ガタンゴトン……ガタンゴトン……
「ふむ、大幅に遅刻してしまったな……」
腕時計を見ながら前のめりに電車の扉の前で急ぐ。そんなさなか、薄い緑色のストレートヘアな私の前髪のズレを、色白の指先でちょんちょんと撫でて整える。
「急がなければ……! っと、すまない!」
「私こそ、ごめんなさい!」
電車を降りて、駅で走る私。金髪でリボンをつけた赤目の女の子とぶつかり、お互い謝る。不思議な合間が空き、ぶつかった相手の子はくすりと笑った。私は理由がわからず、首を傾げる。って、そんなことをしている場合では……!
お互い、向かう方向は逆なのだろう。そのまま反対方向に駆け出す。
私は綺羅星ステラ。そして、私の夢は__
「ちょっと、ステラ! 遅いですわよ!」
「すまない、あこちゃん。だが、ステージには間に合った」
「待ち合わせに遅れてるのですわ! まったくもう、連絡くらいは入れなさい!」
「うむ、善処する」
なんとか目的地にたどり着いた私は、幼なじみの早乙女あこに怒られていた。今日は、あこの推しのすばるきゅんがいる「M4」というユニットのライブに来ていた。待ちあわせはあこちゃんのため相当早くに予定されていたのだが……寝坊しちゃったのである。
「これからステージですわ! いきますわよ!」
「あぁ!」
そうして、私とあこちゃんはライブを見に大きな建物へと足をすすめた。
「すばるきゅーん!!」
あこは、大手を振るって応援している。私も、「M4」のライブに飲み込まれていく__そして、「M4」の服やデザイン。それから前で応援してるあこちゃんの着こなしや周りの女性のいいなと思った服。それを片っ端からメモをとる。
「ふふ、やはり参考になるな……!」
__綺羅星ステラ、デザイナーを目指して。アイカツ、頑張るぞ!
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桜降る春の日。
私は四ツ星学園の門の前にたっている。四ツ星学園の制服を身にまとって。
門の横には、入学式を告げる看板が立っていた。
「本当にここにこれから通うんだ。四ツ星学園……!」
これからここに通うんだと感動してると、後ろからこちらへと向かってくる足音がした。
「ちょっと、何ぼさっとしてるんですの!」
「おっと、すまない」
後ろからあこちゃんがやってくる。正確には、私が急に駆け出して立ち止まったわけだが。
「全く、急に駆け出したかと思えば……また小石につまづきますわよ!」
「あぁ、心配をかけてしまったか。ありがとう、あこちゃん」
「ふん!」
言葉には棘があるけど、実はかなり思いやる子で面倒見がとてもいい。あこちゃんは本当にすごい。
あこちゃんに尊敬の念をいだきながら、学園の中へ私は踏み入った。
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「クラス、別れちゃったね」
「ええ、そうね。べ、べつにわたくしは寂しいなんて思ってないですわ」
ふーん……そう言いつつも、あこちゃんを見れば寂しいと感じてるのがわかる。あこちゃんはわかりやすい。
「私は寂しい。でも、頑張ってね。あこちゃん。クラスは別れても、一緒だよ。私も、夢のために頑張るから」
「えぇ! ふふっ、すばるきゅーん!」
いっちゃった。それじゃあ私は……うーん、とりあえずクラスに行こっかな。
「わわ、こんなにたくさんの人が……」
クラスにつくと、クラスは先生がまだ来ていないからかワイワイガヤガヤとざわめいていた。
流石にうるさいなぁと思いながら席につく。隣には紫色の髪の子が座って__!?
「すまない、きみ。ちょっとじっとしていてくれ」
「え? えぇっと……」
「ふむ、このバランスと髪質から花飾り……うむ。実にいい」
常備しているメモ帳に、私はしっかりと隣の子のスケッチをとる。キラキラ輝く眼鏡に、整った顔。そしてとってもきれいな花飾り。その全てをメモにサラサラと描き映していく。
「急な対応、すまない。とても感謝している。これはお礼にあげよう」
「え? わぁ……すごい! とってもよく書けてる! でも、もらっていいの?」
メモを渡されて動揺しているその女の子に、紙を押し付けながら笑う。
「問題ないさ。メモいっぱいもってるから。私、綺羅星ステラ。かわいいあなたの名前は?」
「かわっ!? えと、七倉小春だよ? よろしくね、ステラちゃん」
小春ちゃんっていうんだ。ふむふむ……うん、覚えた!
「よろしくな、小春」
と、ここで教室のドアが勢いよく開く。先生が来た。
みんな一斉に静かになって慌てて席につく。ちゃんと早めに席につこうね。
「皆さん、ご入学おめでとうございます。私は皆さんの先生になります。前園カリンと言います。普段は事務員ですので、おそらく皆さんとの関わりはクラスの担任のみになります。よろしくおねがいしますね」
「「「よろしくおねがいします」」」
「では早速、学生証とアイカツモバイルを渡しますね。どちらも、皆さんのアイカツに必要不可欠なものですから決してなくさないようにしてくださいね」
眼鏡をかけた深い緑髪のカリン先生が自己紹介をさらっと済ませると、さすが事務員というべきか。テキパキとクラスのみんなの名前を呼んで学生証とアイカツモバイルを渡していく。わかりやすくよく通る声、そして的確な配布によって配布はあっという間に終わった。気がつけば、私の手には四ツ星の学生証とアイカツモバイルフォンがある。
「さて、ではこれから今日の予定ですが。もう今日は特に何も指示はありません」
さて、配布が終わったカリン先生はいきなりとんでもないことをいいだした。
「えっ」
「ふふ、びっくりしました? もちろん、だからといって何もしないのでは一切成長はありません。この学校では自己判断や自己鍛錬……所謂、セルフプロデュースに重きをおいているのです。ですから、行事やイベントがなければ私の方から指示を出すことはありません。自らが考えて動いてそれぞれのアイカツを楽しんでくださいね? 質問はありませんか?」
そう、あっさり言うカリン先生におずおずとクラスの内から手が挙がる。おどおどしている茶色の髪のショートヘアな女の子だ。
「あのぉ……まだ、学園のこと何もわからないのに。セルフプロデュースって言われてもわからないですよぅ……」
「ふふ、いきなりそんなこと言われたら戸惑ってしまうのも無理はありませんよね。でも、ご安心ください」
ニコッとカリン先生がわらうと、まるで周囲に花がさいたような気がした。事務員な先生のはずなのにアイドルのようだ。
「先程配布したアイカツモバイルを取り出してください。新入生向けの案内アプリがありますので、そちらを参考にセルフプロデュースしてくださいね。それでは、あとは解散。各自取り組んでください」
んー、よし。さっそくスクールドレス、作ろうっと。
私は、案内にしたがって各所を見て回りながら予定の場所に行ってスクールドレスを作ろう。
「お、はじめまして。新しい子かな? ここがドレスメイクルームで……ちょ、ちょっと?」
先輩が新人のわたしに教えてくれようと来てくれたけど……ごめんなさい。
実は、ドレスメイクについては夢だからとかなり学んだのだ。えっへん。ささーとセッティングして、入学前からデザインを考えてたオリジナルドレスを……よし。
「えーと、これがこうで。よしっと……完成!」
「君、飲み込み早いね……って、そんなスクールドレスあったかしら?」
「あ、これは私がデザインしたドレスです。入学前から考えていまして」
それを聞いた先輩は驚いて出来上がったドレスを見る。
四ツ星学園をイメージしたキラキラした星を散りばめた黄色のドレス。これは、M4がステージで着ていたドレスを基にしてあこちゃんの着こなしを参考に、自分なりのアレンジを加えてみたのだ。
「すごい、良く出来てるわね。普段から研究してるのがよくわかるわ」
「ありがとうございます。私、S4になって自分のブランドを立ち上げるのが夢なんです」
「そうなんだ、頑張ってね」
はい! と勢い良く元気に返事をして、廊下へと去__
「それはそれとして、スクールドレスを受け取ること。スクールドレスのみのステージがあるし、レッスンもスクールドレス指定の場合があるから」
「あっ。ご、ごめんなさい!」
さっと踵を返すようにUターンして、私はスクールドレスを受け取りに戻った。
スクールドレスを受け取って裏庭へと出ていく。すると、たくさんの人だかりが進行方向とは逆に走っていくのが見えた。
「S4のひめ先輩がドラマの撮影にでていくんですって!」
「ひめ先輩が見られるかも!」
「早くいかなくちゃ!」
ドタドタドタドタドタドタ…………
「……元気だなぁ」
あこちゃんにとっての「すばるきゅん」と、彼女らにとっての「ひめ先輩」は似たようなものなのだろう。本当にすごいと思う。
憧れがあるか、否か。私とあこちゃんの大きな違いはそこだと思う。私には「すばるきゅん」のようなあこがれはない。ただ、私にあるのは……私の作ったドレスでアイドルや観客をキラキラ輝かせたい。そんな、ちょっとぼんやりとした夢。
私はドタドタと走り去る女の子たちに敬礼をして、夢に思いを馳せる。
「……反対に、行けばいいかな」
女の子たちが走り去ったのと、逆の方向へ抜けていく。白鳥ひめ。私にはすこし眩しい存在にわざわざ会いにいく必要は、私にはなかった。
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ゆめside
「早く去らないと、警察呼びますよー」
「むー!!」
「あっはっはっは! ゆでダコみたいでやんの!」
私は、カンカンに怒っていた。女の子に向かって重いとか、ひどい!! それに、ゆでダコって……!
もう、四ツ星学園に男子寮があるなんて聞いてないよぉ……
やーい、ゆでダコーと言って笑う彼に私はますます腹がたった。
「ほら、早くどっかいかないと警備の人をよびますよー」
「むっかー! 言われなくてもどっか行きますー!」
そうして、走り去ろうとした私は誰かとぶつかった。薄い緑髪の人形さんのような女の子だ。
「失礼する」
「んあ? ここは男子寮だぞ?」
警戒をしているように、彼はにらめつけて言い放つ。初対面だからってそんな顔しなくても……
「知っている。失礼する」
緑髪の子は、そのまま速度を変えずにまっすぐ女の子は男の子に向かっていく。
そして、男の子の足を払っ__ええ!?
「うおっ!?」
足を払われ倒れる男の子を女の子はあっという間に支え、再度たたせた。一瞬の出来事過ぎてもうわけがわからないよ〜。
「これでよし。無理しちゃだめですよ?」
「んあ……? あ、あぁ、わりぃ」
「応援してます。失礼しました」
嵐のように女の子は去っていった。何だったんだろう……あれ? メモ帳が落ちてる?
「これ……」
「俺のじゃねぇぞ。さっきのやつが落としてったんじゃないか?」
男の子のものかと思って聞いてみると、違うらしい。あ、後ろに名前がある。《綺羅星ステラ》……?
「……届けなきゃ!」
「おう、行って来いよ、ゆでダコ」
男の子にアカンベーしてから、私は緑髪の彼女を追いかけた。
《カリン先生プロフィール》
前園カリン
24歳、152cm、誕生日9/12、血液型A型
出典元:プリコネR
眼鏡をかけた深い緑色の長髪が特徴の先生。
四ツ星学園の事務をこなす職員であり、「幹部」の総合顧問を努め、さらに研究生のクラスを担当する。
ほとんどの先生が事務仕事を彼女になげてしまっている。そのため彼女の言うことに反対できる人材は限られており、真面目に自分の仕事を自分でこなしている学園長くらいのものである。
筆者曰く
「事務仕事をする先生が見当たらず、ほぼこの先生のためにプリコネRタグとクロスオーバータグをつけた」そう