魔法少女リリカルなのは Acta est fabula   作:めんどくさがりや

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白い少女と管理局

メルクリウスは原作へ積極的に戦闘で関わる事をしない。多少接触する事はあっても基本的に傍観するだけだ。

当然だろう。彼はあくまで脚本家であり物語を掌握している神なのだ。彼はただこの歌劇を見据えているだけだ。

歌劇。そう、メルクリウスにとって彼らの戦闘は歌劇、戯れに過ぎない。たとえ魔力が多かろうと特別な力を持っていようとそれは人としての力だ。人の常識の範疇ではメルクリウスを傷つける事などできない。ジュエルシード、ロストロギアなどと呼ばれるものも術と占星の神であるメルクリウスならばそれこそ今よりはるかに強大なものを作れるだろう。それこそが第四天 水銀の蛇なのだから。そう、たとえーー

 

「・・・・・・」

「(ア、アクタエストファーブラ)」

 

見知らぬ少女が何故かメルクリウスの家のソファで寛いでいたのを見て動揺していたとしてもだ。

 

 

メルクリウスは今迄にない程戸惑っている。いつも通りに学校を終え帰ってくるとソファに見知らぬ少女が座っていた。ちなみに祐介達はこちらを睨みつけるだけで特に何も起こさなかった。

 

「さて、君は誰かな?」

 

すると少女がこちらに気づいたようで振り向く。

 

「・・・・・・」

 

じっとこちらを見る少女。白い髪、白い肌、碧い瞳、整った容姿。

 

「黙っていてはわからないのだが?」

 

白い少女はなおもこちらをじっと見つめる。その視線はまるでメルクリウスの何かを探るようなものであった。そして少しすると、何故か目を輝かせながら言う。

 

「・・・父様(ちちさま)?」

「!?Σ(゜□゜;)」

 

思わぬ未知であった。

 

 

 

『カール・クラフト、君が子持ちだと聞いていないのだが?』

「私とて所帯を持った覚えなどないさ」

『だったら』

 

そう言ってカインは視線をメルクリウスの膝の上にちょこんと座っている少女へと向ける。

 

『その少女は何者なんだ?』

「うむ・・・何かが引っかかるな」

 

メルクリウスがため息を吐くと。

 

「父様、大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ」

 

言いながら少女の頭を撫でると目を細める。

 

『どこからどう見ても親子にしか見えないな』

 

だまらっしゃい。

 

「・・・ん?待てよ」

 

そこでメルクリウスはふと、何かを思い出したような表情になる。

 

「あーその、なんだ」

 

少女に何か言おうとするが、何か迷っているようで中々言わない。

 

『どうかしたか?』

「いや、今更ながらこの子の名前が無い事に気づいてね、何か良い名はないだろうか?」

『僕が考えるよりは君が考えた方がいいような気がするんだが』

 

ほら、と促され少女を見ると期待したような眼差しで見てくる。

 

「名前か・・・」

 

そう言うとしばらく考えた後、

 

「ヴィクトリア、というのはどうだね。勝利を司る女神なのだが」

『へえ、いいんじゃないか?』

 

見ると少女は顔を明るくしている。どうやら気に入ったようだ。

 

『それで?結局その少女は誰なんだ?』

「ああ、その事だが、その前に私が最近まで研究していた事についてなのだが」

 

メルクリウスはとある存在を作ろうとしていた。かつて、メルクリウスが渡り歩いた数ある世界の一つに『曙の明星』と呼ばれる不変の存在がいた。メルクリウスはその存在に興味を持ち、彼の魂を削り出し己の血で培養し、誕生させた。言わばツァラトゥストラのような存在だ。つまり、聖遺物を操る聖遺物であり、メルクリウスのようにあらゆる聖遺物を操れるのだ。

 

『なるほど、な。その子はお前自身の聖遺物でもあるというわけか』

「その通りだよ。まあ、まさか女児になるなどとは思わなかったがね」

 

見ると少女はうつらうつらと船を漕いでいた。

 

「ああ、ここで寝てはいけないよヴィクトリア。ちゃんとベッドの上で寝なくては。こっちへおいで」

「うん・・・」

 

そう言うと二人は部屋を出て行く。それを見てカインはポツリとつぶやく。

 

『普通の親子にしか見えないな・・・』

 

 

メルクリウスがヴィクトリアを寝かしつけた後、

 

『それで?彼女の聖遺物は何にするんだい?』

「それは後々、今は座学や基本的な武道だな。座学は勿論私、武道はお前に頼みたい」

『わかった』

「それと次はあの子の日常用品だな。今日は流石に遅いから諦めるとして明日は丁度休日だ。買い出しにはちょうどいいだろう」

『そうか。それじゃあ楽しんで来てくれ』

 

・・・ん?

 

「カイン、何を他人事の様に言っている?」

『公衆の面前を僕が歩けると思うか?それに親子水入らずの状況を邪魔するのも野暮だろうしな』

 

いや、いやいやいや。

 

「いや、待ちたまえよ君」

『なんだ?』

「なんだじゃなくてだね」

『どちらにせよ僕は行けないぞ?それに世の中には言い出しっぺの法則というものがあってね』

「ーーーー⁉︎」

『ーーーー‼︎』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日、

 

「父様早く行こー」

「待ちたまえ、ヴィクトリア」

 

結局二人で行く事になった。どうやらヴィクトリアかなり楽しみのようでとても機嫌が良さそうだ。それを見ながらメルクリウスは苦笑する。

 

「(まさか私が父親の真似事をするとはな・・・)」

 

たしかに未知を求めた身だがこのような形での未知を得るとは思いもよらなかった。

そもそも今まで家族と呼べる存在するいない。そんな自分が娘を持つ事自体想定していない。

 

「父様ー」

「ん?」

「手、繋ごう」

「構わぬよ」

 

そう言うとヴィクトリアはメルクリウスの手をギュッと繋ぐ。

 

「(まあ、これはこれで一興だろう)」

 

そう言うと今度は優しい笑みを浮かべる。

ちなみにそれを見た通行人達は微笑ましそうにしていたという。

 

 

とりあえず一通り買い物は終えることができた。日用品は最低限必要なものを買い揃えて現在は丁度昼時であるため何処かに寄ろうとしているのだ。

 

「さて、何処がいいか・・・む?」

 

ふと、辺りに視線を配らせるととある喫茶店が目に入る。

 

「ふむ、喫茶翠屋か・・・ちょうどいいな」

 

そう言うとヴィクトリアと共に入っていく。

 

「いらっしゃいませ。二名様でよろしいでしょうか?」

「ああ」

「ではこちらへどうぞ」

 

二人でカウンター席に座る。昼時のため、少し混んでいるようだ。

メニューを見てメルクリウスはサンドイッチ、ヴィクトリアはカルボナーラで二人共デザートにシュークリームを頼んだ。

 

「(この後は日常品の買い出しか・・・)」

 

彼を知る者がこの場面を見たら、誰もが驚愕するだろう。もしや発狂するかもしれない。

 

それほどまでに異常だという事を理解してほしい。

 

 

その異常な、ある意味では怒りの日とも呼べる時から数日が経ったある日。

 

「む・・・」

 

ふと、読んでいる本から顔を上げる。そのままジッと上を見上げ、スッと目を細める。

 

「・・・カイン」

 

その言葉のすぐ後にメルクリウスの背後にカインが現れる。

 

『出るのか』

「ああ、どうやら客人のようだ」

 

まるで上に何かがあると言うように天を見上げている。

 

「時空管理局、さしずめ世界を渡る法の船か・・・」

 

そう言ってメルクリウスが手を掲げると、そこに一本の杖が現れる。

二匹の蛇が絡み合い、螺旋を描いている『カドゥケウス』の杖。

メルクリウスが杖の先で突く。すると眼前の空間に波紋が走り、メルクリウスはそれを確認すると杖を消す。

 

『ヴィクトリアはどうするんだ?』

「彼女はまだ連れて行かん。だが、それも今だけだ」

 

そう言ってメルクリウスは波紋に歩み出す。

 

「さあ、愚かしき者たちに会いに行こうか」

 

 

「なるほど・・・そうですか。あのロストロギアーー ジュエルシードを発掘したのは貴方だったんですね」

 

今、アースラ内ではジュエルシードについての説明、質問等が行われている。

艦内では、地球の魔導士達と、クロノとリンディがいて、丁度話がある程度進んでいる最中であった。

 

「立派だわ」

「だが、無謀でもある」

 

クロノがバッサリと切り捨てる。

 

「あの・・・ロストロギアってなんですか?」

「まあ、異質世界の遺産・・・って言ってもわからないわね」

 

話を聞くとこうだ。

まず、次元空間には、様々な世界が存在する。その中には科学や技術が進化しすぎる世界が存在しており、それらが滅んでしまった後に存在するオーバーテクノロジーの遺産。それらを総称して、ロストロギアという。

 

「使用法は不明だが、使いようによっては、世界どころか次元空間すら滅ぼす程の力を持つ危険な技術だ」

 

その言葉に王城を除く三人は戦慄する。まさか、ジュエルシードが其れ程までに危険な代物とは思わなかった。

 

「しかるべき手続きを以って、しかるべき場所に保管されていなければいけない品物」

 

たった一つのジュエルシードでも凄まじい力を持っている。

しかし、

 

「ふん、その程度がなんだと言うのだ。少なくとも、奴にとっては取るに足らん代物であろう」

 

王城のその言葉にリンディが疑問を浮かべる。

 

「王城さん、貴方は誰の事を言っているの?」

 

その言葉に王城は周囲を見渡すと、口を開く。

 

「・・・そうだな、この際言っておこう」

 

すると、王城は一拍開け、

 

「ジュエルシードも、フェイトも本当の脅威ではない」

「なんですって?」

 

その言葉に眉を顰める。

 

「どういう意味だ?」

「言葉通りの意味だ。奴にとってはジュエルシードなど空から来た石粒程度の認識でしかないだろう」

 

奴とは一体誰だ?王城は何を言ってーー

 

「ならば、本人に聞く方が早かろう」

「何を言ってーー」

 

祐介が言うより早く、王城は王の財宝を発動させる。

 

「そこにいるのであろう?出てくるがいい、蛇よ‼︎」

 

それと同時に宝具が射出される。だが、それは何処からか現れた一人の男の持つ大剣に弾かれる。

なのは達は突然出てきた彼に驚愕している。

 

『・・・カール・クラフト。ワザとバレるようにしたな』

 

その言葉と共に男の隣に影が凝縮していく。

そして、そこにもう一人の男が現れた。

存在は朧げであり不確かで、不鮮明。青年のような老人のような風体の男。

彼は周囲を見渡すと、不気味な笑みを浮かべながら言う。

 

「初めまして、魔導士の諸君。私はカール・エルンスト・クラフト。しがない化け物だよ」

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