生身の方が強いボーダー隊員   作:myo-n

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まとまりきらなかったので2部に分けます。


第4話---①

「……っ」

 

振動と共に胸に鈍い痛みが走り、目が覚める。

 

『目的地、到着』

 

操作板に到着と表示されている。

どうやら起動してからずっと気を失っていたようだ。

どのくらい寝ていたんだろうか。

 

傷の痛み具合からして結構経ってると思う。

 

「とりあえず……医療キット探すか」

 

あと食料もあればいいんだけど……

 

痛む体を気合いで動かして船内を一周する。

武器庫、医療所、食糧庫、さらには娯楽室まで……この遠征艇は割と上等な物らしい。

 

奴隷戦闘兵とかになると武器庫と食糧庫しか無いからなぁ……

限界まで人を詰め込む為の遠征艇とは大違いだ。

 

「包帯包帯……あった」

 

消毒液のような物もあったので拝借しておく。

さて、痛いだろうけど包帯変えるか……

 

包帯を外して傷口に消毒液をかける。

 

「……っ!!」

 

沁みるなんてレベルじゃない。

焼けるように痛い、けど我慢……!!

 

ズレないように包帯を巻く。

 

「……ふぅ」

 

何とか包帯を巻き終わって服を着直す。

そのままこの場で寝転んでもう一眠り……といきたいけど、お腹が大きな音を鳴らしている。

 

「何か食べないとな……」

 

食糧庫に向かい、適当に漁る。

レーズンとかあれば最高なんだけど……

 

「全部レーション……」

 

しかも全部ゼリー系。

神はいなかった、おーまいごっど。

 

……仕方ない、食べるか。

よいしょっと。

 

うん、まずい。

 

「ごちそうさま」

 

お腹は膨れるけど味は最悪だ。

はぁ……まともな食事がとりたい。

 

「よし、これでしばらくは待つかな」

 

トリガーでトリオン体に換装する。

これで傷の事は心配しなくていい。

 

「さてと、何処に着いたのかなっと」

 

立ち上がって操縦室に向かう。

地球に着いていてくれたら嬉しいんだけど……

 

そして操作板を触って星間地図を立ち上げようとした時、アラートが鳴り響いた。

 

「一体何が……」

 

星間地図の立ち上げを止め、急いで周囲の情報をモニターに映し出す。

どうやら、トリオン兵に囲まれているらしい。

 

「まずいな」

 

遠征艇を破壊されたら地球に戻るのがかなり遅れてしまう。

急いで何とかしないと。

 

操作板を使って外に出る。

 

「くそ、場所が悪い……」

 

谷底のような場所で、前と後ろにモールモッドとバムスターがバランス良く並んでいる。

 

それに外に出て気づいたけど、誰か見ているな。

モニターとレーダーに映らなかったという事は何らかの隠密機能を使っているんだろう。

 

という事は、ただ倒すだけじゃ駄目だ。

普通に敵と思われて終わりだ。

 

だけど、幸いな事に今の俺は装置を取り出したから奴隷じゃない。

だから流れの傭兵だと思わせれば何とかなるはず。

その為に、自分の力を見せつけて価値を証明する必要がある。

 

波紋ニキ達も俺の戦いを見たいようだし丁度いい機会だ。

 

「トリガーオフ!」

 

生身に戻ると傷が痛む。

この治り具合だとまだ全力は出せないな……出せて7割か。

まぁこのくらいなら生身でも片付けられる。

 

あとは……ド派手に倒さないとね。

 

「水の呼吸、参の型・流流舞い」

 

流れるような足運びでモールモッドの核をすれ違いざまに斬る。

傷は……よし、開いてないな。

流流舞いが行けるならアレまでいけるか……?

 

「雷の呼吸、壱の型・霹靂一閃───十連」

 

高速でバムスターを真っ二つにする。

さらに地形を利用して壁を蹴り、加速をつける。

これで後ろのバムスター達は殲滅できた。

あと一体。

 

「炎の呼吸……」

 

刀を上段に構えて呼吸で気を練り上げる。

足に力を込めて地面を踏み抜く。

 

ん……波紋ニキ達が騒いでいるな。

これから使う技が何か分かったようだ。

 

「奥義、玖の型────煉獄ッッッ!!」

地面を抉るように直進してバムスターを粉砕する。

 

これで全滅だな。

周りを見るが、追加のトリオン兵はなさそうだ。

ブレードをしまい、ライブを終了する。

 

「……っ」

 

傷口が痛い。

ちょっと無理してしまったようだ。

トリオン体に換装しないと。

 

「トリガーオン」

 

さて、どう出てくるか。

即攻撃みたいな脳筋じゃない事を祈るしかない……。

特にアがつくやつは駄目だ。

 

周りに残党がいないか確認するフリをしていると、誰かがこっちにやって来た。

 

「貴様は何者だ」

 

出てきたのは黒コートの男。

良かった、知的そうな目をしている。

というか……何で角生えてるの???

 

「私は傭兵だ。先日契約主が国もろとも滅んでしまった故、放浪中だ」

 

「ほう……スレイブルクか」

 

「そうだ。お前は誰だ?」

 

顔がどんどん険しくなっていってる。

まさか……

 

「我が名はエリン家当主が忠士であるヒュース。スレイブルクは我が国が滅ぼした。貴様は報復が目的か?」

 

マジか……最悪すぎるたろ。

しかもあの国を滅ぼしたって事はここは……

 

「つまり……ここはアフトクラトルというわけか」

 

また面倒な事になった。

これは返答を間違えたら戦闘になる。

 

「とぼけるな、傭兵ならば敵地ぐらい知っているだろう」

名前ぐらいしか知りません。

だって奴隷なんだもの。

 

「落ち着け……私は報復など興味は無い。逃げる際に深手を負いここに流れ着いただけだ」

 

「ならば傭兵がどうして我が国の遠征艇に乗っている」

 

殺気が徐々に出てきている。

 

奪いました、何て言ったら終わりだ。

ここは慎重に嘘をつかないといけない。

 

「この遠征艇を発見した時には既にそちらの遠征隊と思われる者共は死んでいた。あと少しで国が崩壊していた為、止むを得ずキーを拝借して使ったたけだ」

 

「ふっ……にわかには信じがたいな。あの国に送り込んだのは精鋭しかいない。崩壊寸前の国如きに全滅させる力があるのか?」

 

「事実、死んでいた。彼等の遺品もある……ちょっと待て」

 

換装を解いて生身に戻る。

傷が痛いが顔に出したら駄目だ。

 

懐から彼等のドッグタグを取り出して彼に投げ渡す。

あの時全員漁っておいて良かった。

 

彼は俺の傷とドッグタグの両方を見ると、殺気を収めた。

 

「……いいだろう。ひとまず殺さないでおく」

 

「感謝する」

 

「だか……貴様を信用するとは言っていない。敵対行動を取れば殺す」

 

「分かった」

 

度が過ぎるくらい用心深い。

ボロが出ないようにしないと。

 

「ついてこい」

 

「あぁ」

 

---

 

「で、そいつを連れてきたという訳か」

 

「はい、この者の処分は如何しましょうか」

 

ヒュースに連れてこられたのは、大きな屋敷だった。

きっとここがエリン家なのだろう。

そして……今目の前にいるのがエリン家の当主。

 

今まで色んな偉い奴らを見てきたが、良い目をしている。

それに、家の大きさから見るにかなりの権力を持っているに違いない。

 

「傷を負った生身でトリオン兵を殲滅する傭兵か……俄には信じがたいな」

 

物凄い疑いの目を向けられる。

まぁ、当然の反応だ。

ただでさえ生身で戦うメリットなんて無いのに怪我してるなんて追加要素があるんだ。

俺が同じ立場でも絶対疑う。

 

うーん……となると、あの方法がいいかな。

 

手を挙げて発言する。

 

「私に提案がある」

 

「貴様に発言権はない」

 

「ヒュース、大丈夫。話を聞こうじゃないか」

 

「感謝する。提案と言うのは……模擬戦だ。私は生身、そちらはトリオン体。木刀などの非殺傷武器で戦い先に一撃与えた方の勝ち。どうだろうか?」

 

トリオン体にはトリオン以外でできた武器は通じない。

しかし、ある程度のノックバックは生じる。

これなら相手側に損失が無く、勝敗も分かりやすい。

 

「ほぅ……面白い事を言う」

 

当主が少し考える素振りを見せる。

正直この案を却下されれば他の案がない。

飲んでくれよ……

 

「……分かった!君の言う条件でやろう」

 

「ありがとうございます」

 

「そうと決まれば直ぐに手配しよう。少し待っているといい」

 

「了解した」

 

提案を受けてもらえて良かった……。

 

傷は痛いだろうけどやるしか無い。

幸い先に一撃を与えれば勝ちだ。

それに勝てなくても、生身で戦える事を証明できれば────

 

「しかし──ただやるのも面白くないから条件を設けようか。僕が勝ったら……家に仕えるなんてどうかな?」

 

「……え?」

 




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