経済学の話をするガングートとイントレピッド   作:ヒルベルト

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好況・経済成長と不況・恐慌について。あと独占・寡占や計画経済・指令経済について。

Hi! I’m Intrepid-Kurogane(黒鉄).

ガングートの話はまだ続いていた。

 

※『交換』のからくり

Q=SDW/(CD+WS)

P=CDW/(CD+WS)

 

・D:需要規模(典型的には、需要者の人数)

・S:供給規模(典型的には、供給者の人数)

・W:需要能(財貨・サービスを得るためにできる仕事量、出せる金額)

・C:費用(財貨・サービスを生産・調達するために必要な仕事量)

 

・Q:財貨・サービスの生産量

・P:価格

 

「ここでQを財貨・サービスの生産量としたが、この式を導出したとき、この財貨とかサービスが何であるかは特に特定はしなかった。」

「ここでの財貨とかサービスは、何であっても構わない。」

「ダルニツキーでも、ヴォートカでも、パソコンでも、スマートフォンでも、何であっても構わない。」

「もっと言ってしまえば、一地域、一国で生産・提供される財貨・サービスの一切合切である、としても構わないのだ。」

 

「え…?それって、この式がある意味でGNPとかGDPとかを表しているって言うことなの?」

 

「ある意味で…そう、正にお前の言う通りだ。」

「さすがにこの式をGNPやGDPと同一視することは出来ない。」

「だがこの式は一地域、一国の富や豊かさを、()()()()()()示してはいる。」

 

 

「ところでこの式を見ると、生産量Qの式にも価格Pの式にも…。」

 

DW/(CD+SW)

 

「…こういう…因子?が含まれている。」

「Dは『需要規模』…典型的には需要者の人数で、求められている財貨・サービスの総量だ。」

「Wは『需要能』…これは財貨・サービスを得るために出来る仕事量、出せる金額を表している。」

「Wは需要者の、財貨・サービスを()()()()()()()()()と、財貨・サービスに対する()()()()()を示している。」

「つまりDもWも、需要側の状態を表す変数だ。それが分子に来ているということは…。」

 

「DやWが大きくなれば、結果的に生産量Qも価格Pも大きくなるってことね。」

「でもこれって、ケインズの『有効需要の原理』を思い起こさせる話じゃない?」

 

「その通りだ。」

「正直、私自身彼の『有効需要の原理』を正確に理解しているとは言えないが。」

「ただこの因子を見たとき、『おお、こんな所にも有効需要の原理が現れているじゃあないか』とは思った。」

 

 

「ちょっと数値を入れて見てみよう。」

「費用C>需要能Wだとすると、需要者は供給者を頼らず、自力で財貨・サービスを獲得することになる。」

「だからここではC=1、W=2とする。」

「供給規模S>需要規模Dだとすると、需要者に頼られない供給者が出てきてしまう。」

「だからここではS=1、D=2とする。」

「そうすると…。」

 

Q=SDW/(CD+WS)

P=CDW/(CD+WS)

 

D=2 W=2 S=1 C=1

Q=1 P=1

 

「ここで、W=3になったとすると…。」

 

 

Q=SDW/(CD+WS)

P=CDW/(CD+WS)

 

D=2 W=3 S=1 C=1

Q=1.2 P=1.2

 

 

「生産量Qが1.2になったわね。」

「うむ。」

「生産規模はSは1だったから…これって、生産規模を超える量を生産できたってことにならない?」

 

「その通りだ。需要能Wが2から3になったことによって、生産規模Sは1から1.2になったと解釈される。」

「Q=1.2をSに代入してもう一度QとPを計算する、そのQをSに代入してさらにQとPを計算する…これを繰り返すと…。」

 

Q=SDW/(CD+WS)

P=CDW/(CD+WS)

 

Q=1.2  P=1.2 ( D=2 W=3 C=1 は、そのまま )

Q=1.28  P=1.07

Q=1.31  P=1.02

Q=1.32  P=1.00

 

「最終的に生産量Qは1.33になり、生産規模Sも1.33になる。」

「価格Pは一時的に上がるが、最終的に1.00に収束する。」

「これは需要能Wが、需要が拡大したことによって生産規模が…生産力が拡大したと解釈できる。」

「田畑は広がり、新しい工場が建ち、起業が盛んになる…そんな感じだろう。」

「需要の拡大が好況を、経済成長というやつをもたらした、というわけだな。」

 

「今度は需要能Wを2から1.75に下げてみよう。」

 

Q=SDW/(CD+WS)

P=CDW/(CD+WS)

 

D=2 W=1.75 S=1 C=1

Q=0.93 P=0.93

 

「ここでQをSに代入してQとPを出し、またQをSに代入してQとPを出す…を繰り返すと。」

 

Q=SDW/(CD+WS)

P=CDW/(CD+WS)

 

Q=0.93 P=0.93 ( D=2 W=1.75 C=1 はそのまま )

Q=0.89 P=0.96

Q=0.87 P=0.97

Q=0.86 P=0.98

 

「最終的に生産量Qは0.85になり、生産規模Sも0.85になる。」

「価格Pは一時的に下がるが、最終的に1.00に収束する。」

「これは需要能Wが、需要が縮小したことによって生産規模が…生産力が縮小したと解釈できる。」

「田畑はうち捨てられ、工場は閉鎖され、起業は軒並み倒産・廃業する…そんな感じだろう。」

「需要の縮小が不況を、恐慌をもたらした、というわけだな。」

 

 

「このモデルによれば、好況や経済成長をもたらすのも、不況や恐慌をもたらすのも需要側の状態だということになる。」

「需要能Wが大きい状態というのは、見方によっては『金はいくらでもある!いくらでも出す!』という状態だ。」

「その状態の下では生産量Qは、生産規模Sは拡大する。」

「ところがその拡大を支えた需要能Wが高い状態…金がいくらでもあって、いくらでも出せるという状態が何かの間違いであったとき。間違いだということが明らかになったとき。」

「そのとき、需要能Wは急激に縮小し、生産量Qは、生産規模Sも縮小する。…これが不況・恐慌というわけだ。」

 

「でもその需要能Wの高さが、間違いのない、適正・適切なものであれば?」

「その需要能Wの高さは、文字通りの『有効需要』ということになり、健全な好況・経済成長をもたらすことになるな。」

 

岩川台営業所(うち)のガングートって…もしかしてマルキシストじゃなくてケインジアンなのかしら?

 

バドを一口、二口してから、私はガングートに尋ねた。

「そうすると、不況や恐慌の原因は、あるいは好況や経済成長の原因は、需要側が需要能Wを()()()()()できているかどうかであるということにならない?」

「認識という、何て言うか()()()()()()()なものが経済の状態を左右しているようにも見えるけど?」

「マルクス主義的に見て、()()()()に見て、それはどうなのかしら?」

 

ガングートは回答した。

「認識というものは、結局物質世界の状態に左右される。」

「同じ状態を見ていても、立ち位置が違うだけで認識の内容も違ってくる。…認識の多様性というやつも、これで説明できる。」

「不況あるいは好況が、需要能Wに対する()()が正しいかどうかによると言っても、別に唯物論とは矛盾しない。」

 

どうも不毛なものになりそうな唯物論とか観念論とかの話はここまでにして、私は話題を移した。

「需要規模Dや需要能Wが変動しても、それで直ちに供給側が生産量Qや生産規模Sを()()()()こともあるわよね?独占・寡占とか…。」

ガングートは私が何を言いたいのか察して、私の言葉を引き継いだ。

「…計画経済・指令経済とか、な。」

 

「…ちょっと言いにくい話になるが…。」

「独占・寡占、あるいは計画経済・指令経済とは、どういう状況であるのか?」

「お前が言った通り、需要規模Dや需要能Wが変動しても、()()()()()()生産量Qや生産規模Sが()()()()()状況だとしよう。」

 

Q=SDW/(CD+SW)

D=2 W=2 S=1 C=1 ならば Q=1

 

「ここで需要規模Dが2から3になっても、Qが1のままだとすると…。」

 

Q=SDW/(CD+SW)

D=3 W=2 S=1 C=1 そして Q=1

 

「生産量Qが1のまま、生産規模Sも1のままだとすると、費用Cが変動させざるを得ない。」

 

Q=SDW/(CD+SW)

D=3 W=2 S=1 C=1 そして Q=1

1=6/3C+2

C=1.33

 

「生産量Qが1のまま、生産規模Sも1のままだとすると、費用Cは1.33に上昇してしまう。」

「そして価格Pも1.33に上昇する。」

 

「価格Pは上昇したのに、生産量Qは上がらないのね。」

「…そういうことだ。」

 

「それで、需要規模Dが2から1.75になったとき、Qを1のままにしようとすると…。」

 

Q=SDW/(CD+SW)

D=1.75 W=2 S=1 C=1 そして Q=1

1=3.5/1.75C+2

C=0.85

 

「生産量Q、生産規模Sを1のままにしようとすると、費用Cは0.85に下落する。」

「価格Pも0.85に下落はするが…。」

 

「これって、費用Cが下がって生産量Qが維持できるのではなくて、生産量Qを維持するために費用C()()()下げるということなのよね?」

「そうなると財貨・サービスの品質は怪しくなるな。いや、生産・提供自体できなくなるかもしれない。」

 

 

「すると、独占・寡占の下では…計画経済・指令経済の下では、品質の良い物は高くて手に入らず、安く手に入る物は品質の悪い物…ということが生じてしまうのね。」

「供給者側の、需要に対する認識や判断が適切・適正であれば、避けられることではあるのだが…。」

「でも絶対に判断を誤らない人間なんていないでしょう?」

「ぐぬぅ。…だが、市場経済の下でも需要者側が自らの需要能に対する認識を誤れば、結局不況や恐慌が生じる。」

「どの道を選んでも、征く先は問題だらけってことなのかしらね。」

「身も蓋もない話だが…『あなたにとってのユートピアは、誰かにとってのディストピア』ということでもあるな。」

 

 

※『交換』のからくり

Q=SDW/(CD+WS)

P=CDW/(CD+WS)

 

・D:需要規模(典型的には、需要者の人数)

・S:供給規模(典型的には、供給者の人数)

・W:需要能(財貨・サービスを得るためにできる仕事量、出せる金額)

・C:費用(財貨・サービスを生産・調達するために必要な仕事量)

 

・Q:財貨・サービスの生産量

・P:価格

 

ここでQを、一地域、一国で生産・提供される財貨やサービスの一切合切であるとする。

すると、この式は一地域、一国の富や豊かさを()()()()()()示している。

 

この式には

 

DW/(CD+SW)

 

…という因子が含まれている。

この因子の分子には需要規模D、需要能Wという『需要側の状態』を示す変数が来ている。

だからDやWが大きくなると生産量Qも大きくなる。

そして生産量Qが大きくなったということは、生産規模Sが大きくなったということを意味する。

だからDやWが小さくなると生産量Qも小さくなる。

そして生産量Qが小さくなったということは、生産規模Sが小さくなったということを意味する。

 

つまり需要規模Dや需要能Wが…需要側の状態が好況や経済成長、あるいは不況や恐慌をもたらす原動力になっている。

 

需要能Wが高い状態というのは、「金ならいくらでもある!いくらでも出す!」という状態だ。

でもそういう状態は何かの間違い、認識の誤りである可能性がある。

そしてそういう状態が本当に何かの間違い、認識の誤りであると明らかになったとき、需要能Wは縮小して不況や恐慌をもたらしてしまう。

 

 

独占や寡占、計画経済や指令経済は「需要側の状態が変動しても、()()()()()()生産量や生産規模が変わらない」状況だとする。

この状況の下では、品質の良い物は高くて手に入らず、安く手に入る物は品質の悪い物だという状態が生じてしまう。

 

私たちの行く路は、どれを選んでも征く先は問題だらけ。

誰かにとってのユートピアは、他の誰かにとってはディストピア。

…といったところで、ガングートの話はまた一区切りがついた。

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