ゆめside
「でも見つかんなくってさぁ……どこいったんだろう」
手帳の落とし主が見つからなかったので、寮に帰った私はその日の出来事を同じ部屋になったこはるちゃんに話していた。
「そっか。それなら私が渡そうか?その子、私のクラスで隣の席だから……」
「そうなんだ!?うん、それじゃあおねがい!これ、きっとすごい大切なものだから!」
小春ちゃんに今日のことを伝えたら、知り合いだったみたいで受け取ってもらえた。
「そういえば……この手帳の中ってみたの?」
「うん。ちょっとだけ。でも、服やデザインのことばっかりだったなぁ」
「ふふ、その子はデザイナーになりたいんだって」
「デザイナー!?すごい!」
デザイナーってことは、ドレスを0から作るんだ……とっても楽しそう!
よーし、私もアイカツ頑張るぞー!
* * *
ステラside
念の為、男子寮を見に行ったら予想とは別の問題が起こっていた。毎年男子部の存在を知らないで迷い込み騒ぎが起こるときいたが、ひとまずはこれで大丈夫なはずだ。
その後、外に出て学園近くの保育園を狙い声掛けをしたところ、なんと快く承諾をいただいて子ども達と退園時間まで遊び回った。私なりに考えたセルフプロデュースだったが、新たなグリッターも手に入れられた。結果的に大成功だと言えるだろう。
そして、寮に帰ると……なんと、幼馴染みのあこちゃんと同じ部屋だった。
「あなたと同じ部屋で良かったですわ。うふふ、すばるきゅんのグッズ、いっぱい置かせてもらいますわ」
「ふふ、構わない。」
「ステラ、ありがとうございますわ!」
幼馴染みだけあって、遠慮はいらない。とでもいうかのようにあこちゃんがグッズやポスターを並べていき、部屋はたちまち「すばるきゅん」グッズであふれかえる。
「私のものは……ここに……よし」
愛用のリストバンドを順番に並べる。
下の大きな引き出しには腰巻きも入れて……
「ベッドは私は下、あこちゃんは上。いい?」
「なっ、どうしt「じゃあポスター剥がすぞー」わかりましたわ!もう!だから、すばるきゅんグッズに手を出すのはやめてくださいまし!ふしゃー!!」
うむ、わかってもらえてありがたい。
そして私はベッドの下の潜り込み、バレないようにそっとポスターを……
「何してるんですの?」
「んー、秘密。まぁ見ても困るものじゃないしいいけどね」
あら、バレてた。まぁ、別に問題はない。見られて困るものではないから。
「どれどれ……あら、ただのM4のポスターじゃないですの。それなら……うん、ここなら貼ることを許可しますわ!」
「え、いいの?」
「ふふん、M4好き同士持ちつ持たれつですわ!」
ありがたい。堂々と私はポスターを部屋に飾った。
「そういえば今日、遅かったみたいですけど何をしてたんですの?」
「あー、男子寮にあこを探しに行ったけど会えなかったからね」
その一言で、ピシャリと空気が固まる。
「にゃ、ニャニャニャニャ!?にゃんですってー!!!あなた、私をおいてあのM4がいる男子寮に行ったんですの!?」
「ごめん、あこちゃんが『すばるきゅん』暴走してそうで心配で……」
「失礼な!私が『すばるきゅん』だけで暴走するとでも!?」
「…………」
はい、とても暴走しそうです。
普段からあこちゃんは素直じゃないけどしっかりものだし、常識もあるし、面倒見もすごいいいんだよなぁ……『すばるきゅん』が絡まなければ。
過去にも本人が認めない、気が付かないだけで今まで何度か『すばるきゅん』暴走をしている。後始末は私がしてたけど。
しかも、本人は気づかなかったけど。
「それで……その『すばるきゅん』のことだけど。多分女の子を助けて、足を捻挫しちゃったみたい。応急処置はしたけど、明日はお仕事休むんじゃないかな?」
「にゃ、にゃにゃにゃ……朝早い撮影のために、登校前に『すばるきゅん』を見送る予定がぁ!」
そんなこと考えてたんだ。今日来なかったしきっと大丈夫だって思ってた。幼馴染みながら、油断ならないなぁ……
「しかもその女、『すばるきゅん』を傷つけたのですわよね!むっきー、許せませんわ!」
「だからって、変にちょっかいださないこと。ケガなんてもってのほかだからね。
許せないのは、私も同じだから、さ」
「ステラ……えぇ、そうですわね」
釘は一応指したけど……こらえきれないのか、拳をぐっと握りしめていた。あこちゃん……うん、駄目だ。話を逸らそう。
あはは、と軽く笑って私は話をふった。
「まぁ、その後は小さなステージの準備、ライブ、片付けしてから遊んで、帰ってきたって感じだよ。」
「え、もうステージこなしてきたんですの!?」
「うん、保育園の皆と一緒に踊ってきたんだ!みんな笑顔で可愛くて楽しかった!」
「ほ、保育園……そう、ですの」
なんか顔がひきつってる。なにか間違えたかな?
どう話せば伝わるだろう、と少し唸って引き出した答えは、1つ。
「これが、私のアイカツ」
「え?どういうことですの?」
「保育園だろうと、小学校だろうと、学校のステージでも、大きな舞台でも……同じ、ステージだ」
伝わっただろうか?あこちゃんの方を見ていたら、首を傾げていた。
「そうかしら?大きな舞台の方がいいにきまってますわ?」
んー、あんまり伝わらないかったかな?どう言えば伝わるかな……あっ、そうだ。
「あこ、ステージに『すばるきゅん』がいたらどんなステージでも良いステージだと思うでしょ?」
「当然ですわ!すばるきゅんはどんなステージでも輝いてますわ!」
「そんなあこちゃんにとっての『すばるきゅん』みたいに……ファンにこたえられるアイドルになりたいんだ」
これならどうだろう?ちらりと見たあこちゃんは下を向いて黙って……「ふしゃー!」あ、やばっ痛いイタタタタタ!
「全くもう!いくらあなたでも、『すばるきゅん』は超えられるわけないですわ!」
「うぅ、イタイ……」
顔を引っかかれちゃった……暴走、こういうところなんだよなぁ……
「もう夜も遅いし、寝ますわよ!」
「あこ……うん、お休み」
* * *
翌日。登校した私達はそれぞれのクラスへと別れた。
それで、今日は授業という名のレッスンがあるのだが……
「ワン・ツー・スリーフォ~ん~いいぞ、けどまだ君たちはやれるだろう!」
カリン先生は事務のため、レッスンは別の先生が担当することは聞いていた、聞いていたのだ。
そして、小太りの男の先生がきた。小春曰く、すごい有名な方らしい。まぁ、まだそれもいいのだ。有名な方に教えてもらえるなんて、とてもありがたい機会だ。
「燃えろアイカツ!ステップのキレが甘いぞ!君たちのアイカツはそんなものか!__」
なんだか、めちゃくちゃ暑苦しいんだけど!!
* * *
アイドルレッスン中…
* * *
「お疲れ様。小春」
「ありがとう……うぅ、私全然だめだったなぁ。ステラちゃん、すごいね。息ひとつあがってないし、ダンスも先生も褒めてたよ」
「ん、私は昔からやってるから」
レッスンを終えて疲れて座り込んでる小春に水入りのボトルとタオルを差し出すと、小春は受け取って水を口にした。
「誰だってはじめからできるわけじゃない。ひとつひとつ、着実に覚えればいい。私もはじめはだめだった」
「そうなんだ……あ、そうそう」
「ん?あ、それ……」
小春はジャージのポケットに手を入れてメモ帳を取り出した。……とても、見覚えのあるものだ。そして、それを私に向けてはい、と差し出した。受け取って裏表紙を見れば私の名前がある。ってまって、ヤバい待ってこれまずい!
冷や汗を書きながら小春に聞き返す。
「中、みた?」
「ちょっとだけ。すごいね、いろんな服がまとめられてる」
「そ、そう。良かった」
……あまり機会がないため、昨日木に登って落ちていた女の子の下着やソックス、その着こなしなんかをメモ帳に書いていたのだがそちらに関してはとりあえずバレていない、のかな。とりあえずホッと胸を下ろす。
「ありがとう。そうだ、お礼もかねて……」
「え?ステラちゃん?……んう、すごい、よく効く……」
私は小春の背中側にまわると、マッサージをしてみた。って、かたっ!?
「……今日お風呂入るときに再度マッサージをすること。このままだと、筋肉痛で酷いことになるよ」
「そうなんだ、教えてくれてありがとう」
レッスンを終えて、そんな水分補給やマッサージをしている私達だったが……
レッスン室の扉が突然開け放たれる。そうして入ってきたのは事務員であるはずのカリン先生だ。
「研究生の皆さん。お披露目ステージのため制服に着替え、ホールに集合してください」
あの激しいダンスレッスンのあとにステージとか本気?いやまぁ、私はいいにしてもクラスの大半沈んでるけど……
「ステージか。よし、頑張ってみよう」
「……私、動けるかな?」
「小春、動ける動けない、じゃない。やるんだ」
「あはは……」
* * *
そうして、研究生が控室に集められた。うん、私のクラスの殆どまだ回復しきってなくて座り込んじゃってるけど。
そこで、こちらによってくる人影があった。
「小春ちゃ~ん、って……」
「ゆめちゃん、この人は同じクラスの……」
私が小春とともに控室に行くと、こちらに歩み寄ってくる黄色い髪の先端にメッシュをかけた……まさに昨日見た人がいた。
パチクリさせてお互いにじっと見つめ合い__
「あ、男子部で木登りして落ちた人」
「あー!手帳の子!」
お互いを指差すのだった。
「そっか、ふたりとも知り合いだったんだね。ゆめちゃん、この子が私の隣の席の__」
「綺羅星ステラ。ステラでいい。よろしく」
「私、虹野ゆめ。よろしくね、ステラ」
「ん、よろしく。ゆめ」
と軽く自己紹介を終えた私は……ゆめにタックルをかまして軽く押し飛ばした。
「ふしゃーー!!!」
「きゃっ!?」「ゆめちゃん!!」
さっきまでゆめがいた場所をあこちゃんが引っかきに飛んで来ていたのだ。ほんとにあこちゃんの暴走はどうにかしたいものだが……はぁ、言わないとね。
「あこちゃん、これからステージだから人に怪我させるのは駄目。退学騒ぎは起こしたくない」
「だって……!」
「だってもでももなし。私だって、怒ってるの我慢してるんだから。こらえて」
とりあえず幼馴染みをなだめて、転倒させてしまったゆめの手を取る。
「すまない、怪我はないか?」
「大丈夫、ありがとう……ちょっと!危ないじゃん!」
「私の大事な『すばるきゅん』を傷つけておいてどの口がもがもが」
話がややこしくなってきたので私はあこちゃんの口を手で抑えた。今するべきは幼馴染みの迷惑行為の謝罪だ。
「すまない、こいつのことはきつく叱っておく。今の行為は決して許されることではない。
だが、ゆめ。君が昨日したことも許され難いものであることを覚えておけ」
キョトンとするゆめを横目に、あこがステージに呼ばれる。順番を聞いてる限り寮の順番であることから、おそらく次は私のはずだ。リストバンドや腰巻きを外して近くの机に置いてステージの準備をする。
「次は私だな。ステージの準備をする。失礼する」
「ちょ、ちょっと……!」
戸惑うゆめをおいて、私はステージへと去った。
「なにか事情があるのかも。今度、私から聞いておくよ。ゆめちゃんに対して、ふたりとも怒ってるみたいだし……」
「うん、そうだね……お願い、小春ちゃん」
* * *
ステージ……せっかくだし、ドレスメイクしたドレスでアピールしていこう。クールでピッシリ決める、私らしいイメージのドレス__『スターラインコーデ』で。
「キラキラきらめけ、綺羅星ステラ!」
いつもとは違う掛け声で、私はステージへと飛び込んだ。
「まるで夢のダンスだね ココロが踊りだしていくよ」
うん、練習通り。でも、練習通りじゃだめなんだ。
私の個性……私の努力。
「個性の光を結んだら 星座になる 魔法のきらめき グリッター」
枷は、危なかったけど準備の時間が取れたからしっかり外せた。
「これからも よろしく」
だから、体を壊さない程度に全力に!
……
「アイドル活動__」
__これが、私のアイカツ!!!
突然、ステージが夜に切り替わる。空には輝く星々。
そして、私を中心に回る星々が、私を。そしてステージを照らす。
「ワントゥースリーでアイカツ なんてったって青春」
仮説だったし、保育園ステージでもやろうとしたのだが失敗しちゃったこのステージ。うまくいくなんて思わなかったからちょっとびっくりしてステップを踏み間違えたが、なんとかこらえる。うん、大丈夫!
「こころざし高く……Let's Go!」
最後はぴしっと、パーフェクトに『スタークールチャーム』が決まって……フィニッシュ。
瞬間、ステージがわぁっと歓声で溢れかえる。まるで地震が起きたかのようだった。
「……新人、だよな?」
「すごい子きちゃったゾ!」
「今年は面白いことになりそうね」
「綺羅星ステラ……どこかで……」
「ふぅ……ありがとー!じゃ、次の子に変わるよー」
うん、私も無事。ちょっとつまづきかけたのを除けばいいステージができた。やろうとしてたことがしっかりできたのも大きな収穫だ。体に支障は今のところない。
でも、やりたいこと全部はできてない。もっと面白いステージのためにアイカツ、頑張らないと。
そう思ってステージをあとにした。
さて、終わったあとは舞台袖からこっそり……次は小春ちゃんか。……うん、緊張しすぎ。
一皮剥けるまで時間がかかりそうだけど、素材がいい。一皮剥けるのが楽しみな逸材。かな。
そして、次が、あの虹野ゆめ__っ!!
私がこれほどの衝撃を受けたことは初めてだった。
私の
発声なんてできてないのにむりやり引き出される声。ステップもよく見ると無理な筋肉の使い方をしてる。それなのに体は悲痛を表に出さない。
そして曲が終わったとき。ゆめは崩れ落ちた。無理もない。そして、それを予見したS4のひめ先輩が珍しく人を運ぶ。場は完全に静まり返った。
__あれほど、悲しいステージを見たのは久々だった。
「__で、どうするの。お兄ちゃん」
「……見極める。
彼女がこの学園にふさわしい人物かどうか。ふさわしくないのであれば……」
「切り捨てる。うん、久々にあってもお兄ちゃんで安心した。それじゃ」
「まて。このことは一切口外しないように」
「ん、当然。じゃあねー」
《綺羅星ステラプロフィール》
中1、140cm、誕生日12/25、血液型O型
薄緑のショートヘアな女の子。目は赤い。
早乙女あことは幼馴染みの親友。あこちゃんのおこす『すばるきゅん』暴走を裏でたびたび火消ししている。
なにか力について知っているようだが……?