魔法少女リリカルなのは Acta est fabula   作:めんどくさがりや

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接触する者

とある場所、そこは洞窟のような作りであり、そこの光源は微かな青い光だけだ。不気味な冷気が充満するその地に一人の男が歩いていた。蜃気楼のような存在感が欠如した男、メルクリウスだ。

メルクリウスは洞窟を歩いていく。すると、洞窟の奥に鉄で出来た扉が見えてくる。メルクリウスは迷い無くその扉の前に行く。

 

『誰だ』

 

すると扉の中からくぐもった若い男の声が聞こえてくる。

 

「私だよカイン」

『・・・カール・クラフトか』

「ああ、調子はどうだね?」

『・・・僕の調整をしているのは君だろう。僕に施した術はこんなに早く劣化するのか?』

 

それにメルクリウスは笑みを浮かべる。

 

「まさか。一応の確認だよ。私が施したとはいえ、もしかしたら、という可能性も否めないのでね。まあ、その様子なら大丈夫だろうが」

 

メルクリウスは扉に手をかざす。すると幾重もの魔法陣が現れる。

 

libero(解放する)

 

メルクリウスの言葉と共に扉が解錠される。ギギギ、という音と共に扉が開いていき、その中に入っていく。

 

「数日ぶりかな?」

『さあな。僕は此処にずっといるから外の時間はわからない』

「仕方あるまい?君はまだ調整段階なのだ。無理に日の本を歩き腐り落ちた屍兵にはなりたくないだろう」

 

そこにいたのは一人の青年であった。鍛え上げられた上半身を晒しており、普通に見れば中々の容姿だ。だが、彼の体は生気が欠片も感じられず、生者にある命の躍動も存在していない。

死を喰らう者(トバルカイン)ーーそれが彼の名だ。

メルクリウスが作成した死せる兵士、生きし亡者。それにメルクリウスが対物理・対魔術・対時間・対偶然とあらゆる防壁を施した存在。

 

『今更何を言う。僕は既に屑へと成り果てている。全身腐り果てているんだよ』

「・・・相変わらず自虐的だな君は」

 

そう言いながら術式を起動させていく。

 

「さて、今回の調整で終了だ。次からは動いてもらう」

『わかった』

 

そして調整を始めていく。その間に会話を進めていく。

 

『それで?例の転生者はどうだった?』

「ああ、転生者という事を差し引いても中々の逸材だ。まだまだ粗削りな所があるがそれは実戦でどうにかなるだろう」

『君がそれ程までに言うとはね。根拠はあるのか?』

 

根拠。ああ、もちろんあるとも。何せこの目で直に見たのだから。

愚かしくも美しい友情劇。ありきたりではあるものの、彼は主役を飾るに相応しい。

 

「さあ、私も動き出すとしようか」

 

 

小学校にてーー

 

「おい、カリオストロ」

 

放課後、帰宅しようとしたら突然呼び止められた。視線を向けると、そこには青みがかった髪の少女、蓮華がいた。

 

「何だね、水無月 蓮華。私に用でもあるのかな?」

「ああ、ついてこい」

 

そう言うと蓮華は歩き出す。メルクリウスは何があるか大体予想はつけたがここで言うのは野暮だと思い黙ってついていく。

そして水無月に連れられ来たのは学校の屋上だ。

 

「連れて来たぞ」

「ああ、すまないな」

 

屋上には既に祐介がいた。

 

「おや、二人揃って私に何か用かな?」

「お前に聞きたい事がある」

 

祐介はメルクリウスを真っ直ぐ見据え、口を開く。

 

「お前は、転生者を知っているか?」

 

その問いにメルクリウスはやはりかと思う。

 

「転生者ーー死した魂が輪廻の輪をくぐり別の存在として生を得た者。それがどうかしたかね?」

 

メルクリウスの言葉に祐介は一つ頷いて言う。

 

「正直に言うと、俺らには前世の記憶がある」

「ほお、前世の記憶か。それが真であれ偽りであれ中々興味深い。で、それを私に話してどうするのかな?」

 

メルクリウスの言葉に小金井は言葉を返す。

 

「単刀直入に聞くが、お前は転生者か?」

 

やはりこの質問だ。いつかは聞かれるだろうと思っていたがこれほどまでに早いとは。

 

「ふむ、転生者か。数多の世界を渡り歩いたという意味ではそうなのかもしれないな」

「ッ‼︎やっぱりお前が・・・‼︎」

 

祐介が視線を厳しい物へと変える。

 

「答えろ、アレはお前の仕業か?」

「アレ、とは何かな?」

「とぼけるつもりか?」

 

祐介はさらに視線を厳しくする。

 

「とぼけてなどいない。君の質問には具体性が欠けている。アレ、などと言われても皆目見当もつかないね」

 

その言葉に祐介は言おうと口を開くが、すぐに蓮華に止められる。

 

「その話は後だ。・・・カリオストロ」

「なんだね?」

「私からの質問は二つだ。まず一つ目、お前は私達の敵か?」

「その言葉には否と言わせてもらう。ただし、味方かと問われればそれもまた否だ」

「中立、という事か」

 

それに頷く。

 

「ならば二つ目。お前は何者だ」

「これは異な事を言う。私はメルクリウス。何者だと聞かれても私はそうとしか答えられない」

「違う。私は本当のお前の事を聞いているんだ。答えろ、お前はーー」

 

が、それを遮って言う。

 

「私の言葉に偽りなどないよ。カール・クラフト、カリオストロ、サン・ジェルマン、パラケルスス、トリスメギストス、ノストラダムス、クリスチャン・ローゼンクロイツ、マグヌス、ヨハン・ファウスト、そしてメルクリウス。全てが本名であり、全てが偽名だ。悠久の時を生きた私の名は星の数程ある」

「・・・・・・」

「信じられない、と言った顔だね?結構、このような荒唐無稽な話をすぐに信じられるわけもないだろう。だが、知っておくといい、人は未知を欲すると同時に未知を恐れる生き物なのだよ。故に、人間は始めて感じる未知を認めることが出来ない」

「まるで、自分は人間ではないみたいな言葉だな」

 

その言葉に自嘲めいた笑みを浮かべる。

最後にまだ人間らしかったのはいつだろうか。もはや前世の記憶など存在しない。かつての名前もとうに失ってしまった。

 

「さて、用事は済んだのだろう?それに、今は私に暇をさいている場合ではないのでは?」

「何をーー」

 

瞬間、遠方より光の柱が上がる。

 

「ジュエルシード⁉︎」

 

そちらに目を向けた瞬間、

 

「では、私はこれにて」

「ッ‼︎待て‼︎」

 

咄嗟に祐介が能力を使いメルクリウスの動きを止めようとする。だが、

 

「無駄だよ」

「なんだと⁉︎」

 

モノクロの世界で行動できるのは祐介一人の筈だ。誰であろうと時間の束縛からは逃げられない。

だというのにメルクリウスは何ともないと言ったように動いている。

 

「何を驚く必要がある?君の能力は時間の停止、だったか?ああ、たしかに強力な力だ。時間という鎖で対象を縛る。通常ならそれに抗う事など出来ない。だがーー」

 

メルクリウスはトン、と踵を踏み鳴らす。たったそれだけの挙動で祐介の時間停止が破壊される。

 

「この程度の縛鎖で私を停める事など不可能だ。私を停めたいのなら神格級の力が無くてはな」

 

駄目だ。コイツに自分達の常識は当てはまらない。時間停止が効かないのは幻想殺しような能力の完全無効化だと思ったがすぐに否定する。

違う。これはそんなものじゃない。単純に、自力が違いすぎる。

 

「それでは今度こそさよならだ」

 

そのままメルクリウスは影のように消えた。それを見て吐き捨てるように言う。

 

「神格・・・神だと?自分は神だとでも言いたいのか?」

 

蓮華がその様子に疑問の表情になる。

 

「祐介?」

「・・・何でもない。それより急ごう」

 

それだけ言うと二人は光が昇る目的地へと向かう。

 

 

彼らが飛び立った場所よりそう遠くない場所、そこにメルクリウスはいた。

彼は遠方にある光を見ながら言葉を紡ぐ。

 

「怒りの日、終末の時、天地万物は灰燼と化し、

 

ダビデとシビラの予言の如くに砕け散る。

 

たとえどれほどの戦慄が待ち受けようと、審判者が来たり、

 

あまねくすべて厳しく糾され、一つ余さず燃え去り消える。

 

そう、かの日こそーーー

 

 

 

 

怒りの日、来たれり」

 

 

すると、メルクリウスのそばにいる男が言う。

 

『何をそんなに浮かれている?』

 

男ーーカインの言葉にメルクリウスは笑いながら言う。

 

「浮かれている?ああ、たしかに浮かれているな。だがそれも当然だ。待ち望んだ歌劇がようやく歩を進めたのだ、浮かれない方がおかしいとは思わないかね」

『・・・君の悪趣味な歌劇に巻き込まれる彼らに同情するよ』

 

嘆息しながらカインは光に目を向ける。

 

『で、どうするんだ?接触するのか』

「状況次第だ。それで接触するか否か決める。それまでは共に観覧していようではないか」

 

眼前では結界が張られており、その中で少年少女が戦っている。

 

「さて、カイン。お前から見て彼らはどうかな」

『・・・・・・』

 

メルクリウスの言葉にじっと魔導士達を見る。

 

『たしかに、あの年の子供にしては中々の腕だ。・・・だけど妙だな』

「何がだね?」

『彼らの攻撃には殺気がこもっていない。得物を振るうのに躊躇いは感じられないのに、殺意が無いんだ』

 

心底不可解だと言うようにカインは首を傾げる。

 

「仕方あるまい。彼らはたかだか九年しか生きていない幼子だ。それもこのような争いなど今まで経験した事が無い。そんな彼らに殺気など無縁の物だ」

『ならば何故、彼らは躊躇い無く得物を振るえる?』

「ふむ、各々に引けぬ思いがあると言うのも一因だろうが、もう一つは彼らの持つ武器、デバイスとやらに組み込まれた非殺傷設定というやつだな」

『なるほど、つまりはーー』

 

カインが納得したような、呆れたような表情になる。

 

「生死をかけた殺し合いの経験が無い。酷く言ってしまえば今の現状を本当の戦いと勘違いしている、愛しく憐れな愚か者だよ。まあ、それも仕方のないことだろう。何故なら彼らは戦場というものを知らない。殺し殺される緊張感を知らない。流れ出る血を、硝煙の香りを、人々の嘆きと憎悪を知らない。だが、それ故にーー」

『歌劇は面白くなる、か?』

「然り然り。さて、いよいよ舞台も盛り上がりを見せてきた」

 

見るとジュエルシードによる光が荒々しくなっている。暴走しているのだろう。

 

「さて、どう動くかな?」

 

魔導士達はなんとかジュエルシードを止めようとするが、溢れる魔力の奔流で思うように近づけない。

そうこうしていると、蓮華が何か決心したような表情になり、何か行動しようとする。その瞬間、朱い槍がジュエルシードに飛来し、魔力を消しながらジュエルシードそのものを砕いてしまった。さらに、

 

「おっと」

 

メルクリウスにも黄色の槍が向かってきた。その槍をカインが手に持った大剣で弾く。

それをした人物を見てメルクリウスは笑う。

 

「ふふ、ははははは。ああ、素晴らしいよ。良い役回りだ」

 

ジュエルシードを破壊した人物。それはあの王城 天牙であった。

それだけではない。あの黄色の槍、そしてこちらを睨みつける瞳、明らかにこちらに気づいている。その目だけで彼の言いたい事がわかる。

 

「ふふ、いいだろう。私は消えるとしようか」

『行くのか』

「ああ、いいものも見れた。今日はここまでにしよう」

 

そのまま、二人は消えていった。




トバルカインの容姿はKKKの天魔・悪路みたいな感じです。まんま屑兄さんです。
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