刹那サイド
あれから数日が過ぎ、気が付けば金曜日になっていた。明日には帰らなければいけないから凄く寂しい・・・。そんな僕にクラスの皆はお別れパーティーを開いてくれた。それは桜達の学年も同じで、1、2、3年生合同となっている。そして食堂の席に座り、僕達はクラスの皆や部活のメンバーと話している。
「寂しくなるわね・・・」
「そうですね。そう言えば部長は生徒会で何の仕事を?」
「書類仕事全般よ。此処の生徒会長が想像以上にポンk・・・アレだったから残りのメンバーで頑張ってたのよ」
「・・・お疲れ様です」
遠い目をしながら語る部長に僕はそれしか言えなかった。と、取り敢えず気を取り直して桜に聞こう・・・。
「ねえ、桜は弓道部でどんな活動をしたの?」
「はい。流鏑馬です」
「流鏑馬!?此処馬居るの?」
「いますよ。私も最初は驚きました」
「この学校どんだけお金掛けてるのさ・・・」
話していると、桃子が少し暗い顔で来た。
「せっちゃん先輩・・・やっぱりこっちに転校する気って・・・」
「無いよ。て言うか無理でしょ。推薦状が無いんだから」
「うぅ・・・でもやっぱり寂しいです」
「大丈夫、メアドだって交換したんだから何時でもメールとか返事するからさ」
「・・・やっぱり既成事実を」
「?今何て言ったの?」
「な、何でもないです!」
そう言って桃子は何故か椅子を持って桜と僕の間に割り込んで座る。その瞬間、桜から途轍も無い寒気を感じた。恐る恐る見ると、目がヤバイ事になってる桜が桃子を何か話しているが、女子同士の会話に突っ込んでいく自信は無いので僕は目の前に並べられた料理に手を伸ばす。ピザや唐揚げ等のメジャーな料理の他にもアップルパイやチョコレートフォンデュと珍しい物もあり、お腹が空いている僕は料理を食べ始める。
「はむ・・・美味しい」
「刹那、もう少し落ち着いて食べなさい。ほら、ソースが付いてるわよ」
そう言って部長が僕の口元を拭う。少し夢中になってしまったらしい。落ち着いて少しずつ食べていると、木乃子が来た。
「よう・・・」
「うん・・・」
・・・気まずい。やっぱり久しぶりに再会したのに一週間でお別れだし・・・。すると木乃子は僕に近づいて首に手を回して膝の上に横抱えに座る。そして木乃子の表情は涙目に変わり、僕にしがみつく力を上げた。
「何で・・・何で帰っちゃうんだよ・・・もっと居ろよ」
「木乃子・・・ごめん」
「・・・分かってる。でも寂しいじゃんか・・・」
「うん・・・でも、木乃子がもっと居ろって言ってくれた時凄く嬉しかった」
「・・・本当ブレないなお前」
「?今何て言っtングッ!?」
気がついたら僕は木乃子にキスされていた。それもディープな方で・・・。頭がボーッとして来た・・・。やがて木乃子は僕から離れて最後に言い放つ。
「刹那、乙女の宣戦布告だ!覚悟しろよ!」
そう言って木乃子は赤い顔で食堂から離れていく。パーティー会場はシーンとなる。そんな中、三人の人物が動いた。椎名さんと陽歌と桃子だった。彼女達も僕に近づいてキスをして、告白してから去って行く。僕は未だに状況が理解できずボーッとしたままだ。そしてこの微妙な空気のままパーティーは終わりを迎えた・・・。
〜午前二時《グラウンド》〜
ようやく思考が回復し、顔が赤くなっていくのを自覚した夜中に僕は途轍も無い霊力を感知した。月下のグラウンドから発せられる霊力に向かうと、其処には異形が立っていた。黒い巨大な何かが立っていた。やがてソレは形を変えて人型になる。その人型を見た時、僕は凍り付く。何故なら目の前に居る異形の正体が黄泉野だったからだ・・・。
「何故此処にいる・・・」
「・・・コロス」
「何故此処に居るのかと・・・聞いてるんだ!」
僕は結界を張って黄泉野へ向かって走り出す。
「ライ!アル!《禁手化》!」
僕が叫ぶと、再び体が赤い服に包まれ、白い大剣を構える。そしてそのまま斬り込んだ。だが、アルの刃は敵を切り裂く事は無く、僕は宙に放り投げられていた。
「何あの霊力・・・硬い」
『だが奴に触れる事は出来た!赤いのと組み合わせれば砕く事は可能だ!』
と、アルの言葉の後に、
『Boost!』
『Dvide!』
鳴り響いた音声と共に力が上がるのを感じた。僕は大剣に魔力を流し込み、上空から黄泉野へと剣を振り下ろす。
「行っけえ!《ベリアルエッジ》!」
「・・・コロスゥ!」
アルの刃に黄泉野は拳を叩きつけた。するとアルに罅が入る。僕はすぐに後ろへ下がる。
「アル!大丈夫!?」
『くっ・・・何とかな。済まないが修復に少々掛かる。能力は発動するから時間を・・・』
「分かった!行くよライ!」
『ああ!』
「龍に喰われろ!《ヘルズファング》!」
後腰にアルを仕舞い、ライとへルズファングで黄泉野に応戦する。時間が経つに連れて、僕達が優勢になって行く。そんな中、黄泉野のガードが空き、一撃を叩き込もうとした瞬間、黄泉野を守って黒い馬が現れた。黄泉野はそれに乗り、馬上から攻撃を仕掛ける。自分の体の靄から生み出した槍で僕を突く。なら、目には目を、馬には馬をだ!
「来い、《レティ》!」
『ああ、任せろ』
僕の言葉にポーチの中から黄金の馬が飛び出す。前世からの家族で魔導馬のレティだ。僕はレティに乗って黄泉野へ向かって駆け出す。
「アル!あと何分掛かる?」
『あと一分あるか無いかだ!』
「了解。それなら・・・」
『Boost!』
『Dvide!』
「十分だよ!」
レティは僕の指示で飛んで、黄泉野の後ろへ着地する。その瞬間、レティの周りから黄金の魔力が迸り、僕の右手に魔力が溜まる。へルズファングのサイズが通常の倍になった。僕はそれを黄泉野に振り下ろす。
「龍に喰われろ!」
「ガハアアアアアアァア!?」
馬は消滅し、落馬した黄泉野は転がる。そして黄泉野が立ち上がるのとアルの修復が完了するのは同時だった。
「行っけえええええええええ!」
「ウガアアアァア!」
僕は黄泉野へアルを振り下ろす。そして黄泉野の体は中心から真っ二つにされその場から倒れた。黄泉野の遺体はやがて塵となって消えて行く。
『相棒、これってどう言う事だ?』
『我も聞きたい所だな』
『同じく私もだ』
「うん・・・ある意味黄泉野は凄いよ。上位の悪霊に取り付かれても身体を保っていられたんだから・・・」
詳しく説明するとこうだ。黄泉野は悪霊に取り付かれたが、僕へ対する復讐心が強かった為かある程度の自我を保って悪霊をギリギリ取り押さえた。でも体も魂もボロボロで今の一撃で完全に力尽きたって所だ。・・・復讐心って怖いね・・・。
「さあ、戻r・・・ってアレ?」
『相棒/主/刹那!?』
僕は力が抜けて禁手化も解け、レティから落馬する。すると結界が解除されて、僕の目に映ったのは此方に駆けてくる木乃子の姿だった。それを最後に僕は完全に意識を落とした。
「刹那!」
刹那サイド終了