鋼殻のレギオス~ご都合主義   作:ペコ

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第三話

入学式の翌日

 

実にいろいろとあった昨日とうってかわり、実にのんびりとした時間が流れていた。昨日のような騒動もなくカリアンからも連絡がないのでレイフォンはのんびりとリーリン+三人娘と過ごしていた。 時折そんなレイフォンにクラスの男子が殺意を向ける程度で(一般人なら居心地が悪いがレイフォンは鈍感である)なんらトラブルは起きていなかった。

 

レイフォンも学生生活を楽しんでいた。

このまま順風満帆、なんの問題もなく1日が終わるかと思われたが………

 

 

 

 

「すいません、ヴォルフシュテイン卿……」

 

「いえ……」

 

そうは問屋が卸さなかった。

 

 

 

 

放課後これから遊びにいこうとはしゃぐミフィに連れられて街に出たレイフォン達だったが、そこでゴルネオから昨日の件について呼び出しを受けて、共にカリアンの元に向かっていた。

 

「せっかく平和だったのに……」

 

グレンダンを離れたというのに自分はどうしてこうもいろいろと巻き込まれるというかやっかいごとがついて回るのか……

 

「御察しします……」

 

戦闘狂である兄サヴァリスをもちにたような思いに覚えのあるゴルネオはそんなレイフォンに同情の視線を向けた。

 

 

そんなこんなで昨日と同じく会長室にたどり着くと昨日と全く変わらぬ顔でカリアンが迎えてくれた。

 

「やあ、昨日の今日だというのにわざわざすまないね二人とも、実はゴルネオ君から問題が起きたと伺ってね。 それでレイフォン君にも来てもらったんだよ」

 

「はぁ……」

 

何故呼ばれたのかは理解したものの問題が何なのか検討もつかず曖昧に言葉を返すレイフォン

 

「では、問題について説明しよう。ゴルネオ君の話を総合して分かりやすくするとこうだ。 『弱い奴の下につく気はない』これがグレンダンからの武芸科新入生の意思のようでね」

 

「は?」

 

「要するに自分達より弱い小隊長の下になんか着けない、小隊入りを拒否するということだよ」

 

「成る程……」

 

確かにレイフォンについてツェルニについて来たのはレイフォンを

目標として毎日グレンダンでその腕を磨いてきた者達だ。

当然その質は高い、何せかなりの人数が実戦経験のある、グレンダンでも武芸者として認められたもの達だ。(そうでなければ武芸者というだけではそれほど優遇されない貧乏なグレンダンから留学することはできない)

 

「実は昨日ゴルネオ君に頼んで量ってもらったが、グレンダンからの新入生の技量は小隊員をやれるどころか隊長すら務められるレベルのようで辛うじて武芸科長ヴァンゼとゴルネオ君が張り合える程度らしい で、小隊入りのオファーをしたところ先のような返事が返ってきたのだよ」

 

そう言ってカリアンはため息をついた。

 

強力な戦力は欲しいが扱えないのであれば意味がない。

 

「実力的には合格のヴァンゼとゴルネオ君の隊では全員を受け入れられない。 そこで君には新しく隊を作るのでその隊長を務めて貰うことにした」

 

「隊長……ですか?」

 

レイフォンが戸惑いながらもそう呟くとカリアンは意地の悪い笑顔を浮かべていい放った。

 

「レイフォン・アルセイフ君。 君を新生第一中隊長に任命する」

 

それにゴルネオは固まり。

 

レイフォンは首を傾げた。

 

 

カリアンの発言、それはツェルニに新しい隊を(仕組みを)作るという前代未聞の発言だった。

 

「それならグレンダンからの新入生全員を受け入れられるし彼らもレイフォン君になら大人しく従うだろう」

 

とんでもない発言をしたというのに淡々とカリアンはその意図を説明していく

 

「小隊で駄目なら中隊を作ればいいのだよ、それに、むしろ今まで無かったのが不思議な位だね。 何せ武芸大会は互いの都市の武芸者全員のぶつかり合い、大規模戦だ。 なのに小隊単位でしか鍛練を行わないというのは不自然どころか不合理だ。 ならばこれを機に新しい制度を立ち上げるのも一興だよ」

 

カリアンが自分の考えをスラスラと述べていく。

 

「成る程、確かにヴォルフシュテイン卿なら十分に務まるでしょうが……」

 

と、そこでようやく硬直から回復したゴルネオがそう言って苦々しい目をカリアンに向けた。

 

「分かっている。 確かに昨日私が言った通りレイフォン君は1年生だ。 しかしそれはただの未熟な新入生の場合だよ」

 

「……つまり力があれば1年であっても隊長にして問題ないと?」

 

「ああ、武芸者は結局強者を重んじるだろう? それにこれまでにない試みなんだ。 若い、まだ可能性のある一年生こそ相応しいと思わないかい?l

 

「会長のおっしゃりたいことは分かりました。 が、どうやってヴォルフシュテイン卿の力を、実力を示すつもりです?」

 

「それについてだがこんなものを考えてみたんだよ」

 

そう言ってカリアンが差し出した紙には新入生対抗戦と書かれていた。

 

「ここでレイフォン君には思う存分力をふるってもらう」

 

「……こんなものは」

 

「うん、今までなかったけどね? 有望な1年を発掘する場として今回武芸大会で後がないこともあり開催することにしたんだよ」

 

 

そう言ってこちらを見るカリアンを見て、レイフォンは己の選択肢が無いことを悟った。

 

「詳しいルールは明日発表になる。 だが一応ここで説明しておこう」

 

そう言ってカリアンは大まかなルールを箇条書きにした紙をレイフォンとゴルネオに渡した。

 

「ゴルネオ君はグレンダンの生徒に今の内容を教えてやってくれたまえ。 今の内容なら彼らも納得するだろう」

 

「わかりました」

 

「では、レイフォン君もそれでいいかな?」

 

「ええ」

 

「新入生対抗戦は三日後に行う、急なことだが今年は武芸大会があるから仕方ないと諦めてくれ」

 

そう言ってカリアンは解散を宣言した。

 

 

 

 

生徒会長室を出たレイフォンは説明に行くというゴルネオと別れ、リーリン達と合流すべく歩きながら、カリアンから渡されたルールを読んでいた。

 

 

 

 

新入生武芸大会ルール

 

 

この大会は新入生のみの参加である。

 

基本的に個人戦である。

 

戦闘は新入生全員によるバトルロワイヤルである。

 

練金鋼(ダイト)は持ち込み自由である。

 

この大会は技量を確認するのが目的である。

 

最後まで残っていたものの勝ちとする。

 

閃光弾などの道具の使用は禁止である。

 

 

などなど、大まかなに見た限りたいして問題ないと感じたレイフォンはなんと言われるのか……と思いつつリーリンの元に向かったが……その途中

 

「あれは?」

 

光輝く念威端子を見つけた。

 

いや、見つけたという表現は正しくない、正確には気づいたと言うべきだろう、なぜならそれは隠れながらもレイフォンの後をついて来ていたからだ。

それにレイフォンが気づいたのは、彼自信の技量と闇試合に出ていたことにより追跡者の気配を察知する能力が磨かれていたことも大きいだろう。(後ろぐらいことをしている自覚はあったので尾行を気にしていたため)

 

相手の目的はわからないが、こちらを監視していることに気づいたレイフォンは罠にかけることにした。

 

「ん……」

 

何気ない風を装いながら人気のない路地へと入っていく、すると当然端子もついてくる。

しかし薄暗い路地で光を放つ物体は目立つ。

かなり距離も取っているし、並の、少なくともツェルニの武芸者では気づけないだろう、しかしレイフォンにはそれだけで致命的だ。

 

「さてと……」

 

回りに人気の無いことを確認したレイフォンは端子を押さえるべく動く

 

サイハーデン刀争術、 水鏡渡り。

 

静謐な超速移動。 次の瞬間にはレイフォンは端子を掴んでいた。

 

『っ!?』

 

端子から驚いた気配が伝わってくる。 しかしレイフォンはそれに構わず淡々と問いかけた。

 

「なにかご用ですか?」

 

『…………』

 

無言、端子からはなにも返ってこない。

 

「では一つ忠告しましょう。 なぜ僕を尾行しているのかは知りませんが………なにかしたら潰しますよ?』

 

しかし、そんなことは無視してレイフォンは己の意思を相手に伝える。 ただ淡々と感情の一切含まれていない声で

 

グレンダンと同じ対応をレイフォンは行う、相手も気づかぬうちに端子を奪われたことで実力は分かっただろう。 よほど愚かでない限りレイフォンにちょっかいを出してはきまい。

 

そう考えたレイフォンはリーリン達と合流すべく、先程と同一人物とは思えないほど慌てた姿で去っていった。

 

 

 

 

レイフォンが去った後、端子は再び浮かび上がると一人声を漏らした。

 

 

『……レイフォン・アルセイフ。 何者でしょう?』

 

そう言うと端子の持ち主は彼について詳しく調べるべく動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方レイフォンはというと

 

「まったく………」

 

「ご、ごめん……」

 

またもやカリアンに利用されているレイフォンにリーリンが呆れたような視線を向け、それにひたすらレイフォンが頭を下げていた。

 

「まーまー、それくらいにしときなよリっちゃん、それよりレイとん。 その話本当!?」

 

「う、うん。 さっき会長に言われたばかりだけど、今日の夜には発表するって……」

 

「そうか……ならアタシも準備しとかないとな」

 

「そうだね。 ナッキとレイとんは大変だね〜」

 

「けど、もう一つの話のほうが驚いたぞ」

 

「だね、中隊なんて初めて聞いたよ」

 

「ほんと、まさかグレンダンの生徒を受け入れる為だけにそんな制度を作るなんてね」

 

「一応、武芸大会に向けての対応策みたいだけど……」

 

「そんなの、方便に決まってるじゃん! 明らかにレイとん達のためだよね」

 

「そうだな……さすがグレンダン。 武芸の本場というのは伊達じゃなかったみたいだな」

 

「そうかしら? グレンダンでもレイフォンは例外よ?(天剣授受者だし)」

 

「それでも他の生徒もということはやはり実力が高いということだろう」

 

「そうね、じゃあレイフォン。 ちゃんと手加減するのよ」

 

「分かってるよリーリン」

 

そう言って睨んでくる幼馴染みに冷や汗をかきながらレイフォンは返事をした。

 

「よーし、じゃあ。 パーっと遊ぼうか?」

 

そう宣言したミィフィの言葉により、2日連続でレイフォンの運命は決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして三日後

 

 

「うう……厄介なことに」

 

三日後、試合を前に興奮する一年生の中でただ一人、レイフォンは暗い顔をしていた。

 

それというのも……

 

「無駄に怪我させたら駄目よ? させたら……わかってるわね?」

 

そう言って笑顔でこちらを見てきた幼馴染みのせいだ。

 

しかし確かにそれもあるが一番堪えているのが……

 

「「「ヴォルフシュテイン卿! 胸をお借りします!」」」

 

そういって気合いをいれたこちらを見てくるグレンダンの者達のせいであるところが大きい、何せ周りからも奇異な目で見られるはめ

になるのだから試合前からレイフォンのHPはガリガリ削られていた。

 

「なあ、レイとん。 大丈夫か?」

 

心配してナルキが声をかけてくれるが、気休め程度にしかならず、実は密かに人気のあるナルキに声をかけられているのを見て、一部の生徒が嫉妬に狂った視線を向けてきたりと、逆効果であった。

 

「胃が痛い………」

 

グレンダンでは悪意や嫉妬の感情には慣れていたが所違えばそれもまた違う。 レイフォンはそれをしみじみと実感していた。

 

 

「では、全員入場してください」

 

そこでようやく、時間になったのか放送が始まる。

 

係員の声を受けて全員がぞろぞろと移動する。

 

これでやっと開放されたと思ったレイフォンだったが、あれよあれよと人混みに流され、気づけばグランドのど真ん中にいた。

 

「あれ?」

 

しかしはっとしたときにはもう遅い。

 

「それではぁ! 試合開始ぃぃぃいい!」

 

アナウンスの声が響きわたり、全員が動き出した。

 

そして真ん中にいたレイフォンにほぼ全員が襲いかかる。

 

ぼうっとしていたレイフォンだったが、戦闘となればスイッチが切り替わる。

 

『外力系衝剄の変化 竜旋剄』

 

レイフォンを中心に竜巻が発生する。

 

それは不用意にレイフォンに飛びかかった数人の生徒を巻き込み、内部の衝剄の嵐に巻き込む。

 

慌てて止まった生徒達にも悲劇は襲いかかる。

 

『外力系衝剄の変化 九内雨』

 

凝縮された剄の刀が、周囲に降り注いだ。

 

竜巻が収まった後には十数名の生徒が倒れていた。

 

「「「「うわあああああ!!」」」」

 

それをみて歓声が上がる。

 

しかし砂煙が晴れて見るとそこにいるはずのレイフォンがいなかった。

 

観客が驚愕する。 もちろん同じグランドにいた者達も同様だ。

 

しかしそんなことでレイフォンは止まらない。 戦いのスイッチが入ればレイフォンは強く、そして余計な感情はカットされる。

 

追撃が為される。

 

『外力系衝剄の変化 気縮爆』

 

突然大気が歪んで爆発を起こす。

 

「「「っつ!?」」」

 

それによって爆風が吹き荒れ、野戦グラウンドは砂煙に包まれた。

 

そして……

 

「うわっ!?」

 

「なっ!?」

 

「ちっ!」

 

「がはっ!」

 

誰もが視界を奪われ動けない、そんな中でレイフォンだけが動いていた。

 

動けずに立ち止まっていた生徒が次々と昏倒させられていく中で、グレンダン出身の生徒達は冷静に対処する。

 

それでも何人かはレイフォンにやられた。

 

 

 

しかし、流石はグレンダン、集団戦においてはおそらく世界一だろう、彼らには衝剄を重ねる秘技があった。

 

『撃てぇ!』

 

一人の号令とともにいつの間にか集まっていた十数人から一斉に衝剄が放たれる。 それらは巧みに配置され、遅いもの早いものとが空中で合わさり威力を増していく、 そしてその効果範囲は広い上に、その威力は汚染獣をも倒すため未熟な一年生では下手したら死者が出ただろう。

 

しかし………

 

「面倒な……」

 

それをさせないのが天剣授受者レイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフだ。

 

『外力系衝剄の変化 閃弾―渦』

 

刀から放たれた衝剄はあっさりと複合衝剄をかき消した。

 

 

 

続く連撃

 

 

『活剄衝剄混合変化ー鳳仙』

 

レイフォンが無数に分裂する。

 

無数に分身したレイフォンが次々と技を放つ

 

『外力系衝剄の化錬変化ーー朧月夜』

 

形の定まらないぼんやりとした衝剄が飛び出すと次々と変化、会場を一変させた。

 

『『『『『!!???』』』』』

 

 

次の瞬間現れたのは闇夜だった。 レイフォンが化錬剄で作った剄が会場の照明を覆い、灯りをシャットアウトしたのだ。

 

視界を奪われ、しかしそれでも動こうとした彼らを物質化した剄が阻む

 

『外力系衝剄の変化ーー刃鎧』

 

天剣授受者カルヴァーンの技だ。 さっきの朧月夜のとき撒いた剄で作ってある。

 

視界、それに加えて動きまで封じられた彼らは的も同然だった。

 

 

有り余る剄力と豊富な技。

 

圧倒的な力でレイフォンは勝利した。

 

そして上手く出来たと喜ぶレイフォン。

 

 

しかしその後会場を真っ暗にしたことによりメイシェン怖がらせてしまったと怒られてへこむ姿からは威厳も何もなかった。

 

 

 

そして表彰式が行われ、ツェルニの生徒に第一中隊の発足が告げられた。

 

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