魔法少女リリカルなのは Acta est fabula   作:めんどくさがりや

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歌劇の始まり

「ん?どうやら無事転生したようだな」

 

目が覚めると何やら知らない部屋の中にいた。どうやら一戸建てのようだが。

 

「さて、これからどう動くか・・・ん?」

 

机の上に紙が置いてある事に気づく。

 

「手紙のようだが、さて」

 

内容は神からのようだ。

 

『やあ(^∇^)無事転生出来たようだね。私は嬉しいよ。さて、この手紙には追加情報を記しているんだよね。まず最初に君の住居はその一戸建てだ。好きにするといいよ。そして生活資金などは無くなれば補充されるから心配無用。

そして次に、君が物語に関わるか関わらないかは君次第だよ。

まあ、新しい人生、いや神生かな?楽しみなよ、ねえ?

メルクリウス・A(アレッサンドロ)・カリオストロ君?』

 

手紙はそこで終わりのようだ。

 

「なるほど、そういうことか」

 

とりあえず生活での心配事はないようだが。そして手紙であった通りに自分の名前は変わった。

 

「名も変えるとは随分と手の込んだ真似をする。しかし、物語に関わるかどうかは私次第だと?」

 

それにメルクリウスはくつくつと笑いながら言う。

 

「神よ、貴女なら知っている筈だ。私という男がどのような存在なのかを」

 

そう言うメルクリウスの手にはいつの間にかチェスの駒が握られていた。

 

「さて、転生者を交えた物語。私が投じる一石にて悲劇になるか喜劇になるか。まずは」

 

メルクリウスは視線を壁に掛けられた制服に移す。

 

「我が脚本にて踊る演者と顔合わせといこうか」

 

 

数日後、メルクリウスはとある小学校の前に来ていた。本来メルクリウスに学ぶ事などないのだが、これでも見た目だけならまだ子供だ。なので通わないと周囲から不審に思われるのが一つ。

もう一つはここ、私立聖祥大附属小学校が原作の人物と転生者が通う学校であるからだ。

 

「さて、まずは教師との顔合わせをしなくてはな」

 

しかし、職員室の場所を知らないため、誰かに聞く必要がある。

 

「おや?」

 

メルクリウスの目に三人の少女が映る。

 

「ちょうどいい」

 

そのまま少女達の元まで歩を進める。

 

「すまないが少しいいかね?」

 

すると、三人がこちらに気づき、金髪の少女が怪訝そうに言う。

 

「あんた誰?」

「失礼。私の名はメルクリウス。メルクリウス・A(アレッサンドロ)・カリオストロ。今日より転入する事になったしがない小学生だよ」

「転入生?」

 

メルクリウスの言葉に茶髪の少女が首を傾げる。

 

「然り。それで職員室を探しているのだが、如何せんここの構造に詳しくなくてね。出来れば教えてほしいのだが」

「別にいいわよ。案内するからついてきて」

「ありがとう。ところで君たちの名を教えてほしいのだが」

「ああ、そういえば言ってなかったわね。私はアリサ・バニングス。それでこの二人が私の友人の高町 なのはと月村 すずか」

「よろしくね。えーと」

「メルクリウスでも、カリオストロでも好きなように呼ぶといい」

「じゃあ、カリオストロ君で」

「私もそう呼ばせてもらうね」

「構わぬよ」

 

そう会話してから四人は歩き出した。道中、四人で様々な事を話した。

 

「ほう、なのはの実家は喫茶店を営んでいるのか」

「うん!翠屋っていうお店なんだ」

「なのはちゃんの家の作るお菓子はすごく美味しいから」

 

翠屋。雑誌にも幾度と取り上げられている喫茶店だ。行く価値はあるだろう。

 

「では、次の機会にでも立ち寄らせてもらおう。楽しみにしているよ」

 

ふと、アリサがこちらを見ている事に気づく。

 

「あんたって妙な口調で話すのね。なんか時代錯誤っていうか、古臭いっていうか」

「すまないが、元よりこの口調なのでね。今更正せんよ」

 

当然、メルクリウスになる前はこんな口調ではなかった。しかし、能力の修行の際に神格としての修行も兼ねて様々な世界で時を過ごした。その際に能力が魂に完全に定着した事で、彼は第四天 水銀の蛇そのものと化してしまったのだ。

 

「む?なのは、どうかしたかね?」

 

何やら落ち込んでいる。まるで思い出したくないものを思い出したかのような。

 

「あはは・・・アリサちゃんの言葉でクラスにいる一人の男子を思い出しちゃって・・・」

 

苦笑しながら言う。

 

「なのはちゃん、それって王城君の事?」

「王城?」

 

ああ、そういえば転生者の一人がそんな名前だったな。

 

「どのような者なのだ?その王城とかいう輩は」

「ただの自分勝手な最低野郎よ。普段は別のクラスメイトが止めてくれるけど」

 

アリサが吐き捨てるように言う。

話を聞くと、その王城はこの三人に嫁と言い、しつこく絡んできたり頭を撫でようとしてきたりする。さらに男子が三人に少しでも話しかけるとキレて追い払うという。

 

「いやはや、中々個性的ではないか」

「個性的って・・・あんたも絶対に絡まれるわよ」

 

アリサの言葉にもメルクリウスは微笑みながら言う。

 

「構わぬよ。私はそのような戯言をいちいち気に留めるような輩ではないのでね。それもまた人間性の一つと納得しよう」

「・・・ねえ、あんたって年いくつ?」

「む?九つだが?」

「「え!?同い年⁉︎」」

 

なのはとすずかが心底驚く。

 

「てっきり年上だと思ってた・・・」

「私も・・・」

「おや、私はそれ程老成して見えるのかね?」

「あんたの喋り方が原因だと思うわ。それと、着いたわよ」

 

既に職員室の前に着いたようだ。

 

「では、私はここで失礼させてもらおう。これより同じ学舎の生徒としてよろしく頼むよ」

 

三人と別れて職員室に入る。

 

 

教師と軽く挨拶を交わした後、早速クラスへと案内される。

 

「えーでは転入生君に自己紹介をしてもらいましょう」

 

教師が自己紹介するように促す。

 

「初めまして。私はメルクリウス・A(アレッサンドロ)・カリオストロ。これより同じ学舎で勉学を共にする仲間としてよろしく頼むよ」

 

自己紹介をしながら辺りに視線を向ける。

まずは先ほどの三人が目に入り、次に驚きの視線を向ける黒髪の少年といぶし気な視線を向ける青みがかった髪の少女。そしてこちらを射殺さんばかりの勢いで睨めつける金髪の少年が目に入る。

 

「(なるほど、あれが転生者か。さて、どう接触するか)」

 

その後、転入生への質問タイムに移行したのだが九歳児故のパワフルさに少し疲れを感じたのであった。

 

 

学校生活も滞りなく進んで行き、昼休みへとなった。

 

「さて、昼餉の時間だ」

 

そうして弁当を取り出すと、

 

「カリオストロ」

「ん?」

 

声をかけられた方を向くとアリサがいた。

 

「何かね?」

「これからお昼を食べに屋上に行くんだけど来る?」

 

なるほど、屋上で昼食を食べると。

 

「ふむ、ここで友好を深めるのもまた一興、ご一緒させてもらおう」

「じゃあ行きましょう」

 

そうして屋上へ移動する。

屋上には既に数人がいた。そこにアリサが向かう。

 

「あ、アリサちゃん。カリオストロ君も来たんだ」

「ああ、失礼するよ」

 

そう言いながら座る。ふと目の前にいる人物に気づく。

 

「君たちの名を教えてほしいのだが・・・」

「あ、ああ、小金井 祐介だ」

「・・・水無月 蓮華だ」

「なるほど、小金井に、水無月か」

 

二人はメルクリウスの値踏みするような視線に目を逸らす。

 

「祐介?蓮華?どうかした」

「あ、いや、何でもない」

「気にしないでくれ」

 

アリサの言葉に二人はそう言う。メルクリウスはただ笑みを浮かべていた。

 

「さて、私もそろそろ食そうか」

 

そう言うと弁当を開ける。

 

『・・・・・・』

「何だねそのあり得ないものを見たような表情は」

 

全員が驚愕の視線を向ける。

 

「いや、カリオストロの弁当が意外にも普通だったから」

「アリサは私をなんだと思っているのだ」

 

思わずジト目で見てしまう。そしてサンドイッチを取り出しいざ食べようとしたその瞬間、

 

「おお、ここにいたのか我が嫁達よ」

 

突然金髪の少年が来た。なるほど、この少年が王城 天牙か。

 

「だから‼︎私たちはあんたの嫁なんかじゃないわよ‼︎」

「はっはっは。照れずとも良いのだぞ?」

 

見ると全員が顔をしかめている。

 

「む?何故モブがここに・・・ッ⁉︎」

 

こちらに気づき言葉を言いかけたが途中で何かに気づいた王城が目を見開く。

 

「おや、どうかしたかね?」

 

王城は驚愕を顔に浮かべたまま言う。

 

「・・・貴様は、貴様はなんだ?」

 

ーーほう。

 

「なるほど。ただの力ある当て馬かと思ったが、存外に鼻が効くようだ」

 

メルクリウスの言葉に三人は疑問を浮かべた。転生者二人は王城の何時もとは違う表情に疑問を浮かべている。

 

「・・・もう一度聞く。貴様はなんだ?」

「何でもない。君は何に怯えている?ああいや、何も言うまい。君が私に恐怖するもまた是としよう。何に怯えているか、などと理由を知るつもりなどない。人の恐怖の対象は千差万別。君は偶然私を見、偶然私の内面を捉え、偶然私に恐怖したに過ぎないのだから。安心したまえ、君の感情は正しい」

 

役者がかった言葉を紡ぐ。それに王城はそのまま踵を返す。

 

「・・・ふん、まるで蛇のような男よな」

 

そう言うとそのまま去って行く。五人は様子のおかしい王城に戸惑う。メルクリウスはその王城を見たまま笑みを浮かべている。

 

「(なるほど。案外彼は面白い立ち回りをしてくれそうだ。良い役者に恵まれ、歌劇は至高へと至るやもしれぬな)」

 

 

とあるビルの屋上。そこに二つの人影があった。片方は金髪の少女。眼下に広がる街を見てつぶやく。

 

「ここに、ジュエルシードが・・・」

 

そこで背の高い女性が口を開く。

 

「広い街だね。すぐに終わるかな」

「わからないけど、母さんが頼んだ事だから」

 

その言葉に女性は表情を曇らせる。

 

「私はあのババアが信用できないけどね・・・」

「母さんをそんな風に言っちゃダメだよアルフ」

「ああ、ごめんよフェイト」

 

フェイト、と呼ばれた少女がアルフという名の女性に言う。

 

「さあ行こうアルフ。私達の望みを叶えるために」

「了解!」

 

そして二人は、夜の海鳴を飛翔した。

 

 

「ああ、ようやくか・・・」

 

上空に一つの黒い影が浮かんでいた。それは眼下の街へ目を向けると愉快だと言うように笑う。存在は朧げであり不確かで、不鮮明。青年のような老人のような風体の男。

メルクリウス・アレッサンドロ・カリオストロ。この世界において最後の転生者であり、多元宇宙を掌握する神だ。

 

「ふふ、かくして壇上に役者は揃った。我が脚本に舞う演者達よ、踊るがいいこの舞台で。歌うがいい魂の歌劇を。お前達は、そのためにあるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、今宵の恐怖劇(グランギニョル)を始めようか」

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