「私は香澄真昼。よろしく」
「綺羅星ステラだ。よろしくな、真昼」
自己紹介から初めたあと、二人でやるステージの内容を考えるが……
「……内容、決まらないね」
「うん……すまない」
難航していた。新入生のステージはあのS4も見るステージになる。私も、真昼も。いい加減なステージなど納得できるわけがなかった。
お互いがお互いの意見を出していくが、まとまらなかった
「ファッションショーステージなら、真昼のいいとこが出せると思うんだけどなぁ」
「やりたいけど、アンタの実力じゃ足手まといよ」
「……『今の』私ならそうだな」
私は、立ち上がった。真昼ちゃんもやりたいのなら、答えなんて一つだろう。
不思議そうに私を見る真昼をしっかりと見て、覚悟を決める。
「私、今は実力不足だ。けど、頑張って身につける! だから、ファッションショーをしよう!」
私の覚悟の言葉を聞いた真昼は、ため息をつきながら私に事実を述べる。
「……間に合う? あと、私から教えるのは嫌。そんなことしてたら、お姉ちゃんに追いつけない」
「わかった。自分なりに色々頑張ってみる」
そう言って、初日の合同練習は終わった。
__経験がないから、何だ。
私はすぐさま図書館でファッションショーについての本をいくつか読み込み基本を学ぶ。ペラペラと、一挙一動をまたたく間に記憶。ある程度コツが必要なところはメモを取ったら、すぐさま空き部屋をさが……埋まってるなあ。もう、お昼だし。と、食堂へ向かうことにした。
ふむ……曲は、せっかくだしEpisode soloにしようと提案して……あ
「小春ー……あ」
小春のそばには、ゆめがいた。一緒に食べるのは無理かなぁ……とあきらめたその時、後ろから馴染みのあるはっきりとした声がした。ふりかえれば、そこにはあこちゃんがいる。
「あなた、今日はだれかと一緒に食べるのですの?」
「ううん、誰とも食べないよ。あこちゃん、一緒に食べよ?」
「し、仕方ありませんわね。一緒に食べますわよ」
二人でお昼を食べることに。話は自然と、二人で行うステージの話題になった。
「あこちゃんはどうするの?」
「ふふん、ちょっとした劇をしますわ! 私のペアも劇組志望でしたのよ」
うーむ、あこちゃんらしい。ドラマや劇が好きなんだよねあこちゃん。すばるきゅんが出てればチェック必ずするし、他にも恋愛ドラマや朝ドラは録画もして見てる。私は演技とか苦手な方だから、よくわからないけれど。
「ところで、あなたはどんなステージをする予定ですの……って、その本と何か関係が?」
「あ、うん」
本の表紙にはS4の夜空先輩が写っており、ファッション雑誌であることが読み取れる。その本を私が手にとってあこちゃんに見せるようにもつ。
「ファッションショーをすることにしたんだ。私は知らない世界を知ることができるし、パートナーの子がより映えるから」
「意外ですわね。そういうの、あなた疎いですのに」
「これから知るの。勉強と同じだよ」
そういう私に、あこちゃんがため息をつく。不思議そうに見つめる私に、指をぴしっと指して言い放つ。
「ファッションは、そんなに甘くありませんのよ! 今現在の流行やトレンドを普段から逐一チェックして、それからコーデをあわせて服を魅せるのですのよ! 決して着ている自分が出張っていたらファッションショーにもなりませんわ!」
そう言われた私は、気がつく。
そう、服を魅せる。それがファッションショー。
しかし、参考の一つとした夜空先輩は服や着こなしを見せつつ個性も殺していない。自然体を魅せている。
「……あっ」
私はアイカツモバイルを取り出す。一度撮った、相方真昼の足取り。その足取りは違う。けど、個性を出す……真昼の明るいところを出すタイミング。夜空先輩と同じだ。私もこのタイミングでいいのかも。
あ、香澄って同じ苗字……同じ苗字?
「あ、この子……」
「ふぇあ!? あ、あこちゃんいきなり覗き見しないで……びっくりした」
「失礼しましたわ。ところで、その子が相方ですの?」
驚く親友に、私はうなずく。そんな私に、あこちゃんは続ける。
「ほんとあなた、くじ運がいいんですのね。その子、香澄夜空先輩の妹さんですわよ」
「……へ?」
私にしては、珍しく気の抜けた声がでた。
* * *
私は、その後は私なりに特訓を続けた。そして、成果も得られた。
私は運動部のようなすらっとした小柄な体型だ。それが、私なりに少なからずコンプレックスであった。最初の頃は、この体型できちんと魅せられるかすら不安に思った。でも、ちゃんと身につけたウォーキングの技術や魅せ方を身につけていくにつれて実感が湧いてきたものだ。
実は、きっかけもあった。それは、あこちゃんから衝撃の事実を知らされた後のこと。
夜空先輩が真昼の姉と伺ったからと、美し組に組活動しにいって来た。他の組ではきちんと練習に参加できていたけど、この組の練習は私も全然できなかった。歩くたびに落ちる水入りの1Lペットボトル。何度か落ちたその時、ついに__
「__きゃっ!?」
破裂した。驚いてこけた私に、誰かが手を差し伸べてくれる。ありがとう、と言いながら手を取った私に__
「ふふ、どういたしまして」
「えっ__」
ほっぺに手を触れてこちらをじっと見つめる夜空ちゃん。
その大きな目に私が映るくらい、近くにいる。そのまま吸い込まれているかのように。何故か体は動かず……私はぼうっと夜空ちゃんを眺めていた。
「ふぅん……昔からあなた、とっても頑張り屋さんなのね。努力の重ね方がとっても綺麗。でも……自分に対して悩みがある、そんな感じかしら」
「えっ、なぜそれを……」
私は何もいっていないのだが。
「私、肌を見れば大体のことがわかるのよ。前にもいったでしょ? ステラちゃん。そうね……後でお話、しましょう?」
心を読んだかのような言葉に私は、大きくうなずいた。
そして、レッスン後……学園そばのお洒落なカフェで、夜空ちゃんと同席した。
「久しぶりね。こうしてゆっくり話すのも」
「ですね。急でびっくりしましたよ」
「だって、困ってるステラちゃんを見るのなんて珍しいじゃない」
「私だって困りますよ」
そんな軽口から始まって、ついにコンプレックスについて話をすることになった。悩みながら話した私に、夜空ちゃんは笑いながらこう返したのだ。
「あら? 私はむしろ小さくて可愛らしくていいと思うわ」
「え?」
私は、目を丸くしていた。そんなふうには考えたことがなかったのだ。
「あのね、背や体つきって他の誰にも真似できない。そう、あなただけのものなの。私は背が高いから、あなたみたいな小さく愛らしく見せることってとても難しいのよ? むしろ、それを武器に自分を魅せるといいと思うわ」
真剣に、私の悩みにこたえてくれる先輩。みんなと違って悩んでいたけど、おかげで答えが見えた気がした。
「……私だけの、武器」
「ふふっ、参考になったのなら幸いだわ」
そう言って、夜空ちゃんは仕事があるから。と、去っていった。
それから、私らしいクールでカッコいい魅せ方を追い求めた。そして、ある程度まとまった私は真昼を呼び出した。
「はぁ……? あんた、私とファッションショーをするって、まだ考えてたの?」
ため息混じりで話す真昼。それもそのはず、普通はたった3日でそんなには変わらない。
「うん。だから、見てて。私の歩きを」
それでも、万全に準備を。練習を重ねてきた。きっとできるはず。私らしい、クールな歩きを。
「……次はないから」
それだけ言うと、見てくれる気になったようだ。
さて、それじゃあ……キラキラきらめくよ!
* * *
私のウォーキングが終わった真昼は、呆然と私を見ていた。
「これなら、二人でできるでしょ?」
「…………して」
「ん?」
なにかをつぶやく真昼に、耳を傾ける。
「どうして、そんなにウォーキングを頑張ったの? 別に、適当にやったっていいじゃん。新入生なんだし失敗くらいしても__」
「そんなの、きまってるじゃん」
真っ直ぐ、真昼の目を見る私。真昼の目は戸惑うように目が泳いでいた。
私は真昼と、本気のファッションショーステージをしたいの。だから、頑張った」
「っ!?」
真昼は驚いたように息を呑む。そして、うつむくとガクガクと震えるように立っていた。
「あ、あの」
バリーン
「……はえ?」
突然、真昼がどこからか現れた山のような瓦をチョップで見事に真っ二つにした。
そのあと、スッキリとした様子で私と向き合う。その目はまっすぐ私をみていた。
「こんなの、みせられたらやるしかないじゃない。二人で最高のステージしましょ?」
「! もちろん!」
* * *
こうして、二人のファッションショーステージが決まった。それからは、二人で練習を重ねる日々があっという間に進んでいく。
そして、迎えた本番当日。
「準備はいい?」
「もちろん。このステージでも、キラキラっときらめくよ!」
「よし、いくよ……!」
私は、私らしさを求めて自らアレンジしたドレス。漆黒の夜にきらめく雪。そしてその上に光り輝く星があしらわれたクールタイプのドレス
『スターダークスノーコーデ』
対して真昼は、色鮮やかな赤が映えるドレスにネックレスやシューズがキラキラひかるセクシータイプのドレス『クリスタルナイトスターコーデ』
そうして決めたドレスで、二人は舞台に立つ。
* * *
「アウトロが、終わると__」
__不思議だ。
練習も、何度も合わせてきた。でも、本番になって更に変わっている。
「イントロが、流れてくる__」
本番、雰囲気が張り詰めたしっかりした足取り。次にする行動がはっきりわかる。
「「次の曲へ」」
私達、息ピッタリ__!!
全くずれることもなく、自然と息ぴったりでステージを進む。練習したからではない、一体感のようなものがそこにはあった。
「孤独をおそれない 女の子がいる」
「同じ 勇気を持ってる」
「「仲間がいる」」
ずっと練習だったけど。これから、もっと話して互いを知っていきたい。絶対に相性がいい。そんな確信を、私はステージで持つのだった。
* * *
ステージ終了後。真昼を探しているとクラスメートと話す真昼がいた。
「さっきのステージ、すごかったよ! 流石、夜空先輩の妹だね!」
「夜空先輩にどんなふうに教えてもらったの? 私も教えてほしいなぁー」
「…………」
なにかを探るような物言いや態度のクラスメート、それに怒りを覚えながら歯を食いしばるように耐える真昼。
それを見た私は、間に入った。
「そんなに、夜空先輩のことが知りたいの? なら、一つ言われたことを教えてあげるわよ」
「やったー!」「まってました!」
ほんと、単純な人たちだ。
「『自分自身は、自分だけの武器』これだけよ」
「え?」「なにそれ?」
「さ、いこ?」
きっと、クラスメートたちにはわからないであろう一言だけ述べて真昼の手を引っ張るように、私達はその場を去った。
「その、ありがとう」
「気にしないで。真昼、頑張ってるもんね」
真昼をひっぱったあと。外は晴れていて、裏庭の時計をみると、おやつのじかんをすぎたあたりのようだ。そんなお昼下がりの裏庭のベンチに、二人で腰掛ける。
「あの二人、見る目ないねー。真昼は真昼なりに頑張ってるんでしょ?」
「うん、でもどうして……?」
不思議そうに私をみる真昼。私はほほえみながら、ウォーキングについて調べて気づいたことをかえす。
「夜空ちゃんのウォーキングと真昼のウォーキング、全然違うもん。真昼は真昼で頑張ってるってよくわかるよ」
「夜空ちゃん?」
「おっとごめん。夜空先輩、夜空先輩」
うっかりした。危ない危ない。
「……ステラは夜空先輩の妹、って言わないんだ」
「実は友達に言われて知ったんだよ私」
「なにそれ」
笑いながら軽口を言い合う私達は、陽だまりのなかで輝いていた。