鋼殻のレギオス~ご都合主義   作:ペコ

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第六話

目の前で崩れゆくニーナをレイフォンは冷静な目で眺めながら、ちらりと入口に立てかけられた壁時計を一瞥する。通常では見ることのできないであろう距離であるが、内力系活剄で強化されたレイフォンの目はそれをたやすく確認する。

 

(4分58秒か……少し早かったかな)

 

カリアンと約束した時間は5分、2秒ほど早かった。

 

わずか2秒ではあるがレイフォンは自身の体内時計が狂っていたことに不快感を覚える、老生体との戦いは下手をすれば数日にも及ぶ、わずかなズレも死につながる世界ではーー天剣授受者にとってそれは決して看過できるものではなかった。

 

「き、き、決まったぁああああああ!! なんとあの第17小隊隊長であるニーナ・アントークを打ち破ったのは期待の超新星(スーパールーキー)レイフォン・アルセイフだぁああああ!!!!」

 

崩れ去るニーナを確認して司会者が叫ぶ、と同時に会場の観客がどよめいた。

 

ニーナがあまりにあっさりと敗れ去った事実に動揺したモノ、レイフォンの実力に驚嘆したものなど理由は様々であったが驚きが大半を占めており、カリアンやリーリンが恐れていたような恐怖という感情は見られなかった。

 

 

 

 

 

ーーーしかし、それは未熟な武芸者や一般人のみの話である。

 

 

「な……なんだあれは!?」

 

小隊長達が集まっている控室では驚きの声が上がっていた。しかしそれは当然だろう、自分たちが良く知るニーナ、一年生にして小隊員という快挙を成し遂げた実力者があっさりと倒されたのだから。

 

「俺みたいなタイプならともかく、鉄鞭を使うニーナを一撃かよ……」

 

特に自分の隊にいたこともあって、ニーナのことをよく知るシンの驚きはひとしおだった。

 

ニーナのスタイルは基本は専守防衛だ。重厚な二振りの鉄鞭によるガードはまさに鉄壁、そう簡単に崩せるものではない

 

(それをああも、あっさり崩すかよ……)

 

一合剣を振るっただけで武器としてはかなりの頑強さを誇る鉄鞭を砕き、返す刀でニーナを昏倒させるなど並みの力量ではない

 

(ニーナが武器を破壊されたことで動揺していたことを差し引いてもあの速さは異常だぜ……)

 

なにせ一瞬でニーナの背後に回ったそのスピード離れた場所から俯瞰で捉えていたというのに一瞬見失ってしまっていた。内力剄活剄の大部分を視力の強化に回していたというのにだ!

 

「こりゃ……俺でも相手にならねえな……」

 

そう呟いたシンの声を控室にいた全員が聞き取っていたが、それを弱気と断ずることは誰もできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、すごかったねーレイとん!」

 

「はっと気づいたら相手の人が倒れてるんだもん」

 

「強いのはこの前十分に思い知ったつもりだったがこうして見るととんでもないな……」

 

「あら、そう?いつもこんな感じだったけどなぁ」

 

一方、観客席でも三人娘+リーリンが姦しく騒いでいた。

 

「えー、グレンダンでもあんな感じだったの?」

 

「ええ、おかげで小さいときからどんどん上に上がっていちゃって、ろくに勉強もしなかった結果がこれよ…」

 

そう言ってため息をつくリーリン

 

レイフォンがあまりにもバカな為学園都市に来たと説明されている三人はそのセリフに苦笑するしかない

 

「お!次の試合が始まるみたいよ!」

 

ミィフィの声と共に第二試合がスタートし四人は再びグランドに視線を戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第14小隊隊長シン・カイハーンだお手柔らかに頼むぜ」

 

「レイフォン・アルセイフです。よろしくお願いします」

 

二人の挨拶は割と本気なシンのセリフからスタートした。

 

「ま、ギャラリーもいるし、気楽にやろうぜ、な?」

 

「はぁ……」

 

気さくに声をかけてくるシンに、先ほどのニーナやヴァンゼのような真面目な人間、というイメージを小隊長に持っていたレイフォンは戸惑いながらも頷いた。

 

 

「両者構え!」

 

しかしその戸惑いも審判の声に従い互いに構えた時点で消失した。先ほどまで纏っていた軽薄な雰囲気はなりを潜め、無言でこちらを見つめながら己の武器であるレイピアを構えるシンの姿が見えたためだ。

 

(戦いと普段とでは切り替えるタイプか……)

 

そこまで考えたところでレイフォンに戦闘態勢に切り替わった。思考が研ぎ澄まされ、余計な雑念は消失する…自然と顔は引き締まり、先ほどまで感じていた胃の痛みも忘れる。

 

 

 

 

「それでは試合ぃいいいい!開始ぃいいいいい!!」

 

先ほど同様、司会者の絶叫と共に試合は始まった。

 

 

 

外力系衝剄の変化ーー点破

 

「っつ!?」

 

開幕早々からシンが仕掛けた、様子見など考えていない本気の一撃だ。

 

突き その一転に特化された構えから突き出されたそれはわずかな遅滞もなくレイフォンを襲ったが、驚きつつもレイフォンは躱した。剄の動きが見えるという反則ものの特技を持つレイフォンには技の前兆が丸見えだったのだ。

 

しかし自慢の一撃が回避されたと見るやシンは動揺することなく次の技を繰り出す。

 

外力系衝剄の変化……点破 連の型

 

 

威力を下げた代わりに一気に五発もの衝剄が放たれる。しかもそれらはいやらしく間合いを取って広がっており、必ず一部は命中するという技の意図が透けて見える攻撃だった。

 

それをレイフォンが受けるか、避けるかした隙に必殺の一撃を叩き込もうと構えたシンだったが、レイフォンが取ったのはそのどちらでもなかった。

 

サイハーデン闘争術 畳み返し

 

色々と突っ込みどころのある技が発動すると同時にシンが放った点破は全てレイフォンの目の前で反転、シンに襲い掛かった。

 

 

「っな!?」

 

自らが放った技がそのまま返ってくるというありえない状況に驚いたシンが動揺し隙を見せてしまったのは仕方がないともいえる、しかしそのわずかな意識の間隙をついてレイフォンの一撃がシンを襲った。

 

外力系衝剄の変化 点破

 

「!?」

 

剣という違う武器でありながらもシンの点破を放ってきた。その時点でも驚くべきところだが、さらに凄いのは一度しか見ていない技を一瞬で自分のものにしたそのセンスだろう。

 

結果、二重の驚きを受けたシンは上手く衝撃を受け流すことができずに吹き飛んだ。

 

普通であれば自らが放った技にやられるようなシンではないが、自分の攻撃+レイフォンの攻撃を受けたのでは堪らない、それでも咄嗟に技の威力を受け流したのは流石であるが完璧にはいかず吹き飛ばされた。

 

「ぐっ!」

 

多少なりとも威力を受け流したお蔭かなんとか意識を保っていたシンだったが、吹き飛ばされながら彼が見たのは自分に襲い掛かる衝剄の雨だった。

 

 

レイフォンが使った技、畳み返しの原理は鍛錬法である、押し合いの応用である。しかしそれには莫大な剄量の差が必要な為、常人には使用不可能な力任せの技である。

 

そんなことを知るはずもないシンは襲い掛かる衝剄により意識を刈り取られた。

 

 

「あ、しまった……」

 

なお、思わず追撃をかけてしまったレイフォンは気絶するシンを見て五分立っていないことに気づいたが後の祭りだった。

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