刹那サイド
僕達はあれから校舎の端へ移動し、目の前に広がる雑草のジャングルを眺めていた。
「うっわ・・・用務員は何をしてたんですか?酷いですよコレ」
僕は雑草を指差して言った。すると先生が顔をしかめて話し出す。
「いや、最初はこんなんじゃなかったんですよ。でも最近科学部の生徒達が新しい薬を作って草に試したらこうなったんですよ・・・」
「確か・・・一つの物を複数に増やす薬だったかしら?」
「え、それ何処のひみつ道具?」
部長の付け足しを聞いて思わず言ってしまった。っていうかそれは最早ノーベル賞物だよね。この学校の人達にはロクな連中が居ないよ・・・。僕はゴミ袋と鎌を持って雑草を刈り取り始める。
「ま、何時まで言ってても始まらないしさっさと終わらせましょう」
「そうね、では活動を開始するわ」
部長の合図に残りの部員が動き始め、作業を始める。
〜数分後〜
「う〜ん・・・やっと十分の一かな・・・?」
「そうですね〜・・・これでは夜になりますよ・・・」
〜更に数分後〜
「慣れてきたからペース早いな〜・・・」
「そうね、あと二分の一と言った所かしら・・・」
〜またまた数分後〜
「セツナ、私達も手伝うぞ?」
「いや、大丈夫だよ。もう終わるからさ。
〜数分後〜
「お、終わった・・・」
「何とか間に合いましたねぇ・・・」
「と言うかコレは科学部にやらせる事なのではなくて・・・?」
「さ、桜さん生きてるっすか・・・?」
「・・・」(返事が無い。只の一年生の様だ・・・)
ようやく作業を終えた頃には疲労困憊の助部メンバー達と僕が居た。特に桜は運動が苦手で十香達も見ていて疲れたのか寝ている方々もいらっしゃる。只、鳶一さんだけは知らない内に草の詰まったゴミ袋を焼却所まで運んでおいてくれてたけど・・・。僕達は十香達を起こして部室へ戻った。着替えた僕達は帰る支度をしていた。そんな中部長が僕を呼び止める。
「刹那、貴方何か大切な事を忘れているのではなくて?」
「・・・まさかとは思いますけど今からティータイムにしろと・・・?」
「ええ、分かってるでしょう?私は夜の方が本領なのよ」
分かってたけど・・・分かってたけどさ・・・。そう、この部長は夜に活発に動ける様になる。理由?それは簡単です。彼女は人間では無く《吸血鬼》だからです。何でも数千年以上続く吸血鬼の一族の生き残りなんだとか。人間の年齢を軽く超えているらしい。因みにこの人の執事さんも狼男なんだよね・・・。でも僕は吸血鬼じゃ無いしもう帰らないと我が家の我が儘シスターと使い魔がお腹を空かしていると思うから帰らないと・・・。
「部長、今日はもう勘弁してもらえませんか?明日なら良いですかr「ダメよ。今日にしなさい」・・・マジですか」
「・・・なら今夜、夕食が終わったら私の屋敷まで来なさい。其処で紅茶を入れれば許してあげる」
「あ〜・・・じゃあ9時頃になるけど良いですか?」
「ええ、その代わり時間は守りなさい?」
「・・・はい」
と言う訳で僕は夜に行く事になったが・・・相変わらずこの人の理不尽命令はキツい・・・。そんな事を思いながら僕達は揃って帰宅した。
〜数時間後〜
天宮市の町外れの山中にそびえる屋敷・・・その前に僕は立っていた。取り敢えず指定の時間は間に合ったけど・・・。そう思いながら屋敷のインターホンを押すと男性の声が聞こえて着た。
『どなた様ですか?』
「本日アルカード先輩に呼ばれました五河です」
『そうですか、ではお入りください』
男性の声がそう言うと屋敷の門が勝手に開き、中へと道ができる。僕はその中を進んで行った。その先には花が植えられたテラスで椅子に座っている部長が居た。僕は部長に挨拶する。
「部長、お待たせしました」
「時間通りだから気にする事無いわ。それじゃあお茶を入れて頂戴」
「畏まりましたお嬢様」
先輩にそう言って彼女の執事であり、先程の声の主である《ヴァルケンハイン》さんにティーセットと茶葉を借りてヴァルケンハインさんに教えてもらった通りにお茶を入れる。そしてティーカップに紅茶を入れて部長に出した。
「どうぞ、部長」
「ええ、頂くわ」
そう言って部長はゆっくりと紅茶を飲み始める。暫くすると飲み終わり僕に話し掛けて来た。
「ヴァルケンハインに比べたらまだままだけど十分に美味しいわ」
「ありがとうございます・・・それで本題は?」
僕の言葉に部長は真剣な目付きになった。そう、こうやって僕を屋敷に呼ぶ時は必ず大切な話がある時だ。部長は話し始める。
「貴方の中に眠るその力は何かしら?」
「?化身とかの話はしましたよね?」
「いいえ、それ以外の違う力よ。その力・・・神剣ね」
部長の言葉に僕は固まる。まさかそこまで見抜かれていたとは・・・。そう思いながら僕は手を前に出して意識を集中させる。すると其処には淡い白い光に包まれている青銅の剣があった。それを部長に見せて話し始める。
「えっと・・・僕の家系の話はしましたよね?」
「ええ、巫女の一族よね?如月家とは何回か関わった事があるもの」
「はい。その如月家の人間の中でも選ばれし者にのみ宿ると言われているのがこの《神剣・卑弥呼》です」
「卑弥呼?それは確か歴史の・・・」
「はい、この神剣には邪馬台国の卑弥呼の魂が宿っています。それにこの剣は龍と癒しの力を司る剣で、この剣を持つ者は龍を統べる者とも言われています」
「では貴方の中に眠っている二体の龍はその力の賜物と言う訳ね」
「・・・はい?」
今この先輩はなんて言った?僕の中に龍が二体?・・・何それ初耳何ですけど!?
「ちょっと待ってください!二体の龍ってどう言う事ですか!?」
「・・・知らなかったの?」
「知るわけ無いでしょう!卑弥呼、起きて!早く!」
僕がそう言って剣を叩くと剣が光って形を変える。其処には巫女装束に身を包んだ。僕にそっくりな容姿の女性が立っていた。違う所はその女性は黒髪黒目と言う事だ。そう、彼女が僕の先祖にして神剣の中に眠る魂、巫女の頂点である卑弥呼その人である。卑弥呼は目を擦りながら不機嫌そうな声で話し始めた。
「ん〜・・・なんじゃ刹那。お主から話しかけるとは珍しい・・・」
「僕の中に二体の龍ってどう言う事!?」
「む・・・今更気付いたのか?そ奴らはお主が三つの頃に倒した龍じゃ。その後妾が封印したのだが・・・どうやら宿ったのは二年ほど前の様じゃな。まだ目覚めぬのか?」
「・・・そんなのあったっけ?」
「忘れておったのか!?あれじゃ、お主が転移に失敗して場所どころか時代まで遡った時じゃ!?」
「・・・ああ!あの時の赤トカゲと白トカゲ!?」
「そうじゃが・・・あの龍二体をトカゲ呼ばわりとはのう・・・」
「だって僕の事子供扱いするし・・・」
「現にあの時は三歳児じゃろう・・・。一応あの二体は龍の中でもトップクラスじゃぞ?」
「知らないよ。で、その二体にはさっさとお引き取り願いたいんだけど」
僕は卑弥呼に言った。当たり前だ。これ以上卑弥呼みたいな奴が居ては此方の身が持たない。唯でさえ卑弥呼の所有者である時点で常に大量の食欲と睡眠を必要とするのにこれ以上増えたらたまったもんじゃない。まあ、元から食べたり寝る方だったので支障は無いが、これ以上増えるのは勘弁願いたい。すると卑弥呼は言った。
「無理じゃ」
「はあ!?」
思わず僕は殺気を出して卑弥呼を睨む。さっきから部長がポカンとしているが関係無い。僕は苛立ちを抑えられないまま聞いた。
「何で無理なのさ!?」
「そんなもの、お主の《神器》になったからに決まっておろう」
「神器?何それ」
「《神器(セイクリッドギア)》と言っての、まあ簡単に言えば便利アイテムじゃ」
「ふ〜ん・・・で、其れは僕の身体に何か影響を及ぼしたりするの?」
「うむ・・・まあその二体なら精々お主が面倒事に巻き込まれるだけじゃ。食い扶持が増える事も睡眠が増える事もないじゃろう」
「・・・面倒事?例えば?」
僕は震える声で聞いた。卑弥呼は髪を弄りながら答える。
「最近何者かに《エクスカリバー》が盗まれたそうじゃ」
「《エクスカリバー》?それってあの聖剣の?」
エクスカリバー。その単語を知らない訳が無い。前世で僕はその聖剣を持つ王と共に人生を歩んだのだから・・・。そんな事を考えている僕に卑弥呼は続けた。
「元々エクスカリバーは一本じゃったがある戦で折れての・・・その欠片を集めて幾つかに分けたのじゃ。そして今回その一本が盗まれたのじゃよ」
「・・・それで僕に何の関係があるのさ」
「お主の中に居る龍達は戦いを好むゆえ、巻き込まれるのは当然じゃな」
卑弥呼の言葉に軽く絶望を感じた。どの道にしろ厄介極まり無い。ならいっその事その神器とやらになった二体を目覚めさせて戦力強化しておこうかな・・・?諦めた僕は溜息を吐いて卑弥呼に言った。
「じゃあさっさとその二体を目覚めさせる方法を教えてよ」
「・・・分かった。では妾に手を重ね、お主の最も強いと思うものをイメージするが良い」
「・・・強いイメージ・・・」
僕がイメージした人物は前世で共に戦った妻や仲間達だった。僕の思う強さは力だけでは無い。最後まで諦めない心の強さが一番大切だと思う。そう思った瞬間、僕の両腕が光り始めて辺りが照らされる。光が晴れると僕の両腕にはゴツイ籠手が装着されていた。右手には赤、左手には白の籠手が其処にはあった。其れを見て卑弥呼は満足げに頷く。
「成功じゃ。違和感はあるか?」
「ううん。寧ろ付けてる感じとか重さは無いよ」
そう言いながら僕はシャドーボクシングをして感覚を確かめる。すると両方の籠手に埋め込まれている水晶から声がした。
『な、何だと!?コイツはあの時のガキそっくりじゃねえか!』
『と言うより赤いの!何故お前が其処に居る!?』
『し、白いの!?どう言う事だ!?』
そう言って水晶は点滅を繰り返す。・・・また僕の事ガキって言った・・・。僕は無言で右手の水晶を地面に擦り始めた。
『痛い痛い痛い痛い!悪かった!もう言わないから勘弁してくれーーーー!』
『お、おい止めてやれ!水晶が傷だらけになる!』
白い籠手からそう言葉が出たので僕は取り敢えず止めた。そして僕は質問を始める。
「そういえば君達の名前は?僕知らないや」
『そ、そうだったな。俺の名前は《ドライグ》だ』
『わ、私は《アルビオン》と言う』
「ふ〜ん・・・面倒くさいから赤い方から順番に《げろしゃぶ》と《フーミン》ね」
『げ、げろしゃぶ!?』
『ふ、フーミン!?』
「当たり前でしょ?僕の平和を理不尽に奪って行くトカゲにまともな名前なんていらないよ」
『『この主酷い・・・』』
僕の言葉に籠手二つは酷く落ち込む。そんな中部長が僕を驚愕の目で見ていた。
「どうしたんですか部長?」
「まさか・・・貴方が今代の《赤龍帝》にして《白龍皇》だなんて・・・前代未聞よ」
「部長、その如何にも中二病感丸出しのその名前何ですか?」
「貴方知らないの?ドライグを宿す者には《赤龍帝》、アルビオンを宿す者には《白龍皇》と言う二つ名があるのよ。本来神器が二つなんてありえないわ。しかもその二体よ!?」
「へ〜、この爬虫類モドキってそんな凄いんだ」
そう言いながら僕は籠手を見る。・・・籠手以外になるかな?そう思って赤い方をナイフに変われと念じるとナイフに姿を変えた。
「おお、出来た」
『コイツもうコントロールできてるのか!?』
「ねえねえ、君を服にする事ってできる?」
『あ、ああ。《禁手(バランスブレイク)》できればお前のコントロールなら変えられるだろうな』
「えっと・・・こんな感じ?」
僕が軽くドライグに魔力を込めると僕の体は一瞬で赤い鎧に包まれた。それを見て籠手二つどころかその場の全員が驚愕していた。あ、今は籠手一つと鎧一つかな。
『もう禁手までできるのか!?』
驚いている鎧を無視してイメージを開始する。すると鎧は形を変えて黒い服の上に赤いコートを羽織った服になる。続いて白い籠手も禁手とやらに覚醒させてイメージを変えて大きめの大剣にして後腰に取り付ける。こうして僕の新しい戦闘装備が完成した(イメージはブレイブルーのラグナの服と装備)
「えっと部長・・・これからどうしましょうか?」
僕は終わった後、どうしたらいいか分からなくなり部長に聞いた。部長はフリーズしていて何も喋らない。取り敢えず今日はもう帰る事にした。戻れと念じると剣と服が消えて元に戻った。どうやら普段は僕の中で待機らしい。卑弥呼も戻し、僕は転移魔法で自宅の玄関まで転移した。
刹那サイド終了
三人称サイド
刹那の帰った後、なんとかフリーズ状態から回復したレイチェルは自室で就寝しようとしていた。先程の事が夢に思えて仕方がない。
「まさか・・・異性として見ていた後輩があんな大物だったとは思いもしなかったわ」
レイチェルは枕元に飾られている刹那との写真を見て言った。これから刹那には危険が付き纏うだろう。なるべくその負担を減らしてあげたい。そう思いながらレイチェルは微睡みの中に沈んでいった。
三人称サイド終了
〜帰宅後〜
「せ・つ・な〜。コレはどう言う事かな〜?」
「す、ステラさん?僕は無実だよ。寧ろ起こるんなら変な封印を施したこれに言ってよ」
「こ、これ刹那!妾を差し出すな!?」
「ふ〜ん・・・コレが刹那に私以外の龍を呼び寄せたんだ〜・・・」
「ま、待て龍の娘よ!妾もこうなるとは思ってなかったんじゃ!ちょっ剣はそっちに曲がらn」
アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
〜おしまい〜