刹那サイド
金田とのどうでもいい対決の翌日の放課後、僕は特にする事もなく一人で学校の各部活動を見学して回っていた。部長は生徒会にスカウトされ、桜は弓道部に入った。一週間あるか無いかの中で二人共活動する事を決めた二人を見て僕もなにか探そうと思ったのだ。サッカー部と思ったが金田とは顔を合わせたくないから却下。それ以外に何か無いかと探してるのだが・・・。
----じーーーーーーっ
「・・・」
----じーーーーーーっ
「・・・」
先程から誰かにガッツリ見られてるんだけど・・・。本人は隠れているつもりなのだろうけど・・・髪の毛見えてるよ・・・。どうしたんだろう?・・・いいこと考えた。僕はその場からダッシュして角を曲がり、二階の高さの壁にある窓へ跳躍する。そして下を見ていると、僕を追ってきた人物が姿を現す。その人物は一人の女子生徒だった。あのリボンは・・・一年かな?キョロキョロしてる一年生の前に僕は窓から飛び降りて着地した。
「へっ!?」
「やあ、さっきから後を付けられてたから心配になっちゃって・・・。驚かせてゴメンね?」
驚愕する一年生に謝る。やがて一年生は落ち着きを取り戻して僕に言った。
「あ、あの!私達の部活に入ってください!」
「・・・はい?」
突然の事に思わず僕は聞き返した。もしかしてこの子・・・部活に誘いに来てくれたのかな・・・?
「えと・・・何部なのかな?」
「はい!軽音部です!是非ボーカr「すみません、勘弁してください」即決!?」
いやいやいや!無理無理無理!知らない人とバンド組んでいきなりボーカルとかハードル高すぎるって!?僕はササッと彼女の横を通り過ぎて・・・
ギュッ
「うう・・・お願いします・・・!」
・・・行ける訳がなかった。袖を握られて尚且つ涙目上目遣いされたら僕の方が悪役じゃないか・・・。僕は諦めて彼女に言う。
「ハア・・・分かったよ。どうせ数日間だし入部させてもらうよ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
目を輝かせながら僕の手を握って笑顔になるのを見て、まあ良いかと思ってしまった・・・。あ、そういえば僕この子の名前知らないや。
「ねえ、入部するのは良いけど君の名前は?」
「あやや〜、ごめんなさい。私は一年の《朝比奈 桃子》って言います!軽音部ではキーボードを担当してます!これからよろしくです五河先輩!」
「へえ、桃子か・・・」
まさかモモと同じ名前の子と会うなんてね・・・。僕達は軽い自己紹介を済ませて軽音部の部室へと向かった。
〜軽音部部室〜
「ただいま戻りました!先輩を連れてきましたよ!」
「えっと・・・おじゃまします・・・」
部室に入ると女子生徒二人が椅子に座っていて、一人は僕を品定めでもするかの様に見て、もう一人は何か期待した様な目で此方を見ている。
「えっと・・・初めまして。五河刹那と言います。宜しくお願いします」
「ん。私は《黒川 凪子》だ。ま、宜しく」
「私は《風町 陽歌》だよ。宜しくね」
自己紹介を済ませた僕は疑問に思っていた事を朝比奈さんに聞いた。
「ねえ、朝比奈さん。僕が誘われた要因って何かな?僕達初対面だよね?」
「はい。五河先輩今日の昼休みに屋上で歌ってましたよね?」
「うん。アレ聞いてたのか・・・恥ずかしい」
「恥ずかしくないですよ!凄くいい歌で聞き入っちゃいました!曲名は何て言うんですか?」
「アレはね、《サマータイムレコード》って言う曲だよ」
実は今日の昼休みに助部メンバーと木乃子と戸村さんで昼食を屋上で摂った後に、部長に言われて数曲程歌ったのだ。まさかそれを聞かれてたとは・・・不覚!
「もしかして先輩の自作ですか!?」
「いや、まあ・・・そうとも言えば違うとも言えるっていうか・・・」
何せ前世で流行ってた曲を歌っただけだからね。僕は誤魔化す様に言うと、勘違いされたのか朝比奈さんと風町さんがキラキラした目で見る。
「私桃子ちゃんから話しか聞いてなかったから聞いてみたいな君の歌」
「お、それには私も賛成だよ」
「・・・じゃあ、一曲だけ。ギター借りても良いですか?」
「はい、どうぞ先輩!」
僕は朝比奈さんからギターを貸してもらい、チューニングを始める。
「ん?君、チューニング用の機器を忘れてるぞ」
「あ、大丈夫です。此処をこうすれば・・・」
ジャーンッ!
「ねっ?」
「ぜ、絶対音感かよ・・・!」
僕のチューニングを見て黒川さんは頬を引きつらせる。その間にも僕はチューニングを全て終えて準備を始める。そして期待の視線を向けてくる先輩達に向かって僕は、
「それでは、聞いてください。《The Everlasting Guilty Crown》」
歌い始めた・・・。
〜数分後〜
「凄いです先輩!」
「うん!こんなの初めて聴いたよ!」
「合格ラインどころかプロじゃねこの子?」
朝比奈さん、風町さん、黒川さんの順に僕に言葉を掛ける。一息つくと、アンコールと手を叩き出した。この人達は・・・!こうなったらやってやりますよ。やってやろうじゃないか!さあ、僕の歌を聴け!
「それじゃあ二曲目は《地球最後の告白を》!」
僕は再び歌う。この時点で気がつくべきだったのかもしれない。防音の部室のドアが少し開いており、外から複数の視線がある事に・・・。
〜更に数分後〜
「え〜と・・・何故こうなった?」
何故か僕はあの後、外へ漏れた歌を聴いて居た人達の要望と軽音部員の提案もあり、何故か講堂のステージでゲリラライブをする事になった。因みに一応理事長には話を通してあるので、何かを言われる事は無いだろう・・・と思いたい。っていうかそれよりも!
「ギャラリー多くない!?ゲリラライブ何だよね!?」
「ごめんごめん。私がつい放送で・・・」
そう言って曲を選んでいる僕に何時の間にかパパラッチしてくれやがった櫻井さんが謝る。チックショーーー!そう思っている内に時間が来た。僕は朝比奈さん達と楽器を持ってステージに上がる。軽音部はあと二人メンバーがいるらしいが、二人共仲良くインフルエンザらしく、僕がギターとボーカル、風町さんがドラムとなった。と言うかドラムも出来るって凄いな〜・・・。改めて会場を見ると、助部メンバーは勿論、様々な生徒が集まっていた。僕は軽く深呼吸してマイクのスイッチを入れた。
「えっと・・・会場の皆さん。今日はいきなりですみません。交換留学の間、この部活で活動させてもらう五河刹那です。今日は僕のお披露目会と言う名目でこのライブを開いたそうです。時間もアレなのでパパッと行きたいと思いますそれでは最初の曲はアゲアゲな感じで行きたいと思います。聞いてください」
そして僕の、僕達のライブが・・・
「《SURPRISE-DRIVE》!」
始まった。
「えっと・・・何だかんだでこのライブも最後の一曲となりました」
ライブは想像以上に盛り上がった。気がついたら団扇とか旗とか出てきたし・・・。僕は会場の人達に話しながら曲の準備をする。
「最後の曲は僕の高校の授業で紛争について触れた時にクラスの皆で歌った曲です。あまりジャンル等は関係ありませんが、個人的には一番気に入ってます。それじゃあ、ラスト一曲」
コレが最後だ。全力で歌おう・・・。
「《夜鷹の夢》」
この日、最後の曲が講堂に流れ始める。
「いや〜、大成功だったね。はいこれドクペ」
「あ、どうも・・・」
ライブは無事終わり、機材の片付けを済ませた僕は黒川さんから何故かジュースを奢ってもらっていた。朝比奈さん達は部室へ忘れ物を取りに行った。僕達はそれの待ち中だ。僕は黒川さんからもらったジュースを飲んで一息つく。
「楽しかったかい五河君?」
「刹那でいいですよ。それに楽しかったです」
「そうかい。それは何よりだよ刹那。私も同学年なんだしタメ口で凪子で良いよ」
「分かった。今日はありがとう凪子」
「・・・悪くない」
「ん?」
「何でもない。気にすんな」
そう言って凪子は自分のジュースを一気に飲み干す。僕も飲み終わって暫く待っていると、朝比奈さん達が戻って来た。
「お待たせしましたー!」
「ごめんね。筆箱忘れちゃって・・・」
「別に良いよ。なあ、刹那」
「そうだね凪子」
「な、凪子ちゃん先輩いつの間に先輩と仲良くなってるんですか!?」
「ずるいよ〜。私も陽歌って呼んで刹那君」
「私も!桃子って呼んでくださいせっちゃん先輩!」
そう言って二人は僕を睨む。僕は二人を向いて呼んだ。
「宜しく。桃子、陽歌」
「「はぅ・・・////」」
「あーあ、やっちゃった・・・」
「?」
僕の顔を見て二人が顔を赤くして後ろを向いた。そんなに気に食わなかったのだろうか・・・?だから凪子もやっちゃったと言ったのか・・・。
「(多分気づいてないんだろうな、自分の笑顔の破壊力・・・)」
ほら、凪子が責める様な目線を・・・やっぱり何か不快な事を?そう考えていると、数人の男子生徒が放送用の機材を運んで階段を上っていた。うわ、危ないな。前見えてないでしょアレ・・・。そう思っていると、凪子に言われ、僕達は帰ろうとしたその時、
「危ない!」
「え・・・」
男子生徒の声と桃子の声はほぼ同着だった。男子生徒の腕から落ちた巨大な機材が階段下にいた桃子へと落ちてきたのだ。僕はすぐに桃子に近づいて抱きかかえ、機材を受け止める。・・・ふう、間一髪セーフ・・・。機材を壁に立て掛けて男子生徒へ怒る。
「ちゃんと周りを見て量を考えて運んで!この子が怪我する所だったよ」
「す、すいませーん!」
男子生徒はすぐに走って何処かへ行ってしまった。腕の中の桃子を見る限りは怪我は無さそうだ。只、状況が未だに掴めてないって感じかな?僕は桃子に声を掛ける。
「桃子・・・大丈夫?」
「あ・・・せっちゃん先輩・・・こ、怖かったよ〜」
ようやく自分の状況が理解できたのか涙を流して僕にしがみつく。僕は桃子が落ち着くように優しく頭を撫でた。暫くすると、桃子は落ち着きを取り戻す。
「ありがとうございますせっちゃん先輩」
「気にしないで。あんなの誰だって怖いよ。動けなくもなるさ」
「そうですね・・・あれ?」
「どうしたの?」
「腰・・・抜けちゃいました」
「よし、刹那。この子の事家まで送れ。勿論お姫様だっこでな」
「え!?体制指定!?」
凪子に言われて僕は桃子を家まで送ることになった。凪子達と途中で別れ、桃子と二人で道を歩く。そして着いた桃子の家には《朝比奈酒店》と書かれていた。酒屋さんか・・・。家のチャイムを押すと、桃子の母親らしき人が出て来た。僕は自己紹介をする。
「すみません。もm、朝比奈さんを送りに来ました」
「あ・・・あなたーーー!桃子が彼氏連れてきた!」
「お、お母さん!?・・・行っちゃった・・・」
「・・・元気な人だね」
「あやや〜。勘違いが多い所もありますけどね・・・」
この後僕は朝比奈家で夕食と風呂を頂き、寮へ帰宅した。さて、明日も何もありませんように・・・。
刹那サイド終了