でも漫画が好きだから、最後に一冊だけ漫画を読もうって。

 まさにその時に手に取ったのが『盗作・魔法少女マジカルかりん』なんですよ。

 

 

 ────それは運命的ですね! 

 

 

 そうなんですよ! 

 最期にしようと思ってた一冊が、こんなに素晴らしい作品だった。

 しかも、まだ1巻でした。

 巻末に「2巻に続く」っていう煽り文も書いてありました。

 これは「読み終わるまでは生きろ」っていう神様のお告げに違いないって(笑)

 じゃあ、そのお告げをくださった神様は誰かって言ったら、もう疑いようもなくアリナ先生じゃないですか(笑)

 

 

 ────たしかに(笑)

 

 

 それからは、もう典型的な「マジかりスト※」生活です。

 もう毎週末、神浜に通い詰めて。

 ありとあらゆるグッズを集めて。

 自分でも作って。

 同人誌も書いたり。

 つい先日まで自殺しようとしてたのが、何かの勘違いだったんじゃないかってくらい幸せでしたね。

 

※マジかりスト

『盗作・魔法少女マジカルかりん』の熱烈なファンのこと。

 彼ら彼女らが世界中から聖地『神浜市』に集うことによって

「休日は神浜の人口が10%増える」

 という名言が生まれた。

 ちなみに神浜市の調査によると正確な数字ではなく、実際は20%増える。

 

 

 ────じゃあ、そのマジかりスト活動で、アリナ・グレイの目に留まったんですか? 

 

 

 あっ、いえ。

 そんなことはないです。

 

 私とアリナ先生が会ったのは、本当に偶然で。

 ああ……と、あの……そう。

『マジかり』の9巻が発売された直後に、アリナ先生が倒れたってニュースになってたじゃないですか。

 

 

 ────なってましたね。同日の内閣総理大臣辞職より、世界的にはよっぽど大きいニュースになってましたからね。

 

 

 ああ、ありましたね。

 ネットニュースでも

 

「アリナ・グレイ、内閣総理大臣に勝利」

 

 とか、書かれてたり(笑)

 

 

 ────ありました、ありました(笑)あ、それでノイジ先生、そのときがどうしたんですか? 

 

 

 あっ、すみません。

 えっと、実は私もちょうど、その日に風邪を引いてて。

 それで病院に行かないとって、なったんですけど。

 せっかく病院に行くなら『マジかり』に何度も出てくる里見メディカルセンターがいいなって。

 

 

 ────さすがマジかりスト。病身を押して(笑)

 

 

 えへへ(笑)

 それで、あの……詳細は伏せますけど。

 マジかりって何人か実在の人物をモデルにしたキャラクターが登場するじゃないですか。

 

 

 ────はいはい、モデルの七海やちよとか。あと劇中の「里美灯火」は宇宙物理学の天才児「里見灯花」がモデルらしいですね。

 

 

 はい、そうらしいです。

 それで、病院に行ったとき、わたし会ってしまったんですよ。

 あの、あくまで詳細は伏せますけど、そういうモデルになってる人に。

 

 

 ────伏せるんですね(笑)

 

 

 伏せます(笑)

 それで、わたし興奮しすぎてしまって(笑)

 風邪とかまったく関係なく、それで気絶してしまったんですよね(笑)

 

 

 ────アッハッハッハッハッハっ!! 

 

 

 そのときは『モデルになってる人』に助けてもらって事なきを得たんですが、入院することになって。

 入院すると、アリナ先生も入院してるって情報を小耳に挟んでしまって。

 もういても立ってもいられなくて、病室に突撃して(笑)

 

 

 ────ノイジ先生、意外にアグレッシブですね(笑)

 

 

 普段はそんなことないんですけど。

 マジかりのことになると、ちょっと歯止めがですね……(笑)

 

 まあ、それはよくて。

 そのあと、色々あってアリナ先生がこう言ってくださったんですよ。

 一言一句忘れもしません。

 

「アナタの漫画、読ませてヨネ」

「漫画の書き方ならアリナが教えてあげる」

 

 って。

 

 

 ────へーっ!! それは凄い!! それで読んでもらって、才能があるって話になってっていう感じですか? 

 

 

 えーと……。

 どうなんでしょう。

 

 っていうか、どこまで言っていいのかな……。

 

 

 ────まずいことなら編集のときに削除するんで、結構踏み込んだことを言ってもらっても大丈夫ですよ? 

 

 

 そうですか? 

 じゃあ……。

 

 マジかりの『御園かりんちゃん』って、行方不明になってしまった、アリナ先生の部活の後輩で名前も同じ『御園かりんさん』がモデルなんですよ。

 

 

 ────そうなんですかっ!? 

 

 

 ええ、そうらしいです。

 アリナ先生が直接そう話してたこともあるので、間違いないと思います。

 それにアリナ先生が通っていた栄総合学園なんかだと、有名な話らしいですよ。

 

 

 ────それは、知らなかったなぁ……

 

 

 行方不明って重くて、外に話したくなる話でもないですからね。

 ほとんどの外部の人は知らないんじゃないかと思います。

 

 それでマジかりの話になるんですけど。

 マジかりって、全部

 

「『御園かりんさん』を漫画家にするため」

 

 に描かれてるんですよ。

 たぶん大衆に受けるように描いてあるのも。

 ファンサービスが多めなのも。

 ファンとか大衆のためじゃなくて、究極的には

 

「『御園かりんさん』を漫画家にしてあげるため」

 

 なんです。

 

 

 ────ほう? 

 

 

 アリナ先生が言ってたとかじゃなく、私がアリナ先生を見て感じたってだけの話なんですけど。

 でも、たぶんそうなんだと思います。

 

 たとえば第一話の冒頭の、かりんちゃんの描いた似顔絵があるじゃないですか。

 

 

 ────ああ、アリナ・グレイの直筆だという、あれ。

 

 

 あっ、ご存じでしたか。

 でも、アレって『原作』が存在するんです。

 

 

 ────原作? 

 

 はい、漫画家志望だった『御園かりんさん』が自室の壁に貼っていた絵なんですけど。

 マジかり一話冒頭の絵は『原作』を完コピして描いた絵なんです。

 というか『かりんちゃん』が描いたっていう体の劇中作は、全部そうです。

 

 

 ────え、でも『かりんちゃん』の絵って、ちょっとずつ上手くなってくじゃないですか。それはどうなってるんですか? 

 

 

『御園かりんさん』がちょっとずつ上手くなってるからです。

 冒頭では、ちょっと絵の上手い小学生だった。

 あれは『御園かりんさん』の実際に描いた絵がそうだったからです。

 最後には結構上手い高校生になってるのも『御園かりんさん』が上手くなってたからです。

 その過程を、全部アリナ先生が完コピしてるんです。

 上達してる点も、してない点も含めて。

 

 

 ────ははぁ……それは…………

 

 

 すごい執念ですよね。

 でもこれって、ファンとか大衆には関係ないじゃないですか。

 じゃあ、何であんなことしてたのかって言ったら、そんなの『御園かりんさん』の漫画を世に出すため、っていう以外に考えられないっていうか。

 

 

 ──── ……

 

 

 たぶんアリナ先生が私に教えてくださったのも、その一環で。

 私の才能を見出したからじゃないんです。

 漫画家志望の私がなんとなく『御園かりんさん』に似ていたから『御園かりんさん』を漫画家にするために私に教えてくれたんだと思います。

 

 もっと言うと……これは変な話ですけど。

 

 アリナ先生が教えた私が漫画家になれた。

 なら、アリナ先生が教えた『御園かりんさん』も漫画家になれるはずじゃないですか? 

 

 

 ────すごい“重い”ですね、アリナ・グレイ。

 

 

 あははっ。

 そうなんです。

 アリナ先生は、すごく“重い”人なんですよ(笑)

 

 でも、そこがまたカッコいいんですよね。

 

 あと、タイトルに『盗作』って言葉がついてるじゃないですか。

 これも私が思うに『御園かりんさん』を漫画家にするためにつけたんだと思うんですよね。

 

 

 ────というと? 

 

 

 まず『盗作』って創作家からすると、敗北宣言みたいなものなんです。

 

「私はあなたに勝てないから盗むしかありませんでしたー」

 

 っていう。

 頭を垂れて、ひれ伏すみたいな。

 

 加えて、『盗作・魔法少女マジカルかりん』が世界一の漫画ってことは、もう誰も否定できないじゃないですか。

 その世界一のはずの漫画が、敗北宣言をしてる。

 誰にっていうと『盗作・魔法少女マジカルかりん』が散々『盗作』してきた『御園かりんさん』に対してです。

 

 こういう場合、世界一の漫画家は誰なのか。

 

 御園かりんさんなんですよ。

 

 これは『盗作・魔法少女マジカルかりん』に勝つまで、誰も否定できない。

 

 

 ──── ……なるほど。

 

 

 つまるところは、もう死んでしまっている『御園かりんさん』を、誰にも文句の言えない漫画家にする、っていうのが

 

『盗作・魔法少女マジカルかりん』

 

 っていう作品だったんじゃないかなぁ。

 

 

 ──── ノイジ先生、今日はありがとうございました。最後に一つだけ聞かせていただいていいですか? 

 

 

 はい、なんでしょうか? 

 

 

 ────いま現在、消息不明になっているアリナ・グレイさんですが、何か情報お持ちでしょうか。

 

 

 近況は、本当に何もわからないですね……。

『マジかり』の連載が終わってからは一度もお会いしてもいないので。

 

 

 ――――連絡も取っていない?

 

 

 取ってないですね。

 もともと連絡取れないっていうことで有名らしいですけどね。

 正直に言って、アリナ先生がどこにいるのか、何をしてるのかも全然わからないです。

 

 

 ――――うーん、じゃあ新作とかも期待できないんでしょうか?

 

 

 それは大丈夫ですよ。

 描きますよ。

 アリナ先生は。

 

 描かないと逆に死んじゃう人なので。

 まあ、漫画なのかは分かりませんけどね。

 

 

 ────そうですか、次作がありそうですか! はい、では是非とも、次の作品に期待したいところですね。ノイジ先生、今回はありがとうございました!

 

 

 ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから一月後のことだ。

 ある漫画家が、新作を発表する。

 タイトルは『全人類魔法少女化計画』

 

 その作品は、作者の前作のようなハートフル路線を期待していた読者達を、1人の例外もなく阿鼻叫喚の地獄に叩き落とした。

 

 

 

 

 

 

 

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