きらびやかなステージの上。
客席には、私のイメージカラー。《白色》のサイリウムが振られている。
舞い散る雪のように輝いて、とてもきれいで……忘れられない景色。
白く輝くドレスを身に纏う私は、精一杯輝こうとして。憧れの母のようになりたくて。
わたしは、母の真似をして……
意識はそこで途切れた
* * *
組分けオーディション。
花の歌組、鳥の劇組、風の舞組、月の美し組。
花鳥風月からなる4つの組から一つを選んで所属する。もちろん落ちることもあり、そうなると無所属になる。無所属でアイドルを続けても組に所属する人達とは雲泥の差があり、知名度に差が出る。そのため、人気アイドルへの道は一気に遠のく。これも、四ツ星学園のセルフプロデュースの一環である。
そんな組分けオーディションが、もうあと一週間に迫っていた。
そんなある日の朝。悪夢でも見たのだろうか。汗びっしょりで跳ねるように起きた私が真っ先に見たのは、心配そうに見つめるあこちゃんだった。
「あこちゃん……?」
「ステラ、大丈夫ですの?とても、うなされていたようでしてよ?」
「そっか……心配させてごめんね?」
気分の悪い感覚はあるものの内容は覚えていない。心配させたくないため、私は話題をかえることにした。
「あこちゃんは、女優だし劇組に入るんだよね」
「もちろんですわ!ステラはどこに所属しますの?」
……あっやばい。墓穴ほった。
ふとした返しに私は視線をそらす。そんな私をあこちゃんが訝しむようにじっと見つめている。
「…………」
「……ほんとのところどうなんですの?」
隠し切るのは無理だ、と判断した私は大きく息を吐いてじつは……とあこちゃんに事情を説明した。
「あれだけ組活動を荒らしておいて、所属したい組がまだ決まってない!?ステラ、もうのこり一週間ですのよ!」
おっしゃるとおりで……
* * *
そうして、私は再度組活動を回ってみた。どの組の練習もストイックに練習を積むステラは、問題なくやり遂げた。しかし、その先に組を決める決定打がなく。
身の回りの友人として小春や真昼に希望を聞いてみたら、即答で美し組と答えられた。いや、人気すぎやしないか。私は感覚的に、美し組は私の目指すアイカツとは違うため弾いている。消去法、というと聞こえが悪いものの。歌組、劇組、舞組の3つが選択肢だ。
それぞれ、組活動の終わった夕方。夕日の輝く海辺の公園のベンチに私は座り、ぼんやりと夕日を眺めていた。
「……どうしよう」
誰も聞いていないだろう。そう、ぼんやりとつぶやいただけだ。
「お困りのようだね、お嬢ちゃん」
はっと、後ろを振り返る。そこにいたのは、夕日を浴びてこちらににこやかに微笑みかける、金髪の王子様__
「お聞かせ願えるかい?」
__《
「…………」
一体、いつからそこにいたのか。私にはさっぱりだった。それでも、胸に抱えたものがあるのは事実だ。そう、判断した私は
「ふーむ、とどのつまり。組が決まらない、ね。うんうん、この時期だとよく聞く悩みだね」
気づけば、悩みを話していた。
「そうだね。君は、何がしたい?」
「私は、《本物
すぐに答えがでたことに、五十嵐先輩は驚いているようだった。でも、すぐにもとの綺麗な笑顔に戻って続ける。
「本物、って?」
「私のステージを見てくれた人を、笑顔にできる。勇気を届けられる。本物のアイドル」
「そっか……素敵な夢だね。応援してるよ」
笑われる、と思ったら応援してくれるといって笑顔で去って__
「ま、まって!」
「おや?どうしたのかな?」
ふと、湧いた疑問で彼を引き止めた。
「どうして、そんな笑顔ができるの?」
「えっと……?」
これに尽きた。
幼い頃から、アイドルとして歌って踊ってきた私。人付き合いも少なく、テレビ関係者と幼なじみのあこちゃんくらいのものだ。
それだからか。アイカツを仕事として割り切ってきたわたしは、こんなにも笑顔でいられない。その頃、クールビューティーなんて言われたけど……ただ、笑えない。それだけだった。
だから、不思議に思ったのだ。どうしてそんな笑顔でいられるのだろうって。
「そうだね。楽しいからだよ」
「楽しい……」
そんな、私の悩みに。彼は少し考えてから応えてくれた。答えがわからなかったけど。
「そうだよ。楽しいから、人は笑うのさ。今も、俺は君というアイドルが本物になる。そんな日を考えたら楽しくて楽しくて」
「……わかんないや」
「ふふ。いつか、アイカツを続けたらわかる日が来るさ」
それだけいって、彼は仕事があるからと去っていった。
「……決めた」
私は、寮に戻ってドアを開ける。あまりの勢いからか、あこちゃんが驚きながらもこちらを見ている。
「あこちゃん、受ける組決めた!!!」
「あーいたいた。おーい望ー!」
「すばる。まさかこんなところまで探しに来てくれたのかい?」
俺たちM4のリーダー、結城すばるが探しに来てくれたようだ。まぁ、それもそうだろう。撮影の休憩中に抜け出してきたのだから。
「ったく。休憩ももう終わりだぞ。こんな外れで何してたんだ?」
「迷えるお嬢ちゃんのエスコートさ」
「あの子はスペックは高いけど、まだまだ未完成ってところかな。ふふ、これからが楽しみだ」
これが『綺羅星ステラ』としての始まりだと知るのは、後々の話。
* * *
それから、あっという間に組分けオーディションの日になった。
みんながみんな、組に入るために全力を出していく。
そんな中、女優を目指すため劇組を目指すあこちゃんのステージ。流石と言わんばかりの、圧倒的なステージだった。
その後、小春やゆめのステージが終わり、最後の大トリが私になった。__お兄ちゃんの仕業なのか、S4の仕業か、どっちかはわからない。
かなりのプレッシャーだ。それでも、私は全力を出すときめた。
つい数日前に決めたのだけど。
私には入りたい組があるから__!
私は、力を使わずに入学時のステージでも踊った『アイカツステップ』のステージへ進む。コーデも前回と同じ。でも、前回と違うのは……入りたい組へと向けた、キレのあるステップと躍動感ある動作。
それは、例の力を使った入学時のステージと比べると劣るものだ。それでも現時点で動ける限界ギリギリ。練習もずっと積んだもの。それを完璧に決められた。アピール届いてるといいけど……
* * *
全てのステージが終了した。私達研究生は体育館に集められ、結果を待つことになる。
自然と、あこちゃんと私は合流し、隣の席で一緒に聞くことになった。
「みんな!とてもロックでいいステージだったよ!それじゃ、早速合格者を発表するぜー!」
「……くせの強い先生ですわね」
「今更だよ」
研修生の先生のリーダー、歌組の教師アンナ先生が教壇に立った。
……見ればわかるほどに、いつ見てもロックな先生だなぁ。流石元S4。
「まずは月の美し組からだ!」
元々、花鳥風月の順……つまり歌組からの発表だった。しかし、花の歌組の応募がとても多いことから逆になったのだとか。
「成績最高得点を叩き出し、トップで組に入ったのは……香澄真昼だぁっ!!!」
「やっぱり……」
「見ていて圧巻のステージでしたわ」
みていて、吸い込まれるような仕草や動作が、結果につながったと感じる。彼女の努力は私に近い、凄まじいものを感じる。
「さすが、S4の夜空先輩の妹さんですわ……」
「……
「ふみゃ?」
伊達に幼馴染をしていない。急に怒気を含んだ物言いに、あこちゃんは呆気にとられたようにポカンと口を開けていた。
「真昼のステージ、とても素晴らしいものだった。それを成し遂げたのは、真昼自身。夜空先輩は関係ない。
褒めるのはいい。素晴らしいステージだったから。でも、そこて夜空先輩の名前を出すのは、彼女の努力に対する冒涜」
理由を、きちんと説明する。あこちゃんはいい子だ。だからきちんと言えばわかってくれる。
「……そうですわね。悪いことを言ってしまいましたわ」
「ん。わかってくれてよかった」
うん、あこちゃんはいい子。嬉しかったのでとりあえずあこちゃんの頭を撫でる。
「ちょ!? ちょっと、か、髪が崩れますわ!」
「あ、ごめん」
「もう!」
顔を真っ赤に怒るあこちゃん。悪いことしちゃったな、
と、そんなやり取りをしているとうしろからフフフッと笑い声が。
後ろをみると、楽しそうに笑う真昼の姿があった。
「アハハッ。ステラ、早乙女さんは照れてるのよ」
「何言ってるんですの!?って、聞いてたんですわ!?」
「そりゃ、そんなやり取り目の前でしてたら耳に入るわよ」
どうやら聞かれていたようだ。いや、気が付かなかった私達が悪いのだが。
「うぅ……でも、まずはそう。先程はあんなこといってごめんなさい」
「大丈夫、ステラに言われてでもわかってくれたんだもの。ステラも、ありがとう。わかってくれて」
「べ、別にあなたのためにいったわけじゃない」
急にお礼を言われて恥ずかしくなった私はそっぽを向く。
「最後に、七倉小春!以上が月の美し組だぜ!」
おお、小春ちゃん美し組に入れたんだ。すごいガンバって練習してたものね。
「次に、風の舞組のメンバーを発表するぜ!成績トップで舞組に入ったのは……綺羅星ステラだ!!全体の完成度も去ることながら、緩急をつけたキレッキレのステップは見事だったぜイェー!」
……あ、私だ!
「………やった!」
「おめでとう、ステラ。急に風の舞組に決めて驚きましたけど、無事決まって何よりですわね」
「おめでとう、ステラ」
喜ぶ私、ともに喜んでくれるあこちゃんと真昼ちゃん。
なんだかもっとうれしくなった。
あこちゃんも劇組をトップで通過。
残る歌組のトップは、昔遊んだことのある桜庭ローラ。ちなみに、私の目指すゆめはというと……歌組ラスト。ギリギリ合格だ。
「ゆめ、あなたは……どこに行くのかな」
「あの子、たしかすばるきゅんに怪我させた子ですわ……歌組ですのね。絶対にゆるしませんわよ」
「……ほどほどにすること」
私は、あこちゃんへの受け答えはほどほどに。
劇組になった私。歌組ラストとはいえ加入した本物……虹野ゆめ。そして、各クラストップで躍り出た仲のよい友人たち。新たな時代の幕開けへ移る予感に。新たなるアイカツの始まりに心が震えるのでした。